frozen times〜二度と戻らない時間(とき)〜(7/7)縦書き表示RDF


充は到頭、ボスとの決着をつけにきた。そのボスの正体は意外な人物だった…
果たして、充はボスに勝てるのか?そして充を苦しめていた過去の残酷な事件とは?
frozen times〜二度と戻らない時間(とき)〜
作:りす君



凍話7-最終対決…その先にあった真実-


「ようやく見つけたぜ…これで終りだ!」
充が身構える前に、草間は迫ってきた。充は、何とか避けて草間の様子を観察していた。
「この仕事が成功すれば、俺は大金を貰って後世は裕福に生活できるのだ。そのためにも、お前をここでぶっ殺す!」
ダメだ…完璧に金で頭がイっちゃってる。話をつけられないと思った充は即座に考えた。そして草間に近付いた。
「おっ、自分から死ぬ気になったか…。死ねぇ!」
草間が襲いかかる、しかし充は簡単に避けて草間の右腕を素早く(ひね)り上げバタフライナイフを落とさせた。そして草間の腹に、拳の一撃を喰らわせ、気絶させた。それは、一瞬の出来事だった。
「ふぅ…」
充は溜め息をつき、急いでその場から去った。

多分、情報を手に入れた事は零葉に伝えられないかもしれないと思った充は、そのまま家に帰り、ボスと闘うための万全の態勢を整えた。

そして、実行当日。充は確かな情報を頼りに敵のアジトと思われる建物の前に立っていた。
「確かにここだな…異様な雰囲気がある…。」
充が意を決して、入ろうとした瞬間、
「青葉さん!」
振り向くと、何と零葉がいた。
「どうして…ここに?」
「私もただ休んでいた訳じゃない、ちゃんと情報収集してここに来たんですから。」
チッ…しょうがねぇな…充は小さく笑い、そして前を見据えながら建物内へ零葉と一緒に入って行った…

建物内は暗く寒い。まさに、刑務所のような雰囲気だった。
充はゆっくり奥へ奥へと歩いていくと、いつの間にか一つのドアが目の前にあった。
「このドアにボスがいる…行くぞ、茅場!…あれ…茅場?お前、何処にいるんだ?」
後ろにいるはずの零葉が突然と姿をくらました。充は捜したが、見つからなかったので後で捜すことにしてドアへ向かった…。

重いドアをこじ開ける。そこには煙のような白い空気に覆われていた、そして…、
「よく来たな、青葉充!」
そのドスの掛った声と共に部屋全体が明るくなった。そして充とボスに、スポットライトの光が浴びせられた。

「ボスってお前だったんだな…覆石悠太!」

…ボスの正体が解った時には、充は困惑した。まさかアイツが…何故…?…しかし、背に腹はかえられない…俺が暴く!充は、こうして意を決して真っ向対決に来たのだ。
「何故…、お前は老人と若者を殺したんだ…?」
覆石はケラケラと笑い、そしていきなり怒りを露にした。
「アイツ(老人)は、ただの人じゃねぇよ!アイツは…アイツは昔某テレビ局のアナウンサーだったんだよ!」
…アナウンサー?何故、元アナウンサーを惨殺しなければならなかったのか?
「何故、因果関係の無い元アナウンサーを殺した?」
「ふっ…憶えているか…あの十年前の米航空機襲撃墜落事件を!」

「………?!」
充は頭の中が混乱した…
-あの事件が無ければ…-

充11才の冬、両親と弟は風邪をひいていた充を日本の祖母の家に置いて、オーロラを見るためにアメリカ・アラスカ旅行をしに行った。
当時、アメリカとロシアとの国交関係は悪化の路線を辿っていた。一歩間違えたら両国で戦争が起きてしまうかもしれない状態に陥っていた。
そして遂に事件は起きてしまった…

米航空機203便・アンカレッジ行きはオホーツク海を北上し、ベーリング海に差し掛かろうとしていた。その時、スクランブルでロシアの戦闘機が旅客機に威嚇射撃をし、それにより旅客機は撃墜されて炎の塊となり、冬のベーリング海へ沈んでいった…

この事件が発覚し、両国で戦争が始まった…。そして戦争は2年前に終了した。

「あの事件で俺は大切な人を失った…なのに、アイツはその事件を1日しか取り上げ無かった。俺はテレビ局に問い合わせ、抗議したが全くの無駄だった…。クソッ…」

あの事件で乗っていた乗客は全て死亡し、中には死体が海中に沈まず、海面にうつ伏せの状態で浮き上がっていた光景は事件の無惨さを(かも)し出していた。

「じゃあ…何故若者も殺した?」
「あぁ…アイツはただの事件の邪魔者だったから失せて貰ったよ。」
ケラケラと笑っている覆石に充は怒りを感じた。森村が救われない…
「テメェ…人の命を何だと思ってるんだ!」
充は、到頭我慢の限界に達し、覆石に殴り掛った。しかし…、
「おっと、それ以上動くなよ。この女がどうなっても良いのかい?」
そこには、気絶して縄で吊されている零葉の姿があった…
クソッ…さっきの時点で(さら)われていたんだ。もっと早く気付けば…。
充はたじろいだ。覆石が嘲笑した。
「ふっ…コイツはお前の仲間だったよなぁ?さすがに、傷つけられないよなぁ?み・つ・る・君。ヒャァハッハッハ!」
チッ、腹が立つ…何か手は無いかと充は周りを見た。するとガラクタの山の中に、鉄パイプが数本あった。素早くそれを取り、覆石の様子を(うかが)った。
「お、それで闘うのかい?馬鹿だね、こっちにはチャカが沢山あるんでね。死ね!」
(ズガン、ズガン!)
充は瞬発力を最大限に活かしながら避け、覆石に近付いた。
「ちょこまか動くなよ、隙あり!」
(ズガン!)
グッ!足を片方やられた…充は苦痛を必死に抑えながら、近付き、
「うぉぉぉぉぉ!」
と、思いっきり鉄パイプを覆石の頭上に振り上げた瞬間、鉄パイプを手から放して(ひる)んで隙だらけだった覆石の顔面に拳から最大力の一撃を喰らわした。覆石は吹っ飛び、気絶した…

充は血が流れ出てくる足を抑えて(うずくま)った。その時、パトカーのサイレンが聴こえたような気がした…






事件から数週間後、充は休養のため家で零葉からの手紙を読んでいた。

(前略:
お元気ですか?私は平気です。あれから、数週間が経過しました。あの時、絶体絶命だったと思いました。青葉さんが黒幕を倒した時、私は話の途中で目が覚めて、何とか自力で縄をほどいた時に、蹲ったあなたを見て、直ぐ様に警察と救急車を呼びました。
実はその話で伝えたい事があります。その撃墜された旅客機の機長は、私の父でした。さらに乗客には私の母・兄・姉が乗っていました。
私の父は自慢ではないですが、機長の中では最高クラスだったんです。それが悪かったんです…
あの時、アメリカやロシアへの運航は治安の関係上、危険であまり飛ばさない方が良いと世間では言われていました。しかし、父の上司はそれを聞き入れずに経営難を乗り越える為、(なか)ば強制的に部下をアメリカやロシアに飛ばしていました。

そんな時、私の父がアラスカ行きの運航に選ばれたのです。父は危険だと上司に抗議しました…が、しかし経営の理由で取り合って貰えず、到頭父はアラスカへの旅客機の機長を任されてしまったのです。
父の安否が心配だった母と兄と姉は一緒の飛行機でアラスカに旅行に行こうと決めました。しかし、あの事件が起きてしまったのです…。

父は本当に天国で後悔していると思います。そんな父を許してあげて下さい、御願いします…。

P.S.今年の命日の日にもしよかったら…、一緒にアラスカへ行きませんか…?返事待ってます。
茅場 零葉)

充は読み終えると静かにそれを机の引き出しにしまい込み、窓の外の景色を眺めた。
白く淡い氷の結晶が寒空から地上にゆっくりと舞い降りていた…


この連載小説をお読み下さり誠にありがとうございました。これからも、読者の皆さんにまた読まれる事を願いつつ、随時書いていきますので宜しく御願い致します…。













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