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第23話 マンイーターと殲滅戦

ステータスは変更点だけ記載します。時々全体を出すようにします。

新規の配下が増えます。それほど活躍しないので、頭の片隅レベルの覚え方でも、多分大丈夫です。

 マンイーターを遠くから観察してみる。簡単に言えば巨大なウツボカズラだ。全長6mくらいで、たくさんのつる(面倒なので触手と呼ぶ)を持っている。ユリーカの遺体もそんな触手によって吊り上げられている。同じようにファングウルフも吊り上げられていることから、保存食扱いだと思う。

 ちなみにユリーカは全裸だ。マンイーター的にも食べるなら服は邪魔だろうからね。仕方ないよね。そして、マンイーターと戦う以上、俺たちの目に入ってしまうのも仕方ないよね。とは言え…。


「ダメね。美少女の触手攻め自体はいいけど、すでに死んでいるとなると全く萌えないわね」


 ミオの言うとおりだ。生気の感じられない少女が吊り下げられていても、それはただ憐れなだけで、エロい雰囲気は全くない。普通、保存食なら生かしたままにしてもいいと思うけど、そこんところどうなんでしょうね?


A:腐りかけが1番おいしいです。


 …マジで?


 気を取り直してマンイーターと周囲を確認する。


「ふう、ここまでくればもういいだろう。少しステータスを落として、戦闘訓練にしよう」

「わかりました。今回はどのように戦えばいいでしょうか?」


 俺の発言にさくらが応える。ふむ…。


「じゃあ、今回はいつもと趣向を変えて、遠距離戦を中心としてみよう。主力はさくらとミオで俺たちはそのサポートをするんだ。どうやら、マンイーターの動きは遅いようだし、酸や毒も近づかなければ脅威ではない。触手も遠くにいればある程度安全だろうからな」


 ダメージは小さくても、可愛い女の子の肌に毒とか酸とかがかかるシーンはあまり好きじゃない。服に酸ならいいけどね。


「後、ユリーカの遺体は回収しようと思う」

「なぜですの?特に理由がありませんけど?」


 確かに、今までの俺の発言から考えれば、ユリーカの遺体を回収する理由が見えないだろうな。でも、状況が変わったんだ。


「個人的な感情なんだが、マンイーターに人を食わせるのはやめておきたいんだ」


 アイツの影がチラつく以上、念には念を入れておかないとな。


「わかりました。では私が接近して回収いたします」


 マリアが回収役を買って出た。1番素早いのはマリアだろうからな。適任と言えば適任だ。


《ドーラならそらとべるよー》


 それはそれで有りだな。<飛行>スキルはドーラにすべて与えているので、すでにLV7だ。それならば触手に捕まることもないだろう。


「どちらもありと言えばありだな。ただ、ドーラはあまり空中戦をさせていないからな。慣れがないと厳しいかもしれない。今回はマリアに任せてみようと思う」

「お任せください。必ずや成功してみせます」

《むー》


 選ばれなかったドーラがむくれている。可愛い。ドーラを可愛いと感じたら、撫でるしかないよね。当然撫でた。


《えへへー》

「何でしょう。選んでもらったのは私のはずなのに、とても悔しく感じてしまいます」


 ドーラの機嫌が直ったようだ。でもマリアが少し悲しそうな顔をしている。撫でるしかないよね。当然撫でた。というか耳を揉んだ。


「ふわ、ふぁあああ…」


 相変わらずいい反応するね。でもここ魔物の蔓延る森だよ。何?揉んだお前が言うな?はっはっはっ。


「マリア、ユリーカを回収したら、『ワープ』を使って俺たちのところに戻ってくればいいからな」

「ハッ…、いいえ、大丈夫です。戻りながら触手をいくつか切断していくつもりです」


 正気に戻ったマリアが、そんなことを言った。マリアの回避能力ならば、こちらに戻りつつ、襲い掛かる触手を切断することもできるだろうな。


「危険だと思ったら、すぐに『ワープ』を使うんだぞ」

「はい、わかりました」


 ちなみに、『ワープ』を含めたさくらの<固有魔法>は全員が修得している。なんでも、1度創造した魔法は次からは比較的低コストで再作成することができるらしく、全員分の魔法を用意してもらったが、以前の半分以下のMPで済んだようだ。開発費と量産コストみたいな感じだろうか。


 それから少し話し合い、最終的な戦術が定まった。


《ユリーカさんを回収する準備ができました》

《こっちは準備完了よ》

《私もです》

《じゃあ5秒後に戦闘開始だ。5、4、3、2、1、開始!》


 俺の合図により、マリアが跳躍する。マリアはマンイーター付近の坂の上から、マンイータに向けて飛び降り、触手を切断してユリーカを回収した。

 配置的に坂の上が死角となっていたので、遠慮なく使わせてもらった。俺たちはマリアとマンイーターを結んだ延長線上にいる。ユリーカ回収後、そのままこちらに走ってこれるようにするためだ。

 触手を切られ、マリアに気付いたマンイーターが触手を放つ。マリアはこちらに近づきながらも接近してくる触手を切断する。


「ファイアボール!」


 さくらが魔法を放つ。角度が上向きなので、マリアの行動の邪魔にはならないだろう。


「えい!」


 ミオが弓を放つ。実はミオとさくらの位置取りは別にしてある。1か所に固まるより、2方向から攻撃した方がいいと判断したからだ。個人の火力が高いので、触手を分散させて各個撃破していく方がいいだろう。

 さくらの護衛には俺、ミオの護衛にはドーラとセラを配置した。マリアは俺の方に合流予定だ。セラは盾ではなく、小回りの利くように槍と片手剣を装備してもらった。触手をつぶす係がマリアとセラで、魔物が寄ってくるのに対処するのが俺とドーラというのが、基本的な戦術となる。


「ふっ、はっ」


 マリアの掛け声が聞こえる。マリアは背中に目でもついているのではないかと疑うほどの回避を見せている。どうしたら後ろから接近する触手をよけられるんだ。あ、マップか。

 マリアがかなり近くまで来た。ここまでくれば触手も脅威度は随分と減る。これまでに何度か遠距離攻撃をしているため、さくらとミオの方にも触手は来ているが、難なく切り捨てている。

 マンイーター自体も少しずつ近づいてきているのだが、それに合わせてこちらも移動しているので、距離が詰まることはない。


「よし、マリアご苦労だった。ここからは遠慮なく火力を上げていくぞ」

「「「「はい!」」」」

《はーい》


 一定の距離を保っていると、マンイーターには有効打がないらしく、どんどんとHPが削られていく。触手の本数もだいぶ減ってきて、ついには保存食を吊っていた触手すらも攻撃に参加してきた。もちろん大した脅威ではない。


「もうすぐ終わるな。倒した後も中心の穴に入っている酸には当たらないように」


 HPが3割を切ったところで、急にうねうねと動き出すマンイーター。


「なんだ!?」

「周囲から魔物が近寄ってきますわ!」

「激昂モードかしら?」


 ああ、ゲームだとよくあるよね。HPが減ると強化したり、仲間が増えたりするボスって…。話にある通り、周囲の魔物たちが一斉にこっちに集まってきた。なんか変なフェロモンでも出したんかね?


「とりあえず俺とドーラは周囲の魔物の殲滅に専念だな」

《わかったー》

「マンイーター自体の動きにも注意しろ。もしかしたら多少変わっているかもしれない」

「「はい!」」


 護衛のマリアとセラが返事をする。


「残りHPはあと少しだ。火力班は一気に押し込め!」

「「はい!」」


 さくらとミオが削りきれば俺たちの勝ちだ。少し触手とマンイーター自体の動きが速くなったが、対処できないほどではなかった。周囲の魔物も数こそ多いが手強いというほどでもなく、俺とドーラの手によって殲滅されていく。

 それほど時間がかからずにマンイーターの残りのHPが0となった。倒れるマンイーター。周りに酸が飛び散り、ジュウジュウと音を立てる。


「ふー。遠距離だと意外と時間かかったな」

「そうですね。でも、こちらのステータスを考えれば当然かと思われます。意外と相手のステータスも高いですし」

「それもそうだな。さくら、ミオどうだった?遠距離攻撃中心の集団戦闘は?」


 さくらとミオを主力に置いた戦闘は初めてだったが、意外とうまくいったと思う。本人的にはどうだろうか。


「そうですね、意外と戦えるものですね。でも、護衛なしでは難しかったと思います」

「まあ、護衛なしで後衛を矢面に立たせるとかはないから、そんな心配はいらないぞ」


 そんなことされる後衛は、囮っていうと思います。


「私たち後衛の攻撃って連射性が低いから、時間がかかると思うのよ」

「そうだな。<無限収納インベントリ>に入れた魔法とか、普通に<無詠唱>とかを使わなければ、時間がかかるだろうな。弓にはその時間を省く手段はないし」

「そりゃあ、弓って連射する武器じゃないものね…」


 武器の特性である以上は仕方ないよな。この世界に銃はないみたいだし、あってもルールが違うから、正常な威力が期待できるかわからないし…。恐らくなんだけど、銃を作った場合、攻撃力の補正を受けて元の世界程の威力を期待できないと思われる。

 他に遠距離で連射性のある武器って何かあるか?ダメだ、思いつかん。ミオには諦めてもらうしかないかな。


 とりあえず俺たちは倒した魔物を回収することにした。怒りモードで呼んだ魔物を倒した時には、さすがに回収する余裕がなかったからな。


「そういえばさくら…」

「何ですか仁君?」

「<魔法創造マジッククリエイト>で、死者蘇生ってできるのか?」


 ふと、考えていたことを切り出してみた。さくらは考え込むそぶりを見せる。恐らく可能かどうか確かめているんだろうな。


「無理ですね。魔力が足りていません」

「魔力が足りないということは、魔力さえあれば作れるということか?」

「はい、恐らく…」


 多分無理じゃないかと思っていたが、可能なことは可能だったようだ。


「何?ご主人様。ユリーカちゃんでも生き返らせるの?」

「一応そのつもりだ。別に善意ってわけじゃないぞ。敵対しているわけでもない人間の死体があるから、ふと思いついただけだ。実験的な側面もあるからな」


 万が一仲間が死んで、その時に蘇生魔法を使ったけど失敗しました、では洒落にならないからな。事前に実験するのにはちょうどいいだろう。

 待てよ…。そうなるとユリーカは行方不明扱いでなければ困るな。この森の異常が続いたら、大規模な掃討戦とかが始まるかもしれない。森に異常がある状態でユリーカが行方不明のままだと、死亡扱いされるかもしれないな。だったら、この森に異常なんかなかったってことにするのがいいだろう。


「ユリーカを行方不明扱いにするために、この森には正常に戻ってもらおう。正常な森で行方不明なら、死亡扱いよりはマシだろうからな」

「言いたいことは分かるけど、正常にするってどうするつもり?」

「植物系の魔物を全滅させ、自然と元の環境に戻るのを待つのはいかがでしょうか」

「掃討戦と言うことですわね。いよいよわたくしの見せ場ですわ!」

《みなごろしだー》


 ドーラそんな言葉を覚えちゃいけません。…俺のせいか?

 とりあえず、掃討戦と言うことで方針がまとまった。マップを見れば打ち漏らしも分かるので問題はないだろう。


「後、植物系の魔物って意外とMPと魔力が高いんだ。掃討戦によって死者蘇生のための魔力がかなり稼げるかもしれないな。ちなみに今何割くらいかわかるか?」

「えーと、仁君の魔力の合計で大体2割くらいですね」


 それはかなり厳しそうだな。狙って稼がないと時間がかかりそうだな。


「折角だから、皆個別に戦ってみるのはどうだろうか?」

「個別ですか?私とミオちゃんも?」


 さくらが驚いたような顔をする。今、遠距離メインの戦闘をしたばっかで、すぐに個人戦とかなかなかに苛酷かもしれない。


「ああ、もちろんステータスはほぼ最大まで上げる。俺と完全に別行動してみるのにいい機会だと思うんだ」

「そういえば、私たちって仁君のいないところで戦闘したことってありませんね」

「それもそうね。いつまでもおんぶにだっこじゃ悪いし、ちょうどいいかも」


 さくらとミオも問題はなさそうだ。


《ごしゅじんさまといっしょがいいー》

「ごめんよドーラ、でも頑張ってくれ」

《ううー》

「なっ?」

《うん、がんばる…》


 ドーラも受け入れてくれたようだ。


「私としては問題がありません。ただ、仁様はあまり危険なことをなさらないでください。誰も見ていない場所で仁様が危機に陥ったらと思うと、気が気ではありませんので…」


 なんかすっごい心配されてる。一応俺、結構強いつもりなんだけど。


「いえ、仁様のお力を疑っているわけではないのです。ただ、私の心の安寧のためにお願いしているのです」

「わかった。だけど当然ながら皆も無理はするなよ」

「「「「《はい!》」」」」


 いい返事だ。ステータスほぼ全開だから、よっぽどのことがなければ平気だけどね。


「殲滅戦の個人戦闘。これはわたくしが1番活躍できそうな状況ですわね」


 自信満々に言うセラ。火力という意味では間違いないだろうな。


「ちょっと待ってください」


 しかし、マリアがそれに待ったをかけた。


「なんですの?」

「私は仁様のお役に立ちたいのです。ですから、1番の活躍をお譲りすることはできません」


 まさかの宣戦布告だった。


「うーん、マリアさんのお気持ちは分かりますし、できれば譲ってあげたいのですけど…、折角のわたくしの見せ場ですし…」


 セラとしても少し困っているようだ。と言うか、セラ出番に飢え過ぎじゃないのかね。食べ物の飢えが解消されたから、かわりに出番に飢えるようになったのかね。


「じゃあ、勝負をしましょう。私とセラちゃんのどちらが多く魔物を倒せるか」

「それはいいですわね。同じ前衛同士で競う。もちろん勝っても負けても恨みっこなしですわよ」

「当然です。仁様は配下の者が争うのはお嫌いでしょうから」

「そうだな。『競う』ならいいが、『争う』はやめてほしいな」


 どうやらアタッカー2人が勝負をするようだったので、俺としても一言添えておいた。


「討伐数なら、俺の方でカウントできるから、公正な判断をすることを約束するぞ」

「「お願いします」」


 こうして、俺たち初の完全個人戦、およびマリアとセラの討伐勝負が開始された。


「とりあえず目標は1時間で森の魔物全滅だ。じゃあ、解散!」

「「「「はい!」」」」

《はいさー》


 ドーラだけ返事にバリエーションが増えたな。


 ステータスを全開にしたメンバーが個人で討伐に出たら、当たり前だけどあっという間に終わるよな。と言うわけで、最初の30分でこの森の魔物は全滅しましたとさ。マンイーターほど強力な魔物もいないし、本当に話すような内容が全くないんですよ。

 マリアに危ないことしないって約束したから、複数の魔物を相手にすることをできるだけ減らして、チマチマ戦ってただけですからね。ヤバい、鈍る。


「私の勝ちです」

「惜しかったですわ…。あそこでドーラさんとかち合わなければ…」

《ごめんねー》

「いえ、あれは私のミスですから…」


 マリアとセラの戦いはマリアに軍配が上がった。その差は10匹。セラは途中でドーラと接近してしまい、討伐数が一時的に減ったとのこと。恐らくマリアはその辺も考えて、できるだけ敵の多い方を選んでいたんだろうな。

 1番にこそなれなかったが、活躍したのは間違いないし、セラもある程度は満足だろう。


「接近戦は大変だけど、ナイフを使えば何とかなるわね」


 ミオにはサブウエポンとしてナイフを渡している。あまり、出番がない方がいいのは間違いないが、接近戦の術が完全にないのは問題だからな。


「杖を振り回しながら詠唱ができるくらいにはなりました」


 さくらが言うには俺が盗賊のところで行ったように、複数の相手と接近戦をしながら詠唱するのが理想とのこと。そういえば、そんなこともありましたね。


「マップを見る限り、残っている魔物はいなそうだな。一応次にポップする魔物を見てから帰るか。レアかもしれないし」


 レア魔物と言えば、掃討中に虹マッシューが3匹出た。俺とドーラとセラが1匹ずつ倒した。レア魔物の定義が揺らいでいる気がしないでもない。


「ちなみにさくら、今どのくらいだ?」


 あまり丁寧な質問ではないが、すぐに察したのか答えてくれる。


「4割、いきました」


 つまり、今回と同じくらいのを後3回は稼がないといけないというわけだ。MPの多い植物系を森1つ分倒してこれだけでは、結構厳しそうだな。MP集めだけにかかりきりになるわけにもいかないし、頭の隅に置くくらいにしておこう。


 そんなことを話していたら、時間経過により魔物がポップしたみたいだ。どれどれ。


ドリアード(レア・異常種)

LV40

<秘薬調合LV6><栽培LV5><HP吸収LV4><MP吸収LV4>

備考:木の精霊とも呼ばれる魔物。長く生きた樹木が変化することもある。


 レアで異常種!欲しいな。よし、テイムしよう。


「今ポップしたのをテイムするぞ」

「どれどれ…。うわ、なんかいろいろ凄い」


 テイムレベルは…、ちょっと足りない。未返還ポイントを変換して、足りない分を補おう。


<魔物調教LV6 up>


 よし、これでいけるな。


 ドリアードのポップした場所に向かう。何の偶然か、マンイーターが最初にいた地点だった。ドリアードは身長が1mの少女のようで、肌は木のような茶色、髪は葉っぱみたいな緑色で地面まで伸びていた。生まれたばかりだからか、ぼーっと上の方を眺めていた。


「じゃあ、ちょっと行ってくる」

「お気を付けください」


 ドリアードに近づく。マンイーターと同じ変異種、同じレベルと言うのだから、強いものだと思っていた。しかし、ステータスを見るとかなり弱い。恐らく、異常種の変わったスキル持ちの方なのだろう。

 かなり近づいたのに全く反応がない。とりあえずテイム用の陣を出してぶつける。


>ドリアードをテイムしました。

>ドリアードに名前を付けてください。


 なんで?また戦闘なしでテイムできた。認められるようなこと何かしたっけ?


「なんか、テイムできた…」

「またですか?ドーラちゃんに引き続き2例目ですね」

《なかまー》

「そんなことあるんだ…」

「さすが仁様です」

「本当にいろいろと規格外ですわね…」


 <契約の絆エンゲージリンク>を有効にして、なんでか聞いてみよう。


《初めまして、俺の名前は仁だ。早速質問なんだが、なんでテイムを受け入れたんだ?》

《勝てるわけない…、怠い…》


 ずいぶんと気力の感じられない声だな。ぼーっとしているのは生まれた直後だからとかじゃなく、素の性格みたいだな。とは言え、テイムされた以上はしっかりと働いてもらう予定だ。

 次は名前を付けないとな。


>「リア」と名付ける←

>「ミドリ」と名付ける

>「ゆかり」と名付ける


 うん。ゆかりがいるのは分かってた。第1候補はミドリかな。ドリアードのドリと、植物的な緑がかかっていて悪くはないな。待てよ、ミドリゆかりって字が似ているから、捻ってゆかりでもいいかも…、ないな。


「お前の名前はミドリだ」

《わかった…。よろしく…》


>無気力系ドリアードのミドリが仲間になった。


 うん、満足。

 しかし、早速問題が…。


《動きたくない…》


 このドリアード、どうやら自分で移動するのが嫌いみたいだ。木だからだろうか?

 埒が明かないので、俺が『ポータル』を使って馬車まで運ぶことになった。ちなみにもう1度ポップを確認し、普通のファングウルフが発生していたので、この森には異常なし、という結論を出すことにした。


《落ち着く…》


 馬車に入るなり、1番隅に移動したドリアードが呟いた一言である。木ってさ、日の当たるところが好きなんじゃないの?なんで日の当たらない隅っこに行くのかね?

 そこはかとない引きこもり臭を感じつつもあまり深くは考えないことにした。趣味は人(?)それぞれ。


「マイペースな子ね」

「そうだな。でもまあ害のある性格ではないし、仲良くやってくれ」

「そうね…、よろしく」

《よろしく…》


 こちらから話しかければ反応するので、自分からは話さないというだけだろう。


「ところで、この子のスキルの<秘薬調合>って、何ができるんですか?」


 マリアが質問してきた。そのセリフを聞いた途端、ミドリがビクッと震えた気がした。何かあるのか?


<秘薬調合>

通常の薬品とは異なる、秘薬を調合できるようになる。


 うん。全くわからん。調剤と何が違うの?


A:ぜひ、自分で聞いてみてください。


 まさかの回答拒否に驚きを隠せない。


「秘薬調合、してくれるか?」


 ミドリに聞いてみた。またしてもビクッと震える。


《しなきゃ…、ダメ…?》

「ああ、してくれ」


 うるんだ瞳で見つめられても、ヘルプ先生がああ言った以上何かあるのだ。折れるわけにはいかない。


《わかった…、ビン…ある…?》

「ああ、あるぞ」


 ポーションの空きビンを手渡す。


《お願い…、外に出てて…》

「それは絶対に必要なのか?」

《ううん…、でも…、お願い…》


 そう言われては仕方がない。みんなで馬車から降りる。しばらくして…。


《いいよ…》


 そう言われたので中に入ると、ビンの中に透明な液体が入っていた。鑑定してみる。


秘薬 ネクタール

備考:あらゆる病を治すといわれている神酒。


「これをミドリが作ったのか?」

《うん…》

「どうやって作ったんだ?」

《えっち…》


 頬を赤く染めて、呟くように言った。うん、なんとなく理解した。アカンわ、コレ。

 とりあえず、詳しく聞かないことを心に決めたのだった。



*************************************************************

ステータス(変化分のみ記載)


進堂仁

LV45

スキル:<棒術LV3 down><弓術LV2 down><投擲術LV3 up><回復魔法LV4 up><魔物調教LV6 up>

装備:霊刀・未完


木ノ下さくら

LV37

スキル:<棒術LV8 up>

装備:ルビーの杖


ドーラ

LV35

スキル:<棒術LV8 up>

装備:僧兵のバトルスタッフ、鋼の楯


ミオ

LV30

スキル:<剣術LV3 up><弓術LV9 up><投擲術LV3 up>

装備:フェアリーショートボウ


マリア

LV40

スキル:<暗殺術LV5 new>

装備:ワンハンドアイアンソード


セラ

LV20

装備:グレートソード、パルチザン、カイトシールド


タモ

LV15

スキル:<擬態LV8 up>


ミドリ

LV40

スキル:<秘薬調合LV6 new><栽培LV5 new><HP吸収LV4 new><MP吸収LV4 new>

安易な死者蘇生は物語から色々なものを奪います。

でも、ファンタジーとなったら話に上がらないのも不自然ですし、設定上可能なので一応有りとしています。もちろん難易度は高めですし、ペナルティもありますけど。

一応、復活が確定したので、ユリーカの失伝をあげようかと考えています。すっきり成分0です。後、見なくても今後の話に影響はありません。


20151010改稿:

誤用の修正「念頭に置く」→「頭の隅に置く」

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
聖水ですね
[一言] 恥ずかしげな「えっち…」 よい
[良い点] ユリーカが蘇生できそうだ [気になる点] かなり冷酷になってきた主人公
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