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第30話 報酬と依頼

黄色い潜水艦で10面ダイス(¥1040)を買ったので、恐竜の卵のダイスロールは次の更新までに行う予定です。出番は結構後の予定なんですけどね。あ、ランダムの中身は感想欄+個人的な選択肢から作成するするつもりです。男の娘が多いのには驚きました。初期案ではユニークスキル<性転換>を持ったキャラとかいたんですけどね。

 ギルバートが同時刻に出るといったが、ついてくるものだとは思わなかった。俺たちの馬車から一定の距離を取って進めているようだ。

 マップを見ても特に敵対するつもりがあるわけでもないようだ。どちらかと言うと目を離したくないといったように感じられる。

 と言うか、ギルバートが近くで見ているせいで、異能などを使った戦闘ができないし、全員を『ルーム』外に出しておかなければいけないので結構面倒だった。


 アタリメの街に到着した俺たちは、冒険者ギルドに向かうことにした。後回しにした処理を清算しなければいけないからな。


 受付嬢さんにギルド長への取次ぎをお願いする。ちなみになぜかギルバートも一緒に来ている。


「なんでギルバートがついてきているんだ?」

「すまない。スタンピードと直接関係があるわけではないのだが、少々話したいことがある。申し訳ないがギルド長との話に同席させてもらえないだろうか?」

「俺は別に構わないが、ギルド長が何というかは知らないぞ?」

「ありがとう。ギルド長の件は安心してくれ。ギルド長も私の事情を知っているからな。反対はしないだろう」


 なんでギルバートを同席させても構わないか?その理由はギルバートのステータスにある。


ギルバート

LV32

性別:男

年齢:29

種族:人間

スキル:<剣術LV4><槍術LV2><騎乗戦闘LV2><身体強化LV3>

称号:女王騎士


 称号を見てくれ。見えるだろう、女王騎士の文字が…。ここはどこだ?ああ、カスタール女王国だ。女王騎士というのは言ってしまえば女王の近衛兵のようなもので、通常の騎士よりも高い地位となっている。当然、要求される実力もかなり高くなる。

 今回は結構派手に動いたからな。何かしらの面倒事に巻き込まれる可能性は考えていたし、当然覚悟の上だ。いきなり王族関係とは思わなかったが…。


 少し待つとギルド長がやってきた。


「おお、待っていたぞ。部屋の方はとってあるから、そちらの方で細かい話をしよう」


 ちなみに今はフルメンバーでギルドに来ている。もちろんタモさんとミドリは馬車の中で待機だ。待機が苦にならない従魔、マジ貴重。


「む…、ギルバートがいるということは…」

「ああ、彼に頼むつもりだ」

「そうか…、まあ、今回の件を考えれば当然か…」


 ギルド長とギルバートが意味深な会話をする。多分面倒事関連だな、他にないな…。


 応接室についた。こちらも大所帯だが、人数分の椅子は用意してくれていたようだ。ちなみにドーラは俺の膝の上だ。癒される。

 早速ギルド長が話を始めた。


「まずは昨日のスタンピードの件で礼を言おう。君たちのおかげで人的被害も農村の被害も0で抑えることができた。スタンピード発生を考えれば、最上級の快挙と言ってもいい」


 俺としては勝手にやったことだし、自分のためでもあるから、あまりかしこまられても居心地が悪い。


「とりあえず、報酬を渡したいのだが…、すまん。君たちに対する特別報酬のようなものは用意できなかった。あくまでもギルドが出したのは強制依頼によるアタリメ防衛であり、スタンピードを事前に叩くというのは悪い言い方をすれば独断行動だからだ」


 それはある意味当然だ。と言うか、報酬目当てではないのだから気にすることもない。


「え、処罰とかあるの!?」


 ミオが立ち上がり声を上げる。生い立ちゆえか罰則には敏感だ。


「いや、それはない。馬車で救助に行くのも、余力があるから少し魔物を間引こうというのも、間違いではないからな。もっとも、普通のEランクがそんなことをすれば、それは遠回りな自殺と何も変わらんがな」


 それはそうだ。言い訳が利くように注意を払っていたからな。ミオも安心したのか椅子に座りなおす。


「と言うか、いくらでもいいわけが利くように行動していただろう?」


 バレている。まあ、隠すほどの事でもないしな。勘付かれようが言い張れば関係ないように行動していたというのもある。


「報酬に関しては馬車による避難への尽力の分と、街で防衛の準備をしてくれた分については用意してあるので受け取ってくれ」


 そう言って、小さい袋を渡された。今言った分の報酬だろう。


「君たちにはスタンピードの魔物の魔石まで譲ってもらったというのに、何もできなくて申し訳ない」

「いや、それほど気にすることじゃないさ」

「冒険者たちには我々の方から魔石を渡しておいた。スタンピードを事前に止めたことに対して、文句を言っているようなものはいなかったから、安心してほしい」


 ギルバートが補足する。獲物を奪われたとか文句を言う連中がいてもおかしくないと思うのだが…。


「正直まともにやりあっていたら、アタリメの冒険者にも少なくない数の死傷者が出ていただろう。ティラの森はスタンピードでもなければ魔物が外に出てこないことで有名だ。その代わり中に入るのは上級冒険者でなければ困難だがな」


 アタリメの街も結構ピンチだったのかもしれないな。見た限り戦力比はややアタリメが上と言った程度だろう。守れたとは思うが決して無傷では済まなかっただろうな。何よりもスタンピードの後ろにはティラノサウルスがいた。あれがスタンピードの次に来ていたら、アタリメの街は壊滅していただろう。


「そういえば、こっちに呼ばれた理由をそろそろ聞いてもいいか?世間話だけが目的じゃないよな?」


 この程度の話なら、ギルドの受付で行っても問題はなかっただろう。応接室に、いや、正しく言おう。『密室』に連れてきたということは、余人に聞かれたくない内容があるということに他ならない。


「…わかった。もちろんそれが本題ではない。目的は3つ。褒美と質問とお願いだ」


 思いつくことはいくつもあるな。どれが来るのだろうか。


「まず1つ目、褒美だ。仁君、君の冒険者ランクをBに上げたいと思うのだが…」

「お断りする」


 あまりにもあっさりと断るので、一瞬だがギルド長も呆けた顔をした。すぐに気を引き締めなおしたようだ。


「何故だ?君たちの活動記録を見たが、冒険者ランクを精力的にあげているようだったから、今回の件の褒美としてレベルアップを考えたのだが…。Bランクなら通常の試験より簡単な試験で上げてやれるぞ?」

「俺の目的は冒険者ランクを上げることではなく、冒険者ランクをCにすることだ」


 そういうとギルド長とギルバートは納得したような顔をする。


「上級冒険者の義務の件か…」

「ああ、俺の目的は自由な旅だからな。過度な権利も義務も望むところではない。中級ギリギリのCランクにするのが1番だ。褒美と言うならCランクにすることを検討してくれ。あ、出来ればパーティメンバーも一緒で」

「うーむ」


 唸るギルド長。Cランクにするほうが難しいのか?


「いや、1人でスタンピードを壊滅させるような実力者を、Cランクで止めるというのが勿体無くてな…。力の有るものには相応しい立場に立ってもらいたいというのが本心だからな」


 気持ちは分からなくもないが俺は勘弁願いたい。この世界の相応しい立場に何の魅力も感じない。


「Cランクがいいのだな?…流石にパーティメンバーに関してはCと言うわけにはいかないな。君だけはCランク、他のメンバーはDランクでどうだ?」


 言ってみるものだな。実力的には十分なんだから、依頼を受ける手間を省けたと思えばいい。

 ちなみにギルド長の権限の範囲を説明しよう。Cランクまでならある程度功績を上げた冒険者に、ギルド長の独断でランクアップさせることができるようだ。さすがに上級となるBランク以上の試験では、多少の加点をしてくれるものの、それだけで受かるほどは甘くはない。


「わかった。ちなみにそっちの8人はBランク以上、いや、Sランクを目指しているからランクをいくら上げてくれても構わないぞ」


 クロードやココのいる一角を指さす。クロードたちもいきなり話を振られてびっくりしているようだった。


「随分と大きな目標を立てたものだな…。いや、実力者の連れだ。もしかしたら本当にそうなる日が来るのかもしれんな…」


 結構俺のこと評価してくれているみたいだな。


「後でギルドカードの更新に来てくれ。そこでランクを上げる。…しかし、その話を聞くと2つ目の質問は期待薄だな」


 つまり質問と言うのは…。


「ああ、君の強さの秘密を教えてくれというモノだ。言える範囲でいいから聞きたいと思っていたのだが…」

「無理だな」

「まあ、そうなるわな」


 俺が強いということが知られるのは構わないが、詳細については絶対に言えない。スキルだ異能だなんていっても信じてもらえるかは怪しいし、信じて貰えたところで何のメリットもないからな。


「実力者から多少でも秘訣を聞いて、冒険者全体のランクアップと言うのも、一応ギルドの仕事の1つだからな。まあ、情報は生命線になりやすいから、全くはかどらんのだがな。昔聞いた<縮地法>も結局誰も使えなかったしな」


 セルディク!何縮地法なんて教えてんだよ!マリアの縮地法が見られていたら、厄介なことになったこと間違いなしだな。

 あ、マリアの耳がペタンって伏せている。余計なことをした自覚があるんだろうな。


「ほう、それはどのような技術なのですか?」

「ああ、それはな…」

「そんなことよりも話を進めよう」


 ギルバートが興味を持ち、話が続きそうだったから強引に流れを断ち切る。


「あ、ああ…。ギルド長。この話はまたいずれ…」

「うむ。最後の1つはギルバートからの依頼だ」


 そう言うとギルバートが居住まいを正す。


「時間を取らせて済まない。依頼の前にまず私の立場について開示しよう。私はこの国の騎士、女王騎士の部隊長をしている」

「これは本当の話だ。この依頼についてもこれが初めてじゃないからな」


 ギルド長が補足する。称号を見ているから、それが嘘ではないことは最初から知っているが…。


「ああ、その通りだ。…私からの依頼と言うのは仁、君にカスタール女王国王都クインダムに行き、女王陛下に会ってほしいというモノだ」


 女王に会う…。

 王族には嫌な思い出があるし、不快な厄介事に巻き込まれる可能性も高いな。


「こと…」

「少し話を聞いてほしい」


 俺の拒否を感じ取ったようで、言葉をかぶせてきた。…ギルバート自体は良い奴だし、少しくらい話を聞いてもいいか。


「…何だ?」

「すまない。依頼を断るのはいいのだが、せめて最後まで話を聞いてくれ」

「事実上の指名依頼とは言え、強制権は何もない。事実、何人かは依頼を断っているからな。それに貴族云々を言い出す下衆でもないから、その点は安心していい」

「当然だ。私もそこまで堕ちたくはない」


 ギルド長がいる前で表明するくらいなんだから、本当にその心配はないのだろう。と言うか、ギルバートの言い方だとそういう人間に心当たりがあるということだろうな。まあ、ある意味当然と言えば当然か。


「わかった。話を最後まで聞こうじゃないか」

「ありがとう」


 断る権利が明確に確保されているというのなら、話に付き合うくらいは問題ない。今のところは『受けない』が前提だが…。


「理由はわからんが、陛下は強い冒険者を集めている。私が各地を回っていたのも、陛下からの命令でそういう冒険者を探し、王都へ行ってもらうためだ」


 強い冒険者を集めるねぇ。あんまりいい予想ができないんだけど。


「10日後、陛下が集めた理由を発表すると言っている。出来れば、それまでに王都へ行ってもらいたいというのが私からの依頼だ。報酬は女王に会うだけで100万ゴールドだ。Aランク以下は一律の金額なので交渉はできない。その点は理解してほしい」


 10日後、ここからだと王都まで7日かかるから、途中の村によって観光するくらいの時間はあるな。依頼を受けるとしたらだけど。

 依頼料は100万と高額だが、その金額が厄介さを如実に示していると言ってもいいだろう。


「すでに国中の高ランク冒険者が集められている。Aランク、Bランク合わせて50名以上が集まっているはずだ。それは我が国にいる4人のSランク冒険者も同様だ」


 何?Sランク冒険者が王都に集められているだと?それでコノエの街にいなかったのか…。と言うことは、この依頼を受けて王都に行けば、Sランク冒険者に会うことが出来るワケだ。少し依頼を受けたい理由が出来てしまったな。

 最終決定は後にするとして、とりあえず必要な情報を集めておくか。


「女王陛下について話を聞いてもいいか?最近この国に来たばかりで詳しくは知らないんだ」


Q:女王はどんな人?

A:半年ほど前に即位しました。女王以外の王族は全員病死しています。どれだけ調査しても全く不審な点がなかったため、女王に即位することになりました。


 それは裏がありそうだな。


A:それと気になる点が1つ…。



 …ふむ。


「女王陛下は最近即位したんだが、その…、他の候補者、と言うか王族が全員病死しているんだ」

「それは大丈夫なのか?」

「調査はしっかりした。それでも当時王女だった女王陛下に不審な点はなかった」

「ギルドからも調査員を派遣したから間違いないぞ」


 気になるワードがありましたね。


「王女ってことはまだ若いのか?」

「女王陛下は御年10歳だ」

「それ、若いんじゃなくて幼いっていうんじゃないか?」

「完全な血統による統治だ。若くても関係ない。それに女王陛下は聡明で、統治の面でも全く問題がない」


 ロリ女王か…。違う、そういう話じゃない。



 依頼を受けるかどうか少し整理してみよう。

 まずは王都についてだ。旅の目的の1つが観光なのだから、王都を見ないという選択肢はない。よっぽど行きたくない理由があるなら別だけどな。それに王都にはSランク冒険者が集まっているらしいからな。現役Sランク冒険者には結構興味がそそられる。


 次に女王だ。女王が何かやらかそうとしているのは確実で、この国にいる限りそれに巻き込まれる可能性は決して低くはない。王都に行くとなるとその確率もさらに上がるだろう。


 最後にこの国だ。俺はこの国の事が結構気に入っている。もうしばらくは滞在したいと思うくらいに…。もしも女王がやらかそうとしていることで、この国が悪い方に傾くとなると俺も困る。だったらいっそ渦中に入って初動で対応を考えるというのもアリかもしれない。

 いつ巻き込まれるのかと悶々としながら過ごすより、さっさと巻き込まれてさっさと終わらせる方が精神衛生上良いのではないだろうか?


 あ、オマケの理由としてギルバートの依頼だからと言うことと、ロリ女王に興味があるということも付け加えておこう。


 ここまで並べてみたら、俺の中では行かない理由がないことがわかった。多少面倒だろうが、イベントの1つと思えば大したことはない。

 とりあえず念話でみんなの意見も聞いておこう。


《この依頼を受けようと思う》

《いいのですか?王族の面倒事に巻き込まれそうですよ?仁君は断るとばかり思っていたんですけど…》

《さくらは反対か?》

《どちらかと言うと王族は遠慮したいですね…》


 気持ちは分かるけどな。最初に会った王族がアレだから…。


《私はいつも通り仁様に従います》

《私はお城に行ってみたいから行きたい!》

《ドーラも!》


 マリアはいつも通りで、子供2人はお城に行きたいそうだ(ミオは子ども扱い)。


《ご主人様が言えば皆従うのですから、理由をお話しになった方がいいのでは?》


 それはセラの言う通りなんだけどね…。でも、意見も聞かずに勝手に進めるのは好きじゃない。聞いた上でゴリ押すことはあるけど…。話を聞かないのとどっちがいいのかは置いておく。

 俺はさっき整理した内容を皆に聞かせた。


《まあ、強い冒険者を集めている以上、どこかで関わりそうな話ですわよね…》

《と言うか、女王騎士に目をつけられている以上、遅かれ早かれ巻き込まれるでしょ…》

《理由は分かりました。気はあまり進まないですけど、どっちがマシかと言えば自分から飛び込む方が多少はマシでしょうし…。あ、王城にはいかないですよ。外で待っています》


 まあ、普通に考えたらこの依頼で城に入れるのは俺だけだろうな。一緒に行きたい子は何とかして連れて行ってあげたいな。王族に嫌な思い出のあるさくらは、不快な思いをしないためにも留守番だろうけど…。


《さくらも一応OKってことなので、この依頼を受けるぞ》


 ギルバートは俺が考えている様子を見せると、特に喋らずにこちらの反応を待っていた。俺は顔を上げ、ギルバートに向き合う。


「ちょっといろいろ考えたんだが、その依頼を受けようと思う」

「そうか!ありがとう!そうと決まればこの書状をもって王都まで向かってくれ」


 そういうとギルバートは懐から白と茶色の2つ封筒を取り出し俺に手渡す。


「準備がいいな」

「ああ、依頼を受けて貰えるとなったとき、すぐにでも書状を渡せるように準備していた」


 マメなイケメンか。さぞかしモテるのだろう。


「準備が無駄にならなくてよかったな、ギルバート。こっちが依頼票だ。一応、ギルドを通した依頼だからな」

「わかった」


 ギルド長から依頼票を受け取り確認する。


「我々も準備が終わり次第王都に戻る予定だ。明日出発になるが、それでも良ければ我々が護衛…、違うな。夜の番と食事の準備を請け負うぞ?」


 善意の申し出だろうが、行動に制限が付くから遠慮しておこう。


「いや、いい。観光が旅の目的でもあるから、自分たちのペースで行かせてくれ」

「わかった。茶封筒の方に王都の地図や城門までの道順、おすすめの宿などいろいろ入れてあるから、参考にしてくれ」


 本当にマメだな。マップじゃあおすすめの宿とかまでは教えてくれないからな。


A:努力します。


 どうやって?


A:(高速思考中…)


「わかった。ありがたく受け取っておく」


 そこまで話したところでギルド長が立ち上がった。


「話は終わったみたいだな。仁君はこれからどうするんだ?ギルドカードを更新したらすぐに出るのか?」

「そうだな。更新終了して昼食を食べて準備をしたら出発する予定だ」

「そうか、気が向いたらまたこの街によってくれ」

「ああ、お米を買いに来るついでに寄るよ」

「この街はお米のついでか…」


 そう言って、ギルド長、ギルバートと別れた俺たちはギルドカードの更新をした。


「何もしてない私たちまでランクアップしてよかったのでしょうか?ほぼ仁君の功績ですよね」

「一応マリアちゃんとセラちゃんは仕事してるけど、私たちは本当に何もしてないからね…」


 さくらとミオがランクアップの件を気にしているようだ。


「いえ、わたくしも馬車を動かしただけですわよ…」

「私も仁様の打ち漏らしを討伐しただけです。タモさんの方が役立ったかもしれません…」

「いいんだよ。実力的には問題はないんだから」

「僕たちはその実力も不足してると思うんですけど」


 クロードが言う。実はそんなことはない。与えたスキルと訓練のレベルを考えれば、ギリギリDランクラインには届いていると思う。


「まあ、肩書だけが上がって実力はその後で付けるってパターンもある。運が良かったと思って諦めろ」

「はあ…」


 更新の終わったギルドカードを受け取る。そういえば最速のFランク到達は逃したけど、最速のCランクは到達できたのだろうか?


A:冒険者登録2日でBランク到達のレコードがありますので、記録更新にはなっていません。


 そうか…、そっちはちょっと難易度高そうだな。恐らく俺と同じで、何かの功績で一気に上がったクチだろうけど…。


A:その通りです。


 やっぱりか。依頼1つ辺りにかかる時間を考えれば、真っ当な手段でレコード更新なんてできないだろうな。

 とりあえず俺のレコード更新のチャンスは終了したから、奴隷育成に期待だな。


「とりあえずギルバートに言われた通り、10日以内に王都に着くように進めようと思う」

「7日かかる距離ですよね。残りの3日はどうします?」

「特に決めてないな。道中の村で面白いものでもあればそれで潰せばいいし、無ければ王都を見て回るのもいいだろう。その辺の自由が利くようにさっさと出発することにしたんだからな」

《りんきおうへーん》


 おお、ドーラが難しめの言葉を!すかさず撫でる。


「今、ご主人様何でドーラちゃんのこと撫でたんだろう?」

「ミオさんが言ってただろ。ご主人様はドーラさんのことが大好きだって…」


 新人奴隷たちにはドーラは喋れないということだけは伝えてあるが、念話を教えていないから、俺がドーラを撫でる理由がわからないということになる。

 ココとロロが少し羨ましそうな目でドーラを見ている。撫でる。以下略。


「あと少しこの街で準備を整えたら出発しよう」


 その後は分担して旅の準備をすることになった。

 スタンピードで手に入れた魔石を売ろうとしたら、合計で1000万ゴールドを超えることになったので、すぐには用意できないって言われた。仕方ないので王都で換金する予定だ。オークやオーガの魔石はかなり高く売れるので、当然と言えば当然か。

 他にも、回収しておいた魔物所有の武器をいくつか売ったり、人数が増えたので少し心許なくなってきた食料を多めに買うことにした。冒険者を本格的に始めてからは、収入的にも安定してきた。最初のころ日銭に追われていたのが嘘のようだ。ただし、まだまだ拠点には程遠い。


 そうそう、ティラノサウルスの魔石なんだけどね、<千里眼システムウィンドウ>で鑑定してみたら、1つで1000万ゴールドだって。正直桁が違うよね。当然売らないよ。と言うか売るに売れないよ。でも、タモさんに喰わせるのも勿体無い気がする。タモさんティラノフォームとか、そんなものは求めていないから…。仕方ないので死蔵することにした。魔石の使い道は多いはずだから、いつか役に立つだろう(片付けられない人間の常套句)。


 準備を終え、昼食をとった俺たちは正午過ぎにはアタリメの街を出発していた。メインメンバー(俺、さくら、ドーラ、ミオ、マリア、セラ)は馬車に乗り、新人たちは半分が馬車、残りの半分が『ルーム』の中だ。『ルーム』の中は外側の揺れとは無関係なので、馬車で揺られるよりはリラックスできる。俺も時々『ルーム』の方で仮眠をとるし…。

 新人たちには『ルーム』にいる間はポーションを作るように言ってある。2時間交代で、1人1本がノルマなので時間的な余裕はある。


 王都はここから南側に向かった先にある。途中にはいくつかの村があるので立ち寄っていくつもりだ。最初の村はここから2日馬車で移動した先にある。もちろん、少し道を変えればもっと近い村もあるので、これは王都へ7日でいける最短ルートのお話だ。


「次の村って何か特産品があるの?観光名所があるの?」

「仁君が時間を多めにとっているということは、その可能性も十分にありますね」


 ミオとさくらが質問してくる。

 確かに今までの俺の行動を見れば、何らかの心当たりがあるという場合も多い。しかし残念ながら今回は特にネタがない。


「いや、今回は一切何もない。と言うか特に調べてない」

「そうなの?」

「通る村もせいぜい2つか3つだけだ。しかも観光したとしても1日2日だけ…。検索してまでやるほどじゃあない。何かあれば儲けもの、くらいの気持ちでいた方がいいと思うんだ」


A:面白いもの、ありますよ。


 何それ、超気になる。聞いといた方がいいこと?


A:いいえ、行けば分かるので聞いても聞かなくても大差はありません。不利益になることも特にないので、楽しみを後に取っておくのも良いかと思います。


 じゃあ、聞かないでおこう。害がないなら事前に知っておく必要もあまりないからな。アルタが事前に情報を精査してくれているおかげで、俺自身が膨大な検索に時間をかける必要がなくなった。今のところ<多重存在アバター>の便利さを1番実感できる点だな。


「今アルタから聞いたんだが、なんか面白いものがあるみたいだ。詳細は後のお楽しみと言うことで聞かないでおいた」

「へー、それは楽しみね」

「ああ、アルタが面白いというからには、とてつもなく面白いのだろうな」


A:ハードルを上げないでください。


 自分から言っておいて何を今更…。


「そこまでじゃないみたいだ」

「どっちなんですか?」

「まあ、多少は楽しめるってことだろ」


 あまり過度な期待はしないでおこう。


「あのー、アルタって誰の事ですか?」

「秘密の仲間だ」


 クロードたちにはアルタについては説明していない。「秘密の力」改め、「秘密の仲間」。いいなこれ。これからも使っていこう。


「ご主人様の秘密が多すぎる…。そして、どれもこれもが凄すぎる…」


 クロードが呟いていた。あんまり隠していても不便なので、いくつかの秘密を開示している。とりあえず、使える<固有魔法>に関しては一通り教えておいた。と言っても、異能による結果ということは言わずに、単に特殊な魔法が使えるということだけだ。

 他にも<無限収納インベントリ>は特殊な『格納』であるとか、異能であることをボカしているため、若干ズレた感じで説明をしている。その内、正確な情報を与える予定だ。


近々セラの口伝を上げます。時系列で言うと結構前になるんですけど、差し込むタイミングが見つからなくて今更になってしまいました。


20151119改稿:

活動報告(9)の内容をフィードバック。その他細かい修正多数。大きな話の流れは変わりません。

報酬を入れていたのを袋に変更。

20151120改稿:

ギルバート(と言うか作者)が依頼の報酬について書き忘れていたので修正。こんなんじゃユリーカのことを笑えない…。

20151122改稿:

修正(9)対応

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
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縮地法の件隠す必要あるのか?まさかセルディクのスキルを奪ったなんて誰も考えないでしょ。 ロリ女王に興味があるとかやっぱり主人公ロリコンじゃないか! アルタに聞けば女王が何をしようとしてるのかも全部…
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