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列伝第2話 冒険者クロードの冒険(1/5)

クロードの短編、列伝です。ナンバリングからも分かるように5話構成です。いつもの短編3話で終わる予定が、いつもより長い短編5話になってしまいました。

本編の方が仁の視点で比較的駆け足なので、こちらでは1つのエピソードをじっくり描こうという試みです。説明回でもあります。人によってはこっちの方が好みかもしれません。

少し前に登場人物紹介をしましたが、いきなり台無しにします。あの時点では事実だったんですけどね。

「そうか、明日Bランク冒険者に上がるための試験があるのか」

「はい。その試験の1つでBランクの任務を受けるので、しばらくこの街を離れます」

「わかった。頑張れよ」

「はい!」


 僕はご主人様に明日のランクアップ試験について報告した。ご主人様の奴隷として冒険者登録してからまだそれ程経っていないのに、もうBランク冒険者の試験を受けるなんて、正直信じられない。でも、間違いなく明日のランクアップ試験には冒険者組奴隷8人が全員参加することになっている。


 このランクアップ試験は3つの項目に合格する必要がある。


 1つは筆記試験だ。別に小難しい計算をさせるわけではない。あくまでも一般常識や冒険者のマナーについてペーパーテストをするだけだ。あまり、頭のよくない冒険者も多いから、それほど難しいものではない。難しくしたら落ちる人が続出したという過去の事例があるらしい。僕たちもルセア先生に教わって、簡単な読み書きならできるようになったからね。


 次に実技試験がある。これはAランク冒険者との模擬戦により、ある程度の実力が認められれば良い。なんで態々Aランク冒険者なのかと言うと、Bランクの冒険者に模擬戦をさせると、接戦になって正常な判断が付きにくい部分があるからだ。Aランクほど離れてしまえば、大番狂わせはほとんどないようだからね。


 最後に実地試験だ。これは実際にBランクに相当する依頼を受けるという試験だ。まあ、Bランクになるんだから、Bランクの依頼を受けられて当然だという理屈である。


 試験込みとは言え、依頼なのだから報酬は出る。しかし、若干安くはなるようだ。まあ、事実上Cランクで依頼を受けているわけで、まだBランクの報酬を受け取る権利がないし、依頼が完遂される確率も若干低いという理由からだ。


 試験には試験官もついてくる。不正がないか、Bランク冒険者に相応しい振る舞いをしているか等を確認されるのだ。ちなみに依頼に対して、試験官は一切手を出さない。失敗しようがどうしようが、試験官が代わりにやったりはしない。もちろん、命の危機に手助けくらいはするかもしれないが義務ではない。基本的には全て自己責任で試験官は『見る』ことだけが仕事だ。その点は依頼主も事前に了承させられている。


 明日の午前中で筆記と実技、午後から実地試験をする予定となっているから、今日中にできるだけの準備は整えておきたいところだ。



「武器は新調した方がいいかな?」


 明日の試験の前に僕たちは最後のミーティングをすることにした。今質問したのはアデルだ。最初の頃はいつも怯えたような顔をして俯いていたけど、この頃は随分自信がついたみたいで、俯くことが少なくなった。


「止めとけよアデル。ギリギリで使いなれていない武器に変えてもいいことないぞ」


 答えたのはノットだ。ノットは今現在、鍛冶師の下で修業中だ。なんでも、Cランクの依頼で助けた鍛冶師に気に入られ、半分弟子のような立場になっているらしい。もちろん、冒険者としての仕事も続けているが、若干受けている依頼が少なく、今回の試験にはぎりぎり間に合ったという具合だ。


「あ、それもそうだね……。そう言えば、結局ご主人様からもらった武器だけでここまで来ちゃったね……。それほど強力な武器じゃないみたいだけど……」

「もう、アデル!ご主人様じゃなくて仁様でしょ!」

「あ、ココちゃん、ごめん……」


 アデルを注意したのはココだ。冒険者組奴隷の女の子たちのリーダー的存在でもある。最近、栄養状態が良くなったせいか、徐々に胸が大きくなってきたと言っていた。そんなことを僕に言われても困る。リーダーと言うこともあって、相談事があると僕かルセア先生に話が行く。いや、胸の話は明らかにルセア先生向けの相談じゃないだろうか?


 なんでココがアデルを注意したかと言うと、ご主人様の呼び方の話だ。僕たちはこれからBランク冒険者になろうとしている。しかし、奴隷はBランク以上の冒険者になることはできない。Bランク、つまり上級冒険者には権利と義務が付きまとう。でも、奴隷には権利も義務も適用できないから、Bランクにすることはできない。


 じゃあ、僕たちの奴隷契約が解除されるのかと言うとそうでもない。なんでも、上位の<奴隷術>は奴隷紋を隠しておくことが出来るらしい。冒険者ギルドの方で確認するのは奴隷紋と隷属の首輪の確認だけだ。もちろん、それ以降でも奴隷になったり、奴隷であることが明らかになったら資格を取り上げられてしまうらしいけどね。


 その高位の<奴隷術>に関しては明らかにする方法もない。と言うか、それができる人間がいないとご主人様が言っていた。それ故、僕たちは奴隷紋を隠すだけで、奴隷のままと言うことになる。その話を聞いたとき、奴隷から解放してほしいという子は誰もいなかった。ご主人様は僕たちを奴隷のままSランク冒険者にするというのは、今までの話から予想が出来ていたからだ。そして、ご主人様の機嫌を損ねるようなマネだけは絶対にできない。


 話を戻そう。対外的には僕たちは奴隷じゃなくなる。それなのに『ご主人様』と呼ぶのは良くない。なので『仁様』と呼ぶように改めるように言われているのだ。僕も声に出すときは仁様と呼ぶようにしているが、心の中ではまだご主人様呼びが抜けない。うっかりをしでかす前に治したいと思う。


「まあまあ、ココちゃん。アデル君も人前ではきっと間違えないよ~。大丈夫だよ~」

「ど、努力します……」

「もう、仕方ないわね」


 ココをなだめているのはシシリーだ。間延びした声からも察せられる通り、かなりおっとりした子だ。ココとは幼馴染で気が付いたら一緒にいる。間延びした声と言うが、それは精神的に余裕があるときだけらしい。後、ご主人様の前では間延びした声は出さないようだ。つまり、ご主人様の前にいるときは精神的な余裕があまりないということだろう。


「あ、そうだ。武器の話に戻るけど、今回の試験には俺の作る武器は間に合いそうにないな」


 アデルも言っていたが、僕たちの使っている武器は最初にご主人様から渡された物のままだ。正直言うとCランク、これからBランクになろうという冒険者の使う武器ではない。奴隷の身分として高価な武器が欲しいとは言えなかったというのが主な理由だ。

 ノットは鍛冶師として、いずれは僕たちの武器を作ると言ってくれている。グングンと成長しているらしく、もう少しで店売りレベルの武器が作れるらしいから、上手くいけばBランク試験に間に合うかも、と言っていたが残念ながら間に合わなかったらしい。


「まあ、ノットは冒険者もやってるから難しいよね」

「頑張ってね~」

「おう、次のAランク試験までには間に合わせるさ」

「気が早すぎるよ……」


 ノットが威勢のいい返事をしているが、アデルの言う通りだ。まだBランクにもなっていないのに……。


「それよりも皆さん、筆記試験の準備はできていますか?」


 そう言ったのはユリアさんだ。生真面目で責任感が強い子だ。とは言え、リーダーシップがあるというわけではなく、一歩引いたところから全体を見渡すような子だ。彼女だけさん付けなのは、彼女の威厳が呼び捨てにすることを躊躇させるからだ。理由は分からないけど、彼女からは気品のようなものを感じる。記憶喪失らしいけど、失われた過去に何か理由があるのだろうか?


「私は大丈夫よ!」

「僕も……」

「う、あんまり自信ねえ……」

「うふふ~」


 大した問題は出ないって話だけど、僕たちはまともに勉強してきたことの無い子供で、奴隷だ。若干不利な部分はあるのかもしれない。まあ、ルセア先生からしっかり教わっているから大丈夫だろうけど……。


「じゃあ、特に筆記に不安のある子はこの後少し残って最後の予習をしましょう。出来れば大丈夫な子は教える側として残ってくれるとうれしいです」

「ふふ~、ユリアさんにそう言われて帰れる子はいませんよ~」

「そうだよね……。それにもし、苦手な子の勉強を見ないで、その子だけ落ちるようなことになったら、ごしゅ……、仁様からなんて言われるか……」

「ひっ!」


 最後に息をのんだのはイリスだ。最初の印象は眠そうな顔をした、無口な女の子だった。でも、一緒に行動している内にそれが間違いだとわかったんだ。彼女は眠そうなのではなくて、眼が悪くて目を細めているだけ。ただ無口なだけじゃなくて、心の中では色々考えているけど、口に出すのが苦手なだけ、と言うことがわかった。ルセアさんにその話をしたら、王都の眼鏡屋さんを紹介してくれた。この頃は僕たちも依頼料でそれなりに懐が潤っているから、高級品である眼鏡を買うこともできた。


「嫌!絶対に嫌!仁様のご機嫌を損ねることだけは私が絶対に許さないわ。最低でも全員合格できるだけの知識がつくまでは、寝ることも許さないから。待って、でもちゃんと寝ないと能力が発揮できないから、ある程度は寝させないとむしろマイナスになるわ。どうする?そうだ、強烈な睡眠薬で深い眠りにつかせて、短時間でも効果の高い眠りを与えればいいのよ。あんまり続けると負荷が大きいだろうけど、1日くらいなら何とかなるよね。そうと決まれば早速買いに行こう。でも勉強についていないと言うのも不安だし……、メイドの子にお願いしよう。でも、勝手にメイドを使うと怒られるから、ルセア先生に先に報告しよう。後、お小遣いとして多少のお金を渡すことも忘れないようにしないと……」


 一気にまくしたてるイリス。口に出すのが苦手と言ったけど、当然例外もある。ある程度感情が高ぶると、考えることがそのまま口に出るのだ。『考える=口に出る』だから、会話ではなく独白みたいなことにしかならないんだけどね。


 そして彼女の感情が高ぶった原因なんだけど、これはご主人様への恐怖だと思う。僕たち冒険者組の奴隷は全員ご主人様を畏怖している。その中でも特にイリスの畏怖は抜きんでている。ご主人様に敵対するくらいなら本気で死んだ方がマシだと考えているくらいだ。理由を訪ねてもあまり詳しくは教えてくれなかった。唯一教えてくれたのは、『あの方は平気で世界を滅ぼせる』の一言だった。いや、いくら規格外のご主人様でも、それは無理だろう……。


「大丈夫ですよ、イリスちゃん。ロロが試験の予想問題もまとめてきたから、これを使えば効率的に勉強できますよ」

「あ、ありがとう。ロロちゃん、でも睡眠薬は念のため買うね」

「ええ、お金は半分持ちますね」


 そう言うのはロロだ。ご主人様に惚れているロロは、ご主人様のためだけに生きていると公言している。ご主人様のためなら何でもやると躊躇なく言い切り、僕たちの中で最初に盗賊相手の殺人を実行したのも彼女だ。ご主人様好みのスタイルになることを目指し、牛乳を飲みまくっていると話していた。だからどうして僕に言うのか……。


 このロロを含めて、イリス、ココの3人は『ご主人様のため』が行動の最優先事項になっている。ココは忠誠で、イリスは恐怖で、ロロは愛がその理由だ。もちろん、僕たちもご主人様の命令には従うけど、ご主人様からはある程度の行動の自由を認めてもらっている。ノットが鍛冶師をしているのがいい例だ。他の子も今は特別何かをやっているわけではないけど、いずれは趣味などを見つけたいと言っていた。でも、この3人だけはその予定はないようだ。


「あー、そこまで思いつめなくても大丈夫だよ。最悪の場合はアルタさんが答えを教えてくれるってさ」

「なんだよ、クロード。それを知ってるならさっさと教えてくれよ。あービビった。特にイリスのヒステリーにビビった」


 ノットがお道化たようにいう。


「ヒステリーとは何よ!ノットが勉強自信ないって言ったからじゃない!それにアルタ様に頼るってことは実力じゃないのよ!そうなったら、仁様から呆れられるかもしれないわよ!まあ、その場合、呆れられるのはノットだけだろうから、私たちに被害がないのなら犠牲になってもらっても構わないのだけど?」


 アルタさんが答えを教えてくれれば、合格はできるだろう。でも、それは僕たちの実力ではない。もしかしたら、ご主人様に不快な思いをさせるかもしれない。僕たちにとって、ご主人様の機嫌を損ねるかもしれない選択肢は基本的に選べない。


「わ、悪かったよ……、そうだな。まずは全力を出すことから考えないとな。それにご主人様に呆れられて、訓練の時の扱いが悪くなったら、泣くに泣けないからな……」

「そうだね。あくまでも最後の手段と言われてるし……、心に余裕を持たせるためって意味合いの方が強いと思うよ。それに頼りきりになるようだと……、これ以上は止めよう」

「そうね。それ以上話すと、暗くしかならないわね。とりあえず、睡眠薬は止めるわ」


 この話はいったん終了と言うことになった。何故かと言うと……、出来れば話したくないが、ご主人様は僕たちが増長すること、他者を見下すようなことを許していない。その為、たまにご主人様自らが僕たちと模擬戦をすることになっている。僕たちの鼻っ柱を折るためだ。


 方法は簡単、ご主人様の5m以内に、意識のある状態でたどり着ければ合格だ。そうすれば次は武器を持った打ち合いと言う形になる。しかし、今のところ僕たちはその第1の試練すら突破できていない。ご主人様の殺気を浴びた瞬間に為す術もなく崩れ落ちるからだ。未だにその訓練の時は換えのズボンとパンツが忘れられないという情けない有様だ(このときは魔法できれいにすることを禁止されている)。盗賊相手に命のやり取りをしたこともあるけど、そんなのはご主人様を相手にするのに比べれば、優しいにもほどがある。


「そう言えば、シシリーはどうなの?さっきから勉強については何も言ってないけど?」

「ふふ~、ココちゃんならわかるでしょ~?」

「あ、シシリーそんな頭良く無いものね……。ユリアさん、生徒1名追加で……」

「わかりました。ロロさん、先ほどの予想問題をまず全員でやってみたいのですが、よろしいですか?その結果でいろいろ考えましょう」

「ええ、構いません。ロロは全員合格するための協力なら惜しみませんから」


 そう言ってユリアさんに問題を手渡すロロ。その後、僕たち全員で予想問題を解いた。やはり、ノットとシシリーだけ少し悪く、このままだと合格がギリギリなので補習だ。思っていたよりは酷くないので、ユリア、ロロ、イリスだけが付き添うことになった。




 次の日、僕たちは朝から冒険者ギルドに向かい、Bランクへのランクアップ試験を受けようとしていた。


「よお!お前たち今日がランクアップ試験なんだって?」

「あ、はい。そうです。順調にいけば明後日にはBランクになってます」


 顔なじみの冒険者さんが声をかけてきた。


「はえーな。あっという間にランクで抜かれて、もう上級の仲間入りかよ。あーくそ!最初の頃に何としてでも仲間にしとくんだった!」

「せめて!せめて女の子の1人でも!」


 王都ではそれなりに活動していて、顔なじみの冒険者さんも多くなってきたし、僕たちの顔もそれなりに売れ始めている。今声をかけてきたのは王都で冒険者業を始めたころに、はぐれオークに襲われていたところを助けた冒険者パーティの人たちだ。オークは強敵だったけど、8人がかりだったので何とか勝つことが出来た。


「あら、クロード君。今度お姉さんとデートしない?」

「ええっと……」

「こら、クロード君が困ってるでしょ。それよりもいい防具のお店があるんだけど、私と一緒に行かない?」

「あ、あの……」


 受付嬢のお姉さんたちもよく声をかけてくる。なぜか僕と一緒に出掛けようとするお姉さんが多い。最初に声をかけてきた受付嬢さんは通り魔に襲われそうなところを助けてから、やたらと距離感が近くなってきた気がする。もう1人の受付嬢さんは盗賊に攫われそうなところを助けてから、やたらと武器防具のお店に誘ってくる。お礼はちゃんともらったから、気にしなくてもいいんだけど……。


 何とか失礼にならないように誘いを断り、ランクアップ試験を受けに来たことを伝える。一緒に出掛けるのが嫌なわけじゃないけど、今はランクアップ試験の方が大切だからね。


 しばらく待っているとギルド長がやってきた。王都のギルド長と言うこともあって、元Sランク冒険者らしい。ご主人様にその話をしたら、鼻で笑っていた。Sランク冒険者に嫌な思い出でもあるのだろうか?


 なんで『元』が付くのかと言うと、依頼を受ける側から仲介する側になることで、従来の規則に適応するわけにいかなくなるからだ。


「おお、来たか」


 ギルド長。初老の男性で眼光は穏やかだけど、立ち振る舞いにまったく隙がない。僕たちもご主人様の力によって多少は強くなったからわかるけど、今の僕たちでは8人が束になってかかっても勝てないと思う。それくらいの力の差を感じる。まあ、どれだけ差があるかわからないご主人様に比べれば、差がわかるだけマシと考えることもできるんだけどね……。


「はい、本日はよろしくお願いします」

「よろしくお願いします!」×7


 僕が最初に挨拶すると、他のメンバーも続けて挨拶する。ルセア先生から挨拶の仕方は念入りに教育を受けているからね。元騎士と言うルセア先生は礼儀作法とかには特に厳しかった。


「うむ、相変わらず礼儀正しい子供たちだな。その上実力もあるし、向上心も将来性もある。最初は子供だらけのパーティで不安もあったが、全くいらん心配だったな!」


 ギルド長は僕たちがこの街で活動をしてから、色々と便宜を図ってくれている。もちろん、不正を許すとかそういう意味ではなく、討伐のコツとか、採取のコツと言った知識面の話だ。まあ、元S級冒険者に直接教授できるのは、ズルいと言えばズルいんだけど……。僕たちからしてみれば、優しいおじいちゃんと言った感じだ。


「さて、約束通り今日はBランクの試験だ。君たちなら大丈夫だと思うが、頑張ってくれよ」

「はい」×8


 ギルド長は挨拶だけすると奥に引っ込み、受付嬢さんの1人が説明を始めてくれた。あれ?ギルド長あいさつしに来ただけ?



 早速筆記試験が開始された。8人全員同じ部屋で試験を受けているけど、お互いの答案は見えないようになっている。顔からしか判断はできないけど、見た限り苦戦している仲間はいないみたいだ。


 と言うのも、ロロの用意した予想問題集の出題傾向がほとんどそのまま当てはまっているからね。それだけで8割以上は問題なくとれそうだ。ちなみに合格ラインは6割。試験時間が終わるまでに2回見直しをすることが出来た。うん、少なくとも9割は固いだろう。


 別に落とすのが目的ではないので、不自然なひっかけ問題とか、出題者の意図が読めないような問題は出てこなかったのも大きいだろう。



「終わったー!」


 ノットが机に突っ伏している。安心した顔をしているから大丈夫だろう。


「クロード、この問題が少し疑問だったんだけど……」

「あ、それは……」

「え、あー間違えた―」


 部屋で感想などを言いながらしばらく待っていると、受付嬢さんが戻ってきて、全員合格と告げた。


「ふう……、これで仁様に顔向けができるわね。シシリーもお疲れさま」

「ふふふ~。ココちゃんさすがだね~」

「予想問題集が無駄にならなくてよかったです」

「いや、マジ助かったよ!あれのおかげで合格できたと言ってもいいよ」


 ちなみに得点はココ、ロロ、イリスのご主人様最優先組が全員満点。僕とユリアさんが9割後半。アデルは1人だけ8割。ノットとシシリーは7割後半となった。やはりご主人様最優先組はモチベーションが違うようだ。僕とユリアさんはちょっとしたポカで満点を逃していた。2回見直したのに……。付き合いが短いとわからないかもしれないけど、ユリアさんも地味に凹んでいる。いつもの威厳が2割減くらいになっているからね。

多分3日毎くらいで更新して2週間潰させていただきます。もうすぐ3章が完成するから。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
ココとロロ結構好きだから主人公との絡み増やしてほしいなぁ〜。胸も大きくなってきたとのことだし主人公を籠絡して欲しいね。 奴隷紋の確認ってどうするんだ?全裸になるのか? イリスはハーフエルフだけあっ…
[気になる点] この世界には奴隷の解放制度は無いのでしょうか?借金奴隷なら給料でなんとかなりそうですけど。そこら辺の説明と、制度があるのならクロード達が抜け出さない理由を記述した方が好いと思います。
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