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スベテアナタ

作者:澁谷一希
 キキィィィィ
 その日は雪が降っていた。真っ白い雪が。1日中降っていたので多少積もっていた。8月の東京。
 東京だが光を放つ物はたまに通る車のヘッドライトだけで視界は0だった。なぜ彼女はそんな中、外に出てしまったのか。

「あっ、こんな時間。」
 10時を回っていた。外は未だに雪は降り続いていた。
「こんな雪だし泊まって行けば。いっちゃん。」
 川島伊代菜(かわしまいよな)
は私の家に遊びに来ていた。帰ろうとするいっちゃんをお母さんは止める。私もそれに賛同した。しかし、いっちゃんは帰ってしまった。迷惑だ、親も心配している等と言って。ならしょうがないとお父さんがいう。
「送って行くよ。」
 私は言う。
「もう暗いし、一人で帰れるから平気だよ。ありがとう、まなちゃん。」
 いっちゃんはそう言う。いっちゃんは一度言うと願でも変えないので。仕方なく一人で帰した。
「平気かな?真香お姉ちゃん。」
 妹の葉月がスカートの端を引っ張って心配そうな目で訴える。
「大丈夫だよ。いっちゃんは強いから。」
 正直私も心配だった。いつもこんな時間に一人で帰るのだが、何せ異常気象の雪。違和感が胸を締め付けた。
「明日も学校だしもう寝よう。」
 今日はもう寝た。無意味に抱えた違和感と共に。明日は雪合戦して、鎌倉作って。そんな期待もあった。

〜悲しいのはあなた?〜
 翌日、朝の学校。校庭は銀に光り、今にも遊びに行きたい気持ちをおさえて朝学活を始めた。
 なぜかいっちゃんの机の上には白いユリの花が一輪悲しそうに頭を垂れていた。ものすごい違和感と不安と込み上げてくる熱い気持ち。しかし、ただのイタズラ三人組の仕業かも知れない。私はそう信じたかった。
「皆さん、大事なお話しがあります。」
 担任の佐原(さわら)先生が教室に入って来て一番始めに放った言葉。不安が募る。今にもこの胸が弾けてしまいそうだ。
「昨日の夜遅く、ザァザァザァさんは事故に合いました。」
 体すべての力が無くなる。熱い気持ちは今溢れた。崩れたダムのように。
 私はそのあと気を失ったようで目が覚めたら夕方の保健室だった。ふと思い出す今は無き友達。また気持ちが一杯になる。
「大丈夫よ。いつでもそばにいるわよ。ザァザァザァさんは。」
 保健室の先生(通称川ちゃん)がそんな私に言ってくれた。その言葉が唯一の救いだった。
 あまり遅くなると視界が無くなるので私は早いうちに家に帰る事にした。
 夕方なのに木々のせいか、暗闇に近かった。帰り道。いっちゃんの家の前を通り過ぎた。お線香の香りが風に乗って私をくるむ。私は雪道を歩こうとした。
“ねぇ 一緒に行こう 楽しいよ”
 私は振り返った。いっちゃんの家からいっちゃんの声が聞こえた。しかし、そんなわけない。もう、いないのだ。 そのまま無事に家に着いた。小さい村ゆえ、いっちゃんの死は村人全員に伝わっていた。もちろん家族にも。
 私よりもショックを受けていたのは葉月だった。初めての友達の死は小学二年生の子にとっては受け入れられないのが普通である。私は哀れんだ。学校にたった十人の仲間たちの一人が目の前から消えたのだから。
 いつの間にか次の日の朝になっていた。夢だったのか。と考えたが家族が黒い礼服を来ていたから目が覚めた。
 今日はいっちゃんのお通夜。溢れる悲しみを堪えて。私も黒く体を染めた。
 今日も季節外れの雪が降っていた。深々と降り続ける白い玉は私の気持ちとは裏腹に真っ白だった。ただ、たまに見える土色に変わった雪を見つける私はこのあと降りかかる、それはとても見たくない雨に打たれるのだった。
 食事が配られる。いっちゃんは今なにを思っているのだろうか?私は食べる気になれず縁側の隅に座っていた。
 ため息ひとつ。本当にいなくなってしまった。今隣に寄り添って座っているかのように思える。自分というものが無くなった錯覚さえ覚える。
 お腹の虫が鳴く。食べに戻ろう。
 襖を開けた。
「ひき逃げ何ですか!?」
 大人だけの空間に響き渡った声。私に気が付いた人達は開いた襖を閉め、私を座らせた。
「今聞いた話しは誰にも言っちゃダメよ。」
 私は静かに頷いた。その時だ。私から悲しみを奪っていく者。悲しみよりも憎悪が強くなったのも。
 いっちゃんの火葬の日。私は涙でいっちゃんの最後の姿を見ることが出来なかった。
 次に会ったのは白い白い骨の状態だった。
「可哀想に。まだまだ若かったのに。」
 隣のおばさんが私のお母さんに言う。
「ザァザァザァちゃん。元気でね。」
 今気が付いた。いっちゃんの名前がノイズのようなもので掻き消される。あの時も。そういえば、死んだ後のいっちゃんを一回も見ていない気がした。
「ちょっと待って!」
 私のお母さんが叫んだ。
「これ、ザァザァザァザァザァザァ」
 私は頭を掻き回すように、私をくるむ何かが…
 目が覚めた。ここは…。いっちゃんの家だ。まだ頭が痛い。この家には誰もいない。とりあえず、外に出た。
 白銀の世界は今は雨によって無くなっていた。雷まで泣いていた。
 そして目の前には赤いランプを光らせている車が止まっていた。
 火葬場の時のおばさんの家だ!
 お母さんがいた。
「どうしたの?」
「おばさんが無くなっていたんだって。どうしたのかしら。」
 死んでいた。殺されていたのだ。誰が。
ザァザァザァザァザァザァザァザァ
 またノイズだ。今度ははっきりとしてきた。
“カエシテ……ワタ…シ…ダ…カエ…テ”
 意味がわからなかった。しかしそれは間違いなくいっちゃんの声だった。
「うるさい…うるさい、うるさいうるさいうるさい!」
 私は逃げた。自分の家に。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
 葉月がいた。お母さんがいない留守番をしている。それを無視して、部屋に入る。
 布団にこもる。
「うるさい。来ないで。あなたは死んだのよ。」
“死んだのはどっちよ”
 私は思わず布団から出た。部屋は赤い血の手が無数に張り付いていた。
 私はまた逃げる。次はどこへ?学校。学校なら。
 冷たい。赤いランプによって雨が赤く見える。それでも走り続けた。
 転んだ。何かにつまずいた。そんな事はどうでも良い。足にからまったからとにかく足から外し、捨てるのも忘れ走り続けた。
 着いた。どんな日でも保健室だけは開いている。
 ドアをノックした。
「どうしました?」
 入った。顔を見ただけで落ち着く。
「殺される。」
「そうね。私もそう思うわ。」
 私は見た。川さんの後ろにいっちゃんがいるのが。
「私が終らせてあげるわ。」
 いっちゃんは私の腹部を注射を打った。
「終りよ、まなちゃん。殺人、死体交換の罪で殺します。」
「何を言っているの?いっちゃん。あなたは死んだのよ。一人じゃさみしいの?」
 理解が出来ない。いっちゃんは何を言っているの。
「真実を話すわ。一昨日の夜。私は夜遅くに帰ったわ。そこにまなちゃん、あなたが着いてきた。二人で帰ってたわ。そこに車がきた。川さんの乗っていた車。まなちゃんを跳ねたわ。違う。あなたがあたりにいったわ。花をとりにいって跳ねられたの。そのあと、意味がわからないは。川さんはあなたを病院につれていったけど遅かったの。火葬のとき。驚いたわ。焼かれた骨があなたのじゃなくて、葉月ちゃんのだとは。あなたは、どうしてか、ここにいて、おばさんを殺して、葉月ちゃんも殺したわ。雨の日の火葬場。」
 おかしい。話がわからない。さっき葉月は生きていたし。
「あなた部屋に入ったでしょう。自分の。あの手は葉月ちゃんのものらしいわ。警察の人が言っていたの。そこで殺された。あなたによって。それを知られたおばさんも殺した。見られでもしたのでしょう。あなた誰なの?」
キャハハハハハハハハハハ
「まだ死にたく無いの。わかる?あなたも一緒に行きましょうよ。」
 さっき拾ったナイフを振り回した。
「あなたもう、死んでいるのよ。」
 しゅわぁと煙が出始めた。
「溶ける!溶ける!」
 終わった。消えて無くなった。
 死んだ後でも。動きたかったの?さみしいの?ノイズの正体はあなだったのね。
 スベテアナタ
 マダイキタカッタ

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