外伝第5話 元の世界の二幕
仁の過去話風の思い付きです。
Q:こんなの書く暇があるのなら本編を書けよ。
A:現在、66話執筆中です。
Q:そんなに進んでるならさっさと投稿しろよ。
A:え?
VRMMO「ワールド・ディザスター・オンライン」、通称「WDO」のベータテストが開始されてから1カ月が経過した。ベータテストの期間は1カ月なので本日が最終日である。
ベータテストの参加権を1万分の1の確率で入手した俺、東、浅井の3人は、毎日学校が終わったらすぐにログインし、かなり多くの時間をゲームの中で過ごしていた。
現在、俺たち3人は敵の平均レベルが150の『強欲の洞窟』の攻略を進めている最中である。
WDOのベータテストでは、製品版の第一期リリースとほぼ100%同じことが出来ると言われており、第一期リリースのラストダンジョンとも言われている『強欲の洞窟』であろうとも普通に入ることが出来る。
もちろん、『入ること』と『生きて帰ること』は別のことである。大抵の奴は速攻で死ぬ。
「10秒後にブレスが来ます」
「わかった。『タフネス』、『シールド』」
「GYAOOOOOOO!」
『強欲の洞窟』の最終ボスである強欲竜がブレスを吐くために大きく息を吸った。東の忠告を受けて浅井が自己バフをかけ終わった後に、強欲竜のブレスが放たれる。
「『ガードウォール』!」
「お邪魔しまーす」
俺と東は盾の防御範囲が広がるスキルを使った浅井の後ろに隠れる。ブレスは完全に浅井が受け止めたため、俺たち2人には一切のダメージがない。
多くのオンラインゲームと同じようにWDOもプレイヤーは職業を選んで冒険をすることになっている。
浅井の職業は守護者だ。ガチガチの鎧を着こみ、大きな盾を装備した壁役である。
浅井はとても目がいい。そしてこの目の良さというのは、単純な視力だけにとどまらず、動体視力なども含まれるし、視野も広い。そして、その能力はVRゲームでも有効なようで、攻撃を的確に防いでくれる壁役として大活躍である。
ちなみに浅井のPNは『アーサー』である。ゲームで英雄とかの名前を付けるのは割とあることだが、ほとんどダジャレの領域である。
「では、次はこちらの攻撃です。『ブリザード』」
東の職業は魔法使いだ。真黒なローブを着こみ、杖を携えている。
浅井の後ろで詠唱していた、現状最高レベルの氷魔法を強欲竜に向けて発動する。
東のPNはイースだ。東のイーストから取っている。
「GYOOOOOOO!」
ブレスの反動で5秒間硬直状態にある強欲竜は防御も出来ない。
>5092のダメージ。
「これで反動の時間がさらに5秒伸びます!ジーン」
「任せろ!」
俺は強欲竜に向かって駆け出す。ここからは前衛攻撃職である俺の仕事である。
俺の職業は剣聖。高い攻撃力と移動速度を誇る攻撃特化職だ。胸当てなど最小限の防具で切り込む、命知らずの戦闘狂である。
PNはジーン。見事に全員本名もじりのPNである。
「『ソードダンス』!」
連続攻撃のスキルを発動し、10回の斬撃が強欲竜を襲う。
>クリティカル。2051のダメージ。
>クリティカル。2366のダメージ。
>クリティカル。2124のダメージ。
>クリティカル。2310のダメージ。
>クリティカル。2097のダメージ。
>クリティカル。2189のダメージ。
>クリティカル。2227のダメージ。
>クリティカル。2007のダメージ。
>クリティカル。2211のダメージ。
>クリティカル。2130のダメージ。
当然すべてクリティカルで1.3倍のダメージを与える。
余談だが、10連続攻撃スキル『ソードダンス』と現在の俺のステータスによるクリティカル率は1回あたり5%である。
2時間に及ぶ激闘の末、ついに強欲竜のHPゲージが0になり、光の粒子になりつつ消滅した。
ボスの討伐と共に、3人それぞれのストレージにドロップアイテムが格納される。誰に何のドロップアイテムが出るかは公開されないので、パーティによってはトラブルの種となる。
「よし、やっと終わったな。アーサー、タンクお疲れさん」
「はー、疲れた。VRだから身体は平気だが、精神的に疲れた……」
2時間ずっと前衛でタンクを務めたアーサーをねぎらう。
「お疲れ様です。でも、折角ボスを倒したのに経験値が1も入らないので、なんか無駄をしている気がしますね……」
「そもそも、俺もイースもアーサーも最高レベルなんだから、どうしようもないだろ?」
俺たちのレベルは現在150。第一期リリースの最大値である。
WDOでは1パーティ6人までとなる。同レベル帯のダンジョンを通常パーティの半分の人数で踏破するとか、我ながら頭のおかしいことをしている。
「それはそうなんですけどね。ここにはアイテム目当てで来ているわけですし」
「で、ジーン、肝心のドロップアイテムはどうだった?」
当然のように俺に聞いてくるアーサー。
この3人でパーティを組んだ場合、ほぼ100%貴重なアイテムは俺にドロップするからな。最初に俺に聞くというのは何の問題もない。
「えーと、『魔剣・グリード』が初回固定報酬だな。それ以外のランダムドロップで1番貴重なのは……『生命の宝珠』だな。デスペナなしで蘇生が出来るアイテムか。次いで『オリハルコンのインゴット』。製作用の素材アイテムだな」
「はあ、相変わらずジーンのところに集中していますね……。僕の方には普通の消費アイテムがチラホラあるだけですよ……」
「俺も同じだよ。でも、ジーンのコレについては今更だろ?」
2人のストレージを見せてもらったのだが、見事に外れアイテムばかりがドロップしている。売却金額で考えた場合、2人合わせても俺の10分の1にも満たないだろう。
「そうですね……。ジーンを見ていると、『確率論』の存在が危うくなります」
「え?『確率論』って運が悪い奴が自分を慰めるために考えた学問だろ?」
「「……」」
俺の一言に対し、2人とも黙って顔を背けた。何故だ……。
俺の持論に『確率論など無意味』っていうのがあるのを、2人とも知っているはずなんだけど……。
「まあいいや。『魔剣・グリード』は片手剣だから俺が貰ってもいいか?」
「「異議なし」」
2人とも片手剣は使わないから、俺が貰うことになった。今使っている武器よりも強いから交換だな。
「俺は『オリハルコンのインゴット』が欲しい」
「僕は『生命の宝珠』が欲しいので丁度いいですね」
パーティによっては、「ドロップアイテムは拾った人のモノ」と言うルールの場合もあるが、俺たちは基本的に全て公開して分配している。
ベータテストの性質を考えれば、レアなアイテムを個人で大量に抱えるのはあまり得策ではない。
大物3つ以外のアイテムを適当に振り分け、全ての分配が終わったあたりで、プレイヤータウンに戻ることにした。
ベータテストなので、プレイヤータウンにはそれほど多くの人がいるわけではない。とは言え、街を歩いていればそれなりの人数のプレイヤーとはすれ違う。
「お、アーサーじゃねえか。また今度一緒に冒険しようぜ」
「ああ、また今度な」
「アーサー!今度はどこ行っていたんだ?」
「ああ、『強欲の洞窟』で強欲竜を倒してきた」
「……マジで」
「マジだ」
「アーサー、たまには武器のメンテに来てって言ってるじゃない。忘れているんじゃないでしょうね?」
「忘れてねえよ。お前の腕がいいから、中々劣化しないんだよ。だから行く回数が減るんだ」
「……今度、手を抜こうかしら」
「やめてくれよ」
「冗談よ」
大体が浅井に話しかけていくのである。ほとんどが浅井と一緒に冒険をしたプレイヤーたちだ。俺たちと一緒に冒険をしていないとき、浅井はそこらのプレイヤーに自然に混ざっていくからな。……3人の中で1番社交的なだけはある。『目の良さ』に加えて、『人を見る目』も持っているという、トンデモ人間だからな。
「さすがは助っ人王ですね」
「リアルと同じことをしているのか」
「まあな」
もちろん、リアルでもそのスキルは如何なく発揮されており、部活動の助っ人に引っ張りだこなのである。身長も高くパワーもあるから、運動部からは常に勧誘され続けている。
浅井との話の中でも出てきたが、俺らのパーティはそれなりに有名になっており、トッププレイヤーの一組として扱われている。たった3人でいくつものダンジョンの初回攻略を持って行っているのだから当然か……。
ベータテスターには廃人と呼ばれる人種も数多く存在する。具体的には社会参加をしていない人たちのことである。そんな人種を差し置いて俺たちのような普通の学生がトッププレイヤーというのはどうかとも思う。
少なくとも、他にレベルカンストしたプレイヤーというのを俺たちは知らないからな。
もちろん、これには少しのカラクリがある。簡単に言えば、経験値テーブルのバグを利用しての高速レベリングである。
東が発見したバグを運営に報告した後、バグが修正されるまでの間にゴリゴリ稼いだのである。バグ報告は義務だが、その後でバグを利用するなとは規約に書かれていなかったので、遠慮なく稼がせてもらった。
「バグがあるほうがいけないのです。バグが存在するのならば利用すべきです。やってほしくないことは最初からできないようにしておかなくてはいけません」
コレが東の持論の1つである。どんなイカサマもやれる状況にするほうがいけないというモノである。禁止されていないことは何をやってもいい。後で禁止するのは自由だが、それまでに得たものを奪うことは許さない。と中々に過激だ。
「でも、アカウント停止とか巻き戻しとか運営から手を加えられる可能性もあるだろ?」
規約には書いていないが、可能性は0ではないので東に聞いてみたところ。
「ええ、もちろん、プロテクトはかけてあります。僕のデータに手を加えようとすると、システム全体がダウンします」
「「怖えよ!」」
まさかのハッキング済みだった。
「あ、安心してください。2人のアバターもプロテクトかけていますから」
「いつの間に……」
「ジーン……。イースのコレも今更だから諦めろ」
そんなやり取りを経て、俺たちは前人未到のレベル150に達したのである。
ちなみに、俺たちの利用したバグは、ポップした直後の敵をタイミングよく1ミリ秒以下の誤差で攻撃すると、1撃で倒すことが出来て、また直後にポップするというモノである。それを途切れるまで5時間くらい正確に続けたのだ。……浅井が。
後半、浅井の顔から生気がなくなっていたということは、特に気にすることではないだろう。経験値のパーティ等分っていいよね。
「危ないところでしたよね。何とか今日中に『強欲の洞窟』をクリアできてよかったです」
「ああ、ジーンの『魔剣・グリード』とかはベータの内にとっておいた方が絶対に楽だからな」
俺たちのパーティで購入したホームで、東がそんな話を切り出す。
WDOのベータテスターはかなりの優遇がされる。その1つがベータ版からのデータ引継ぎである。もちろん、最初からベータ後半の強力武器とレベルを持って始められるわけではない。
簡単に言えば、『ベータで到達した場所に戻りやすくなる』というモノだ。まず、ベータの時に到達したレベルに到達するまでは、取得経験値が倍になる。これにより、元のレベルまで上げるのが楽になる。
そして、アイテムに関してはベータ終了時のレベルに応じていくつかを引き継げるのだ。
しかし、最初から使えるわけではなく、いくつかの条件を満たして解放する必要がある。
レアアイテムほど条件が厳しくなるので、何を持っていくかはよく考えなければならない。
レア度の低いアイテムを持って、スタートダッシュをかけるか、ベータで苦労して手に入れた思い入れのあるアイテムをいつか使うために持っていくか、といった具合である。
ちなみに現在、俺たちはプレイヤーホームで引継ぎ対象の設定中なのである。
「今日手に入れたレアアイテムは全部引継ぎだな。イースの『生命の宝珠』も、アーサーの『オリハルコンのインゴット』も相当な貴重品であることには変わりがないし……」
「そりゃそうだ」
「当然です」
ダンジョンを初めて攻略したプレイヤーには、特別に初回攻略限定アイテムが与えられる。今回の『強欲の洞窟』で言えば、『魔剣・グリード』である。
事前告知によると、初回攻略限定アイテムは、初回攻略以降は超低確率のドロップアイテムに変わってしまうらしい。つまり、初回攻略で入手する方が圧倒的に楽なのである。
そして、人の少ないベータで手に入れる方がさらに圧倒的に楽なのである。
「ある程度はスタートダッシュをかけられるように、低レア度のアイテムを強化したものを引き継ぐんだよな」
「強化分は引継ぎ条件に加算されないんですよね」
「ああ、だから引継ぎ条件が公開されてから、鍛冶師の需要がうなぎのぼりだ。知り合いも忙しそうにしてるよ」
低レア度のアイテムでも強化すればある程度の能力にはなる。
そして、引継ぎの条件に強化分は含まれないのだから、スタートダッシュ用のアイテムを強化しない理由がない。
引継ぎに関する詳細が公表されてから、アイテムの強化が出来る鍛冶師などの職業は大忙しである。
そもそも、ベータテストなんだから生産職が少ないのも当然だというのに、需要だけが高まったからな。客が来すぎるのでログインしない人すらいるくらいだ。
「アーサーの知り合いの鍛冶師(♀)が優先的に強化してくれたんだよな」
「そうですね。助かりましたよ」
「これでスタートダッシュは余裕だよな」
こんな時に役に立つのがアーサーの人脈である。
俺たち3人の装備は、序盤なら余裕を持てるくらいの強化値になっている。
「いえ、僕の場合はそうでもないんですよね……」
「ああ、そういえばもうすぐ学会の季節か……」
東がため息をついて言ったセリフで俺も思い出した。
「はい。正式版リリースの1週間後です」
「うわ……。マジかよ。やべえな……」
「本当に面倒ですよ。まあ、これも楽しい学生生活を送るためだと思えば、我慢も出来るというモノです。はあ……」
東は高校になんか通う必要などないほどに頭がいい。
東が高校に通っているのは、言ってしまえば東の我儘である。その代わりに年に1度は海外の学会で何か成果を発表する義務があるらしい。今年はAIに関する論文を1週間くらいで書いたとか言っていた。
「そういえば去年は何を発表したんだ?」
「VRシステムです」
俺の質問に東があっさりと答える。
「「はい?」」
「ですから、このゲームで使われているVRシステムの基礎理論の発表をしました」
「「……」」
絶句する俺と浅井。まさか、このゲームの関係者だったとは思わなかった。
「そりゃ、ハッキングも簡単だよな……」
「あくまでも基礎理論ですから、ゲームの開発とは無関係ですよ。まあ、元々ハッキングは得意ですが……」
それは口に出して言っていいことではないと思う。
「そういえば、一昨日のアップデートで新しくバグが追加されてしまったみたいですね。ハッキングしていて発見しました」
「物騒だな」
東が態々言うのだから、相当な大事なのだろう。
「あまりに危険なので、僕のアバターには勝手にパッチを当てることにしました」
「好き勝手しすぎだろ……」
さすがの浅井も呆れる。『今更』とはさすがに言えないようだ。
「でも、このバグを放置するとログアウト不可とかの致命的な状況になりますよ」
「何それ怖い」
VRゲームでログアウト不可って、普通に訴訟もんのバグだよ?
「2人のアバターにもパッチは当てているので安心してください」
「いや、全然安心できねえよ」
「ああ、このゲーム続けて大丈夫なのか?」
正直言って、そんな致命的なバグを放置しているゲームを続けるのは不安がある。
「少なくとも僕たちは絶対安全です。それに正直、ハッキングした結果わかったバグなので公に出来なくて困っているんですよね。あ、安心してください。この会話ログはダミーデータに置き換えていますので」
「イースが万能すぎて怖い」
「ジーンが言うなよ。お前も十分化け物だから」
「アーサーもあまり人のこと言えないですよ。普通の人は爪楊枝で飛んでいるハエを刺せないんですからね?」
化け物が他人を化け物呼ばわりし合う、不思議な空間がここに発生した。
「よし、これで引継ぎの準備は完了したな」
「はい、後は明日の正式サービスを待つだけです」
引継ぎの設定を終えたので、本日はもうすることがなくなってしまった。
引継ぐアイテムは使用不能になるので、中途半端に冒険に出かけるわけにもいかない。
「じゃあ、俺はちょっくらベータのプレイヤー仲間に挨拶に回ってくるわ」
「相変わらず、アーサーはマメだなー」
「さすがの社交性です」
「いや、これくらいお前らも普通にするだろ?」
「「しないしない……」」
東と声を揃えて言う。
そもそも、挨拶をするほど親しい相手がいない。ぶっちゃけるとアーサーを通した『友人の知り合い』ならやたら多いのだが……。
「ついでだし、お前らも来るか?」
「「行かない行かない」」
「仲いいな、お前ら……」
「俺はもうログアウトするつもりだ」
「あ、僕もです」
本日は金曜日、時刻は夜の10時を回っている。
ベータは深夜0時で終了となり、明日の正午に正式サービスが開始される。
一部のベータテスターたちはベータが終了し、強制ログアウトになるまで宴会をするらしい。当然のごとく浅井もそれに参加するという話だ。
俺と東は不参加の予定だ。付き合いが悪いと言われても気にしない、タフな精神力の持ち主の2人である。
「明日は最初にちょっと集まった後はいつも通りでいいんだよな?」
俺の確認に2人も頷く。
「だな。3人とも別行動だ」
「はい。いつも通りです」
ベータの時は時間が限られているため、3人で協力して攻略を進めた。
しかし、正式サービスではベータの時ほど急ぐ理由がない。そもそも、大体のダンジョンは攻略済みだし……。
本来、俺たち3人は最初の内はあまり一緒に行動しないのがセオリーなのだ。
3人で行動していると、どうしても他の2人に合わせた形になっていく。しかし、3人別行動している場合、個性の強すぎる他の2人が今どうなっているのか全く予想がつかないのである。
それを楽しむのが俺たちの『いつも通り』なのである。
大体の場合、レベルや知識は東。レアアイテムの収集率は俺。人脈構築は浅井がとんでもないことになっている。
「じゃあ、また明日」
「お疲れ様です」
「おう、じゃあな」
こうして、俺たちのベータテスト最終日は終了した。
翌日、正式サービス開始当日。
「私はこの世界の真のGMである。その権限により君たちのログアウトを封じさせてもらった。今から君たちにはデスゲームに参加してもらうことになる。当然、拒否権などない」
VRワールド全体に響く声で、GMの1人が宣言した。
「何だこれ!?本当にログアウトできねえぞ!?」
「デスゲームってなんだよ!?」
「まさか、本当に死ぬのか!?」
「ふざけんなよ。明日結婚式なんだぞ!ここから出せよ!」
多くのプレイヤーたちが泣き叫び、怨嗟の声を上げていた。最後の1人はあまり同情できない。式の前日に遊んでんじゃねえよ。
当然、俺たち3人も正式サービス開始当日からログインしている。
その言葉を聞いて東が最初に言った一言が……。
「道理で作為的なプログラムだと思いました」
コレである。
お前、天才って設定じゃなかったっけ?
「イースのパッチ。正式版でも有効みたいだな……」
「ああ、アーサーも平気なんだな……」
俺たちのメニュー画面には、「ログアウト」ボタンが普通に残っている。
「じゃあ、ログアウトしましょうか」
こうしてログアウト不能のデスゲームからログアウトした俺たちは、他の人のVRマシンにもパッチを当て、全員生存した状態でデスゲームをクリアしたのだった。
デスゲームを企てていた製作者は逮捕され、ゲームは普通に全部回収となった。結構面白かったのに残念である。
1週間後、東は思い残すことなく学会に発表へと向かうのだった。
色々と設定を考えたのに、最後には台無しになります。だからこの話は続きません。
タイトルを「デスゲームだけどログアウトできるのでGMを断罪します」にしようか悩みました。