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ファーストアース脱出報告書

作者:尚文産商堂
プロローグ

人類が、それを見つけたことが間違いだったのだろうか。
それとも、間違いではなかったのだろうか。
未来の人が決めることになるはずのこの事実を、我々、ファーストアース最後の住民は、プラットホームのAIである、インフィニティにすべての記録を託し、この惑星を放棄することにする。
この記録は、後世の人々のため残す、ファーストアース放棄に至る道の記録である。
願わくば、後世の人々がこれを読み、ファーストアースを元の美しき星によみがえらすことを…

第1章 発見

我々が宇宙に出たのは、2069年に月面基地建設による地質調査が初期段階であった。
統一政府および、有力国であり、今まで現存している最古の国家群である、アメリカ、ヨーロッパ、日本の技術力により、月面基地は最優先事項とされていた。
その際、「宇宙文明」と呼ばれる超古代文明で、宇宙全土に広がる文化を持つ文明の遺跡群が発見された。
人々は、宇宙人が存在することに狂喜したが、その人物像は一切謎だった。
それから、2100年に至るまでには、もとの月面が分からなくなるほどの改造を月に施し、月面基地として宇宙入植の本拠地として定めた。
そのころには、ファーストアース全土を統一政府が統治するようになり、さまざまな科学技術が計画的に発達されるようになった。

2150年には、恒星間飛行が開発され、人類の行動範囲が飛躍的に広がった。
太陽系と呼ばれていたファーストアースが含まれる恒星系を中心とし、20光年以内を、特に「太陽及び太陽辺縁恒星集団」又は、単に「集団」と呼ばれる分類にされ、今後の宇宙探査の基礎となるものとなった。

2200年代に、集団よりも広い地域に入植がされるようになると、集団のことを「生誕の地」と呼ぶ一派も誕生したが、その呼び名はあまり定着しなかった。
だが、徐々にファーストアースよりも、新たなる開拓を目指す人々が増え、政府も対応を迫られるようになった。
この前後50年間のことを、とくに「第1次入植ブーム」と、呼ぶこともある。

2250年、正式に宇宙省が発足すると、宇宙入植は、すべて政府の管理下に置かれた。
これまでは、民間資本が開発したものが主流だったが、これをもって、入植熱は一時的に下がることになる。

その後、それぞれの恒星系を直接結ぶ通信路が開発され、それを新たに開発された量子コンピュータが、その制御を任された。
その量子コンピュータこそが、のちのインフィニティの原型になるものである。

2400年、人類は、新たに人類を生み出すことに成功した。
究極のAIと呼ばれる、「新人類」が誕生した。
その頭脳は量子コンピュータにより、無限の知能を有するはずだった。
だが、その量子コンピュータは、さまざまな欠点があった。
その一つが、唯我独尊であるということだった。
自らが欠点がないと信じていることによって、欠点をなくそうとする努力を欠いてしまうのだった。
制御プログラムとしては、完璧だった。
だが、その範疇を超えることは、この時点ではできなかった。

2500年、新人類と呼ばれた量子コンピュータ研究は、2450年の政府による補助金打ち切りによって徐々に衰退し、このころには、すでに研究分野として適切ではないと思われていた。
その代りに、恒星間飛行の技術研究に力がそそがれるようになった。
その開発の一つとしてのみ、量子コンピュータは、制御プログラムとして開発が続けられているだけだった。

そして、2540年、インフィニティが開発され、ファーストアース人工衛星として、極軌道上に投入されることになった。
この種の人工衛星としては、史上最大のものだった。
現時点でもその記録は破られていない。
翌年、その人工衛星は稼働を始めた。
すべての知識を吸収することを任務とする彼は、さまざまな所に名前が出てくるようになった。
だが、量子コンピュータは、復活することはなかった。
このインフィニティを最後として、量子コンピュータ開発は、終焉を迎えた。

その後、3000年になるまで、ほとんど話がなかった。
だが、3000年になるとき、統一政府は、急にこれまでの態度を変え、惑星入植を認めた。
集団全体で、人口が飽和を迎えつつあった。
それがきっかけで、「第2次惑星入植ブーム」となった。
それは、ファーストアース崩壊直前まで続いていた。

3490年代、惑星入植が最も活発だった時期。
そのころ、ファーストアースで開発された種子、「奇跡の種」が報告された。
超強酸という悪条件下でも、育つようにされたこの種は、同様の種として「幸せの種」という、奇跡の種に似た種子も発表された。
だが、その効能が論議される前に、その時が来た。

3491年8月4日。
その報告が届いた。
それは、ケンタウロス座アルファ星からだった。
彼らは、その惑星を調査していた。
しかし、その報告は調査目的とは全く違ったものになっていた。

第2章 宇宙戦争

彼らの報告書から、一部抜粋して紹介しておきたい。
その情報も、運が悪ければなくなってしまう。

『西暦3491年8月4日。第452号報告書。
pH1クラスという強酸泉を見つけた。
周囲には、緑色したスライム状の物質がある。
我々は、イに近づいた。周りの地面は、イから出される体液により溶けていた。
その瞬間、我々は、飲み込まれそうになっていた。
瞬時に子犬ほどの大きさから、グリズリーほどの大きさにまで膨張し、
我々を飲み込もうと壁のように立ちはだかったのだ。
私は、いちばん遠かったので何とか逃れられたのだが、
私以外の人は、全員飲み込まれた。
悲鳴を上げる間もなく、瞬時に溶かされた。
その途端、グリズリーほどの大きさから、再び子犬の大きさに変わると、
イの仲間が瞬く間に集まり、その栄養分をわけているようだった。
私は、その場から逃げだした』

これ以後、この泉は枯れてしまい、このスライム状の物質を詳しく調べることはなかった。
だが、それから1年後、突然彼らは現れた。
彼らは、どのようにしてか分からないが、月面基地に現れた。

統一政府は、月面基地の封鎖を宣言したが、それ以前に、9割方の人間は食われた。
スライム状の物質は、正式に敵と扱われた。
彼らは、テレビ局を乗っ取ると、その機会を自力で操作し、次のように宣言した。
『我々は、宇宙文明の末裔である。
我々に敵対することとは、宇宙文明に対する敵対であり、
宇宙全土に対する敵である。
我々は、そのような生命体を許しておくことはできない。
これを持って、貴様らの本拠地を全力で叩き潰す。
この基地を壊滅へと追いやったのは、その前哨戦にすぎない。
我々を倒すことは、決してできない。
貴様らに残された道は、我々に服従することだけだ。
繰り返す、貴様らの中に良心が残っているのなら、今すぐ我々に服従せよ。
そうすれば、命だけは助けてやる』
だが、統一政府はそれに対して宣戦布告をした。
『我々は、宇宙文明が敵であろうと、われらの種としての尊厳を守るために戦う。
誰かに対して隷属することは決してない。
それは、わが人類という種としての尊厳とともに、われらが宇宙文明に属さない唯一の種としての必要性を鑑みた結果である。
我々は、宇宙文明に対して、宣戦を布告し、最後の一兵になるまで戦い抜くことを宣言する』
こうして、ファーストアースにて、戦争がはじまった。
最初で最後の宇宙戦争となったこの戦いは、筆舌に尽くしがたいものがあった。
だが、我々が体験したものを、次章で語りたいと思う。

第3章 戦争体験記

我々は、日本国にてこの宇宙戦争を体験していた。
最も侵略が遅い地域だったため、避難するのも最終便だった。
「第340便、セカンドアース行き最終避難便が発進します」
空港でそんな放送を聞きながら、我々は、コーヒーをすすっていた。
我々の部隊である陸軍第49師団35歩兵小隊は、避難民の誘導をしていた。
「大丈夫なんですか、隊長」
「ああ、大丈夫だ。すでに、アフリカ大陸やヨーロッパの一部は侵入された。
報告によれば、刀剣銃器類は、一切効かないらしい。
刀剣を振りおろしても、一瞬は切れるように見えるのだが、瞬時につながり再び行動を再開するし、さらに、体液によってとけてしまい使い物にならなくなる。銃器類も同様だ。
弾が体に入った瞬間に、溶けてしまっては、攻撃のしようがない。
凍らすことも考えたが、日の光や仲間によってとかされてしまうんだ。
さて、どうやって戦えばいいのか…」
「相手の組成さえわかれば、戦いようがあるんですが…」
「強酸性ということ以外は今は分かっていないんだ。それも、水酸化ナトリウムを直接突っ込んでも、まったく効果がない」
我々は、黙った。
だが、隊員の一人が、つぶやいた。
「蒸発させるっていうのは、試したんでしょうか」
我々は、思った。
「そういえば、それは試していないんじゃないか?我々は、それを試すことを上申すべきなんだろうか。そうだ、してみなければならないんだ」
我々は立ち上がり、そのことを伝えに本部へ向かった。
避難民は、すでに全員飛行機に乗り込み別の恒星系に向かって旅立った後だった。

「そうか、火炎放射器を貸してほしいと、そう言うことだな」
「そうです」
我々は、その時、日本国に駐屯していた軍の総隊長に上申していた。小隊を代表して、小隊長である私が総隊長と話していた。
「許可はできんな。燃料がない」
「核融合による排熱処理機構を改造したらできます。敵を滅する唯一の方法なのかもしれないんです。お願いします!」
総隊長は、腕を組んで唸った。
突然立ち上がると、窓の近くにたった。
「見てみろ。この光景を」
その目線の先には、世界最大の繁栄を極めた日本国首都である、東京の高層ビルが乱立する街並みを見た。
「この光景は、いまではここだけになってしまった。
ニューヨーク、ロンドン、パリ、プレトリア、ほかにも様々な都市があった。だが、いまではここだけだ」
「あいつらがすべてを溶かしていったからですね。でも、なぜここだけが残ったんでしょう」
「この街の、いや、この国の特性を知っているか?」
「いいえ、詳しくは知りませんが…」
「当時の非白人人種で、唯一世界経済に対して影響を与えることができるほどの力を持っていた国で、世界に先駆けて、瞬間最高秒速400km/sの速さを出すことができる、巨大ロケットを開発し、5万度を超える温度で爆発することができる火薬を作り出したりしたんだ」
「それを警戒しているということですか?」
「それが唯一他国と違うことだからな。だが、それに対しても、何らかの策を弄している可能性は否定できない。ただ、日本国にある最終兵器を発動させることもできる」
「最終兵器?」
総隊長は、私に向かって言った。
「ファーストアースは生きているんだ。その命を消したら、どうなる?」
「まさか…コアを止める気ですか?」
「最後の手段だがな。だが、その前に、さまざまな爆弾を投下しまくり、敵兵を可及的速やかにせん滅させるように指示が下っている」
「何をおっしゃりたいかが分からないんですが…」
総隊長は、私に鍵を渡した。
「そのカギは、この建物の地下にある倉庫のカギだ。お前にこれを託す。その中に火炎放射器があるはずだ。それを持って行け。こちらから前線に対して報告をしておこう」
総隊長は、外を見ながら言った。
私は、総隊長に敬礼をしてから、全員を引き連れて部屋を出た。

「ここですね」
倉庫の鍵をあけると、中には銃器類が山積みにされていた。
「火炎放射器を探すんだ。コアを止められたら、この星はもうおしまいだ」
「わかりました」
そして、全隊員で捜索をした結果、1時間ほどで人数分揃った。

「これで揃いましたね」
「そうだ、あとは、これを持って前線に向かうだけだ」
私はそう言った。
だが、これで戦える自信はなかった。

最前線に到着する船の道すがら、これまでの経緯を振り返ってみた。
月で発見された敵御一行は、宇宙空間を通りファーストアースのアフリカ大陸へ到着した。
統一政府は、集団のみを侵略対象とし、それ以外を侵略対象外とする約束を取り付けた。その直後から正式に相互に宣戦布告をし、侵略を開始した敵は、その場にいたすべての生命体を溶かしつくした。
当時、統一政府は、ファーストアースから一般民の非難をすでに開始しており、死亡者の大多数は軍人だった。
スライム状物質だから、普通に刀で斬れるだろうと、初めは思っていた。
だが、刀で切ったといても、水を切るかのようにすぐに元に戻る上に、刀が溶けてしまい、使い物にならなくなるのだった。
アフリカ大陸は、1週間足らずで占領され、敵が通った後には草木も生えないほど荒廃した土地だけが残された。
平和のための結集決議によって、統一政府は全軍に対して進軍を命令。
銃も刀も効かない相手に、どうやったらちゃんとした戦いができるのか。
誰も答えは見つからなかった。

最前線に到着すると、すぐに戦闘態勢を取らされた。
ヨーロッパ地域も9割以上が敵の手に落ちていた。
「すでにお前たちだけが頼りだ。援護を出すこともできんから、己の身は己で守れ」
「分かりました。では、行って参ります」
前線司令官にそう言われ、後ろを見ずに全員が突撃状態だった。

「どこから出てくるかわからんからな。安全装置は常に解除。スライム状のものを見れば、すぐに発射しろ。飛行機の燃料はすでに尽きている。絨毯爆撃を加えようとしても、その爆弾やエネルギー源がすべて断たれてしまっては、意味がない。この火炎放射器としても、わずかな燃料しか入っていない。気を引き締めていけ」
「了解!」
我々は、森の跡にいた。今いる一帯には、昔は森が育っており、スコールも降っている地域だった。
だが、いまでは、根っここそあれど、すでに死に絶えているものしかなかった。
そんな場所に、私たちはいた。

突然、地面の至る所にある割れ目の一部から、緑色のスライム状のものが現れた。
「発射!」
私は、そう叫びながらも、いちばん近かったため、火炎放射器の引き金を引いていた。
紅蓮の炎が細いノズルから噴き出した。
とたんに、相手は四散した。
ただ、まわりに黄色い煙を残したが、それは劉さんらしき煙だったため、瞬時に溶かし始めた。

我々は、すかさず撤退し、先ほどのことを報告した。
「司令官、この作戦はいけますよ。火炎放射器か、または炎を出させるものならどんなものでも構いません。相手を焼き尽くせば、敵は皆殺しにすることができます」
「そうか、だが、その燃料はどこから作りだすんだ?ライターの燃料すらないご時世だぞ」
「他惑星からは、燃料を運んでくることはできないんですか?」
「統一政府の許可が下りないとだめだ。すでに、集団には強制避難命令が布告されている」
「では、早めに…!」
「だめだ。統一政府はファーストアースを放棄することを閣議決定した。新たなる首都惑星としては、セカンドアースをあげている」
「このファーストアースが敵の手に何事もなく落ちたら、次に狙うのは、セカンドアースです。そこも落ちたら、次の惑星にまた移る必要があり、夥しい数の死者が出るでしょう。すでに、発生している死者数よりも多い可能性もあります。それが発生したとき、公開するのは嫌です!」
私は、そう言いきった。司令官が座っている机を思わず叩いていた。
「…少し待ちたまえ」
司令官はそう言うと、どこかに電話をかけ始めた。
「…はい、ファーストアース、第1前線司令官です…そうです。実は、飛行機の使用許可を申し出たいのです。じつは、炎が相手の最大の弱点だということが分かったんです……そうです、炎です。ただ、相手が四散するときに強酸の煙が発生し…えっ、分かりました。では、お待ちしています。は、失礼しました」
そして、司令官は電話を置いて、こちらに向かって言った。
「今日中に来ることになった」
「すみませんが、先ほどのお電話は…」
「軍務大臣だ。陸海空すべての軍を統括している人だ。その人にのみ、戦時下に対する航空機燃料の配給権はある」

それが言い終わらないうちに、伝達兵が現れた。
「伝達します。軍務大臣閣下より、爆撃機300機が緊急拠出されました」
「了解した。すぐに出撃命令を出す。現在ファーストアース上にいるすべてのものは、ひとり残らず集団外へ脱出する命令もだ」
「わかりました」
伝達兵は、一礼するとすぐに出ていった。
司令官は私の方に向くと、続けていった。
「君たちに対しては、航空機に乗っていってもらいたい。最後の報告書を書いてもらうためにな」
「最後の報告書とは?」
「ファーストアース転進の報告書を書いてもらいたいということだ。君たちには部隊のしんがりを務めてもらいたい。やってくれるな」
我々は顔を見合わせてから言った。
「わかりました!」

航空機が到着してから、そのうちの一機に乗せてもらった。
眼下に広がるのは、焼け野原だった。
「昔はここには美しい自然がありました。しかし、今では見る影もありません。あのスライム野郎がすべてを溶かしつくしたんです」
我々が乗っている飛行機の操縦士が言った。
狭い機内には、操縦士のほかに、われわれの部隊と爆薬投下の担当者、通信士、レーダー監視士が同乗していた。
ほかの機内には、この航空機部隊の隊長が乗っているのもあったらしい。

飛び立ってから30分後、投下予定地に到着した。
「弾薬庫開け!投下!」
部隊長の号令によって、ほぼ同時に投下が開始された。
下の土地には、海を越えようとしていたり、土の隙間からしみだしてくるかのように、これから焼き尽くす相手がいた。

数分後、焼け野原だけでなく、強酸性の霧が深く立ち込めていた。すでに、海の生命系も陸の生命系も根絶していたため、何も残らなかった。
「確認!」
「全機、投下完了しました。ただいまより、帰還します」
「了解した」
無線を利用して、あっちこっちの機体と連絡を取り合っていた。
その音声がとぎれとぎれに聞こえているのだった。
「敵の反攻は?」
「現在のところ、未確認です。どうやら、ここに降り立ったのはいいですが、その後重力に負けて出られなくなったようです」
「なるほど…」
私はつぶやいた。
機長が聞いてきた。
「どういうことかわかるのですか?」
階級的には、私の方が上だったため、一応敬語で話しかけてくるのだった。
「このファーストアース以外でこいつらが発見された惑星というのは、ここより、重力が弱い惑星ばかりなんだ。その影響で、この惑星の重力に打ち勝つことができなかったんだろう。ここに来たのはいいが、重力の強さを想定に入れていなかった。おそらく彼らはここから出ていくことはないよ」
「では、この作戦の意味はあるのでしょうか」
「彼らがここに来た第1世代だけが、脱出できないだけで、その子供たちに当たる第2世代には、脱出が可能な体になる可能性がある。だから、今のうちに滅ぼす必要があるんだ」
「そういうことでしたか」
機長は、操縦舵を持ちながらつぶやいていた。

そのまま、我々は日本にある飛行場でおろしてもらい、航空機団は、新たに来た船団と交替していった。

こうして、1週間、連続して空襲を行ったが、どうやら、この地域にも、硫酸雨が近づいているようだった。
「全員避難を命令する。お前たちも例外ではないが、報告書を書くために、いちばん最後に避難をしてもらいたい」
「わかりました」
私は、そう伝えた。
日本に戻ってきた我々は、戦闘の成果を報告し、その後の指示を仰いでいた。
「その代りに、必ず動く機体を用意しておこう。危険だと判断したら、すぐに帰ってきてもかまわない」
そう指令を最後に出し、司令官は部屋から出ていった。
こうして、この惑星は、ボコボコにされている相手と、強酸の雨と、我々と、爆弾を落とし続けている航空機軍団だけとなった。

さらに、2週間ほどすると、敵の方から降伏宣言を出した。どうやら、これ以上爆弾を落とされ続けたら、この空気中の酸性度が彼らのものを越えてしまい、そのまま死に至るということだった。
「総司令、どうしましょうか」
私は、そのまま司令官に通信を送った。
「彼らがそう言っているのならば仕方がない。我々が勝ったということだな。ただ、おまえたちももうそろそろ引き上げた方がいいだろう。彼らの体はすでに酸性だが、おまえたちの体はそれほど高い酸性度には対応できなんだからな」
「わかりました。では、これよりファーストアースから脱出します」
私は、通信を切った。
「ということで、これから、ファーストアースから脱出する。必要なものをそろえて、1時間後に航空機が停止しているところで集合すること。では、解散」
私は、それから必要だと思うものを集めて、集合場所に向かった。

きっかり1時間後、われわれは、集合場所にいた。
「では、これより脱出を行う。すでに、総司令には話を通しておいた。では、搭乗開始!」
私は号令を出した。
すぐさま、隊員たちは船に乗り込んだ。
私は、乗り込むとき、一度この格納庫を見た。
「さよなら…ファーストアース。人類の故郷(ふるさと)よ」
私は、そのまま振り向かずに一気に乗り込んだ。

船が動いて、われわれは、ファーストアースの上空にいた。
「このあたりには、今のところ強酸性の雲は来ていませんが、それも時間の問題でしょう」
レーダー監視員が言った。
「そうか…」
船は、東京と呼ばれていた都市の上空を旋回していた。
「一番最後まで残った都市ですから、最期を見てやりたいんです」
われわれは、その意見で一致をしていた。
「多少の誤差は許してくれるだろう。この星で作る、人類最後の思い出だ」
我々は、感慨深げに誰とも無く、つぶやいていた。

3時間ほどすると、すべての航空機部隊も引き上げた。
ファーストアース全体の酸性度は急激に高くなっており、東京も最期を迎えようとしていた。
「始まりました。pH3の強酸性雨です」
徐々に、人類最後の大都市圏が解け始めていた。
我々は、その光景を写真に収め続けていた。
「この報告書を公開すべきなんだろうな」
私は、そうつぶやいていた。
近くにいた一人の隊員が答えた。
「そうですね。ファーストアースから全生命体が脱出するきっかけになったものですから…」
そのとき、ふと聞いてきた。
「そういえば、奇跡の種ってありましたよね。あれはどうなったんですか?」
「あれなら、失くしてしまったらしいんだ。研究員がポカをやった影響で、どこかにしまわれたまま行方不明だ」
「そうだったんですか…でも、インフィニティのどこかにあるはずでは?」
「そのどこかがわからなければ意味が無いだろ?それに、彼は我々がここから脱出したら休眠状態になる。再び近くまで人類圏の人が来ない限り、彼がおきることは無い」
「そうでしたか……」
その後、大都市東京が溶けきるまで、我々は見続けていた。

エピローグ

以上が、ファーストアース脱出報告である。
インフィニティのほうにも情報を入力しておいたが、彼のほうの情報にも不完全なところがある。だが、こちらのほうが現実の歴史に近いものになる。

願わくば、これを見ている人類が幸福であり、永遠の幸せを手に入れていることを…

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