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私は…。

そう。

私は全て思い出した。

本当はちゃんと記憶があったのかもしれない。

それを封印して、思い出さないようにしていただけなのかもしれない。


話ながら涙がとめどなく溢れてくる。


私は撃たれた?

違う、私は撃たれなかった。


確かに犯人は、私を狙って発砲したけど、あの後…。


翔太が…、私を庇って…。


「もしかしたら、翔太が死んじゃったのかもしれない。だから、私はここの世界に来たのかもしれない。」

「…。」

「私が翔太の誕生日に旅行するって言わなければ、あんなにバイトいれることも無かったのに。ううん、私が告白しなければ。私のせいだ。」

「それは違うよ。架菜さん。架菜さんが悪いんじゃないよ。」

ショウタくんの声が耳に入らないぐらい、私は取り乱し号泣していた。

「架菜さん、落ち着いて。翔太さんは撃たれてないかもしれない。撃たれていても傷は浅いかもしれない。」

銃弾は間違いなく、翔太に当たった。

翔太、翔太。


どうして、私は今までこの現実を見ようとしなかったの?

現実から逃げるためにこの世界に来たの?

翔太に今すぐ逢いたい。逢わなきゃ。


どうしたら、元の世界に戻れる?


一瞬、店内の柱に取り付けられている鏡に私が映った。

いや、ちゃんと言えば、ここからの位置で私が映る訳が無いんだ。


私は一番奥の席に座ったままの状態だった。

鏡に映るには、絶対に無理な距離だった。


良夢さん?


意識が遠退く。



       ******


ここは?

気が付くと、私は薄暗い場所にいた。

すぐ外に見える景色は目映いぐらい明るいのに、自分のいる場所は暗く何も無いとこだった。


「架菜さん。」

聞いたことのある女の人の声。

あまり好きではない、自分の声。

「あなたは?」

「音無良夢。」

予想通りの答えだった。

「ここは?」

「私の意識の中よ。私は精神意識の奥底にずっと眠ってたの。」

何かすごく変な感じがした。

自分とそっくりの人間が自分と全く同じ声で話してる。

少し気分が悪くなる。

「どうして?私はあなたの世界に来たの?」

「…。」

それには答えずに、良夢さんは話始めた。

「私、ショウタくんの事がずっと好きだったの。一度しか話したことも無かったけど、毎朝同じ電車の中で、ショウタくんの姿を見られるだけで幸せだったの。」

「…。」

「自分の思いを言えないことへの現実逃避かな?もしかしたら、他の世界では私はショウタくんと付き合ってるかもしれない。どこか違う世界ではショウタくんと近い関係にいるかもしれない。」

「…。」

「パラレルワールド?これって単なるSF 用語じゃないのかもしれない。そう思ったの。現実は時にフィクションを越えるのね。一瞬だけ私は違う世界に行けた。そこでは、私そっくりなあなたがショウタくんそっくりの翔太さんと恋をしていたの。」

あの時。

あの鏡の中にいたのはやっぱり、良夢さんだった。

「その世界を見た後でも、私には勇気を出すことができなかった。結局、私にはショウタくんへ想いを告げる勇気が無かった。」

「…。」

「でも、一度パラレルワールドに行く力を身につけた私は、全く別の世界にいるあなたの意識をよく感じるようになった。あなたの喜びも悲しみも。本来なら出会うことの無いはずのあなたの意識を感じることができるようになったの。」

良夢さんとそんな風に繋がっていたなんて、そんな世界があるなんて。

信じがたいごとだったけど、これは事実だ。

「…。」

「そして、あの事件。翔太さんが撃たれた事件が起こったの。」

「翔太は?翔太はどうなったの?」

翔太は今どうなってるの?

「落ち着いて。翔太さんは無事よ。まだ病室で眠っているけど、大丈夫。あなたは翔太さんが深い傷を負ったと思って、現実を認めたくなくて意識が繋がってしまった私のいるこの世界に来てしまったの。」

そんなこと…。

でも、それよりも。

翔太は翔太は本当に?本当に大丈夫なの?

「それよりも、心配なのはあなたよ。翔太さんの隣で眠っているあなたの意識が目覚めないの。外傷は無いのに、翔太さんが撃たれたショックであなたの肉体は今も眠ったままなの。」

「え…。」

「このまま眠ったままの状態が続くと、戻れなくなるかもしれない。」

翔太に会えなくなる。 

「本当に翔太は無事なの?」

「命に別状は無いわ。」

「それなら、早く早く翔太に逢いたい。」

「その気持ちは分かるけど。」 

良夢さんの視線の先にショウタくんが映った。

「今日中に戻らないと、あなたの意識が戻る確率はほぼ無くなる。」

「え?」

急にそんなこと言われても。

「今日の12時に私は自分の意識内に戻る。だから、あなたは…。」

「…。」

私は戻らないと。


その前にショウタくんにちゃんと話さなきゃ…。








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