ランボルギーニ
無性に誰かと話したくなって、俺は目の前の公衆電話のボックスに入った。
ススキノからほど近い俺の大学と同じ学園の中にある商業高校の一年生の女の子と知り合ったばかりであった。
すでに何度かデートしていた。
彼女は商業高校の裏手にある二階建ての女子寮の一階の個室にすんでいた。
女子寮に電話すると、管理人のおばさんがでた。
おれは喉仏を押さえつつ、声色を太く変えて、
「天売島の親類の者だが、長距離なのでいそいでくれないか」
と嘘をついた。
間もなく彼女が電話にでた。
「お兄ちゃんでしょ」
「よく分かったね」
「だって天売に親戚なんて爺ちゃんしかいないもの」
「出てこれないか」
「どこ」
「ヨークの前」
「ランボルギーニで飛ばしていくね」
十五分も経過しないうちに彼女は現れた。
ツーリングタイプの自転車に乗って、長い足をすらりと地面につけて、
「お兄ちゃん」
と腰掛けてうなだれている俺の頭を叩いた。
見上げると、無地の白いティーシャツにストレートのジーンズとスニーカーだけのシンプルないでたちであった。
「そのランボルギーニ、卒業生からのお下がりだろ?」
すると彼女は鼻筋に皺を寄せてわらい、
「お兄ちゃん、このランボルくん、転がしてみる?」
「スパーカーを俺にころがさせんのかい?」
「A級ライセンスでしょ?」
「スピードに耐えられるかな?」
「ぶっ飛ばして頂戴よ、お兄ちゃん」
|