第40.5話 ミオちゃんとテイムしよう
ミオの短編です。ミオのテイムのお話です。
今回の話の最後に少し試験的なことをします。
メインの話から外れた配下の現状をどのように表現するかがテーマです。
①極々たまに短編が作られる。
②アルタが現状報告をする(短編扱いで一まとめ)。
③話の最後にまとめる(コメント付き、毎回やるわけではない)。
この内の③を試してみようと思っています。
「ご主人様!時間が空いたなら私、魔物をテイムしてくるね!」
「ああ、構わないぞ。ただ、迷宮に連れていけるかはテイムした魔物次第だからな?」
「わかったわ!くー、よっしゃー!初テイムだー!」
ご主人様から許可をもらった私は、意気揚々と魔物のテイムに向かうことにした。
ご主人様から<魔物調教>のスキルは貰っていたものの、今まで私はテイムを差し控えてきた。特にカスタールで屋敷を入手するまではテイムした魔物の置き場所に困るという理由でテイムしないと決めていた。
カスタールで屋敷を入手した後、テイムしようかとも考えたんだけど、あの時はご主人様がお城で仕事をしているときに、自分だけ趣味にうつつを抜かすのもどうかと思って結局テイムせずにエステア行きが決まったというわけだ。
で、折角エステアに来たんだし、そろそろ私のテイムも解禁することにしたわけ。あいにく、老執事吸血鬼は手に入らなかったけど、今後自由時間ができたときはちょくちょくテイムに出かけようと思うの。
「さーて、何をテイムしようかな……」
ご主人様の異能であるマップ、もとい<千里眼>。これがあればどこにどんな魔物がいるか一発でわかるから、より取り見取りでテイムができる。
ミドリ:?
呼んでねーわよ。……とにかく、望みの魔物を選び放題なのだ。さくら様の作った『ポータル』と言う転移魔法で今までに行ったことのある場所を転移し、周辺の魔物を確認する。今の私の<魔物調教>スキルのレベルは3だ。あまり大した魔物はテイムできないだろう。……いや、そんなことはなかった。ドーラちゃんのテイムレベルは3だって聞いたことがある。つまり、ドーラちゃん相当の魔物はテイムできるのだ。これってかなり凄いわよね。
「めぼしい魔物はいないなー」
転移を繰り返すものの琴線に触れる魔物がいない。レアとか異常種とかついている魔物がテイムできると面白いんだけど、さすがにそこまで上手くはいかないかー。そのエリアの魔物を狩りまくるとレア魔物が出やすくなるとは聞いたけど、そこまでの時間はないし……。
「おおっ」
そんなことを考えていたら、転移先のトルテの森でレア魔物を発見した。私の運もそれなりにいいようだ。
フェアリーウルフ(レア)
LV5
<身体強化LV1><咆哮LV1><噛みつきLV1><妖精眼LV1>
必要テイムレベル:3
備考:ファングウルフ系統のレア魔物。毛は光の当たり方によって7色に輝く。
7色に輝くウルフだ。見ただけではどの辺がフェアリーなのかわからないが、スキルに<妖精眼>って書いてあるし、妖精なのだろう。とにかく、見ただけでレアそうだとわかる。
ご丁寧に必要テイムレベルが3である。これはテイムしろと言っているようなモノよね。ご主人様もドーラちゃんと合ったときに<魔物調教>のスキルレベルは3だったみたいだし、運命ってやつね。
ステータスを見てもそれほど強くはない。代わりにスキルの<妖精眼>はレアそうだし、ご主人様に献上しよう。
周囲には結構な数のファングウルフがいるわね。倒してもいいのだけど、それをすると時間が足りないから、ちょっとズルをしちゃおう。
私はこっそりフェアリーウルフに忍び寄る。あらかじめご主人様から<忍び足>スキルを借りているから、意外と簡単だったわね。ふっふっふ、狼の背後を取ってやったわ。
私は背後からフェアリーウルフに飛びかかり、そのまま『ワープ』を連続使用して離脱した。
森を出て草原に着いた。フェアリーウルフはキョトンとしている。何かに捕まったと思ったら草原にいたのだから当然だ。その隙にテイム用の陣を出してぶつけた。さすがに私が敵であることを認識することはできたようで、こちらに向かって飛びかかってくる。
レアだし、珍しいスキルを持ってるしで、ぜひテイムをしたいのだけれども、戦闘力自体は低いみたいだ。他のファングウルフに比べても、飛びかかり方に迫力がない。
私は飛びかかってきたファングウルフを横に避け、ナイフで切り付ける。弓だとHPを削れずにとどめを刺すことになっちゃうからね。
「キャイン!」
フェアリーウルフは軽く切りつけただけで、大きくのけ反って蹲る。HPは1割も減っていない。震え、怯えた目でこちらを見つめてくるフェアリーウルフ。しばらくすると諦めたのか、がくりと首を折る。
>フェアリーウルフをテイムしました。
>フェアリーウルフに名前を付けてください。
「えー」
ここまで簡単にテイムできるとは思っていなかった。と言うかこのフェアリーウルフ打たれ弱すぎじゃないの?軽いダメージであそこまでのけ反って、心が折れてテイムに応じてしまったのだろう。
そっか、この子、レアだけどヘタレなんだ……。
ふと気になったので<妖精眼>のスキルを確認する。
<妖精眼>
目が合った相手に幻影を見せたり、思想を誘導したりできる。使用者とのレベル差が大きいほど影響力が高くなる。レベルで負けていても多少の効果はある。
よく見たらとんでもないスキルだった。精神操作系じゃないの……。使われていたらヤバかったかもしれない。先に確認しなかったのは痛手ね。ゲーマーの名が廃るわ。って、そうか。使ったんだ。でも、ご主人様の<多重存在LV2>で精神系の攻撃が無効になっているんだ。だから諦めてテイムされたんだ。
フェアリーウルフはその場で寝転がり腹を見せている。完全に服従しているようだ。私はその腹を撫でる。最初触れたときにビクッと震えるも、後はなされるがままと言った感じだ。お、コイツ雄だ。
名前はどうしようか。犬だからポチ。捻りを入れてポテチにしよう。
「よし!あんたの名前はポテチよ!私のペットよ!」
「ワン!」
名前を付けられて嬉しそうに鳴くポテチ。
「ポテチ、七色に光っていて目に悪いわね。何とかなんないの?」
「クーン」
今度は悲しそうに鳴くとポテチの色が普通のファングウルフと同じ灰色になる。なるほど、色は本人の意思である程度換えられるのね。
でも、ファングウルフよりも上位種である意識から、ファングウルフと同じ色にするのは抵抗があると……。知ったこっちゃねーわよ。
こうして私の初テイムは完了した。このまま拠点に戻ろうと考えていると、こちらに向かってくる馬車を発見した。何だろう?馬車の方も私を見つけたみたいで、こちらに近寄ってくる。
中からいかにも冒険者と言った獣人のオッサンが出てきた。
「危ない!嬢ちゃん!その魔物から離れろ!」
こちらを心配してくれたようだ。いや、見た感じで大丈夫だとわかるでしょうに……。
「大丈夫よ。この子は私がテイムしたの。これでもDランクの冒険者よ」
私はギルドカードを見せる。
「……本当だ。最近の子供は凄いな……。王都でお嬢ちゃんより少し年上くらいの子供がBランクになったって聞くし……」
それ、聞き覚えがあるわね。
「それより、おじさんたちはどうしてここへ?」
「ああ、嬢ちゃんも冒険者みたいだし、話してもいいか。実はこれから、トルテの森の掃討戦を始めるんだ。俺たちはその第1陣だな」
「掃討戦?今少し入っていたけど、特に変わったところなんて……、あ、獣しかいなかったわね……」
よくマップを確認したら、獣系の魔物以外、1匹たりともいなかったわ。それと何となく森が寂れている気がしたわね。
「そうだ。最近、トルテの森が獣系の魔物だらけになって、近くの村の畑が壊滅的な被害を受けたんだ。それで、冒険者が集まって掃討戦を依頼されたんだよ」
トルテの森って、魔物のバランスが崩れやすいのかしらね。私たちが来たときは植物魔物優性でファングウルフが出てきたけど、今度はファングウルフ優勢で食糧難で出てきたのかしらね。どのみちファングウルフは出てくるのね。そして壊滅的な被害を受けた村にも心当たりがあるわね。
「前にトルテの森近くの村で、異常調査の依頼を出すって話があったんだけど、それと関係ある?」
「よく知っているな……。ああ、その依頼と同じ村が被害を受けた。正確には異常調査は2回目なんだ。1月ほど前の1回目では異常なしってなっていたんだけどな」
私たちが魔物を全滅させた後の話ね。
「1回目の時の依頼は真っ当だったんだが、2回目の依頼はなんかあやふやで中途半端な依頼だったんだ。それで誰も受けなかったんだよ」
あー、そう言う背景があったのね。私たちが帰った時の依頼はご主人様の影響でまともだったんじゃないかしら……。それ以外の時の依頼は酷いのでしょうね。最初の依頼をもし私たちが見つけていても、受けなかった可能性が高かったしね。ユリーカが途中までやっていたから受けただけだし……。
「しばらくしたら畑に被害が出て、それでも誰も受けないからどんどん被害が大きくなって、ついには壊滅一歩手前で近隣の領主から強制、と言うか泣きが入ったみたいで調査したら生態系異常がわかったというわけだ」
「魔物のポップの都合上、1度全滅させる必要があるのね?」
「そうだ。掃討戦となるとそれなりの戦力が必要だからな。領主も無理をして俺に依頼してきたくらいだからな」
「?おじさん、有名なの?」
「あー、知らんかー。有名になったと思っていたんだが……」
自信満々に言った手前、少し悲しそうにするオッサン。
「えーと、俺の名前はガリオン。これでもS級冒険者だ。「神獣ガリオン」。それなりに名の通った冒険者だぜ」
「あ、S級!」
ご主人様が言っていたS級冒険者の1人ね。<神獣化>っていういかにもなスキルを持った獣人がこのオッサンだったのね。大丈夫よオッサン。私がものを知らないだけで、多分有名だから。
「ま、そう言うわけだ。S級がいればさすがに掃討戦も大丈夫だろってわけだな」
私は執事のじいさんしか知らないけど、それでもS級っていうだけで大丈夫そうな安心感はあるわね。
「そうだ。お嬢ちゃんはこれからどうするんだ?見たところ軽装みたいだが、帰り道とか……。よかったら俺たちと一緒に掃討戦でもやるか?Dランクだから後ろで手伝いくらいしかできないかもしれんが、報酬は出すぞ?」
親切心のつもりだろうけど、私としては早く1人になりたいわね。人目のあるところで『ポータル』を使うわけにもいかないし。
「いいわ。今さっきテイムしたこの子に乗って帰るから」
「!?」
あれ?ポテチが驚いた顔をしている。いや、私軽いしそれくらいできるでしょ?
「そうか。嬢ちゃんは小さいがDランクだ。俺は年齢よりもランクで判断する主義だから、鬱陶しいことは言わねえが、それでも一応言っとくぞ。気をつけて帰れよな」
「わかったわ。おじさんたちも掃討戦、頑張ってね」
「おう、任せとけ」
こうしてガリオンのおっさんと別れた私は木陰で『ポータル』を使って帰ることにした。
「と言うわけで私のテイムしたポテチよ!」
宿には連れていけないので、拠点でのお披露目となった。
「ほー、珍しいスキルを持ってるし、レアなのか。中々の魔物をテイムしてきたな」
「へへーん、羨ましいでしょ?」
「ああ、流石ミオだな。で、それくらいなら迷宮に連れていけるけど、どうする?」
折角テイムしたんだから、迷宮に連れていきたいんだけどね。
「あー、止めておくわ。この子臆病、いえ、ヘタレみたいなのよ。さっき迷宮に連れて行ったら、隅っこで震えていたわ……」
「……それは魔物としてどうなんだ?」
「まあ、迷宮要員は十分いるし、必須と言うわけでもないから、とりあえずはお留守番ね。拠点なら犬小屋を置くスペースくらいあるでしょうし」
「犬小屋なのか?狼なのに……」
「それは私の趣味ね」
ポテチが少し悲しそうな顔をする。屋敷の中が良かったのかな?いや、そこまで甘えさせるつもりはないわよ。
「あ、そう言えば……」
ついでなのでトルテの森の話もしてみた。
「そうか。トルテの森は生態系が崩れやすいみたいだな。そしてあの村はいい加減な依頼の常習犯だったと……」
「今頃はガリオンのオッサンが頑張っていると思うわよ」
「そっちは少し興味があるな。でもまあ、見に行くほどではないかな。あんまりあちこちに出没するのもよくないしな。『ポータル』は秘密なんだから。一応、ミオも気を付けてくれよ」
「はーい」
移動時間の計算が合わなくなるから、ポンポン飛ぶわけにもいかないわよね。ご主人様、割とポンポン飛んでいる気がするけど……。
余談だけどポテチは私を乗せられなかった。貧弱ね。ご主人様からステータスを貰って、何とか私を乗せて走り回れるようになったわ。ちょっと情けないけど、初めてテイムした子だし、これからよろしくね。
「アォン!」
*************************************************************
あの人は今
ミドリ:仁の従魔、ドリアード
1日の大半をぼーっとして過ごす。時々ノルマの秘薬作りをする。
ミドリ《幸せ……》
カスタール冒険者組:8名の奴隷冒険者、Sランクを目指す
Bランクとして活動中。現在、Bランク依頼「ブラッドタイガー討伐」を遂行中。
クロード「亀、鳥、虎……どこかで聞いたような……」
ルセア:仁の奴隷、第2の信者、元女王騎士
カスタールの屋敷でメイド長をしている。時々冒険者として活動。
ルセア「順調ですね。次の定例報告会が楽しみです」
サクヤ:カスタール女王、のじゃロリ(余所行き)
女王として公務で多忙。王都の立て直しが終わったので他の都市の視察をしている。こっそり『ポータル』を使用(アルタ了承済み)。
サクヤ「いやー、コレ楽でいいわー」
ユリーカ:蘇生者、記憶消滅
メイドとしてカスタールの屋敷で活動。冒険者としても活動を開始する。現在Dランク(死ぬ前はGランク)。
ユリーカ「植物の魔物、嫌い」
エステア探索者組:シンシア、カレン、ソウラ
メイド修行中。難易度ベリーハード。
シンシア「な、の、で、すー!」
双子「「ばたんきゅー……」」
恐竜の卵:幼女(確定)、変身有り(確定)
ティラノを倒した直後にポップしたタマゴ。
タマゴ「うまれるまでまだまだじかんがかかりそう」
あまり見かけない形式だとは思いますがどうでしょうか?
配下が多くなるので、全員分の短編を作れない。でも全く話に乗らないのもつまらない。と言う理由から考えた苦肉の策です。名前付きの配下は極力書きます。書かれていないときには基本的に前回と同じです。この中から短編のネタを拾うこともあるかもしれません。