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ジプシーダンス
作:国沢裕



チャプター・3 ほーりゅう


 木曜日の今日、四時間目の授業は体育。一番お腹が空く時間なんだよね。その上に、体育館でバスケットボールだなんてさ。
 私達女子は数人の班に分かれて、ボールをくるくる投げあう練習をする。あんまり私は球技が得意じゃないけれど、体育の女の先生は厳しくないから、和気あいあいとしていて結構楽しい。ちょっと位雑談が入っても、手が止まっていなければお咎めも特になく大丈夫だし。
 逆に、体育館の半分を使って同じようにバスケをしている男子側は、結構厳しい男の体育の先生が指導している。……授業の進むスピード感が違うし、男子は皆黙々と言われたメニューをこなしていく。その中で身体を動かす事がいかにも好きそうな京一郎が、一番楽しそうに練習している。
 
 明子ちゃんが、私の方に近寄って来て小声で言った。
「やっぱり城之内って、運動神経いいよねえ。見た目も悪くないから、あれで暴走族に入っていなきゃ、クラスの女子にモテるだろうにねぇ」
「でもさ、話をすると、そんなに不良って感じしないけど?」
「いやいや、充分怖いって。……ほーりゅう、あなたの感覚違うんだよ」
 そうかな? 皆は初めから怖がって、まともに京一郎と話をした事がないだけだと思うんだけれどなぁ。
 ……そう言えば、ウチのクラスにはもう一人、京一郎以上にスバ抜けた運動神経の持ち主がいるじゃないかと思い、ジプシーの姿を探してみる。

 ……ジプシーがいた。いたけれど、何かいつもと今日の雰囲気が違う。どこか違和感があるように見える。
 シュートの練習をしているのだろうか。ゴールに向かってボールを投げる。低めだったせいかリングに当たり、はじかれて転がったボールを拾いに行く。また右手で持って左手は直角に支え、基本通りの投げ方でゴールを狙っては再び入らず、またボールを拾いに行く、の繰り返しをしていた。
「……ジプシーって、いつもあんな感じだっけ?」
 思わず、明子ちゃんに聞いてみる。明子ちゃんの目が、きょろきょろっとジプシーを探す。
「委員長? あんな感じって? そう言えば今日は珍しく授業に出ているねぇ。身体が弱いから体育は見学が多いのに」
 ……そうか。いつも学校内ではジプシー、目立ちたくないから身体が弱いフリをしているって前に言っていたな。男子との体育は普段は別の場所だから、あんまり見た事がないせいで忘れていた。
「出られる種目には出ないと、単位が取れないからでしょ。でもまあ、結構離れた距離から投げている割には、リングに当たってんだから、そんなにひどくはないんじゃない? 試合になったら、すぐ息が上がりそうだけれどねぇ」 
 私がもっとすごい技を期待してジプシーを眺めていたから、拍子抜けなのか。普通はあんなものなんだ。
 何となく眺めていると……そう言えばジプシーが、今日は朝からいつもとイメージが違うと思う理由、もう一つ思い当たった。
 なんて言うんだろう……俺に近寄るなオーラ? っていうのが今日は、いつもよりも増して出ている感じがする。

 何かあったのかな?

 男子側の練習終了の笛が鳴り、分かれての試合が始まった。
 ジプシーは京一郎と同じチームになる。京一郎は正真正銘ポイントゲッターだけれど、自らコート中を走り回ってボールを集めて、どんどん入れる。まさしく水を得た魚状態だな。
 対するジプシーは、殆どコートの真ん中辺りで動かない。でも、京一郎がゴールを入れる度に相手側から投げ返されるボールを、ことごとく取って京一郎に回している。……あれって?
「インターセプトって言うのよ」
 私のそばで見ていた夢乃が言った。
「疲れないように走り回らずチームに貢献、いかにも校内でのジプシーらしいやり方よね」
 ……なるほど! それって疲れなくって上手いやり方じゃないの。

 ちょうど、女子の方でも笛がなって集合がかかり、早速、私は試合に出ることになる。
 同じチームになった、バスケも上手な夢乃が綺麗にゴールを決める。その後に飛んで返ってくるボールを、私はジプシーの真似をして狙ってみる。
 ……取れない。
 何度かチャレンジする機会があったのに、遅いのかボールに届かなかったり、取れそうでも先に受け止められたり。私の狙った反対側をボールが通ったり。
「……ほーりゅう、あなた、インターセプトを狙っているでしょう?」
 見かねた夢乃が寄ってきた。
「インターセプトって、勘やボールの読みや、それに伴う運動神経などが必要な、結構高度な技だと思うわよ。ジプシーだから目立たなく簡単そうにやってのけるけれども」

 ……なんだ、だめじゃん!
 仕方がない。私は普通に、地道に走り回ってやれって事かぁ。







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