見知らぬ町・・縦書き表示RDF


見知らぬ町・・
作:神名代洸


二人の青年はいつものように仕事帰り、いつもの店で軽くビールを飲んでから、一番近い坂間駅に向かい電車に乗り込んだ。今の時間は11時30分・・・・。電車内もこれが最終と言う事もあって人が大勢乗っていた。青年の名は伊藤と金森。会社の同僚だ。
今日は他の同僚も誘ったのだが、まだ仕事が片付いていなかったので、後から追いかけると言う事で先に次に行く居酒屋に向かっていた所だった・・・・。

二人とも一軒目の店で程ほどに飲んでいたので、いつの間にか眠ってしまい、電車を降りる人に気付かなかった・・・。暫らく揺られていたが、金森は人の声が聞こえない事に気がつくと、目を開けた。
車両には彼ら意外一人も乗っていなかった・・・。

「おい、伊藤。」

呼ばれた伊藤はボーっとしながらも目を開けた。

「うん?どうした、金森。」
「どうやら俺達が最後らしいぜ。この車両にも前後の車両にも人一人乗ってないみたいだし・・・。」
「じゃあ、俺らの貸切じゃん。」
「だろ?にしてもここ・・今どこらへんだ?なんか変に外が暗くねぇ?」
「だよな。普通町の明かりがあるのに・・・、乗り過ごしたんじゃねえの?俺ら。」

二人は仕方なく次の駅で降りて、どこらへんかを確認しようと言う事になった。

暫らく走っていた電車が速度を落として駅に着いた。けれどいつもあるはずの駅員のアナウンスはなかった・・・。おかしいとは思ったが、二人とも酔っていたので聞き逃したんだろうとさして気にも留めなかった。
電車を降り、改札口に向かって歩いていった。

「すいませーーん。誰かいませんか?」

しかし、何の返答もなかった。

「何で誰もいないんだ?明かりはついてるのに・・・。」
「きっとこの時間は誰もいないだろうと気を抜いてトイレとかに行ってるんじゃねえの?」
「でも普通はいるだろ?へんじゃねえ?ここに来る前ホームの掲示板探したけどどこにもなかったし・・・。」

言われてみればそうだった。普通あるものがなかったのだ。それは両隣にあるはずの駅名が書かれた看板の事だった。
そうこう話をしていると突然駅の電気が消えた。

「うそだろ?俺達がいるじゃん。」
「むかつく!!」

金森は文句を言ってやろうと駅員の部屋へのドアを握るとそれは簡単に開いた。

「え??鍵・・かかって・・ない?」

けれど細かい事はさして気にも留めず、金森はドアを開けた。
室内は真っ暗だった・・・。
けれど机の上におかれている備品はついさっきまで誰かがいたように広げられたままだった。

「おーーい。居留守でも使ってるのか〜。」

金森は酔いながらも怒っていた。
伊藤も酔ってはいたが、さすがにちょっと怖くなっていたので、金森を呼んだ。

「金森、なんか変じゃねえ?ここ・・・。もういいから俺達で探そうぜ。駅名を。」
「ああ、しょうがねえな。でも、今度ここに来た時は文句の一つでも言わないとな。」

二人はスイッチを探して、部屋の電気をつけるとここが今どこの駅なのか知るため、いろいろと物色していた。暫らく二人は無言のまま探していたが、伊藤がようやく見つけた。

「おい、金森、見つけたぞ。えっとぉ、無駅・・・、なんだぁ?無駅って・・・。聞いたことないな。金森、お前知ってるか?」
「いや、・・・俺もそんな名前の駅、初めて聞いた。」

何か不気味に思い、二人は慌てて駅を離れる事にした。
そしてどこかの家で聞いてみようと、歩き始めたが、なぜか近くには一軒も家がなかった。
仕方がないので二人は歩き続けると目の前に一軒の家が立っていた。

「やったぜ。ようやくあった。ここで聞いてみよう。」

そう言いながら玄関に向かうと金森は呼び鈴を鳴らし、「夜分遅くにすみませーん。」と声をかけると家の明かりがついて玄関が開いた。
目の前には60代らしい年配の女性が立っていた。

「こんな夜遅くになんですか?あなたたちは・・・。」
「すみません。ちょっと酒を飲んで電車に乗ったはずなのに、いつの間にか寝てしまって・・・ここがどこだか分からないんです。」
「そうでしたか。それはお困りですね。でも、今日はもう電車は走ってないですよ。」
「それは困ったなぁ〜。他にも同僚と別の場所で会う約束だったのに・・。」
「仕方ないですよ。・・そうだ、今夜はうちに泊まっていってください。ここら辺はあんまり家はないし、夜道を照らす電気もきちんと整備されてないので危ないですよ。」

二人はどうしようと考えたが、この親切な女性にお願いするしかないと思い、好意に甘える事にした・・。
二人は用意された部屋に入り、布団にもぐると酔いもあってすぐに眠りについた・・・。
どれくらい寝たのか、ふと目を覚ました金森はどこからか誰かに見られているように感じて隣に寝ている伊藤を起こした。
寝ぼけたままの伊藤が目をこすりながら金森に話しかけた。

「どうしたんだよ。こんな時間に・・・。」
「伊藤、お前、誰かに見られているような気がしないか?」

そう言われた伊藤はじっと様子を伺うと、確かに誰かに見られているように感じた。

「このうちやばいかもしれないな・・。」
「ちょっと他の部屋覗きに行こうぜ。なんかあるかもしれない。」

二人はそっと部屋を出て見ると、一部屋だけ明かりがついていた。
中の様子を伺おうとそっとふちから覗いた二人はそこに見てはいけないものを見ていた。
60代の女性が鬼のような顔で、包丁を振り上げて人を切り刻んでいた・・。
その人だったものの腕や足などがあたりに転がっていた・・・・。
あまりの恐怖に声もです、二人はそっとその場をあとにして、部屋に戻るとこれからどうするか小声で話し合っていた。

「どうする?金森。俺達このままじゃぁあの人に殺されちゃうよ。」
「何とかして逃げよう。それしかない。」

そう言いながら金森は辺りを見回すとそこに座布団がいくつかおいてある事に気がついた。

「これを俺達の変わりに布団に入れてここを逃げるんだ。」

酔いはいっきに覚め、二人は急いで用意して何とか気付かれずにそっと家を後にした。
それからは線路を歩いて来た道の方へ歩いて行った・・・。どれだけ歩いただろう・・・。二人は黙ったまま歩いていたが、気がつくとそこは坂間駅だった。

「やったぁ、何とか逃げられたぞ!!」

二人は安堵すると持っていた携帯から同僚に電話をかけた。

「お前ら、昨日はどうしたんだよ。俺、あの店で待ってたんだぜ。」
「ごめん、ごめん。ちょっとあってさ。」
「この埋め合わせはちゃんとしてもらうからな。」
「ああ、いいよ。」

にしてもどうしてあの駅に着いたのか、二人にはまったく分からなかった。ただ言える事はあの場にいたはずのバラバラの体の人は誰にも見つかる事がないということだった。


あの場に行かない限りは・・・・。














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