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ふたりが好き
作:みらいすもも



-1-

「ねえ、なんでふたりの人を好きになったらいけないのかな?」

「なにそれ?」

ミホはなにやらまた新しい"ギモン"を
持ってきたようで私は目を丸くした。
いったいミホに何があったのか・・・。

「だってさ。
 みんな人を好きになることは素敵だって言うけど
 ふたりの人を同時に好きになったら
 どちらか一方だけがほんとうの愛だって言うよね。」

「ミホはそうじゃないの?」

「カナはふたりの人を好きになったことないの?」

「今のところは・・・。
 それって単なる二股とかじゃなくて
 気持ちも真剣にふたりが好きってことでしょ?」

私は誰を好きになったの?って
聞きたくてしょうがなかったけど
それを抑えてしばらくミホの話につきあうことにした。
だっていつものことだもの。

「うん。やっぱそれって変かなー?」

「実はふたりが好きなように思えて
 どちらかが本当に好きなんじゃない?」

「そうかもしれないけど・・・。
 でもなんかおかしくない?
 世間も法律も、ふたりの人を同時に愛することは認めない
 けど、ふたりの人を順番にひとりずつ、
 ひとりが終わってから次の人を愛することは認められるでしょ。
 それってどっちが本当の愛だったの?後から愛した人?
 なんでふたり同時はだめで、ひとりずつだったらいいわけ?」

ミホはいつになく少し興奮してたから
ちょっとおどろいたけど、私は思ったことを言った。

「だって愛はひとりずつじゃないとおかしいじゃん?」

「なんで?」

「なんでって・・・ふたり同時だったら裏切りだよ。」

「そうかなー。だってわたし小学生のとき
 としくん と かずくん のことふたりとも好きだったよ。」

「小学生?それってまだ恋愛とかわかってなかったころじゃない?」

「そうかもしれないけど、
 でも、人を好きになった気持ちはきっと素直で純粋な気持ちだよ。」

ミホは少し照れながらもはっきりとした口調でそう言った。

私はミホが何を言いたいのか
わからなかったから短く言葉を返した。

「小学生で?」

「じゃあ何歳からなら愛がわかるの?」

私はミホの思わぬ真剣さに言葉がつまった。
確かに何歳から愛がわかるのか・・・
そんな区切りなんてない。

「ミホ、いったいなにがあったの?
 誰を好きになったの?」

わたしの言葉にミホは首を振った。



-2-

「ううん、そうじゃないのよ。
 あの頃の人を好きになった思い出は
 なんだったのかな〜ってふと思っただけなの。」

あっけらかんとするミホに私は力がぬけた。

「好きな人ができたんじゃないの?」

ミホはさっきの真剣さとはうらはらに笑顔で舌を出した。

「なんだー。期待して損した。」

「ちょっと真剣に聞いてよー!」

もうお互い笑ってた。

私はひと呼吸おいてからミホに言った。

「言ってる意味がまるっきりわからないってわけじゃないのよ。
 永遠を誓い合ったはずの結婚なのに、約半分の人が離婚するって言うしね。
 みんなどれがほんとの愛かわからなくなっちゃうのかな。」

「そう!それよ、カナ。
 どれがほんとの・・・っていうわけじゃなくて。
 もしかしたらすべてがほんとの愛じゃないのかなって思ったの。」

「ええー?すべてが?」

「うん。わたしね。
 恋人への愛と家族への愛は根本的に一緒だと思うの。」

ミホの突拍子もない発想に
私はまたまた声をあげてしまった。

「ええー?それは違うんじゃないかな。」

「じゃあ聞くけど、恋人と結婚したらどうなる?」

「どうなるって・・・家族として一緒に暮らすんでしょ。」

「そう、家族になるのよ。
 恋人の絆と家族の絆はどっちがつよいと思う?」

私はミホの言葉の勢いにおどろいて
とっさに答えが出なかった。

「・・・どちらがっていうのはないんじゃないなあ。」

「そうでしょ。
 だから同じだと思うの。」

「うーん。でも恋愛と家族愛は別で、
 結婚したらそれを同時に感じるんじゃないのかな。」

私は少し考えてからそう答えた。

「愛にもいろいろ種類があるってことでしょ?」

「うん。」

「でも愛には違いないじゃん!」

ミホはなぜかしつように食い下がる。
私はミホが何を言うとしているか
まだハッキリとはわからなかったけど
できるだけミホの気持を考えてみた。

「たしかに家族を愛する人の数に制限はないよね。」

「そうでしょ。」

「でも私はやっぱり別だと思うな。
 恋愛はひとりのひとを愛するものだと思うよ。」

そうきっぱり答える私に向かって
ミホはなぜか悲しそうな表情をして首を振った。

「でもそれっておかしいと思わない?」

「なんで?」

「だって家族を愛する人の数に制限はないのに、
 なんで恋愛には制限があるの?」

「なんでって・・・。ミホ、やっぱりなにかあったの?
 ちょっとおかしいよ。」

私がそう言うと
ミホは急に泣きそうな顔になった。

「ごめん、カナ。わたしね・・・。」


-3-

「わたしね。告白されたの。
 それもふたりから同時に。」

「・・・そうなんだ。」

私は内心やっぱり・・・と思ったけど
それは口にしなかった。

「黙っててごめん。」

三角関係なんて恋愛ではよくある話だもの。
うつむくミホに私は言葉を返した。

「まあいいけどさ・・・。
 そんなの隠さなくたっていいのに。」

ミホは顔をあげて少し微笑んだ。

「だって先に言っちゃったら
 カナの本当の気持ちが聞けないかもしれないじゃない。」

「うーん。まあそうかもね。
 ということは・・・ふたりともが好きってことなの?」

「そう、でもカナはどっちかに決めろって言うでしょ?」

ミホの先制攻撃に私はすぐに言葉が出なかった。

「・・・うん。でも現実的にふたりともは選べないよね。」

「やっぱり、そうなのかな。
 おかしいのは世間の恋愛のルールじゃなくて、たぶん私の方よね。」

恋愛のルール・・・ミホのその言葉が
私の心に引っかかったのはその時だった。

「ルールっていうか・・・」

それははじめから決まってるものじゃないの?
そう続けようとして私は言葉をとめた。

ひとりのひとを愛することが当然と思っていた
けれどそれはいったい誰が決めたルールなのか・・・
はじめから決まっているなんて、だれが決めたのか・・・

ミホは私が言葉につまって考え込んでいるのを
不思議そうな目で見つめていた。


-4-

「カナ・・・?」

私はミホの呼びかけにハッとして
あわてて言葉を返した。

「ミホ、ごめん。
 もしかしたら、そんな恋愛もあるのかもね。
 でも・・・。」

急に私の様子が変わったことに
おどろいいたのかミホもただ短く聞き返した。

「でも・・・?」

もしかしたら一度にふたりの人を好きになる
そんな恋愛だってあるかもしれない

「でも・・・実際ふたりの人を真剣に
 好きになったとして
 どうすればいいのかな?」

これはミホが私に聞きたかったことかもしれない
けど問わずにはいられなかった。

「正直にそれを伝えたらだめかな?」

ミホは意外とあっさりそう答えた。
正直にふたりに伝える・・・
それで納得する男性がいるとは私には思えなかった

そう、もしかしたらふたりの人を同時に好きになることはあるのかもしれない
でもそれが現実に結びつくかどうかはまた別問題なのだ

「ふたりの人と結婚することはできないし、
 家族や子供だって、ふた家族を持つことになるなんて
 やっぱりおかしいよ・・・。」

私にもミホの言っていることが
少しずつわかるような気がしてきていた・・・
でも・・・でも・・・でも・・・なのだ。

やっぱり一度にふたりの人を好きなること
それ自体がおかしいことじゃないのだろうか?

しばらくふたりとも黙っていたけれど
ミホは少し微笑んで言った。

「離婚して再婚したら
 ふた家族の子供を持つことだってあるじゃない?」

「それは再婚すればね・・・。」

「なんで順番だったらよくて
 一度だったらだめなの?」

わたしは話が
また繰り返しになるような気がして
考え込んでしまった。。。

するとミホはさらに続けた。

「わたしね、
 恋愛が一度にひとりだけっていうのは
 みんなのとっても深い思い込みだと思うんだ。」

「お・・・思い込み?」

私は思わず声が大きくなった。
誰もが当然と思っていることが
思い込みで片付けられてはたまらない・・・。


-5-

「学校の教室を思い出してほしいの」

「教室?」

「そう、ある教室でね。
 先生が生徒たちみんなを愛しているとするでしょ。」

「・・・うん。」

私にはミホの話が全く見えなかったけれど
ただ頷いて続きを聞くことにした。

「生徒全員が先生に話しかけたとするよね。
 先生は愛している生徒全員の話を聞くことはできるけれど
 一瞬一瞬ではひとりずつの話を聞くことになるでしょ。
 だって目や耳はひとつしかないからね。」

「それで?」

私はぜんぜん意味がわからず、
ただ先を促すしかなかった。

「人はね。一度に何人の人でも愛することができるけれど
 その愛を示すのはひとつひとつ順番にしかできないのよ。」

「まってよ!それじゃ私が言ってることと同じじゃない!」

私はミホの言ってることがわからなかった。

「そうじゃないのよ。先生はね。
 生徒みんなが好きだよって堂々と言えるのよ。
 ただ生徒と手を繋ぐときが順番なだけなの。
 それはちっともおかしなことじゃないでしょ。」

「・・・でも生徒を好きなのは恋愛じゃないでしょ?」

「そう、だから私は最初に言ったの。
 恋愛も家族愛も、愛ということに変わりないよねって。」

「結局どういうことなの?」

「生徒はね。先生が他の生徒の話を真剣に聞いているのに
 自分の話だけは真剣に聞いてくれなかったら不安になると思うのよ。
 でもこの先生はみんなを愛しているから真剣にみんなの話を聞くの。
 ただ話は順番に聞くしかないの、たとえ1分おきの順番でもね。」

「意味わかんない・・・。」

ミホは真剣そのものだったけど、
この時、私はとても困ったような顔をしていたと思う。

「カナはひとりの人が終わって順番に恋愛するのはいいと思ってるでしょ?」

「まあね。」

「じゃあ、そのひとり目とふたり目の間隔がどれくらいあればいいと思う?」

「ひとり目の人と別れた後ならどれくらいでもいいと思うけど?」

「じゃあ、もしそのひとり目の人と付き合ってなければ、
 次の人を好きになるのにどれくらいの間が必要?」

「そんなのどれくらいでもいいんじゃない?いつ誰を好きになるかは自由だもの。」

「じゃあ私が一分おきにいろんな人を好きになってもいいよね?」

「・・・でもそれじゃずーと誰とも付き合えないじゃない。
 結婚だってできない。」

「そこに深い思い込みが生れたのよ。
 付き合うとか結婚するとかにね。」


-6-

今日のミホの話はめちゃくちゃだった。
私はいまだに意味がわからないという仕草で
首を振ると同時に、それでもミホに笑顔を見せた。

私はミホの持ってきたギモンに
いつも真剣に向き合うようにしている。

そしてもう一度ミホの言葉を
心で真剣に聞こうと耳を傾けた。

「ねえカナ、恋愛っていつ生れると思う?」

「・・・いつって人を好きになったときでしょ。」

「そう。人を好きになったとき恋愛が生れるよね。
 決して付き合いはじめたときとか
 結婚を決めたときじゃないよね?」

たしかに恋心は付き合う前からあるもの
そんなのあたりまえ・・・?

「あ!でもまって。人によっては付き合いがはじまったとき、
 つまりふたりの想いが一緒になったときからが
 恋愛のはじまりだって言う人もいるんじゃないかな。」

「そうかもね。でも
 人を好きになる、それこそが恋のはじまりでしょ?
 恋愛で一度にふたりの人を好きになっちゃいけないと思うのは、
 もう恋愛ははじまってるからじゃないかな。」

「そうね。私的には恋してる瞬間から
 もう恋愛ははじまってるって思うかな。」

「愛に約束なんていらないと思わない?
 付き合うとか結婚するっていうのは
 私はあなただけを愛しますって約束してるようなものなのよ。
 みんな恐いんだろうね。
 愛した人がずっと自分だけを好きでいてくれるかとうかが・・・。」

結婚が愛の約束?
結婚の意味はそれだけじゃないと思ったけれど
私は別のことを聞いた。

「じゃあミホは結婚した人が、他の誰かを好きになってもいいの?」

「そこで学校の先生を思い出してほしいのよ。
 先生は生徒を愛している。
 でもそれは生徒たちと約束したからじゃない
 そして先生はひとりの生徒だけを愛してるわけじゃないでしょ。」

私は首を振るしかなかった。

「私、やっぱり恋愛と普通の愛は別だと思うな・・・。」
 
ミホはなぜか頷いて話を続けた。

「そう、恋愛だけなのよね。
 付き合うとか結婚するとか、
 なぜか決まりを求めるのは・・・。」

「それが自然じゃないの?」

「自然なわけないよ。
 じゃあ、なんで結婚で永遠の愛を誓うのが自然なのに
 離婚っていう法律まであるの?
 不倫や浮気だってそう。
 どれほどたくさんの人が自然なはずのことが
 できないか・・・その訳を考えてみてよ。」


ミホがなにかとんでもないことを
言ってるのはわかる・・・
けれど今まで信じていたことが
思い違いだったなんて
そんなの納得なんてできるわけなかった。


「じゃあ、
 付き合うとか結婚とかが
 もともと間違いだったって言うの?」



-7-

今度はミホが首を振った。

「ううん。結婚は愛を形にしようとする大きな試みだと思うんだ。
 でもそれが大きな思い違いになったと思うの。
 たぶんみんな心の奥ではわかってるんじゃないのかな。」

「なにを?」

「人が一度にたくさんの人を好きになることは自然なことだって・・・。」

「そうなの・・・かな?」

そう、百歩譲って人はもしかしたら
恋愛で一度にふたりの人を好きになることがあるのかもしれない。
でもそれが自然なことだなんて・・・。

「無理もないと思うの。
 だって産まれたときからずっとそうじゃないって教えられてきたのよ。
 両親はもとより、学校、本やドラマや映画、それに法律まで、
 まわりのすべてが恋愛は一度にひとりじゃないとダメだって言っているんだから。
 でも結婚でうまくいかない人がいるってことだけはごまかせないのよね。」

「でも離婚の理由は不倫だけじゃないでしょ?」

「もちろんそう。
 でもなんで永遠を誓い合ったはずの愛が
 うまくいかなくなるのか不思議に思わない?」

「そんなの・・・人間だって完璧じゃないし。。。」

「それは人の心が未熟なわけじゃなくて
 今の結婚の制度が人の愛に追いついていないだけだと思うの。
 人が人を好きになる、そんな自然なことが制限されるから
 おかしなことになると思うの。」

「じゃあ不倫がOKだったらうまくいってたってこと?」

「もし・・・、
 この世の中が一度に何人の人と恋愛しても
 それは自然なことだってみんなが思うようになったらどうなると思う?」

「裏切りだらけになるんじゃない?」

「そうじゃないのよ。それでこそ人は自然な愛を表現できると思うの。
 自然な愛が制限されるから、おかしなことになるのよ。
 結婚した人が、他の人を好きになってなにがわるいの?
 愛する人がたくさんの人を愛する心を持っている・・・
 それは私にはステキなことだ思うの。」

「ミホ本気?」

私はミホが本気で、そして真剣に話してるのは
とっくにわかっていた。でもそう聞かずにはいられなかった。

「うん。ごめんね、カナ。私やっぱり変よね。
 でもこうやって聞いてくれるのはカナだけだもん。」

私はあわてて首を振った、今度は違う意味で。

「ううん。私、いつもミホの話を楽しみにしてるよ。
 でも今日のは正直おどろいた。」

ミホは安心したように笑って続けた。

「愛ってさ。結婚しないと確かめられないような
 ちっぽけなものじゃないと思うの。
 結婚は二人を繋ぎとめておく鎖じゃないでしょ?
 結婚は二人の愛を確かめるためのものじゃないでしょ?
 
 本当にそこに愛があるのなら
 結婚なんかしなくても
 ふたりはもう結ばれているのよ。

 そしてそれはひとりとは限らない
 愛する人は限りなく増えていくもので
 ひとりずつ交替していくものじゃないと思うの。」

ミホは笑顔なのに、なぜか涙を流していた。

たぶんミホは自分のこんな考えが
だれにも受け入れられるわけないって
心の中で悩んでたんだと思う

私だから話してくれた
そう誰かに聞いてほしかったんだと思う。

私は深く考えた・・・。


-8-

愛する人は限りなく増えていくもので
ひとりずつ交替してくものじゃない・・・。
それが人としてステキなことだと言うミホ。

でも私にはまだ理解できないギモンがあった。
学校の先生の話・・・それに根本的なこと・・・

「ねえミホ?、
 結婚してうまくいく人だっていっぱいいるよね。
 その人たちはどうなの?」

「その人たちは
 お互いが確かめなくったって
 ふたりの間には決してなくならない愛があることが
 わかっているのよ。」

「でもそれは、お互い他の人を好きにならずに
 一途に思い続けているってことよね?」

「ううん。他の人を好きになったことだって
 たくさんあったと思うの。
 けど、ふたりは相手が他の誰を好きになっても
 決して文句を言ったりしないと思うんだ。」

「・・・私にはやっぱりそこが受け入れられないみたい。」

「それはね。
 相手が他の人を好きになったら
 自分への愛がなくなると思うからでしょ?
 次に好きな人ができたからって
 ふたりの愛がなくなるなんてどうして思うの?
 ただ愛する人が増えただけなの。」

愛は増えるもので交替するものじゃない・・・
ほんとうにそうなのかな。

「そうねー。お互いそれだけ心が広くて
 ゆったりしていたら、それでもうまくいくのかもね。」

私は心が広い・・・そう言ったけれど
相手が他の誰を好きになってもいいなんて
それってその人のこと本当に愛しているのだろうか?と思った。

「たぶんカナの思っていることは
 愛を制限する、呪縛なのよ。
 愛は本来どこまでも自由なもの、そうじゃない?」
 
私の心を見透かしたように話すミホ
私は呪縛にとらわれているのだろうか・・・
これはミホが言う深い思い込みなのだろうか・・・

愛は本来どこまでも自由なもの・・・

もしかして、愛を醜くしているのは
私たちの方だったのか?・・・


-9-

ミホはもう泣いていなかった。
晴れ晴れとした笑顔になっていた。

これ以上
私に話すことはないのかもしれない。

ミホは私にギモンをぶつけたかった
でもミホはもう自分の答えを持った上で
ただ話が聞いてほしかったのだとわかった。

後は私がどう受け止めるか
それだけだった。

「ねえ、学校の教室の話をもう一度教えてくれる?
 あれ、何が言いたかったのか・・・。」

「ごめん、わかりにくい例えで。」

そう言うとミホは頷いて続けた。

「人は一度にたくさんの人を愛することができるとしても
 手を繋ぐのは順番にしかできないよね?」

「うん。」

「手は順番にしか繋げない・・・。
 でも次の人と手を繋ぐために、今繋いでいる手を離したからといって
 手をはなした人への愛がなくなったわけじゃないでしょ?
 それに先生にとって手をつなぐ順番だって関係ないの。」

「・・・なるほどね。それは愛を交替してるわけじゃなくて
 一度に愛を示せるのはひとりずつだけってことね。」

「そう、これも、
 愛は一度にひとりだけだと思い込んじゃった
 原因じゃないかなって思ったの。。」

私はミホに笑ってみせた。

「ミホの言ったこと、変じゃないと思うよ。
 ただ私にはまだ時間が要りそう。」

「わたし、告白されたふたりに
 正直に言うよ。どちらも愛してるって。」

「どうなったか教えてね。」

「それともうひとつ・・・」

「なに?」

ミホが急にあらたまったから
私は少し身構えてしまった。

「カナのこと愛してるよ。」

「ははは。そんなのわかってるって。」

照れずに言うミホに
あわてて返した言葉。

でも私はミホのことが好き。
それは間違いない。

(おわり)















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