第36.5話 ドーラの1日(カスタール編)
ドーラの短編です。2話投稿の1話目です。週の途中で出すという短編でしたが、タイミングを逃し、同時投稿になってしまいました。
後、カスタールでの話です。.5話として出すタイミングがなかったんですよね。
35.5話に「死者蘇生」が入ったせいで……。思い切って35.3333話と35.6666話にするべきだったのでしょうか。
時は少し遡る。
仁がカスタールの王城で魔族の後処理をしている間、他のメンバーは思い思いに日々を過ごしていた。もちろん、手伝えることがあれば手伝うが、基本的には仁とアルタ任せとなってしまうのは仕方がないことだろう。
もちろん、ドーラに手伝えることなどない。いや、時々仁の元を訪れて膝に座るという大切な仕事はあるのだが……。
そんなドーラの1日を記していこう。
-朝-
ドーラが朝起きると、仁か他のメンバーに抱き枕にされている。仁はご主人様の強権を使い、2日に1度はドーラを抱き枕としている。当たり前ではあるが、ドーラとしても仁の抱き枕になっているときが1番幸せである。他のメンバーに抱き着かれるのも嫌いではないのだが……。
基本的にドーラの朝は早い。もちろん、子供なので寝るのも早い。時間的には6時前だろうか、仁も起きるのは7時過ぎなので、1時間以上は早く起きている。では、仁が起きるまでの間ドーラが何をしているかと言うと、実は人型になって抱き着いている。
仁は基本的に竜形態でしか抱き枕にしてくれない。しかし、竜形態では抱き着かれることはできても、抱き着き返すことが出来ないのだ。ドーラもそれは寂しい。なので、仁が起きるまでの間は人間形態で逆に抱き着くということをして、幸せを噛みしめているのだ。
《えへへー》
そして仁が起きそうになると竜形態に戻るのである。つまり、仁が気付いていないだけで、全裸の幼女と抱き合うという危険な絵面が2日に1度、1時間は繰り広げられているのである。
起きた後は朝食を食べる。朝はカスタール王都の屋敷にいるメンバーのほとんどが同時に食事をとる。さすがにメイド、執事は給仕をしているが。この国の女王であるサクヤも、この屋敷には入り浸っている。そのせいで、仁の膝の上というドーラの優先席が最近脅かされているのが寂しい。
食後、最初にドーラはポーションを作る。屋敷にいるメンバーにはそれぞれにノルマと言うわけではないが、やっておいてほしいことは言いつけられている。ドーラに与えられたのはポーション作成だ。1日に5本くらいと言われているが、仁に褒めてほしいドーラは1日10本作ることを決めている。
ドーラのポーションは品質が高すぎて、売りに出せないと言われている。しかし、仲間内で使う分には品質が高くて困ることもないので、全力でポーション作成を行っている。先日、ついに通常品質に比べ、155%の効果をマークすることに成功した。仁は喜んでくれたが、どことなく寂しそうな顔をしていた。
《まだ、たりないんだー》
そう思ったドーラは早く160%を越えられるように今日も努力するのであった。
昼までの時間は、ミドリと一緒に日向ぼっこをしているか、冒険者として活動しているかのどちらかだ。今日は冒険者としての活動だ。
ドーラは屋敷の外での単独行動を仁から禁止されている。5歳くらいだと、正直何をしでかすかわからないからだ。今日の依頼はルセアやクロードと一緒に受けることになっている。クロードたちは最近、期待のルーキーとして王都でも有名になってきている。そんなルーキーと一緒に依頼を受ける幼女は否が応でも目立つ。さらにはルーキーから格上のように扱われているのだからなおさらだ。
依頼は簡単な討伐依頼だった。まずは数匹のオークを倒しに向かう。仁から借りている馬車で目的地まで向かうのだ。この頃になるとクロードたちも仁からある程度話を聞いているため、ドーラがブレスを放っても驚かない。当然、最初の1回はメチャクチャ驚いていた。
《ふぁいあー》
ブレス1発でオークを全滅させ、訓練にならないとクロードたちから泣き付かれた。仕方ないので馬車でお留守番するドーラ。分裂タモさんに話しかけるもレスポンスが遅くて、そのうち眠ってしまう。起きたら帰宅する途中だった。
-昼-
昼は各々でとることも多いが、この日は結構な人数が屋敷で食事をとることを選んだ。拠点のメイドたちの料理の腕もグングン伸びていて、ドーラ的にも十分に満足する出来となっている。でもやっぱり1番はミオの料理かなと思っている。もちろん、作ってくれた人に悪いので口には出さないし、あまり思わないようにもしている。
ドーラは里にいたころ、人間の世界程美味しいものは食べていなかったので、すっかり人間の食事に夢中になってしまった。特に人間の料理に慣れ切る前にミオの料理に慣れてしまったことで舌が肥えている。ふと、もうあの頃の生活には戻れないなーと考えてしまった。
結構厳しかった里での生活の事は、もうずいぶんと忘れてしまっている。なぜ、外には出るな、<竜魔法>は使うな、鍛えるなと言われていたのかも思い出せない。まあ、今が幸せだから、細かいことは置いておこう。
午後はミドリと日向ぼっこすることにした。ミドリの感性では、日向ぼっこは気持ちがいい。日陰の隅っこは落ち着くということらしい。一切喋らずに仲良く日向ぼっこしている。一切喋らない状態で仲がいいのかはわかりにくいが、少なくともドーラは仲が良いと思っているようだ。
《zzz》
《……》
少し曇ってきたので、残念ながら日向ぼっこはここまでにすることにした。丁度いい時間なので、仁の膝に座りに行くことを決めた。
勝手に使っていい『ポータル』で王城の執務室に入る。そこではサクヤがドーラの特等席に座っていた。とても寂しそうな顔をするドーラ。それに気づいた仁はサクヤを片方の膝に乗せ、もう片方にドーラを乗せた。ドーラ的にはこれでおっけーです。
仁の仕事が終わるまでずっと膝の上にいることが出来たドーラも大満足だ。いつもは途中でどけられてしまうことも多いのだが、珍しく最後まで一緒にいられた。帰るときは仁に肩車をされている。サクヤはまだすることがあるのでそれを羨ましそうに見ていた。
-夜-
夕食のメインはハンバーグだった。ミオの手作りだ。拠点にいるときは人数が多いから、ミオは一品だけ作るということも多い。肉汁が染み出るハンバーグは子供たちに特に人気だ。当然、ドーラも大好物だ。
食後、しばらくしてから風呂に入る。サクヤの別荘だけあって大きな風呂がついているので、さくら、ミオとともに向かう。余談だが、持ち主がサクヤだけあって、若干男性風呂は小さい。屋敷の男女比が著しく偏っているので、それでも男性用の方が人口密度は低いのだが……。
最初の頃は良さがわからなかったが、仁とともに行動している内に風呂の良さに気付き、それからは可能な限り入るようにしている。髪を洗う時に石鹸が目に入ると辛いので、ぎゅっと目を閉じている内にさくらに洗ってもらっている。
ミオは横で「あ”ー」とオッサンっぽい声を出しているが、ドーラにその判断はできない。
後からセラが入ってきた。身体を隠すことなく堂々としている。ドーラの目も自然と揺れる胸に行く。自分の胸を見る。大丈夫。未来はきっと明るいから。
風呂から出るとドーラはパンツしか身に着けない。一応、仁以外の男の目もあるので、『ポータル』で直接部屋に行く、仁の。今日は2日連続で仁の部屋で寝ることになっている。
半裸のドーラを見ても特に仁の反応はない。慣れてしまったようだ。
仁はベッドに横になりながら書類をペラペラとめくっている。まだ、仕事は忙しいようだった。ドーラはベッドに乗ると、仁の事をじーっと見つめている。特に何をするわけでもなく見つめている。
「そろそろ寝るか。ドーラ、おいで」
その言葉を聞いてドーラは竜形態に変身する。パンツがひらりと落ちる。
《ごしゅじんさま、おやすみー》
「おやすみ」
こうしてドーラの1日は終了した。
「あいつ出番少ないな」と思うと、つい短編を作ってテコ入れしたくなる性分です。あ、さくらちゃんは影が薄いくらいでちょうどいいと思っているキャラです。