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第24.5話 従魔たちにできること

短編です。盗賊戦前です。一応、3人称視点ですが、いつもの仁の1人称視点とあまり変わらなくなってしまいました。

序盤ほど思い切ったことはしなくなりましたが、3人称視点の物語も興味はあります。

 アタリメの街へ向かう途中、道から少し離れた場所。


「と言うわけで、従魔たちのスキルを確認していこうと思います」

「ぱちぱちぱちー」

「ひゅーひゅー」


 仁の発言を、周りのみんなが盛り上げる。当然ヤラセである。


「何の茶番ですの?」

「ここでそういうこと言うなよ…」


 辛辣なセリフをセラが発したので、仁たちは少し白けてしまった。


「…腑に落ちないですけど、ごめんなさい」

「まあいいや、今日は従魔たちの持っているスキルや特性を確認していこうと思っているんだ」

「ヘルプに聞けばいいのでは?」


 仁のヘルプを使用すれば、スキルの詳細や、魔物としての種族の詳細も確認できる。


「いや、実物を見るのもためになるから。百聞は一見に如かずっていう諺が俺の世界にはあって、100回聞くより、1回見た方が分かりやすいって意味だ」

「そんな諺があるのですね。ミオちゃんに仁様たちの世界について聞きましたけど、文化・文明としてはこちらよりずいぶんと進んでいるようですね」


 魔法があるせいで、文明の発達が遅れるというのはファンタジーの定石である。そして、ルールが違うこの世界では、向こうの知識がそのまま使えるとは限らない。


「少し横道にそれたな。とにかく、従魔たちにスキルを披露してもらおうって試みだ」

「わかりましたわ」

「仲間になった順でいいよな。最初はドーラのスキルだ」


 1番最初に仲間になったのはドーラである。盗賊のアジトに捕まっていたところを助けたら、すぐにテイムできた。種族は人にも竜にもなれる竜人種ドラゴニュートである。


《もともともってたのは<竜魔法>と<飛行>の2つだよー》

「じゃあまずは<竜魔法>だ。ドーラは炎と氷の2属性のブレスを撃てるみたいだな。同じドラゴニュートでも、ベースとなるドラゴンによって撃てる属性が変わるらしいな。とりあえずドーラ、向こうに向けて撃ってみてくれ」

《はーい》


 そういうとドーラは火属性のブレスを吐いた後、続けて氷属性のブレスを放つ。


「はい、ありがとう。やっぱりかなりの高威力だな」

「前より射程が伸びている気がします」


 こういう細かい部分に気が付くのは大抵マリアである。


「そうだな、5mくらいは伸びていると思うぞ。今さっき<竜魔法>レベルを上げたからな」

「えー、ドーラちゃんだけずるい」


 えこひいきだと思ったミオがむくれる。


「ドーラの<竜魔法>は持っている相手がほぼいないから、ポイント変換で上げるしかないんだよ。それは仕方ないだろう?」

「あー、それもそうね。ドラゴニュートなんてドーラちゃんしか見たことないもの」

「次は<飛行>だ。空を飛んでみてくれるかな?」

《ヒトでー?リューでー?》


 人型でも飛べることが(こっそり)明らかになったドーラはどちらで空を飛ぶべきかを聞く。


「折角だから、人型で飛んでくれるか?」

《はーい》


 そういうと握り拳を胸の前までもってきて、力を込める。


《うーーーーん》


 ドーラが少し光り輝き、光が収まると背中にフェザードラゴンの羽が生えていた。


《これでそらとべるー》

「あー、人型で飛ぶというか、第3の形態じゃないかコレ…」

「すっごい可愛いですね!」

「うわっ、天使じゃないのよ」


 女性陣も大歓喜である。その姿はまさに天使である。全体的な印象が白いのもそれに輪をかけていた。


《えーい》


 そういうとドーラは羽をはばたかせずに宙に浮く。


「見てわかる通り、羽はほとんど動いていない。この世界において、ドラゴンの羽は羽ばたくためにあるわけじゃなくて、魔力を通すことで宙に浮けるという器官らしい」

「冷静に考えれば、あの巨体を羽で支えられるわけないですよね」


 鳥と言うのは、空を飛ぶためにあらゆる部分を軽くしている。なので強靭さのある鳥と言うのは少ない。ドラゴンの自重を支えられる羽となると、どれだけ巨大にすればいいのか見当もつかない。ついでに言えば、羽をはばたかせる筋肉も膨大になるので、事実上不可能である。


「そのくせ、鳥もドラゴンも<飛行>スキルでくくられているあたり、いい加減な気もする」

「結果が同じなら、同じスキルでくくられるみたいですわね」


 若干乱暴だが、細分化されるよりは面倒が少ないのも事実である。


「羽は目立ちすぎるから、その羽はいいと言わなきゃ出しちゃだめだからな?」

《はーい》



「次はタモさんだな」

《…》


 基本的に喋らないタモさんは、レアなメタモルスライムであり、コノエの街に向かう途中で<手加減>+腹パンにより仲間になった。


「<吸収>からの<擬態>ができるから、とりあえずこのマンイーターを食べさせよう」

「そういえば持っていましたね。でも、マンイーターは嫌いなんじゃありませんか?」

「死んでしまえば何もできないさ。それにマンイーター自体が嫌いなわけじゃないからな」

「はあ…」


 納得はしていないようだが、仁がこれ以上話すつもりがないようなので、さくらも追及はあきらめた。

 実はその間に完食していたタモさんが、マンイーターに姿を変える。


「すごいですわね。完全に再現されてますわ」


 セラの言う通り、欠損のある状態で食べたはずのマンイーターが、完全に再現された状態で擬態されていた。


「なんでも、死体と一緒に魔石を取り込むと、欠損に関係なく再現できるらしい」

「じゃあ、死体なんていらないんじゃない?」

「そうもいかないらしい。ある程度は死体も一緒に吸収しないといけないという制約があるようだ」

「面倒ね」


 しかし、タモさんの能力はここからが本番だ。


「でも、魔石を含んだ擬態をしているときは、その魔物ユニークのスキルを使えることがわかっているぞ」

「え、嘘。それ凄くない?」

「メタモルスライム自体はあまり使えるスキルが多くないんですよね?」


 メタモルスライムは<擬態>を持っているが、スキル習得率は低く、使えるスキルも数が限られている。死体を吸収したからと言って、スキルが覚えられるわけではないので、擬態自体にはほとんど意味がないはずだった。


「ああ、だが俺の<生殺与奪ギブアンドテイク>と組み合わせるとどうなる?」

「「「あっ!」」」


 仁の生殺与奪は、殺した相手のスキルを奪える。スキルを奪った状態で死体と魔石をタモさんに吸収させ、死体から奪ったスキルを与えることで、倒した相手の完全再現をすることができるというのだ。


「てことはこのマンイーターは…」

「酸も毒も触手も使えるぞ。レベルは低いが、ステータスは上回っているから、オリジナルよりも強いぞ」

「マジですか」


 強いて言うなら、体を使い慣れていない分だけ若干ぎこちなさがあるのが弱点だろうか。完全に条件を一緒にした場合、技術面で敗北するだろう。


「もしタモさんに人間の死体を吸収させたらどうなるんですか?」


 マリアが遠慮なく聞いてきた。


「魔石がないから、見た目だけの再現になるな。それも欠損はそのままの可能性が高い」

「できたところで、真っ当な使い道は思いつかないわね」

「それはそうだな」


 碌な使い方はできないだろう。例えば、知り合いの死体みためを使って動揺させるとか…。



「最後はミドリだな」

《怠い…》


 1番最後に仲間になったミドリは、トルテの森でマンイーターを含む森の魔物を全滅させた後にポップし、ドーラと同じく戦闘を介さずにテイムされた。

 スキル構成は<秘薬調合LV6><栽培LV5><HP吸収LV4><MP吸収LV4>の4つである。異常種らしく、どのスキルもレアでレベルが高めである。


「秘薬調合はヤバいので置いておいて、<栽培>っていうのは、植物を育てるスキルだ」

「生産系なのね」

「と思うじゃん?」

「違うの?」

「いや合ってるけど、それだけじゃないんだ。ミドリ、<栽培>してくれ」

《ん…》


 そういうとミドリは体に力を込めた。しばらくすると緑色の髪の毛から、葉っぱが生えてきた。


「薬草、ですか?」


 それを見たマリアが判断する。


「そう、ミドリは半分植物みたいなもので、体から植物を生やすことができる。ちぎっても平気か?」

《ん…》


 そういうとミドリは髪の毛から薬草をちぎり、仁に手渡す。


「ありがとう。このように体内で植物を<栽培>するというスキルでもある。こっちの使い方ができるのは植物系の魔物だけだ。これも意味が複数あるスキルだな」

「テイムしたところで、そんな指示は出さないわよね。普通」

「そりゃそうだ。ちなみに今は薬草を出したが、ほかにも色々な植物を出せるみたいだな。と言うかミドリ、1番簡単なのを作っただろ?」

《見せるだけなら…、あれでも…、いいはず…》


 もう少しサービス精神があってもよかったのにと思う仁であった。


「HP・MP吸収はもうそのままだな。触れている相手から、HPとMPを吸収できる。ちなみに判定が別だから、HPとMPを同時に吸収できるみたいだな」

「なんか、サキュバスとかが使いそうなスキルね」

「ああ、サキュバスはいるし、使ってくるらしいぞ」

「マジですか」

「マジです」



「とりあえず、元々持っていたスキルについてはこれくらいかな。種族制限のあるスキルは優先的に与えているけど、タモさんは事実上ほとんどのスキルが使えるわけだからな。そのへんはよく考えようと思う」

「なんでも与えればいいわけではないですからね。使いこなせなければ、とっさの判断の邪魔をする可能性すらあります」


 使い慣れたスキルと、レベルは高いがほとんど使ったことのないスキルがあった場合、どちらがいいかと言うのは判断が分かれるだろう。


「そういえば、マンイーターの魔石、タモさんが食べちゃいましたけど…」

「あ」


 どうでもいい話だが、レベル40の異常種の魔物の魔石は、それだけで200万ゴールドくらいにはなる。

 スキルの説明だけで、それを失ったことはさすがに勿体無いかもしれない。


「いや、マンイーターで頑張ってもらうかもしれないじゃん」

「まあ、悪いとは言いませんから…」



今回の成果

・各従魔のスキルの性質を知れた。

・薬草×1

・<竜魔法LV4 up>


今回の損失

・マンイーターの死体

・約200万ゴールドの魔石

そういえば、セラの口伝はいつ出そうか…。

あ、さくらとドーラの口伝はありません。ドーラは本編で主役を張る(予定)から、さくらは時々トラウマスイッチを出して、そこから推測させる感じにしたいので。


20151012改稿:

百聞は一見にしかずの意味を修正。

イコールじゃなくて小なりだったか。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
擬態でスキル生やしてスキルポイント奪取 を繰り返すバグは無理だったかー
[一言] サキュバス異常種:サキュバス・リリー(百合) インキュバス異常種:インキュバス・ローズ(薔薇) 命名責任者は過去の勇者でw
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