プロローグ
「泣くなって。泣いても何も変わらないよ?」
泣き虫だったオレ。そしてそんなオレの敵。その時その場には二人しかいなかった。
転校……そんな言葉にすればたった二文字のものに、オレの敵はオレの前から居なくなろうとしていた。
「……泣いてなんかない」
泣きながら……必死に嗚咽をもらさないようオレは強がる。
「オレはお前が居なくなってうれしいんだ。……泣くわけない」
小学生のころ。どこにでもある。
「どう見ても泣いてるじゃない……この泣き虫」
小さかった。引き留める力なんてなかった。小学生なんてそんなものだ。強がるしかなかった。
「これは嬉し涙だ」
「どっちにしろ泣いてるわね」
…………………………どうしてコイツはこんなに淡白なんだろう?
「やっぱりお前は敵だ」
「あんたはただの泣き虫ね」
「じゃあオレは二度と泣かない……約束だ」
「約束って……あんたガキ?」
「お前だって小学生だろ!?」
「精神年齢のことを言ってんのよ」
……地味にムカツク。
「まぁいいわ。泣かないって言うなら泣かないことね。というか約束って言うなら泣いたらとりあえず指刑ね?」
「……よくわからんが、とりあえずどうやってオレが泣いてること知るんだよ?」
話しているうちに涙はとまっていた。
「蓮香ちゃんに見張ってもらおうかな」
「……人の妹勝手に使うな」
「気にしない気にしない」
いつも通りの会話。いつまでも続けばいい……月並みにそう思った。
「……そろそろ行くね?」
それが終わりの合図。
「……さっさと行けよ」
最後も強がる。
「クスッ……それじゃまたね?……誠矢」
「じゃあな……久乃」
これはひとつの終わりのお話。そして高校生になった今、オレにとってなくなった過去のひとつだった。
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