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ネトゲ最後の日②

「そうか。なくなってしまうのか。残念だな。せっかく操作を完璧にマスターしたというのに」

 ろとままが言う。


「あのですね。ネトゲやるのはいいんですが。なんで俺の膝の上に来るんですか?」


 俺は膝の上の、ろとままに――そう言った。


 この人は、なにかというと、俺の膝の上に収まりにくるのだ。

 身体的にはJSサイズで、ジャストフィットではあるのだが――。実年齢はすくなくとも三十代中盤以降になるはずだが。


「これはだな。つまり説明すると。いわゆるひとつの。母が娘にしてやれる、情操教育の一環というか」

「それはとっくに手遅れだと思います」


 ろとは成人しちゃってるし……たぶん。

 その情操教育とやらは、何年間かくらい、手遅れに違いない。


「ろと。おにいちゃんのお膝の上は、すごく、座り心地がよいぞ……?」


 ちらっ。


 ろとままは、そんなことを言いながら、ろとのほうを、ちらりと見る。


「よかったねー。ままー」

「うむ。たいへん座り心地が良すぎるから、これはずっと、まま専用にしちゃおうかなー……? ……ちらっ」


 ついには〝ちらっ〟とか、口で言ってしまっている。


「俺の意見も聞いてくださいよ」

「とれぼーがいいならー、いいよー」

「はぁ……」


 ろとままはため息をついている。

 ろとに〝嫉妬心〟とかを植え付ける情操教育は、無駄に終わったようである。


「しかし、残念なことだな」


 マウスをかちこちやりながら、ろとままは言う。操作はそれなりに上手くなってきている。


「ほら見たまえ。もう角を曲がることだってできるんだ」


 たしかに曲がり角を曲がっている。以前は、ごつごつ、がつがつと、あちこちにぶつかりながらであったので、大幅な進歩といえる。……かもしれない。


「もう操作は完璧だ」


 それはどうだろう。


「操作が完璧になったので、もう、皆と一緒に〝狩り〟とやらに行けると思っていたのだが」


 そのまえにレベルをとりあえず数十は上げないと。

 ああ。まあ……。パワーレベリングの促成栽培も、まあ、〝皆と一緒の狩り〟といえば、言えなくもないか……。


「とれぼーはー、いまー、なにしてるのー?」

「ああ。うん。まあな」


 俺は生返事を返した。

 ろとままのつむじの上あたりにスマホを置いて、ネットを回っていた。

 最近のネトゲには、どんなのがあるのかと、見て回っていたのだが……。


「ままー。狩りに行くー?」

「うん。行こう」

「とれぼー。狩りに行くー?」

「ああ。うん。まあな」

「とれぼー?」


「ろと。おにいちゃんは忙しいみたいだ。二人で行こう」

「う、うん……」


「え?」


 俺はそのあたりで正気に返った。頭のメモリーからさっきまでの会話を引っぱり出してくると――。


「ああ! 行こう行こう! すぐ行こう! いま行こう! ――どうせならワードナーとゾーマも呼ぼう!」


 俺はすかさずスマホで二人を呼んだ。

 あと、たまたま街中を歩いていた知り合いの二刀流剣士のカケルも呼び止めて、なんと六人でパーティを組んだ。

 フルパーティなんて、何年ぶりだろう?


    ◇

 その晩だけで、ろとままのレベルは、五〇も上がった。

 やっぱこのゲーム……。超絶ヌルい……。

 こんなヌルいネトゲ、ほかにはないよなー……。

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