滅びゆくもの達
「――おい、大丈夫か?」
まだそれなりに元気のあるものが声をかけた。しかし、返事が出来る状態のもの達は少なかった。
「うう……。な、なんとか……」
弱々しい声で返事が返って来る。今にも消えてしまいそうだ。
「全くなんてヤツなんだ。俺達の大事さも知らずに……」
「しょうが……ないさ……。世の中、豊かになっちまって……後のことなんて考えずに……」
一番古いものが言った。
「俺達はこんなに汚れて、菌に蝕まれて……」
「もうダメなものも大勢いる……」
「二十の同胞のうち、半分以上がやられちまった……。俺らももう長くはないだろうよ。何て事だ……」
「情けないが、もう抜けたいよ……」
「ああ……」
「それもそうだな……」
「――痛っ!!」
古いものが叫んだ。
「おい、どうした!」
「……やられた……。お先にし、つ…れ…」
声はみるみるうちに小さくなり、やがて途絶えた。
「おい!!」
返事はなかった。
「…………」
重い沈黙が、漂う。
「なんでこんなになるまで放っておいたんですか!?痛かったでしょうに」
「は、はァ……」
「全くもう……。これでは、全部抜いて入れ歯にした方がよっぽどましですよ!あなた、ちっとも歯磨きをしていなかったでしょう」
「ぜ、全部ですか……」
「これでは歯がかわいそうですよ。当分通ってもらう事になりますからね」
――歯医者とまだ若い患者は、そんな会話をするのであった。
読んでくださってありがとうございました!普段の暁とは180度違う雰囲気の作品にしてみました。クスっと笑って頂ければ嬉しいですvv