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第21話 ポーション作成とハーフエルフ

大規模修正終わりました。活動報告はまた後で書くと思います。

 セラをなだめつつ依頼元である道具屋に到着した。道具屋と聞いて最初の村のような怪しげな店を想像していたが、全く違った。どちらかというと若者向けの雑貨屋さんのように、品物が整理されており、店内も明るい雰囲気だ。そんな中に鎧を着こんだ冒険者がいるのはむしろ笑えた。

 おそろいのエプロンをつけているのが、店員さんだろう。20代くらいの若い女性が多い。老婆ではない。そのうち1人を捕まえて用件を伝える。


「すいません。ポーション作成の依頼を受けてきたんですけど…」

「お、依頼を受けてくれたんだね。いつもと違う子ってことは、とりあえずお試しってことかな?」

「はい、一応パーティ6名全員確認したいんですけど…」

「大丈夫よ。ただ、ポーションの材料は自前の用意になるけど大丈夫?」

「はい、大丈夫です」


 ポーションの材料は「薬草」と「魔力草」だ。作り方は、「薬草」と「魔力草」を一定量の水で煮詰めるだけの簡単なお仕事だ。技術が絡む余地がなさそうな手順なので、才能が物を言うのはまさしくその通りの意味だろう。スキルってずるい。完成すると水色のポーションが出来上がるので、それを瓶詰めにすればいい。

 明言こそしていないが、旅の途中でちょくちょく拾っていたので「薬草」のストックはそこそこある。<無限収納インベントリ>があるせいで、価値が低めのアイテムでもとりあえず拾っておくという癖がついていたからな。「魔力草」も同様に道に生えているようなものだ。若干の魔力を帯びているが、食べたところでMPが回復するほどではない。魔石を細かく砕いたものでも代用できるが、ゴブリンの体内にあったものを飲みたいと思う奴は少ないだろう。まあ、1人心当たりのある俺も俺なんだが…。

 上位のポーションとかは、こちらの手段でしか作れないものもあるようだ。それなりの魔石が必要になるらしい。ポーションを作るためには、怪我をするかもしれない相手に挑む必要があるという、なんとも矛盾した世界だ。


「わかった。工房の方に来てもらえるかな」


 そういうと従業員専用通路のような場所から、裏手の工房に向かった。工房には作業台が並んでおり、科学の授業でしか見たような機材もちらほら見かける。三角フラスコって何に使うんだろうね。


「この辺りが、ポーション作成の区画だからね。道具は一通りそろっているよ。手順はそっちの冊子に書いてある。後、他の場所にはいかないようにね。一応部外秘の場所もあるから。とりあえず全員が作り終わったら教えてくれるかな?」

「「「「はい」」」」


 店員がいったん俺らから離れる。周囲にはエプロンをつけた作業員もいる。皆慌ただしく動いており、俺たちのことを気にする余裕はないようだ。なので俺たちは勝手にポーション作成を開始することにした。ちぎった薬草、魔力草と水をビーカーに入れて火にかけ、3分くらい煮詰める。付きっきりでかき混ぜないといけないので少々面倒だ。


 全員がレベル2になる様に<調剤>スキルを振りなおしたので、ポーション作成自体は成功した。しかし、鑑定してみると性能差ははっきりとあるようだ。

 具体的には店売りポーションの平均回復量を100とした場合に、150回復するモノから、80しか回復しないモノまでがある。

 栄えある回復量150をマークしたのは、何とドーラだ。うん、正直全く期待していなかった。ごめんよ、ドーラ。次に120をマークしたマリア。何でもそつなくこなすので驚かない。ミオとセラが100付近となった。俺とさくら?ここまで言ったんだからわかるだろ?80だよ。


「「…」」

「じ、仁様…。落ち込まないでください。ほら、私のポーションと交換しましょう…」


 マリア、それは別に何の慰めにもならないからね。


「ご主人様、なんか呪われてるんじゃないの?料理にしろ、ポーション作りにしろ、スキルを持っているのに才能が感じられないわよ?」


 グサッ。あ、いい感じに刺さった。でも流石におかしくないかコレ?


Q:調剤が上手くいかないんだけどなんで?

A:異能者は生産系スキルの恩恵を受けにくくなっています。


 そ・れ・を・は・や・く・い・え…。


 最近、フレキシブルになってきたQ&Aだが、こんな大事な内容を聞かなきゃ答えてくれない辺りはまだまだだと思う。


「異能があると、生産スキルは上手く働かないみたいだ…」

「そうなんですか?仁君?でも今までそんなこと…」

「今、俺も初めて知った…」

「あー…」


 俺もさくらもテンションがダダ下がりだ。


「本当に呪われてたんだ…。ごめんなさい」

「仁様の素晴らしい点は生産ではありませんから…、お気になさらないでください…」


 謝るミオ、慰めるマリア。止めろ、これ以上傷を広げるな。『スキルの移動で生産チート、ただしお前は含まない』とか、どんな嫌がらせだよ…。


《ドーラのぽーしょんがいちばーん》


 そんなことを言っているドーラを抱きしめる。髪を撫でる。…うん、ちょっと癒された。


「ご主人様、何をなさってるんですの?」

「多分、ドーラちゃんで癒されてるんじゃないかな。ご主人様、ドーラちゃんのこと好きすぎるから…」

「ドーラちゃん、仁様に撫でてもらって…、羨ましいです…」


 外野が色々言っているが、耳には残らない。もう少し、後5分このままでいさせて…。

 5分後、復活した俺は店員さんにポーションを渡し、品質を確認してもらった。店員さんは各ビンから1滴ずつ手に垂らし、それを舐めた。


「うん、若干のばらつきはあるみたいだけど、どれも販売できる品質にはなっているわね」


 1滴で品質を見極める店員さん。さすがプロといったところだろうか…。


「でもこれは売れないわね…。これを作ったのは誰?」


 そういって掲げたのは、ドーラの作ったポーションだ。恐らく、性能が高すぎて店売りできないということだろう。俺はドーラを指し示す。


「この子です。売れないというのは、品質が高すぎるということですか?」


 頷く店員さん。嫌がっているというよりは、苦笑いのようだ。


「そうよ。こんなレベルのポーション今まで見たことないわ。こんなものをお店に出して同じ品質を要求されたら、この商売をやっていけなくなるわね」


 思っていた以上にドーラのポーションは凄かったようだ。店員さんは俺とマリアの作ったポーションを前に出した。


「店売りにできる品質は、これとこれの間くらいね。それ以上でも、それ以下でも普通に売ることはできないわね」


 つまり回復量80~120。100を基準に誤差20%までということだ。それを考えれば、ドーラの150がどれだけ異常かわかるというものだ。


「で、依頼とは別なんだけど、このポーションを売ってくれない?」

「なぜです?店売りできないんでしょう?」


 店売りできないものをわざわざお金を払って買う理由は何だろうか。


「これを目標に掲げたいのよ。私たちの目指す頂はコレだって…。うちのお店の子に発破をかけるためにもね。もちろん、これを量産できたとしても売れないから、あくまで実力を伸ばすだけなんだけど…」


 いつの間にか、ドーラのポーションは調剤師たちの目指す頂にまで上り詰めていたようだ。意外な才能すぎる…。


「じゃあ、後95本までなら買い取るから、引き続きよろしくね」


 そういって店員さんは持ち場へと戻っていった。


「じゃあ、おれたちも引き続きポーションを作ろうか。ドーラは少し手加減して、これと同じくらいの物を作ってくれ」


 ミオとセラのポーションを見せる。大体これが100くらいだから、これを目指すのがいいだろう。


《わかったー。てかげんするー》


 こうして俺たちはポーションづくりを再開した。大体1本5分くらいかかるので、1時間半くらいで、作業は終了した。

 先ほどは品質を基準に比較したので、今度は誤差を基準に比較してみよう。まず1番誤差が小さかったのはマリアだ。100を基準に5%以内で納めてきた。最初から最後まで一貫してだ。最高品質はともかく、器用さがものを言いそうな項目に関しては、さすがのマリアというほかない。

 次はドーラだ。誤差は10%以内だった。若干手加減に苦戦したようで、後半になるほど誤差は小さくなっていった。最終的にはマリアと同等程度だった。

 ミオとセラは誤差20%程度だった。慣れにより最後は15%くらいだったので、こちらも成長を感じられる。

 俺とさくら?誤差はなんと1%だ。…80を基準に。下側に振れ、79となったポーションは提出用ではなく、<無限収納インベントリ>の中にこっそり送った。まあ、持っていても無駄にはならないだろう…。多分。


「あら、さすがに6人全員が作れるとなると早いわねー」


 納品できる最大本数まで作成したので、店員さんを呼びに行き、ポーションを確認してもらう。


「どう?みんなウチで働かない?これだけできれば即戦力よ?」

「すいません。旅をしながら冒険者を続けるので、そのお誘いを受けることはできません」


 ポーション作りを悪いとは言わないが、俺は旅をするほうがいい。


「残念ねー。いつもこの依頼を受けてくれる子も、才能は有るけど冒険者が本職ですと言って、従業員にはなってくれないのよ」


 そんな話をしながら、店員さんが品質と本数を確認するのを待っていると、遠くから叫び声が聞こえた。


「…ション。ポ…ション」


 いまいちよく聞き取れない。マップを見るとなかなかの速度でこちらへ向かってくる人物がいるようだ。そうそうないことだとは思うが、セルディクの件があるので、念のため戦闘準備をしておく。


「ポーーーション!」


 ポーションと言っていたようだ。うん、俺らに関係ありそう。


「そのポーション作成の依頼!ちょっと待ったー!」


 そういって近くまでやってきたのは、俺と同じくらいの年齢の少女だった。茶髪でポニーテール、サスペンダー付きの半ズボンに胸当てでナイフを腰にさしている。まさしく少女冒険者といった様子だ。


「あら、ユリーカちゃんじゃない。どうしたのそんな慌てて?」


 ユリーカと呼ばれた少女のステータスを確認してみる。


名前:ユリーカ

LV2

性別:女

年齢:16

種族:ハーフエルフ

スキル:<調剤LV4><魔道具作成LV2><逃走LV4>


 ハーフエルフか、初めて見るな。よく見ると耳が少しとがっているようだ。この国はあまり種族による差別がないから、街中でも普通に獣人とかを見かけるからな。エルディアは人間至上主義らしく、他の種族は奴隷商くらいでしか見かけなかったな。

 しかし、スキルがまた面白いな。冒険者っぽい見た目に反して、完全に生産系の構成じゃないか。レベルも低いし…。唯一戦闘で役立ちそうなのは<逃走>だが、これも勝つための手段ではない。後、<魔道具作成>は今まで見たことないし、レアっぽい。

 1ポイント奪って、未変換ポイントで増やしてから返すというのをやってもいいが、何分初めてで、いまいち踏ん切りがつかない。借りを作らないというのは、エルディア王国だけの決め事のつもりだったはずだが、なんとなくこのまま続けてしまいそうだ。


 ユリーカの息も整ったようで、話を始めた。


「ソラさん。ポーション作成の依頼どうなりました?」

「今終わったわよ」

「おう!」


 そういわれた途端、ユリーカがのけ反った。


「じゃ、じゃあ、100本に足らない分を私に依頼してください」

「いや、100本終わったのよ?」

「のう!」


 今度はその場に崩れ落ちた。いったい何なんだ?


「ユリーカちゃん。落ち込んでないで、何があったのか話してみて?」


 ユリーカは何とか顔を上げて話し始めた。


「今、一昨日Gランクの依頼を受けたんだけど、それを失敗して帰ってきたところだったの。今、依頼を4回連続で失敗していて、この失敗を報告すると、5回連続の依頼失敗になっちゃうの」


 冒険者のランクを上げる方法の1つに、ランクにあった依頼を連続で何回か成功するというものがある。逆に、依頼に連続で失敗すると、ランクダウンさせられることがある。


「Gランクはそれよりも下がないから、5回連続失敗すると、1年間の除名処分になっちゃうの」


 1年後にはまたGランクとして登録ができるが、不名誉だし、時間の無駄でもある。


「で、依頼失敗の報告をする前にポーション作成の依頼を成功させて、連続失敗ではないということにしたかったの…。依頼を受けてからそんなに時間がたってないって話だし、依頼を分割してもらえれば何とかなると思ったんだけど…、終わるの早すぎない?」


 依頼失敗の前に成功を入れたかった。普段受けているポーション作成なら持って来いというわけか。


「この子達、6人全員がポーション作れたからね。そりゃあ早いわよ」


 また崩れ落ちるユリーカ。


「うわー。運にも見放されたわー」


 そんなユリーカを見て、考え込む店員さん、改めソラさん。


「ユリーカちゃん。急で悪いんだけど、ポーション20本作成の依頼を受けてくれないかしら」

「いいの!?」


 顔を上げ、キラキラとした目を向けるユリーカ。

 …どうやらソラさんはなかなかに甘いらしい。俺はといえば、ユリーカから調剤スキルを奪うという悪戯を我慢するので必死だった。上げて、落とす。


「いいわよ。依頼のほうは事後報告でいいかしら?」

「いいです。もちろんです。ありがとうございます」


 ペコペコと頭を下げるユリーカに尋ねる。


「なあ、君の受けた依頼って、どんなものなんだ?」

「え、これだけど…」


 そういって依頼票を手渡してきた。村の畑を荒らした犯人の調査と、魔物か野生生物だった場合の撃退。納期は明後日までか…。


 通常、失敗された依頼は期限に余裕があれば、再掲示される。これはおそらく再掲示されるだろう。


「ちなみにこの依頼、どこまでやったんだ?」

「えーと、ファングウルフの仕業だってことが確認できたんだけど、2匹のファングウルフに勝てなくて、諦めたんだよ」


 ファングウルフはそこまで手ごわい魔物ではないんだが…。やっぱりユリーカは冒険者向きではないようだ。


「じゃあ、パーティを組んで挑めばいいじゃないか」

「…パーティを組んだら、ポーション作りしかさせてもらえないの…」


 なるほど。回復魔法はレアだから、ポーションの需要は高い。メンバーに1人、ポーションを作れる人間がいれば、代役になるし有効なんだろう。前衛としては期待できないし…。


 それはともかく依頼の話だ。


「そこまで終わっているんだったら、後はファングウルフを倒すだけだな。なあ、この依頼、俺たちが引き継いじゃダメか?」

「え?」


 理解できないとばかりにユリーカが首をかしげる。


「依頼の失敗を報告してから、再掲示されるまで多少の時間がかかるだろ?そんな手間かけるくらいなら引き継いだほうが早いし楽だと思ったんだ」


 依頼の引継ぎとは、自分の手に負えない依頼を他の冒険者に引き継いでもらうことだ。引き継いだ時点で、元々依頼を受けた方の冒険者の責任はなくなる。もちろん、双方の合意が必要なため、あまり使われないシステムだ。仲のいい相手でもない限り、失敗して再掲示されるのを待つのと何も変わらないからな。

 しかしこの街では、真っ当な依頼を手に入れるのが難しい。再掲示されるのを待つより、引き継ぎのほうが確実に依頼を引き受けられるのだ。ゴブリン以外の討伐依頼も受けておきたかったからちょうどいい。


「そんなの大した手間じゃないのに…。はっ、まさか恩を売って私の体を…」


 胸元をかばうようなポーズをするユリーカ。元気系冒険者少女のするポーズじゃないな。


「(キャラじゃ)ないな」


 その言葉に衝撃を受け、またしても崩れ落ちるユリーカ。


「なによ、ないって…。あんまりよ…」

「《ご主人様、容赦》ないわね」

「《女の子相手にそれは》ないですわね」

「ううっ…」


 ミオとセラの援護ついげきがユリーカに更なるダメージを与えた。


「で、引き継ぐのか?引き継がないのか?」

「と、とりあえず、お願いできるならしたいわ…」

「わかった。ポーションの依頼自体は受けるんだろ?一緒に行ったほうが面倒もないし、作業を横で見せてもらうよ。皆も構わないか?」


 ここまで話を進めておいてアレだが、皆にも確認をとってみる。もちろん、嫌だという子がいたら俺だけが残るけど…。


「構いません」


 さくらのその言葉に合わせてみんなが頷く。それを見たユリーカがさっそく作業に入る。


「待っていてくれるの?ありがと。じゃあ、1時間くらいで終わるからちょっと見ててよ」


 1時間で終わるというユリーカの言葉を聞いて、少し驚いた。俺たちが1本5分かかった作業を3分で終わらせるというのだからだ。



「まさかこういうこととは思わなかったな…」


 それからしばらく、ユリーカのやり方に苦笑している俺たちの姿があった。


《ドーラもまねできそうにないー》


 ユリーカの作業の早さの秘密は、1本当たりの早さではなく。2本同時に作業をするということだった。

 薬草と魔力草を煮込む作業を左右の手で1つずつ行い、平行に進める。そうすれば50分で20本作れることになる。しかし、なんとなくだが見た目が悪い。


「前世で、両手で1つずつゲームのコントローラーを持って対戦モードをやったことあるんだけど、ふと思い出したわ…」


 ミオがそんなことを言い出した。ああ、なんとなくわかる気がする。


 本当に1時間以内に20本の作成が終了した。驚くべきことに、すべてのポーションが100を基準に誤差3%以内だった。コイツ、なんで冒険者やってるんだろうね。


「やっぱりユリーカちゃんは凄いわね。あの作り方で、ここまで均一に仕上げるんだもの…。やっぱりウチで働かない?冒険者よりは稼げるわよ?」

「うっ、でも私冒険者一筋ですから…」


 よく言われているのだろう。怯みながらもしっかりと断っている。


「本当に残念ね。今日はここまで逸材がそろっているのに、誰もうちに来てくれないんだもの…」


 本当に残念そうに言う。まあ、冒険者ギルドに依頼を出すくらいだ。人手は足りていないのだろう。冒険者の街だし、ポーション類の需要なんて際限がないだろうからな。


「仕方ないわね…。とりあえず冒険者ギルドのほうに行きましょうか」


 ユリーカのポーションの品質チェックが終わった段階で、ソラさんとユリーカともども、冒険者ギルドに向かうことになった。


 ソラさんが依頼の事後報告の手続きをして、俺たちは依頼引継ぎの処理をした。


「はい、ではこれ以降、この依頼は仁様が担当となります。もう依頼の引継ぎはできないのでご注意ください」


 受付嬢さんから、引き継ぎ用の依頼票を受け取る。


「依頼の村は馬車で1時間くらいか、今日中には終わりそうだな」

「明後日までですから、大分余裕はありそうですね」

「でもさっさと終わらせるに越したことはないって!」

《はやきことかぜのごとしー》


 ドーラ、それ誰に聞いたの?え、おじいちゃん?あ、そう…。


「では、馬車のほうに向かいましょうか。御者は私とセラちゃんでやらせていただきます」

「御者の練習と、魔物との戦闘が目下の仕事ですわ」


 そうして、冒険者ギルドを出ようとしたら、ユリーカに止められた。


「ちょっと待って!私も連れて行って」

「どうした?もう引継ぎも終わっただろ?」

「うん、でも完全に知らん顔もできないから、せめて見届けさせてほしいの」


 うーん、あんまり連れていくメリットはないんだよな。知られると困ることが多すぎて…。


「ほら、村への案内とかできるし」


 マップがあれば十分だ。


「村長さんに取り次ぎできるし」


 依頼票で十分だ。


「ファングウルフの居場所を探すのだって手伝えるかも」


 マップ以下略。

 うん、本当に必要ないな…。


「お願い!このままじゃ後味悪いの!」


 ふと思いつく。ここで貸しを与えれば、ポイントを借りてもプラマイ0って言えるな。俺の中でセーフの判定が出た。借りを作るとか何とか言っているが、ポイント移動に関しては他の誰にもばれない以上、最終的には俺が許容できるかどうかだけが判断材料だ。今回はセーフ。


「わかった。連れて行ってやる。ただ、俺たちは積極的にはお前を守ったりしないぞ。あくまでも自己責任としてついてくるなら構わない」

「もちろんよ。これでも逃げ足には自信があるの!」


 <逃走>スキルのせいだろうな、それは。とりあえず言質はとった。これで何かあっても俺のせいではないと言い張れる。


《ユリーカも連れていくから、異能とかバレないように注意してくれ》

《《《《はい》》》》

《?》


 あ、ドーラわかってない。


《さくら、ドーラへのフォローを頼んでいいか?》

《わかりました。あのねドーラちゃん、竜への変身とか…》


 さくらが説明を始めてくれたので一安心だ。


 ユリーカを連れて馬車で街を出発した。ちなみに馬車の中の『ルーム』は<無限収納インベントリ>の中に入れておいた。後、タモさんには隠れてもらっている。天井のヘリの上に、細長くなって乗っている。うん、見えない。


「私と同じGランク冒険者なのにこんな立派な馬車をもっているなんてすごいね」

「たまたま大金を得る機会があっただけだ」


「いやー、ファングウルフ1匹ならギリギリ戦いになるんだけど、2匹目が来たときは死ぬかと思ったよー」

「…弱い…」


「ポーション作成は依頼失敗の多い私の生命線なの…、だから…」

「安心しろ。今回は試しに受けただけだ。その内この街も出るし、もう受けることはない」

「…よかったー」


 女性が3人集まると姦しいとはよく言うが、コイツは1人で十分姦しいようだ。馬車の中ではほとんどユリーカが喋っていた。


 馬車に揺られて1時間、無事村についた。この村には宿も馬車を止める設備もないので、村の入り口に置いておくことにした。当然、タモさんが番人だ。



*************************************************************

ステータス


進堂仁

LV39

スキル:

武術系

<剣術LV7><槍術LV1><棒術LV6><盾術LV2><弓術LV3><格闘術LV6><暗殺術LV2><斧術LV1>

魔法系

<火魔法LV2><水魔法LV2><風魔法LV2><土魔法LV2><雷魔法LV2><氷魔法LV2><闇魔法LV3><回復魔法LV2><呪術LV1><憑依術LV1><奴隷術LV2><空間魔法LV2><無詠唱LV2><固有魔法オリジナルスペル>「リバイブ」「ルーム」「ワープ」「ポータル」「エナジーボール」

技能系

<魔物調教LV5><調剤LV3><鍵開けLV3><泥棒LV4><恐喝LV4><統率LV4><鼓舞LV4><拷問LV2><手加減LV1 new>

身体系

<身体強化LV10><縮地法LV5><HP自動回復LV5><MP自動回復LV2><跳躍LV4><気配察知LV5><夜目LV3><覇気LV1><闘気LV5><狂戦士化LV1><索敵LV6>

異能:<生殺与奪ギブアンドテイクLV4><千里眼システムウィンドウLV><無限収納インベントリLV-><契約の絆エンゲージリンクLV-><???><???><???>

装備:霊刀・未完


木ノ下さくら

LV28

スキル:

武術系

<棒術LV7><格闘術LV2>

魔法系

<火魔法LV3><水魔法LV2><風魔法LV2><土魔法LV2><雷魔法LV3><氷魔法LV2><闇魔法LV5><空間魔法LV2><無詠唱LV2>

身体系

<身体強化LV7><MP自動回復LV2><跳躍LV3>

異能:<魔法創造マジッククリエイト

装備:ルビーの杖


ドーラ

LV27

スキル:

武術系

<棒術LV5><盾術LV3>

魔法系

<竜魔法LV3>

身体系

<身体強化LV9><HP自動回復LV2><飛行LV7><突進LV5><咆哮LV10><噛みつきLV8><跳躍LV3>

装備:僧兵のバトルスタッフ、鋼の楯


ミオ

LV21

スキル:

武術系

<弓術LV8><格闘術LV2>

技能系

<魔物調教LV1><鍵開けLV1><料理LV5><家事LV4>

身体系

<身体強化LV9><跳躍LV3>

装備:フェアリーショートボウ


マリア

LV30

スキル:

武術系

<剣術LV7><投擲術LV1><格闘術LV3><斧術LV1>

魔法系

<火魔法LV3><水魔法LV3><光魔法LV5><回復魔法LV3><生活魔法LV1>

技能系

<魔物調教LV1><調剤LV2><料理LV1><家事LV1><伐採LV1><狩猟LV2><裁縫LV2><採掘LV1><鑑定LV3><鍛冶LV2><乗馬術LV3><作法LV5><執事LV6><手加減LV1 new><言語理解LV1 new><算術LV1 new><忍び足LV1 new><忠誠LV2 new>

身体系

<身体強化LV10><縮地法LV5><HP自動回復LV6><MP自動回復LV4><跳躍LV4><覇気LV5><闘気LV5><索敵LV5><心眼LV4><覚醒LV2><強靭LV2><不動LV2>

その他

<勇者LV5>

装備:ワンハンドアイアンソード


セラ

LV6

スキル:

武術系

<剣術LV7><槍術LV7><斧術LV5>

技能系

<乗馬術LV2>

身体系

<身体強化LV10><跳躍LV4>

その他

<英雄の証LV5><敵性魔法無効LV->

装備:グレートソード、パルチザン、カイトシールド


タモ

LV11

<吸収LV7 new><分裂LV6 new><擬態LV2 new>



ここから下のスキルは各人(ドーラ以外の従魔を除く)に1ポイントずつ与えているもの。LV2以上だった場合、LV1だが占有している場合は個別で記載。


武術系

<剣術><槍術><棒術><盾術><弓術><投擲術><暗器術><格闘術><斧術><騎乗戦闘>

魔法系

<火魔法><水魔法><風魔法><土魔法><雷魔法><氷魔法><光魔法><闇魔法><回復魔法><生活魔法>

技能系

<調剤>

身体系

<HP自動回復><MP自動回復><気配察知><夜目><索敵><心眼><覚醒><強靭><不動>

その他

<幸運>


タイトルにはハーフエルフって書いてあるけど、ユリーカちゃんのハーフエルフ成分が皆無な件について。あ、ひんぬーです。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
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主人公の借りの基準がわかんねぇ〜、圧倒的な強者が力でもって奪うんだからそれは借りを作ることにはならんだろ。寧ろ弱者に配慮するんだから貸しとも言える。人を殺すことに一切躊躇いがないのにこれは躊躇うとか主…
[一言] 能力表示は頻度を落としても良いんじゃね?5回に一回とか?
[良い点] (((°A°`)))えっ ユリーカちゃんちっぱい?…何だこの天使(第2号/半分妖精)は [気になる点] おじいちゃんって誰よ…
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