チャプター・42 ほーりゅう
そして、ふと私は、自分で思い浮かべた言葉に気がついた。
何も、麗香さんからの攻撃を待っていなくても、いいんじゃない? 私の超能力、外に出せる位に力がたまった時点で、私から攻撃を仕掛けるってのも、ありだよね。
そう考えた私は、今度は私から彼女に仕掛ける気で、両手をあげる。
すると彼女は察知したのか、身を翻して廊下の向こうへ走って逃げ出した。
え? 逃げるの、あり?
なら、追いかけるまでよ!
「待ってぇ!」
せっかくやる気になった私、薄暗い学校の廊下を、彼女の後を追って駆け出した。
数歩遅れて、ジプシーが私の後ろをついて来るのがわかる。場所を移動しても、完璧主義のジプシーの事だ。私はもちろんだけれど、彼女のガードも大丈夫だよね。
この学校内は今、全てがジプシーのテリトリーなんだから。
背中を向けて走っている彼女の後を追いかけながら、私は走りながらになるけれど、手をあげて振り下ろす。あ、後ろからの攻撃って、本当は卑怯なのかな。でも、戦ってるって、お互いにわかっているし、いいよね。
制御不能な私の力。それでも、一杯にためていた私の力は、手を振り下ろす動作で外に出た。
そして、先程とはうって変わって、私の力は螺旋を描きながら、周りの壁を削りつつ、彼女に向かって飛んでいくのがわかった。
……螺旋状。はたから見たら、結構ダイナミックな技に見えるけれど。
あれって多分、真っ直ぐ飛んでいかない私の力が、ジプシーのはった結界の壁にぶつかって、よそに飛んでいく所を軌道修正されながら、進んでいるからなんだろうな。
気配に気がついた麗香が驚いた表情で振り返り、その為、彼女は正面から私の力を受ける事になった。そして跳ね飛ばされ、後ろへ仰向けに倒れる。彼女は、弾みでぶつけた肩を押さえてうめいた。
「ちょっと! 話が違うんじゃない? この戦いは見かけだけで、実際ジプシーは麗香さんもガードしてくれるんでしょ? 何で彼女、私の力を食らってんのよ」
焦った私は後ろを振り返り、小声でジプシーに言った。
あっさりとジプシーは答える。
「お前は百パーセント護ってやる。でも彼女は、お前の力の衝撃を多少は受けてもらわないと、負けているって意識が芽生えない。無傷もおかしいし、痛くない攻撃を何度受けても意味がないだろ。安心しろ。残るような怪我まではさせない」
……彼女だけ痛みがあるって、何だか攻撃しにくくなっちゃうなあ。
そう思いながら私は前へ向き直る。彼女を見つめる私の目の前で、麗香は身体を起こして、ゆっくり立ち上がった。
ゆるめにクルクルと綺麗に巻いていたロングの髪がほつれ、逆立つ感じすら覚える。強張った表情の中の二重の眼は、さらに光を反射し煌いた。細身の身体全身で、怒りのオーラを発しているのが見て取れる。
彼女、本気になったかも。
私の願った通り、彼女の最大の力を引き出せそうなのだが、これは、対峙すると怖い。
ところが予想に反し、再び麗香は背を向けて駆け出した。
なので、私も慌てて追いかける。
今度は、まだ私には、外に出せるだけの力はたまっていない。走りながらの集中って、なかなか難しいものがある。
彼女から引き離されないように、ダッシュでついて行っている先で、麗香は廊下の突き当たりにたどり着き、角を曲がった。私も続けて勢いよく曲がる。
そして、曲がると同時に、眼の前に、こちらを向いて彼女が立っているのを見た。
急に止まれず、勢いがついてぶつかりそうな位に接近した私の胸元へ、麗香は右手の平を当てる。
驚愕の表情を浮かべているであろう私に、麗香は妖艶に微笑んで、手の平から直接私の身体に、衝撃波を撃ち込んで来た。
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