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ジプシーダンス
作:国沢裕



チャプター・35 ほーりゅう


「江沼! 顔を貸してもらうぞ!」
 昼休みを告げるチャイムと共に、生徒会長が一年の教室のドアを勢いよく開いた。
「すみません。江沼君は今日、お休みです」
 夢乃の、すまなそうな言葉を聞いた会長は驚いた顔をし、そしてすぐに、怒りあらわに叫んだ。
「親からの電話一本で、この私が納得する訳がなかろう! 絶対捕まえてやる! 今日の放課後、家庭訪問だ!」
 きびすを返し、足音荒く会長は教室から出て行く。
 ……会長、本当にジプシーの家まで行っちゃうよ。あの様子じゃあ。
 そう思いながら、私はお弁当を持って、いつものお昼を食べている自習室へ向かう。
 でも、確かジプシーって、今日の学校は午前中だけ休むって、言っていなかったっけ?
 そう思いつつ、向かう途中で一緒になった夢乃と京一郎と一緒に、自習室のドアを開けた。そして、腕を組んで考え込んでいるジプシーの後姿を見つけた。

 いつもの昼休みのメンバーが、顔をそろえて椅子に座ったのを確認したジプシーは、腕を組んだ姿勢のまま、おもむろに言った。
「今日、高橋麗香を呼び出して、けりをつけたいと思う」
 さらに続けようとしたジプシーの言葉を、さえぎって私は言った。
「その前にジプシー、お昼ご飯を食べようよ。ジプシーもママさん手作りのお弁当、持ってきているんでしょ?」
 急に何の事だと言わんばかりに、ジプシーは私の顔を見返した。
「だから、食べながらでも話、できるじゃん」
「いや。今はいらない」
「そう言って食べない気でしょ。あんた最近、食事量減ってるもん」
「今は関係ない話だろ」
「でも、三食きちんととらないと身体に悪いって」
「俺が食事をしようがどうしようが、お前には関係ない」
「でも」
 ジプシーは、急に押し殺したような低い声で、静かに言った。
「ほーりゅう、今回の作戦は、お前中心に計画を立てた。お前に頼った、お前がメインの計画だ。……あまりしつこく言うと、メンバー自体から外すぞ」
「すみません。もう何も言いません。メンバーに入れてください」
 普段からいつも、こういう計画には、ないがしろで爪弾き気味の私。メインにしてもらえると聞くと、ちょっと立場の弱い私。夢乃のお母さん、ジプシーにご飯を食べさせようかと頑張ったけれど、無理だったよ……。
 おとなしくなった私を見て、一息ついたジプシーは、小さな声で言った。
「後で必ず食べるから、心配しなくていい」
 そして、改めてジプシーは腕を組みなおして、話を再開した。
「今日の朝、高橋麗香の家に行ってきた」

 ……いきなり、敵のアジト襲撃ですか!
 さすがに呆気にとられた全員の顔を見ながら、ジプシーは続けた。
「もちろん、彼女が学校に向かう為に家を出たのを確認してから、彼女の母親に会った。……母親は、彼女の能力に気がついていたが、今まで、どう対処していいのかわからなかった様子だな。母親と話し合って、これからの計画に合意してもらった。……と言うか、結果的には、彼女の母親に頼まれた形になったんだが」
 ジプシーは、いったん区切ってから言った。
「今回の計画の目的は、彼女の能力の消失。術自体を使えなくさせる。彼女との話し合いはそれからだ」
 能力消失。
 そんな事、可能なんだろうか? って事は、私の能力やジプシーの術も、使えなくなる事があるって事?
 私の考えが分かったのか、ジプシーは言った。
「これから、ほーりゅうに分かるように説明する。何と言っても今回は、ほーりゅうメインだからな。その代わり正しい説明ではなく、お前が理解できる言い方や表現に変えるから。……まず、彼女の能力は、彼女の母親と話をして俺の思った通りの能力だと確信した。俺の陰陽術でも、お前の超能力とも違う能力だ。ただ、今回の要であるお前の闘志を落とさない為に、あえて今言わない」
「何で私の闘志って言うのが関係するのよ」
「それは計画の実践方法として理由が分かるから後で説明する。俺の陰陽術は、練習や修行という形で身に付けたものだ。お前の超能力は、生まれつきの遺伝子レベルの能力とみた。それらは基本的に少々の事では、なくならない。だが、高橋の母親の話では、彼女の能力は精神に担う所が大きく感覚的なもので不安定、あやふやで不確定に身につけたもの。だから、今回立てた計画で消滅させる事が出来る。だが、間違いなく、お前の超能力で対抗できるものだという事、それは俺を信じろ」
 まあ、こんな関係の話に詳しいだろうジプシーの言う事だから、本当に私の力で太刀打ち出来るものなんだろうな。
「目的は分かったか」
「うん。彼女の能力消失」
 私が計画の中心だから、私が理解したら、説明が先に進む訳ね。

「次に方法なんだが、俺としては今日でけりをつけたい。その為に、彼女の母親に伝言を残してきて、今日の夜、彼女をこの学校に呼び出した。また、これと思う方法一つのみで戦って外した時が怖い。だから、実質的な方法と、併せて精神的なトラップの、合計四つの罠の同時進行で、彼女の能力を消滅させようと思う」
 ……急に不安になってきた。四つの罠を一度に仕掛ける。
 果たして私に、そんな器用な事、出来るんだろうか?







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