<<コナン誕生日記念小説
〜私だけの騎士様〜>>
私は愛してしまった。
幼い彼の事を…
これは罪?イケナイことなの?決して食してはならない禁断の果実?
でもどうしようもなくあなたを愛してるの…。
――時の流れのように…
――水の流れのように…
この気持ちはもう留められない。
あれ?誰かの気配がする……。
え…?誰…?
私の腕を掴むのは…。
この先にいるのは新一?私の名前を呼ぶ声…。
必死に私に手を振っている。
でも…駄目…。
小さいけど逞しい手が離してくれないの…
まるで、
おまえを行かせてたまるか!
って感じに…。
あなたは誰なの?姿を見せて…。
もしかして、私の愛する彼方?
私を呼ぶ声量を強める新一…。
私の手を掴む力も強まっていく…。
ん…、この手の主の顔を被っている靄は晴れないまま…。
でも…このあたたかい体温は……この安らぎをくれるやさしい体温は……
―――――彼しかいない………
「…コナン君?」
私は愛しい人の名前を呼ぶ。
このなにもない空間にその声は飲み込まれていきそうだった…
反応がなく私は不安になる。
「…コナン君…だよね?」
「…うん」
小さな小さな声……。
でも、私の耳には…いや、心にはすごく雄大に響き、染みこんでいった。
私の待ち望んでいた声だ…彼だ…。
彼が言葉を発した後、徐々に靄が晴れていく。
―――見える……嗚呼、愛しい 愛しい 愛おしい…彼の姿が…。
彼は騎士の格好をしていた。
とてもとても可愛らしくて、格好良い…私だけの騎士様…。
その優しい瞳で見られただけで心がとろけてしまいそう…。
―――ドクドク
私の心臓が踊りだす。
あなたの不思議なスカイブルーの瞳に吸い込まれそう……。
返事をしたきり口を閉じて暫く私を見つめていた彼がやっと口を開いた。
「蘭姉ちゃん……むこうに新一兄ちゃんがいるよ…?行かないの?」
不思議そうな声。
その声に私はハッとなる。そして私はそっと顔をしかめた。
コナン君……新一はとても遠いんだよ…。
いつも近くにいて私を支えてくれていたのはコナン君だった…。
彼がこんなに大きな存在になっていたなんて…。
新一は私のことなんかどうでもいいんだ…。
いつのまにか、私の頬には涙がつたっていた。
コナン君は私のそれを見て慌てふためく。
それがとても可愛らしくて、堪らなく、おもわす、微笑みが溢れた。
「…?」
コナン君は、キョトンとして首を傾げる。そんな彼の動作一つ一つが愛おしい。
私…どうにかなっちゃいそう。
「蘭…姉ちゃん…?」
ボーイソプラノの心地よい声…。
眼鏡の中で大きく見開かれた空の青。
――よしっ…言っちゃえ…!!
「もう、いいんだ…私…」
「…え?」
彼の空がゆらりと揺れたのが分かった。
そんな彼の空…瞳を見て思った。
――今、私は大変なことをしようとしている…?
でも躊躇いなどない……
もうあなたの事を知らなかった頃には戻れないから…
「新一なんて…いらない。彼方が好きなの…。愛してるのよ…///」
「…///!?」
言った瞬間、涙が溢れた。そして耐えきれず、声を上げて泣き出す。
幼く優しい手が私の頬にそっと触れた。
――嗚呼温もり……
「…僕も好きだよ…蘭姉ちゃんのこと…」
え…!?嘘…
信じられない‥‥。
私の永遠の片想いだと想ってた…。
「…本…当…に!?」
「うん…////」
幸せ…。彼は照れながら、私に愛の呪文をかける…。
あ…涙が出てきた…
嬉しくて…
幸せな時も涙って出るものなのね…
「う…嬉しい…」
私の今の正直な気持ち。
「コナン君…!」
私は目の前の小さな騎士を思いっきり抱きしめた。
「…あっ…///」
フフ、桃色のほっぺが可愛い。
なんか…こうしてると落ち着くし…安心する…。
苛めちゃいたい…
食べちゃいたい…※
奪っちゃいたい…
私のものにしちゃいたい…
自然に笑みが溢れて、抱きしめる力を強めた。
彼の温もりが心地いい…
心臓の鼓動も…
呼吸のリズムも…
優しい声調も…
…彼のすべてが心地いい。
もう何もいらないの…あなた以外は…。
すべてを捨てるわけじゃない…。
こんな感情を抱くのはこんな二人だけの時間だけ…
「蘭!蘭!」
新一…まだ私を呼んでいたんだ…。
「お願い…もう止めて!!!
新一のこと今でも好きだよ…。でも、遠すぎたの…。
コナン君はいつも傍にいてくれた…。私を支えてくれた…。
だから、私はコナン君のこと選んだの…。」
「蘭!蘭!」
「お願い…もう止めて!
…耳障りなの…!!!」
あっ…。
今、私…酷い事言った…。
ごめん…新一…。
これは、新一に対する裏切り…?許されぬ罪…?
分からない…。
けれど、だけど確かな真実は一つ…
私は今目の前にいる10歳年下の少年…江戸川コナン君に恋をしているということ…。
新一が近づいてくる…。
いや…止めて…来ないでっ…!!
「…蘭姉ちゃん!」
!?
小さい温かい手に腕をつかまれたのを感じた。
「コナン君…!」
振り向くと、そこには…愛しい小さな騎士と丁寧に手入れをされた美しい白馬がいた。
「乗って!!」
私は、コナン君に手をひかれ、その馬に乗り込んだ。
「いっけぇ!!」
二人の声が重なる。
走りだす。
風が気持ちいい。
目の前に青々とした草原が広がる。
小鳥のさえずり、川のせせらぎ…
そして、あなたの背中の温かさ…
私を縛り上げるすべてから解放された…
二人だけの時間…
「…コナン君…」
甘えた声…。そんな声が出せるのは、コナン君の前だけ…。
「なぁに…?」
キュン…優しいボーイソプラノ…。
多分、彼の優しいその声も私だけ…。
「私たちどこに向かっているの?」
「新一兄ちゃんが追って来ない場所まで…」
これは愛の逃避行…?
二人だけの居場所を探しだす旅…
―――パカパカ
二人だけのリズム…。
どこまでも走っていけそうな気がしてきた。
小さい筈のコナン君の背中がとても大きくみえた…。
*****************************
「う〜ん…」
眩しい…。
なんだろう?
太陽の光…?
「…あれ?ここは…」
私の部屋…。
やっぱり夢だったのか…。彼の温もりも…
彼の愛の呪文も…
みんな夢だった…。
少し切ない…。
私は、少し余韻に浸ってから、お気に入りの服に着替えはじめた。
………。
私の机の上…。
ふせられたあの日の写真…。トロピカルランドで新一と撮った写真…。
これ以上見ているのが辛くて昨夜…寝る前に倒しておいた写真…。
―――コトッ
なんとなくそれをおこしてみた。
幸せそうな新一と私…。
目頭が熱くなる…。
今日は5月4日…
「新一…誕生日おめでとう…」
……。
そうだ、電話…。
「おかけになった電話は…」
―――ピッ
切ないよ…。やっぱあなたは遠すぎだよ…。
私、もう限界だよ…。
私は、涙をこらえながら元通りに写真をふせた。
その瞬間…涙が溢れた。
こんな想いをするくらいなら、夢の中でコナン君とあのまま走り続けていたかった…。
やっぱり…私の心を満たしてくれるのは…
やっぱりコナン君だけ…。
「蘭姉ちゃーん!起きてる〜?僕お腹すいたよ〜」
…///!?
愛しの騎士様の声…。
突然のことで私はうろたえた。
新一のことで泣いてたなんて思われちゃう…。そんなのイヤ…。
…?そんな気持ちになるのは…なぜ?
あ…こっちに来る…。
もう隠せないよ…。
「蘭姉ちゃ…」
彼の声が途中で止まった。心配そうな顔で…上目遣いで私を見上げていた。
「どうしたの…?何かあった?」
夢でも見た優しい心地いい音色…。
胸に響くよ…。
夢の続きが見られそうだよ…。
私をいつも元気づけてくれたのは…他でもないコナン君…
私が選んだ人…。
私の顔は途端に笑顔になった。
「?」
「コナン君大好きっ!」
「…えっ?」
私は、夢で感じた温もりが欲しくてキュっとコナン君を抱きしめた。
「ら、蘭姉ちゃ…///」
クスッ可愛い…。
はぁ…この温もりだ…。私が欲しかったのは…。
コナン君は恥ずかしいんだか…興奮してるんだか…
喜んでるんだか分からない顔をしていて可愛くて仕方ない…。
心地いい…。
もう少し夢の続きを見させてね…。
今日は5月4日。
コナン君の誕生日…。
奇しくも新一と同じ日にこの世に生まれた…。
お互いの心臓の鼓動…
お互いの躰の温かさ…
お互いの呼吸のリズム…
これは今ここに生きている証…。
「騎士様…」
「…え?」
私は優しく抱きしめる力を強めた。
「生まれてきてくれて…ありがとう…」
さあ、騎士様…この唇に証を…。
「騎士さ…いや…コナン君…キスしていい?」
「…蘭…///」
あら?呼び捨て?
まぁいいわ…今日は特別に許してあげる。
二人の唇が重なる…。
幼いけど熱を帯びて柔らかい唇…。
嗚呼…溶ろけそう…。
これは罪…?イケナイこと…?
お互いを求めだしたらもう止められない…。
彼とのはじめてのキスはしょっぱく切ない塩の味で…
彼との2度目のキスは甘く甘い罪の味…。
「生まれてきてくれて…ありがとう…
誕生日おめでとう、コナン君…」
これは2度目の台詞…。
そしてこれは3度目のキス…。
やっと二人の居場所を見付けたね…。
でもまだ二人で草原を走り続けよう…。
ずっと傍にいてね…。
私だけの騎士様…。
happy happy birthday...
fin.
|