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ジプシーダンス
作:国沢裕



チャプター・45 ほーりゅう


 麗香の力を正面から受けて、校舎の三階から、窓ガラスを突き破って飛び出してしまった私。
 地面に叩きつけられる事を覚悟して、眼をつぶった。急激に重力が身体にかかる。

 そのはずが、不意に身体から重さの感覚が掻き消えた。

 恐る恐る、眼を開ける。
 ……全てが止まっていた。
 私、空中で止まって、浮いちゃってるよ?
 いつもの、今までの私の自己防衛の超能力に、こんな力はなかった。
 そして気がつく。身体を包む、以前にも触れた事のある、この力の雰囲気。
 記憶にある。
 思わずつぶやいた。
「我龍?」
 すると、それに答えるように、直接頭の中へ、声が響いた。

『逃げる? それとも戻る? こちらとしては脱出を勧める。巻き込まれただけなんだろう? いつまでも身体を張って奴の私事に付き合う必要はない。逃げる気があるなら、奴の結界は俺が破ってやる』

「戻る!」
 私は、我龍のテレパシーを最後まで聞かずに叫んだ。
「ジプシーも夢乃も京一郎も上にいる。皆、戦っているんだもん! ジプシーは私をかばって大怪我をしたんだ。今度は、戻って私がジプシーを助ける! それに、麗香さんも私が助けるんだ。戦いで彼女に勝って助ける!」
 一瞬の間の後、我龍が面白そうに答えた。

『彼女も助ける、か。いいだろう。なら、上に連れて行くだけで手助けはしない。これ以上の力の干渉は、せっかくはった奴の命懸けの結界を破壊する事になる』

 そうか。
 さっき、ジプシーの結界に触れたのって、我龍だったんだ。
 何故、我龍がこの戦いを知ってここに現れたのか聞く余裕がない位、今、私の中に内側からあふれてくるものがある。同じ能力者の我龍の力を、直接私が触れたからだろうか。今なら、彼女の殺気を原動力にしなくても、自らの怒りのような感情で、最大の力をもって攻撃できる自信がある。
 私は空気に支えられるような感じで窓際に寄り、割れたガラスに気をつけながら、外から三階の窓枠に片足をかける。
 両手で身体を支えるように横の窓枠を掴んだ時、身体を包んでいた空気が変わった。きっと我龍のサポートが消えたんだ。
 そして、私は校舎内の現状を見る。


 廊下のずっと向こうで、炎が揺らめき煙が上がっている。窓を開け放して消火を続ける京一郎と夢乃の姿が、炎の向こう側に見える。煙は増えているけれど、さっきに比べて火が小さくなっている感じがするから、大丈夫だよね。
 そして、眼の前には、うつ伏せで倒れている血だらけのジプシー。その傍らに屈み、まさに彼へ手を伸ばそうとしている麗香さんを見た。
 今、麗香さんは、どういうつもりでいるかわからないけれども、これ以上ジプシーを傷つけられてたまるか。
 私は、窓枠の上で仁王立って叫んだ。
「ジプシー! まだ意識があるよね? 攻撃最大でいくから防御をお願い! あんたの力と根性、信じているから!」

 そして、驚愕の表情で私を振り仰いだ麗香に、ためにためていた力を全力でぶつけるべく、私は両手を頭上へ振り上げた。







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