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第26話 奴隷軍団とパーティ編成

活動報告の方にコメに対する補足を書きました。

霊刀・未完を冷凍ミカンと表記しているのはわざとです。誤字ではありません。火得意もです。あ、誤字報告はありがたいですけど念のため。

「じゃあ、まずは接近戦闘と練習だ。使ってみたい武器があれば言ってくれ。手元にあればそれを使わせるからな」


 そういうとクロードが手を挙げた。


「僕は剣が使ってみたいです」


 少し照れながら話を続ける。俺に対する<恐怖>は大分薄らいだようで、表面上は最初と同じような態度となっている。


「実は僕、冒険者に憧れていまして、いつか剣を手に魔物と戦いたいと思っていたんです。まあ、奴隷になった時点で諦めていたんですけど……」


 確かに奴隷になってから冒険者になるのは難しいだろうな。戦える人間が奴隷になったのなら戦闘奴隷ということもあるが、わざわざ戦闘をしたことのない奴隷を鍛えるような酔狂な主人は、ここに1人くらいしかいないだろう。

 それにしても、『冒険者に憧れている』か……。ユリーカみたいに過度な正義感を持っていないといいんだけどな。念のため聞いてみるか。


「クロード、例えば……」


 俺はトルテの森の異変と村長の依頼の話をしてみた。最後に「お前ならどうする?」と聞く。クロードはしばらく考えてから話し出した。


「……そうですね。僕ならその依頼を1度断ります」

「なぜだ?」

「依頼の条件があまりに不確かだからです。最低でも報酬、成功の条件の2つを煮詰めてからでなければ受けません。詳細は省かれているので、確かなことは言えませんが、一緒にその辺を相談して、問題がなければ受けようと思います。多少の時間はあるとはいえ、異変の原因を突き止めるのが遅れたら、被害が大きくなる可能性がそれだけ高くなりますから……」


 うん。俺的には100点満点かな。俺もそうしようと考えていたからな。ユリーカがぶち壊していったけど……。


「これでよかったでしょうか?」


 少し不安そうに聞いてくる。


「ああ、問題なかった。いい回答だ。ちなみに俺がそこにいて、依頼を受けるなと言ったらどうする?」

「え?もちろん依頼を断りますよ。ご主人様の意見を無視するなんてありえません」


 即答だった。うん、これならユリーカみたいなことにはならないと思う。下部組織の暫定リーダーはクロードかな。


「と、そうだ。武器の話だったな。これを使え」


 そう言ってアイテムボックスから、「ワンハンドアイアンソード」を取り出してクロードに渡した。ついでに剣術スキルを少しだけ渡す。さっきは<身体強化>とか<気配察知>とかの基本的なスキルを中心に渡したからな。武術系スキルは武器と合わせて与えるつもりだ。


「こ、こんなにいいものを使わせていただけるんですか!?」

「ああ、今は使っている奴がいないからな。有効活用と言う奴だ」

「あ、ありがとうございます」


 剣を使うのは俺とマリアの2人で(セラは大剣)、俺は冷凍ミカン、マリアは宝剣・常闇を使う予定だから、「ワンハンドアイアンソード」をあげても何も問題はない。


 他の奴隷たちにも武器を与えていった。テーブルを出して、その上に武器を並べて、その中から選ばせるようにした。盗賊のアジトで手に入れた武器も合わせれば、結構いろんな種類の武器があるからな、一通りの要望は叶えられたと思う。変わり種はユリアの鞭かな。王族が鞭とかハマリ役過ぎる。あ、ミオ用の予備だよ。こっそり買っておいたんだ。ただ、ムチはスキルがないからサブウエポンとして短剣を渡している。

 一応、魔法も与える予定だけど、最初は肉弾戦から覚えさせると決めている。遠距離戦の運用はそのあとでも遅くはない。


 残念ながら防具は子供向けのがあまりなかったので、あるものをうまく分割して配った。次の街でそろえないとな。


 さて、戦闘の準備は整った。


「じゃあ次は飯だな!」


 腹が減っては戦はできぬってね。

 クロードがポカンとしている。他の新人奴隷たちも大体同じような表情だ。元からのメンバーには念話で準備を頼んでいるからな。ミオとマリアとセラは、武器を選んでいる途中から『ルーム』のキッチンで料理をさせている。


「これから戦うのではないのですか?武器も選びましたし……」

「いや、まずはお前たちに飯を食わせようと思う。その後少し食休みしてから、実践を行う」

「は、はあ……」


 食事と聞いてもピンとこないようだった。何かしているようには見えないからね。

 馬車の方からミオたちがやってきた。手には料理を載せている。俺はテーブルの上にあった武器を片付けておく。


「おまたせー。ミオちゃん特製のナポリタンだよー!」


 <無限収納インベントリ>の中から出してもいいのだが、奴隷を加える度に予備の料理がなくなるのも嫌なので、手軽に作れて美味しいモノと言う注文を付けた。パスタ系は比較的簡単に用意できるからな。ミオ曰く、一人暮らしで時間がないときはパスタ、だそうだ。この世界、この国にもパスタの文化はあるみたいだしな。さすがにナポリタンとは呼んでないみたいだけど……。

 奴隷たちはほぼ皆子供なので、受けもいいだろう。まあ、あれだ。アメとムチのアメの方だ。


 ミオとセラがナポリタンの大量に入った皿をテーブルに置く。トマトケチャップのいい匂いがあたりに漂う。


-ぐぅ-


 アデル、ノット、ココ、シシリー、ロロの腹が鳴る。もちろん<千里眼システムウィンドウ>で検索した。


「少し食わせたから多少はマシになっただろうけど、それでもマイナスが0になったくらいだろう。折角だから腹一杯まで食うといい」


 俺がそう言うと、さくら、ドーラ、ミオ、セラが小皿とフォークを配った。マリアはデザートの準備をしているのでこちらには来ていない。


「い、いいんですか?僕たちは奴隷で……」

「気にするな。先行投資と言う奴だ。その代わり、これからしっかり働いてもらうからな?」

「は、はい!」


 すごく嬉しそうな顔をする奴隷たち。まあ、リターンを考えれば、はるかに安い先行投資なんだけどね。奴隷に対して美味い飯は必殺の武器だからな。


「食う前に『いただきます』、食った後に『ごちそうさま』と言うのが、うちのルールだ。言った奴から食っていいぞ」

「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」


 俺のセリフが終わるか終らないかというところで全員がそう言った。大皿から小皿に移し、すごい勢いで食べていく奴隷たち。あ、ドーラとセラが少し羨ましそうにしている。


《そんなに食べたいなら混ざってもいいぞ?》

《いえ、ここはあの子たちに譲ろうと思いますわ。立場の違うわたくしが行っても、浮いてしまうだけですし……》

《ドーラが食べたら、みんなの分がすくなくなってかわいそうー》


 2人とも気を使っているようだ。だったら、その顔を止めろと言いたい。食べたきゃ後でミオに頼めばいい。と言うかセラは作るところ見てたから、作れるんじゃないのか?


 思ったよりも早くナポリタンはなくなってしまった。やっぱりエナジーボール(かなり軽め)だけでは不足だったようだな。え?だったら最初からエナジーボールの栄養素量を増やせば良かったって?その時点では扱いが決まっていなかったから、応急処置的なレベルに留めておいたんだよ。


 何とかマリアのデザートも間に合ったようだ。今日はフルーツのシャーベットだね。冷やすのは魔法でどうにでもなるから作るのは簡単だ(自分にも出来るとは言っていない)。


「お待たせしました」


 マリアが空になった大皿を下げて、その代わりにシャーベットの小皿を置いた。

 それを見た奴隷達は嬉しさ半分、戸惑い半分と言った顔をする。


「本当にいいの?私たちまだ何もしてないよ?役に立たないかもしれないよ?」


 ココが不安そうな声色で言う。

 戦闘で役に立たないなら、役に立つ分野の担当に変えればいい。俺は本当に無能で何もできないという奴はほとんどいないと思っている。何かしら得意なことがあっても、それに出会えていないだけ、というのが持論の1つである。俺の異能を使い、トライアンドエラーで探せば、いつかは得意分野にぶつかるだろう。


「働く気はあるのだろう?」

「それはもちろんです」


 他の奴隷も頷く。


「だったら今はそれだけでいい。どうせもうすぐ戦闘になるんだ。細かい話はそのあとでもいいしな。それよりもさっさと食わないと溶けるぞ。いらないなら俺が食うぞ?」

「た、食べます食べます」


 大慌てでシャーベットを取る奴隷たち。幸せそうな顔で食べていく。全員が食べ終わったところで俺が促すと、全員揃えて……。


「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」


 奴隷たちの目に大分活気が戻ってきた。大抵の人間は腹が膨れれば機嫌はよくなるからな。食うに困っていた連中ならその効果はさらに上がるだろう。

 それからしばらくは食休みと称して雑談をさせ、親睦を深めることにした。


 これでアメとムチはおしまい。ここからは仕事の時間だ。


「さて、そろそろ食休みも終わりだ。戦闘訓練に入るぞ」

「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「まずは4人1組に分かれてもらう。8人はさすがに1つのパーティとしては多すぎるからな。極力武器が被らないようにして、出来るだけバランス良く配置していく」


 戦闘に関しては素人だろうから、武器によって4人組のパーティを組ませる。


第1パーティ

・クロード:剣+盾

・アデル:槍

・ココ:短剣×2

・ロロ:大剣


第2パーティ

・イリス:剣+盾

・シシリー:槍

・ノット:槌

・ユリア:鞭+短剣


 2つのパーティで分担して戦闘訓練をするので、新人以外のメンバーも二手に分かれることにした。俺、セラ、ドーラが第1パーティを担当し、マリア、ミオ、さくらが第2パーティを担当する。指導能力と言う面で俺とマリアを分け、人殺しの経験でさくらとドーラを分け、平均年齢で調整をした。


 <契約の絆エンゲージリンク>について話をするつもりがないため、盗賊のアジトの前を集合場所を決めて、今日いっぱい戦闘訓練を続ける予定だ。ゴブリンなどの低ランクの魔物は4人で戦わせ、手に負えない相手が出てきたり、ピンチになったら俺たちが戦うということにした。少々ぬるま湯な気もするけど、使い潰すつもりもないからな。最初はある程度余裕を持っておきたい。


 少しの間、武器の扱い方や戦闘の基礎知識を教えてから、2パーティに分かれての実戦となった。最初はゴブリン1匹相手に4人がかりでタコ殴りにした。マリア、ミオ、セラと同じく、ほとんど抵抗なく魔物の命を奪うことができたようだ。マリアの方に聞いてみたが、向こうも同じような状態だったらしい。


 懸念の1つでもあった『戦えない』がなかったので、当面は戦闘を担当させていこうと思う。もちろん、戦えればそれに越したことはないというだけなので、もっと向いていることがあるならそちらを優先させるつもりだ。個人的にはドワーフのノットには鍛冶師をさせたい。本人も武器に槌を選んでいるから、まんざらでもないんじゃないかね。



 しばらく戦闘を続けた。日が落ちる前に集合場所に戻るとするか。


「とりあえず、今日はここまでだな。野営地に戻るぞ」

「「「「はい」」」」


 野営地に戻ると、マリアのグループが先に戻って夕食の準備をしていた。奴隷たちが話し合って決めた結果、新人奴隷たちにも料理を手伝わせるとのこと。とは言え、まだ手伝いだけだし、<料理>スキルを与える予定もないけど……。


 多少のゴタゴタはあったが、大きな怪我を負った者もなく、1日の戦闘訓練が終了した。今日1日で奴隷たちも何とか戦えるレベルにはなってきている。明日はアタリメへの移動をしつつ、戦闘訓練を継続していこうと思う。馬車には入りきらないので、新人奴隷たちにはルームの中にでも入っていてもらおうと思う。


 今日の夕食は大鍋で煮込んだシチューとパンだ。ミオ曰く、この人数の料理を出すとなると、あまり手間をかけられないとのこと。どうしても大量に作れるタイプの料理になるようだ。まあ、仕方ないね。


「ご主人様、僕たちはご主人様のお役に立てるのでしょうか?」


 食事中、近くにいたクロードが自信なさげに呟く。


「どういうことだ?」

「はい、ご主人様は僕たちよりもはるかに強いですよね?」

「まあ、そうだな」


 今日の戦闘訓練でも、1度俺の戦闘を見せることにした。新人奴隷たちは開いた口が塞がらないと言った感じだったな。……正直、少し調子に乗ったし。


「ご主人様があれだけ強いのに、僕たちに戦いをさせる意味が分からないんです。何か意図があってのことだとは思うのですが、僕たちはその意図の通りに行動できているのでしょうか……」


 なるほど、意図がわからないままに戦い続けるのは不安だということだな。まあ、聞かれて困る話でもないから、話しておくとするか。


「お前たちには俺達とは別行動をしてもらおうと思っているんだよ」

「わ、私たち、捨てられちゃうの!?」


 ココが悲痛な叫びをあげる。犬型獣人にとって、主人に捨てられるということは大事おおごとなのかもしれないな。


A:大事おおごとです。


 あ、ども。


「違う違う、捨てるわけじゃなくて、ただの別行動だ」

「どういうことです?」

「まだ内緒にしている力の1つに、魔物を倒せば倒しただけメリットがあるモノがあるんだ。それは俺の奴隷も対象になるから、俺達とは別行動して魔物を倒すパーティを作りたかったんだ。同じパーティだと効率が悪いからな」

「それが僕たちなんですか……。では、今後の僕たちの予定をお教えいただけますか?」


 結構ぐいぐい来るな。いや、自分の将来に関することなんだから、しっかり聞くのは何も間違っていないよな。

 他の新人奴隷たちも集まってきている。やっぱり気になるようだ。


「ああ、まずお前たちには冒険者登録をしてもらうつもりだ」

「冒険者になれるんですか!?」


 クロードが嬉しそうな顔をして声を上げる。


「そして、俺達とは別行動をして冒険者ランクを上げたり、討伐中心で依頼を受けたりしてもらう」

「なんで、目的の中に『冒険者ランクを上げる』が含まれてるの?」


 ココが不思議そうに言う。


「それには2つ理由がある。1つは冒険者ランクを上げるほど強い魔物と戦う機会が増えるからだ。さっき言った力は強い相手を倒した方が効果的だからな。もう1つは冒険者としての格を利用したいというものだ」

「どういうことでしょう?」

「俺はこれからも奴隷を増やす。そしてお前たち同様に戦いに身を投じてもらうことになる。その時、高ランク冒険者の先輩がいれば、新人たちの成長が容易になるし、バックに高ランクがいるとわかれば余計なちょっかいも減るだろうからな」


 クロードが考え込んだ。


「2つ、お聞きしてもよろしいですか?」

「なんだ?」

「まず1つ目ですが、それはクランを作れという命令でしょうか?」

「簡単に言えばそうなるな」


 クラン。それは冒険者のグループの有り方の1つで、パーティよりも大きな規模の集団だ。ゲームとかではギルドとか言われることもあるが、冒険者ギルドと名前も被るのでこう呼ばれている。派閥と言ってもいいし、軍団と言ってもいいかもしれない。冒険者ランクとは別で、クラン自体にもランクがあるが詳細は省こう。

 簡単に言えば、『俺の奴隷である』ことが加入条件の1つであるクランを作って、そこで魔物の討伐と新人の育成ができるような環境を作りたいということだ。


「クランを作ってもらい、新人奴隷をそこで教育し、戦力を拡充する。それが基本的な仕事だ」

「わかりました。大体のプランがつかめたと思います」


 やはり、リーダーはコイツに任せたいな。


「クランリーダーはクロードがいいと思うのだが……。他の新人たちは意見があるか?遠慮はいらないぞ」


 他の奴隷にも話を振ってみる。俺の一存で決めてもいいが、実際にクランを運営するのは俺じゃないから、変なしこりとかは捨てさせておきたい。


「クロードでいいと思います」

「1番考えてるし、適任だと思います」

「クロードなら安心よ。盗賊のアジトでも私たちのことをギリギリまで励ましてくれてたし」


 反対意見は出なかった。クロード、信頼されているな。


「クロードはどうだ?」

「わかりました。不肖このクロード、全力でリーダーを務めさせていただきます」


 新人奴隷たちから拍手が起こる。


「とは言え、正直メンバーが子供だけで不安もある。冒険者経験豊富なアドバイザー奴隷でも都合する必要があるな」

「そこも奴隷なんですね……」


 さくらも話に入ってきた。


「奴隷が1番使いやすいんだよ。エルディアでは仕方なしにだったけど、あれで味を占めたというか……」

「まあ、今までの子たちは皆いい子でしたし、不用意に危険性の高い選択肢を選ぶこともないかもしれませんよね……」

「そういうこと。何の縛りもない相手に伝えるには、俺たちの力は大きすぎるからな」


 奴隷や従魔なら、奴隷紋と<契約の絆エンゲージリンク>でかなりの行動を縛れるから、秘密を洩らされる心配はほとんどない。

 じゃあなんで脅したかって?上下関係を明確にするためだ。

 じゃあなんでミオを脅したかって?趣味だ。


「お話の途中すいません。2つ目の質問をしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、なんだ?」

「クランリーダーの件にも関わるんですが、なぜそれを僕たちにやらせるのですか?ご主人様がクランリーダーをやって、ご主人様が冒険者ランクを上げればいいと思うのですが……」

「俺たちは冒険者ランクを上げないつもりなんだよ。Cランクで止めて、強制依頼や指名依頼を回避するんだ。言い方は悪いが、面倒事はお前たちの作るクランに任せて、俺たちは気ままな旅をしたいんだ。だからどこかの街に拠点を作って、お前たちにはそこで生活してもらうことになる」

「そ、それは、僕たちにBランク以上になれ、と言うことですか?いくら何でもそこまでの力は……」

「できる。俺の力により、お前たちが魔物を倒せばその分だけお前たちは強くなれる。今はまだ弱いが、遠からずBランク、いや、Sランクになれるだけの力を得ることができるはずだ」

「う、嘘でしょう……」


 クロードを含め、ほとんどの新人奴隷が信じられないようだ。今までのメンバーは、それくらいできるだろうな、と言う納得の表情をしている。現時点でも、俺、マリア、セラはSランク相当の力はあると思う。もちろん、セルディク基準ではあるが……。


「仁様のお話を疑うというのですか?死にかけの奴隷に魔物と戦うだけの力を与えるお方ですよ。そのくらいの事、造作もないでしょう」


 マリアの信仰が発揮された。


「い、いえ、マリア先輩。そんなつもりは……」

「では、どういうつもりなのですか?仁様のお言葉に対して、『嘘でしょう』とは?」

「し、失言でした。申し訳ありません……」

「仁様、横から失礼しました」


 そういうとマリアが身を引く。クロードを含め新人奴隷たちが少し震えている。<恐怖>スキルと異なり、<覇気>も<恐喝>も使っていないのにこの効果。やっぱり、1番怖いのは狂信だよね(他人事)。


「まあ、Sランクにしてやると言ったのは嘘じゃない。もちろん、大きな努力は必要だが、努力が人を裏切らない状況ならば作ってやれる」


 まあ、努力以上のブーストがかかるんですけどね……。


「僕たちに求められていることがわかりました。ご主人様の戦力を増強するのと同時に、ご主人様が自由に旅をできるようにサポートするということですよね?」

「ああ、その認識で問題ない。それで質問は終わりか?」

「はい。ご主人様のご期待に沿えるよう、努力させていただきます」


 新人奴隷たちも納得してくれたようだ。


「あ、それと冒険者以外にもやりたいことがあれば、相談には乗るぞ。俺の目的とあまりにもかけ離れていたら、ダメと言うこともあるがな」

「あ、それだったら俺、鍛冶師がやりたいです」


 迷わずにノット(ドワーフ)が手を挙げる。……いや、ドワーフだから鍛冶をさせたいとか、武器を槌にしているとか言ったけど、伏線の回収速いって……。


「それなら構わないぞ。ただ、しばらくは冒険者をやってもらうぞ。拠点を決めるまではまず無理だし……」

「それくらい問題ないですよ。クロードじゃないけど、俺も鍛冶師になりたいってのは夢だったんです。知っての通り、ドワーフの種族性ってのもありますし……。でも奴隷になったら大抵の夢って諦めるもんですからね……。チャンスがあるだけ大分マシですよ」

「わかった。その時はよろしく頼むぞ」

「了解です」


 ノットが元気よく返事をする。鍛冶師なら確実に俺の役に立つからな。それにドワーフの鍛冶師っていう、いかにもファンタジーな存在は有りだと思う。


「あ、あの、方針は理解したんだけど、それでも私も連れて行ってほしいの」

「あ、ロロもです。ご主人様の近くにいたいです」


 ココとロロが俺についてくることを希望した。


「それは何故だ?」

「寂しいの!私たちが拠点で活動している間、ご主人様旅に出るんでしょ?滅多に会えないのが嫌なの!」


 ココが全力で主張してくる。


「ロロもです!」


 ロロも同じ理由のようだ。


「俺は旅をするが拠点にいるお前たちの様子をしょっちゅう見に行く予定だぞ」

「え、どうやって?旅をするんでしょ?」

「そこはほら、俺たちの秘密の力でだな……」

「秘密の力万能すぎるでしょ!」


 まあ、そうですね。


「とにかくその点は問題ないぞ。それにしても寂しいのかー。いやー、懐かれたもんだなー」

「うー、今更ながらとんでもないこと口走ってたー」

「ほら、膝の上にでもおいで」

「こ、子ども扱いしないでよ!」


 あ、ココが恥ずかしがっている間にドーラが膝の上に座った。


「あ……」


 あ、ミオがもう片方の膝ににじり寄って来てる。


「ダメ!」

「無念……」


 そういうと素早く俺の膝の上に座る。ミオが悔しそうに唸る。


「ご主人様はロロたちがついて行くのに賛成ではないんですね……。わかりました。ロロは拠点でお待ちしてます」


 そう呟くとロロは膝の上ではなく、俺が座っている真横に来て体を密着させてきた。それを見たミオが反対側に座り同じように体を密着させて来る。

 幼女と少女に囲まれることになった。暑い。


 ちなみにクロードとノットはそれを見て苦笑いしていた。さらにどうでもいい話だが、夕食でも出たシャーベットはいつの間にか溶けていた。


*************************************************************


ステータス


変更点のみ記載



進堂仁

LV47

スキル:<回復魔法LV4 up>

装備:霊刀・未完


木ノ下さくら

LV39

装備:ルビーの杖


ドーラ

LV37

装備:僧兵のバトルスタッフ、鋼の楯


ミオ

LV32

装備:フェアリーショートボウ


マリア

LV43

スキル:<暗殺術LV5 new><忠誠LV3 up>

装備:宝剣・常闇


セラ

LV24

装備:グレートソード、パルチザン、カイトシールド


タモ

LV17


ミドリ

LV40


ここから下のスキルは(ドーラ以外の従魔・新人奴隷を除く)全員に与えているスキル。ここにある値と違う場合は別途記載。


武術系

<剣術><槍術><棒術><盾術><弓術><投擲術><暗器術><格闘術><斧術><騎乗戦闘>

魔法系

<火魔法><水魔法><風魔法><土魔法><雷魔法><氷魔法><光魔法><闇魔法><回復魔法><生活魔法><固有魔法オリジナルスペル>「リバイブ」「ルーム」「ワープ」「ポータル」「エナジーボール」

技能系

<調剤>

身体系

<HP自動回復><MP自動回復><気配察知><夜目><索敵><心眼><覚醒><強靭><不動><混乱耐性LV5><麻痺耐性LV5><毒耐性LV5><状態異常耐性LV3><火属性耐性LV3><氷属性耐性LV3>

その他

<幸運>


少し前にストックが増えて安心できたら更新間隔を短くすると書いたんですけど、一体いくつストックをため込んだら私は安心できるのでしょう…。全く安心できる気がしない。ストック結構あるのに…。


20151214改稿:

ロロの一人称を変更。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
ミオをいじめるのかわいくて好きだわ〜 なんかロリヒロインばっかり増えてくな?主人公ロリコンかな?まぁロリ好きだから良いんだけど、ロロもかわいいし。でも別行動はちょっと可哀想。ただユリアは絶対訳ありだ…
どんどん面白くなってる チート全開で戦える相手が出てくるのが楽しみだ
[一言] >即答だった。 そもそも、奴隷だから逆らえないのでは?
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