第1話:普通って素晴らしい
「第一印象って大切だよな?」
「……兄ちゃん何いってるの?」
朝。オレを起こしにきた妹の蓮香が疑問の声をあげる。
「例えば、プロローグで失敗した小説家は立ち直るのが大変と言うことだ」
「いや、だからいきなりなに言い出してるの?」
「だから、第一印象の大切さを―――」
「母さ~ん!兄ちゃんが壊れた~!」
それはさすがに酷くないか蓮香。いや確かに朝からいきなりなに言い出してるの?的なこと言ってるとは思うけど、もう少し兄の冗談に付き合っても良くない?
『壊れたの~? 今修理代ないからとりあえず粗大ごみに持ってって』
台所辺りから母親の声が聞こえる。とりあえずで粗大ごみって……直す気ないだろ。
「結論として兄ちゃん。兄ちゃんはようなしだって」
「……我が母親と妹ながら優しさはないのか?」
「壊れた兄に対する一般的な対応だと思うけど?」
……まぁ確かに。
「そうだな…朝からいきなりハイテンションすぎたな。…まぁそんなことより朝飯できてるか?」
「できてるから早く顔洗って、歯磨いて来てね?急がないと新学期早々遅刻だよ?」
「お前は明日が入学式だっけ?」
「同じ学校なんだからそれくらい覚えててよ……」
「悪いな、忘れっぽくて」
「ていうか兄ちゃんの場合は忘れっぽいと言うよりいろんなことに無関心なんじゃないのかな?」
「そうか?お前のスリーサイズとかいろいろ気になることあるけど?」
「それじゃ兄ちゃん早く降りて来てね?」
無視か……朝の兄妹のスキンシップなんだからノリよく受け答えしてくれても良いじゃないか。
「……それもなんかいやだな」
さっさと降りて居間に向かうか。
「あら?誠矢おはよう」
「おはよう母さん」
普通に母さんと挨拶。そして目玉焼きを食べる。こういうのを平和って言うだろうな。普通って素晴らしい。
「兄ちゃん?何を考えてるの?」
「お前のスリーサイズ」
「母さん……私今日実家に帰るね」
「そう……兄のセクハラに耐えられなかったのね……母さんは止めないわ」
……実家は間違いなくここだ。
「オレはもう学校に行くぞ?」
「「行ってらっしゃい」」
……二人に同時に言われたら少しだけ傷つく。
「少しだけ寂しそうに言ってくれると嬉しいな」
「行かないで兄ちゃん」
「すまない……オレはどうしても行かないといけないんだ」
「いいから誠矢さっさと行きなさい。遅刻するわよ?」
くっ……ここから楽しい兄妹の愛憎劇が始まると言うのに……母め。こうなったら……。
「学校に帰らせて頂く」
「行ってらっしゃいバカ兄ちゃん」
「行ってらっしゃいアホ息子」
……リアルで酷いな。
そんなありきたりな日常を背景にオレは学校へと向かうのだった。
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