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燃える魔女と魔女の話

作者:ムスカ
 ツァーロウは、屋敷につけられた火をただぼんやりと見ていた。彼女は魔女だった。鈍い色の髪と道化のような目をした、炎の魔女。その彼女でも操れないものがあると、今初めて知ったところだった。
「ツァーロウ」黒猫が彼女を呼んだ。「これからどうするの?」
 猫のほうを見ると、尻尾以外が消えていた。地面に落ちたまま、くねくねと動いている。
 魔女は、魔法を使って黒猫を蛇に仕立てた。
「まずは食事をするよ。黒いシチューが食べたいから」
 ツァーロウは蛇に手を差し伸べて答える。
 手、腕、肩へと上る蛇にツァーロウは、「エコ」と新しい名前を与えた。応えるように目に青く色が灯り、蛇は歓喜の声をあげた。
 燃える屋敷と、燃える人々をそのままに、ツァーロウはシチューを王の厨房から盗んだ。木の根に腰かけて食べ始める。
 屋敷にはツァーロウともう一人魔女が住んでいた。彼女はティティリーという名だ。
 ティティリーは邪悪で、殺されても仕方のない魔女だった。ツァーロウも自分の猫を何度食われたか分からない。
 その所業に、怒りに満ちた村人たちが屋敷に火をつけたのだ。ティティリーは炎の魔女を頼りにしたようだったが、何故だかツァーロウの魔法が上手く働かなかった。
 ティティリーは丸焼けだ。だが、まだ生きている。魔女はそう簡単に死なない。そして、その死の腕でもって村人たちに火を分け与えている。
「助けなくていいんだ」
 お人好しの蛇が呟く。魔女は首を振った。
「みんな燃えてるよ」「うん」
「いいの?」「お前を体と尻尾に分けたのよ」
 蛇にしては苦い表情を浮かべ、エコは黙った。
 理由はそれだけではない。ツァーロウが集めていた世界中のありとあらゆる種類の枯れ葉も燃えてしまったからだ。本の中に埋めて、この世で一番の図鑑を作っていたというのに。
 彼女が作ったもので、燃えてしまったものは、箒に、花瓶。干したいちじくに、螺鈿の机。黒毛の敷布に、魔女の姿の人形たち。
「ティティリーだ」
 火に巻かれた魔女の姿がちらりと見えた。
「本当にツァーロウは変なもの作るよね」
「あんな予定じゃなかった」
 もっと美しく、もっと狡猾で、気の良い魔女を作るつもりだったのだ。出来上がったのは、機嫌の悪い癇癪持ち。
その後の試作たちは全てティティリーに壊された。全ては、彼女の足の甲を高くしてしまったことにあるのだと思う。苛立ちと短気の原因。
 しばらくしてエコが口を開く。「嘘ばっかり」
 何に対してなのかは問い返さなかった。
 ツァーロウは立ち上がり、尻の砂を払う。火の熱が強くなっていた。炎は全てを焼き尽くすだろう。巻き込まれる前にとツァーロウは箒で空に飛び上がった。      

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