表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/59

たまっちゃう?

「あーもー、トレボーちゃん! くっそカワイイわー! テラオカス!」


 いつもの夜。いつものゲーム内。

 顔を付き合わせて三人でやっているネトゲのプレイをしていると、ワードナーが、鼻息も荒く、そんなことを言いはじめた。


「おいおいおい。正気に返れ」


「だから、あたしの前をひらひらスカート揺らしながら歩いているあんたが悪い! あーもー、オカス! テラオカス!」


 たしかに俺のゲーム内キャラは、森の乙女、ぴちぴちハーフエルフ15歳美少女なわけであり――。

 まあ、テラ犯したくなる気持ちも、わからんではない。

 実際、俺も、このビジュアルに一目惚れして、このゲームをはじめて、迷わず、この外見を選択したわけだし。


「ねー、わーどなー、なにいってるのー?」


「いや。ろと。おまえは知らなくていいことだ」


「突っこむ! 突っこむー! テラ突っこむ!」


「ねー、わーどなー、とれぼーに、なにつっこむのー?」


「ああ。ろと。おまえは知らなくていいことだ」


「ぼくも、つっこんだほうが、いーい?」


「いや。突っこまなくていいぞ」


「ろとちゃん! 一緒にヤルー! 一緒にヤリましょー! ゲラゲラゲラ!」


 ワードナーは、もはやここまで行くと、〝残念なお姉さん〟を通り越して、ただの〝頭のおかしい人〟になっていた。


 まー。事情はわかる。

 今日は週に一回の〝鍋の日〟と決まっている曜日なのだが――。

 なんと、あの鍋奉行――いや、〝鍋邪神〟ゾーマが現れなかった。


 三人で、ちまちまと、辛気くさく、鍋をつっつき――。

 ちなみに〝鍋奉行〟がいないときには、自分が鍋奉行をやらされるということを、俺は初めて知った。

 まあ、このメンバーなら、必然的にそうなるのだろうが。


 ゾーマは、なにか、いま抱えている事業とかで、忙しいらしい。

 そしてワードナーは、ほっぽって置かれているらしい。――いや。二人が〝そういう関係〟なのかどうか、確証は持てていないのであるが……。


 つまり、ワードナーおばさんは、欲求不満でいらっしゃるわけだ。

 このあいだっからそうだったが――。もっとさらに、輪をかけて、欲求不満であらせられる。


「ねえ。トレボー」

「なんだ」


 急にワードナーが、据わった声でそう言ってくるものだから、俺は、びくびくしながら、返事を返した。


「あんたさー。アレってどうしてんの?」

「あ、アレとはなんだ?」


 俺は可能な限り平静な声を返しながら、しきりに目配せを繰り返した。

 やめろ。よせ。いますぐやめろ。

 ここには、ろともいるんだぞ。


 いますぐやめれば、間に合うから。

 俺も全力で火消しに協力するから! だから頼むから!


 という、メッセージを視線通信に込めて、ワードナーのやつに送信したのだが――。


「だからアレよ。溜まっちゃうでしょ。どうしてんの?」


 だめだー。

 じぇんじぇん、通じてないわー。

 ワードナーに、目配せで、なにかが通じるなんて、期待した俺が、バカだったわー。


「あー……。うー……。あー……。まあ……、なー。そのつまり……、だなー……。いわゆる……、ひとつのー……、世間一般的なかんじでぇ……、じゃないかなー?」


 俺は答えた。

 これ以上ないほど明確に、事実を一つも曖昧にすることなく、答えきった。


 ――が、ワードナーは俺の答えが、お気に召さなかったようで――。


「ろとちゃんは、どうしてんの?」


 こんどは、ろとに飛び火してしまった!


「やめい」


 俺は全力で、ろとを守りに入った。

 この欲求不満のオバハンから、純真無垢を、ろとを守れるのは――俺しかいない!


「いつもしてるよー」


 ろとは、あっさり、答えてしまった。


「ええっ!」


 俺は、超絶、驚いた!

 えっ? ええええっ!? い、いつもしてるって――!?


「こっそりしてるよー。とれぼーきづいてないよー」

「えええええっ!?」


 俺は、もっとさらに驚いた!?

 こ、こっそりっ!? 俺きづいてなかったのっ!?


「ここに、しまってるよー」


 ろとは、こたつから立ちあがると、押し入れをあけた。

 ガラスの大きなビンあって、そのなかには、十円玉、五円玉、一円玉……が、ぎっしりと。


「あ……。ああ……。い、いつも、してるって……。ち、貯金ねっ……。そ、そうだね……、こ、小銭はっ……、た、貯まっちゃうよねっ……。あははは……、あははははーっ……。はぁ」


 俺は乾いた笑いを、たっぷりとしてから……。はぁ、と大きなため息をついた。

 あー。びっくりしたー。


 まさかー。

 ろとがー。してるとかー。

 こっそり。とかー。


 よかったー。勘違いだったわー。

 あー。びっくりしたー。


「あーもう! ろとちゃん! クッソかわいいわあぁ! ねー! オカス! オカス!? 犯していいっ!? いいわよねっ!? シコボーくんっ!?」


 ワードナーがエキサイトしている。

 だれだよシコボーって?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新木伸、新連載、同時に3つ展開中!

「薪割りから始める勇者ハーレム」」
http://ncode.syosetu.com/n1853da/

「文明崩壊後の世界を女の子をバイクの後ろに乗せて旅している」
http://ncode.syosetu.com/n1942da/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ