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第15話 異能のデメリットと買戻し終了

誤字の報告はありがたいのですが、あまりの誤字の多さに凹んでいます。

今回は2度見直しをしたので、誤字はないと思います(キリッ)。

誤用や言い回しはともかく、タイプミスとか変換ミスはないと思います。まあ、まさかないとは思いますけど、この話にミスがあったら、数日以内に短編を出しますよ(自らを追い込んでいくスタイル)。

 応接室に入ると20歳くらいの結構な美人が待っていた。でも、血色は悪い。食べてないとかじゃなく心労的なものだと思う。


「お待たせしました。買戻し希望の方でしょうか。私の名前はジーンと言います」


 一応最初は丁寧に挨拶するようにした(偽名だけど)。俺個人が決めたことだが、今回も高慢な相手だったら、さっさとこの部屋を退出して、明日の朝には街を出ようと思っている。この街に残っているのは今のところ買戻しのためだけだ。その買戻し相手に碌なのがいなければ、さっさと出ていくに限る。


「ご丁寧にありがとうございます。私はリサといいます」


 リサと名乗った女性は丁寧にお辞儀をした。気品を感じる所作だが、お付きもいないし貴族ではなさそうだ。


「買戻し希望の品はこれと同じ指輪です。お持ちでしょうか?」


 そういって手にはめていた指輪を取り外し、俺に見せてくる。


「主人との結婚指輪なんです。1か月前に結婚したんですが、商売で王都に行くときに『黒い狼』に襲われて…。せめて指輪だけでも取り戻して、あの人のお墓に入れて上げたくて…」


 重いよ。すっごい重いよ。そりゃあね、盗賊が奪ったものなんだから、持ち主が生きている可能性は低いし、明るい話になるわけないのはわかるよ。でもね、スキル欲しさに潰した盗賊のお宝で、ここまで重い話を受ける覚悟はなかったよ。でも、冷静に考えれば、買戻しをしてくる相手なんて、重い話で当然だよな。これは少し失敗したかもしれない…。


 そりゃリサさんも心労がひどいだろうよ。新郎をなくしてるんだから。


 ……………………ちょっと自殺したくなった。

 いかん、いかん。現実逃避している場合じゃない。


「あります。この指輪ですか?」


 そういって荷物(の裏で<無限収納インベントリ>)から指輪を取り出す。ペアリングのようで、2つ合わせるとひとつの紋様になるような指輪だ。洒落てるね。


「はい。間違いありません。いくらでしょうか。100万くらいなら他の遺品の売却や、貯蓄を崩せば何とか…」


 ちなみにこの指輪の相場を調べると、20万と出ました。冒険者(じゃないけど)相手だからだいぶ吹っかけられることを覚悟しているみたいだな。後で聞いた話なんだけど、『黒い狼』討伐者が、買戻しで相当な金額を吹っかけたって噂が流れてたみたいだ。まあ、事実なんだけどね。ていうか俺のせいでした。リサさん、すいません。


「いえ、お金は不要です。旦那さんの遺品なら、奥さんが持っているべきでしょう。ギルド員さん、別にタダで返しても問題はないのでしょう?」


 一応聞いておく。問題があるようなら最低価格で売ればいいだけだし。俺の質問に受付嬢さんが答える。


「はい。問題はありません。そういう場合、事実関係はしっかり確認するのが普通ですが…。リサさんのことは私が証言しましょう。今の話は全て事実で、その指輪はリサさんの旦那さんの持ち物でした」


 お涙頂戴の話で安く買い叩かれる可能性もあるだろう。でも、ペアリングが出てきた段階でその可能性はかなり低かったけどな。


 夫婦の婚約指輪(夫:ドル&リサ)

 夫婦の婚約指輪(妻:ドル&リサ)


 この鑑定結果が動かぬ証拠だろう。


「あっ、ありがとうございます。ありがとうございます!」


 泣きながら指輪を抱きしめるリサさん。このシーンを見せれば、女の子たちの好感度も上がっただろうなと考える俺、クズか!

 何度もお礼を言うリサさんを家に帰し、意味はないがルールなので少し待ってから帰宅する俺。ちょっと重かったし、決して救いのある話でもないが、俺のしたことで少しでもマシな方向に向かってくれればいいと、ガラにもなく考えるのだった。


「「お帰りなさいませ、ご主人様」」


 宿に戻ると、メイド服を着たミオとマリアがそれっぽいお辞儀をしつつ出迎える。

 何事だろうか。いや、嫌いではないが。もう1度言う、嫌いではないが。


「どうしたんだその服?昼前には買ってなかったよな?」


 <無限収納インベントリ>に入れたのは俺なのだから、昼の時点では買っていなかったはずだ。


「魔石とか売ったお金で買いました。ミオちゃんが『ご奉仕するにはこの格好が必要だ』ってお願いしてきたんですよ」


 さくらが答えてきた。確かに必要だ。ああ、絶対に必要だ。


「ゴブリン・キングの魔石はとっておいて、それ以外の魔石の売却だけで食費と宿泊費を払える額になったんです。黒字が意外と多かったから、そのお金で2人分のメイド服を購入しました。さくら様も良いと仰っていましたし、ミオちゃんが絶対仁様も喜んでくれると言っていたので…」


 ミオグッジョブ!メイド服とはいっても、ミニスカではなくロングスカートでエプロンも普通のものだ。どちらもいけるので問題はない。


「まあ、普通に作業着だし、買うことには問題はないぞ。それにしても結構な黒字になったんだな」


 努めて冷静に言う俺。内心の喜びを一切外に出さない。


「はい、ゴブリン・モンクのは特に高く売れました」


 レアっぽいしな。キングに関しては売らないように頼んでおいた。絶対悪目立ちするからな。冒険者になってから売ろう。


「ふふーん。どう?可愛いでしょ?」


 くるくると裾を広げて回るミオを撫でる。


「ああ、可愛いよ」

「えへへー」

「わ、私も回るから撫でてください!」


 撫でられながら照れているミオに刺激されたのか、マリアも回り始めたのだが勢いが付きすぎてスカートがめくれ上がり、パンツが見えている。


「ストップストップ。パンツ見えているぞ」

「仁様なら見られても構いません。むしろ見たければいくらでも見て下さって構いません」


 俺の言葉に従い回転をやめ、そんなことを言うマリア。ちょっと押されつつもマリアの頭を撫でる。


「そういうのはいいから…。少なくともこの国にいる間はそういうことは一切考えてないから…」

「はい、ではいずれ…」


 明言はしないよ。この国では絶対にしないけど。


「あ、そうだ。今日は訓練だから能力落としたけど、明日からは普通に高い能力も使って戦う予定だ。だから今日中にステータスを戻すぞ」

「後半かなり落としてたわよね。それでも十分戦えていたけど…」

「そうですね。最初に用意されたステータスから見れば半分以下になっていましたよね」


 ミオとマリアの言う通り、最後のゴブリン・キング戦でもステータスはかなり落としていた。それでも余裕があるのだから、一般的な人々から見ればどれだけ強力なモノかは押して量るべきだろう。

 全員の能力を調整して回る。最初はさくらだ。


「俺の能力でステータスが簡単に上下するからな。その変化に体を慣らす練習を次に行うつもりだ」

「でも仁君はそんなことしてませんよね」


 さくらが質問してきた。そういえば、俺はそういうことしてないな。盗賊のところで1回やってみたが、何の問題もなかったから止めたんだっけ。


「俺はなぜか平気みたいだ。まあ、俺の能力で俺が苦労してたら世話はないしな…」

「やっぱり、ご主人様はすごいです」


 マリアのヨイショにも慣れてきました。次にマリアのステータスを戻し始めた。


「あー…」


 ステータスを戻しているときに気付いた。いや、分かってはいたが目をそらし続けてきたことを目の前に突き付けられたという方が正しいか。


「どうかしましたか?」

「いや、マリアはすごいなと思って?」

「またマリアちゃんがなんかあったの?」


 ミオがこちらの様子に気づいて話に入ってきた。


「ああ、マリアのスキルポイントがすごい勢いで上がっている。戦闘で使ったスキルに関して5ポイントくらい入手しているぞ」

「すごい…。ご主人さまの話では、一般的な人だと1ポイント上げるのに一か月はかかるって話なのに…」


 多分これは勇者の力なんだろうな。異能を除けば、この世界最大のチートなのかもしれないな。


「これで、マリアが『物覚えが良い』ことが証明されたようだな。いろんなスキルを覚えさせるために、マリアにはいろんなことにチャレンジしてもらうぞ?」

「はい、お任せください」


 元気よくマリアが答える。俺の役に立てることが嬉しくてしょうがないようだ。


「仁君、それはいいことですよね?さっきの仁君はいいことがあった顔ではなかったのですが…」


 さくらもよく見ている。そうだ、これはいい方の話だ。問題はそれと比較した俺の話だ。


「今確認して分かったんだが、どうやら俺はスキルポイントが得られないみたいだ」

「どういうことです?仁様はまだこちらに来て数日です。ポイントの変化がなくてもおかしくはないのでは?」


 確かに一般的な人間のポイント加算で考えればそうだろう。しかし、俺はそうではない。


「<千里眼システムウィンドウ>によって、スキルポイントには表れない小数点以下のレベルで確認したが、まったく変動がない。こりゃ、俺の異能のデメリットかな…」


 俺の発言に言葉を失う仲間たち。


「それはつまり、ご主人様は奪うことでしか強くなれないってこと?」

「そうだな。まあ、そちらが強力すぎるから、帳尻合わせが働いたと取れなくもないな」


 現状困ることはないだろうが少し残念だ。スキル的な意味で俺には成長の余地がないことが明らかになったのだから。


「仁様、お気になさらないでください。仁様がスキルポイントを得られない分、私がいくらでも稼いできます。仁様はどっしり構えていて、私の得たスキルポイントをお使いくださればいいのです」


 マリアがまた全てを捧げようとしてくる。少し言い方がヒモっぽく聞こえたのは、俺の被害妄想かな?


「私の異能が仁君無しでは使いきれないように、仁君の異能にも結構致命的なデメリットがあるんですね。ただ楽なだけのチートはないみたいですね」

「ああ、それでもさくらには俺がいるし、俺はマリアみたいにスキル習得が早い子を配下に置くことでいくらでもフォローできるから、気にすることはない」


 そうだ。フォローできない致命的なデメリットではないのだから、前向きに考えるようにしよう。


「この国ではもう奴隷を買う予定はないが、他の国に着いたら奴隷を追加して戦力の拡充をしよう。前から分かってはいたが、俺の強さは配下によって大きく変わるみたいだからな」

「余力が出来たらテイミングもしませんか?ドーラちゃんほど強力でなくとも、手数が増えますよ。私の勇者スキルにもテイミングがあるようですし…」


 なるほど、テイミングか。ドーラが欲しくて覚えたようなものだが、それ以外の魔物をテイムするのもありだな。


「そうだな。これからは魔物の相手をするとき、テイムすることも視野に入れよう。テイミングはレベルの高さが大事だから、分散させずに俺に集中させるぞ。マリアの方は勇者スキルを上げれば、勝手に増えていくから0ポイントにはしないけど…」

「えー、私もテイムしたいよー」


 ミオがむくれる。確かにこいつはそういうのが好きそうだ。


「最優先は俺だからな。おこぼれしか上げられないぞ」

「はーい…」


 残念そうに言うミオ。そうだ、チャンスは与えておこう。


「そうだな。ミオが倒した魔物のスキルで、俺たちの使えないスキルの半分を変換してミオにやるよ。ミオが魔物を倒すほど魔物調教のレベルを上げられるぞ」

「本当!?約束よ!よーし、バシバシ倒すわよー」


 ミオがやる気を出してくれたようだ。使えないスキルを変換すると1匹当たり1から2になるからな。LV3とかLV4なら比較的すぐに上がるだろう。


 そこまで話をした段階で全員の能力を元に戻し終わったので、夕食を食べ、スキルの話をし、その日は寝ることにした。


 次の日も約束通りギルドに向かう。短くはあるがせいぜいあと2~3日で買戻しの受付をやめて、本格的にこの街を出たいな。というか早くこの国を出たい。

 少し余裕を持ってギルドまで行き、受付嬢さんにいつも通りの挨拶をする。他の皆は今日の分の買い出しなので1人だ。さくらとドーラ、マリアとミオで手分けして必要なものを買うことになっている。


「すいません。本日も買戻し希望の方が来ています」


 おや、昨日の夜から2連続ですか。『黒い狼』がため込んでいたお宝って実は相当な量だったんだろうか。盗賊のお宝の相場がわからないからな…。


A:一般的な盗賊団から見るとかなり多いです。


 あ、ヘルプ先生。どーも。

 昨日のリサさんは真っ当な人だった。ああいう人が相手なら、安く返してもいいんだが(リサさんにはタダで返したし)…。今日の相手もそうだといいんだけど…。


「応接室へどうぞ」

「はい」

「すいません。本日の希望者も貴族の方です」


 扉の近くまで来て、小声で受付嬢さんが言う。またここで言うのか。そうか、受付嬢さん、敵か。


「遅いぞ!貴族であるこのギリウス様を待たせるとはどういうつもりだ!」


 応接室に入ると、でっぷりと太ったおっさんが声を荒げる。その後ろには完全武装の兵士が3名直立不動の姿勢をとっている。

 これ、アカン方や。ちなみに本日は10分以上余裕を持って来た。ギルド内で10分待つつもりもあった。それなのにこれである。


「ふん、貴族の時間はそこらの冒険者とは比べ物にならんほど貴重だというのに…」


 うん。もういっそ清々しいね。これは売らなくていいな。吹っかけて大金をもらったとしても何も売りたくはない。というか貴族の言うことにバリエーションはないのだろうか。


「ちっ、こんな小僧に説教している時間も惜しいな…。おい貴様、『黒い狼』のアジトにいたフェザードラゴンをよこせ。それはワシのものだ」


 狙いはまさかのドーラでした。


「フェザードラゴン?何のことでしょう?」


 とりあえず惚けてみる。どういう関係かわからない内からこちらの情報を開示する必要もないだろう。リサさんは指輪の片割れを持っていたからね。縦ロールの短剣?アレは一応特徴を言っていたし、ドーラと違って本来の持ち主以外の手に渡っても痛くはないからね。


「ごまかしても無駄だ。『黒い狼』がフェザードラゴンを捕まえたことは知っている。ワシのものだ、早く返せ!」

「それは貴方のところから奪われたフェザードラゴンだから買戻したいと言っているのですか?」

「う、うるさい!いいから貴様は言われた通りにすればいいのだ!」


 多分違うな。そういえば、アジトで盗賊が1000万ゴールドで買い手がついたとか言ってたっけ。それだろうな。ドーラに念のため確認しておく。


《ドーラ、お前盗賊につかまる前、どっかの屋敷に住んでたか?》


 すぐに回答が来る。


《んーん。お家をでてさいしょに悪い人につかまって、あとはずっとあのどうくつだよー》


 やっぱり違った。俺がドーラを手放す気がない以上、時間の無駄だな。


「すいませんが、心当たりがありませんね。他に買戻し希望の品物がないようでしたら、どうぞお引き取り下さい」


 そういって退出を勧めると、貴族のおっさんは顔を真っ赤にして怒鳴る。


「何だその無礼な口の利き方は!この場で即刻処刑してくれる!」


 急展開すぎんだろ!しかも、そこまで言っちゃっていいの?すかさず後ろにいる兵士のステータスを確認する。


アルフレッド

LV5

<身体強化LV1>


ビリー

LV3

<身体強化LV1>


チャーリー

LV3

<身体強化LV1>


 …弱!後、兵士にもアルフレッドがいるんだ。盗賊と同じ名前。そして、名前の並びがABC。こいつら突っ込みどころが多すぎんだろ。ついでにギリウスも見てみる。


ギリウス

LV1

<幸運LV1>


 レアスキル発見!こいつ運だけでここまで生きてきたのかな?でも、あなたの運もこれまでよ…。


「お前たち!やれ!」


 兵士が武器を構える、全員槍だ。応接室(そんなに広くない部屋)で槍とか…。絶対にお飾りの兵士だな。


「ギルド内での戦闘行為は禁止です!」


 受付嬢さんが至極真っ当なことを言っている。


「うるさい!そんなもの金の力でどうとでもなる!やれ!」


 槍で突いてくるチャーリー。簡単に避ける。これで先制攻撃は譲ってあげたことになるよね。正当防衛って大事だよね。


「受付嬢さん。この状況、どうすればいいと思いますか」


 一応確認する。もし手を出すなと言われても聞く気などないけどね。その時はこの街ごと…。フフ、フフフ…。


「仕方ありませんね。先に手を出したのは向こうだと私が証言しますから、無力化していただけますか?あ、ギリウス様は殺さないでください。あんなのでも一応は貴族です。兵士に関しては出来れば殺さないでいただきたいですが、無理にとは言いません。お任せします」


 受付嬢さん冷静だな。一応受付嬢さんのステータスも見てみる。


アンナ

LV19

<身体強化LV3><剣術LV2><火魔法LV1><回復魔法LV1>


 絶対、兵士より強いです。しかしバランスいいな、このスキル構成。

 とはいえ立場的に手は出せないだろうしな。この国を去る俺が叩きのめすのが1番後腐れなくていいだろう。


「了解です。とりあえず兵士は全滅で…」


 チャーリーに腹パン。ビリーに腹パン。アルフレッドに腹パン。おしまい。

 いや、戦術組み立てる必要すらなく沈むんだもの。


「なっ、何をしたのだ…ワシの兵が一撃で…」


 腰を抜かし、その場に崩れ落ちるギリウス。

 もちろんみんな死んでます。やだなー、せっかくステータス奪える機会なんだから、逃すわけないじゃん。まさしくABC殺人事件。…しまった。殺す順番が逆だ!


「お金の力が何ですって?」

「ひいっ、ひいいいい」


 腰を抜かしているので、這いずり回りながら逃げていく。当然ギリウスのステータスとスキルも奪いつくしてある。レアスキルおいしいです。


「すごいですね。パンチ以外、何をしたのか全く分かりませんでした」


 いや、パンチ以外何もしていませんよ。なんですか、それ以外にも何かをしたような言い方は。あ、そうか。普通兵士が腹パン1発で死ぬとは思えないもんな。何か他にしたのだろうと考えたのか。


「それよりもこれ、どうします」


 兵士3人の死体を指して言う。


「ギルドの方で片付けましょう」

「ああいった輩は弾いてはくれないんですか?」


 買戻しにふさわしくないのは明確だろう。というか、俺に伝えるのが遅すぎる。


「犯罪者とかでしたらともかく、貴族ですからね。会わせないわけにもいかないんですよ」


 いや、その貴族が1番ふさわしくないんだが…。


1人目:貴族→高慢、縦ロール

2人目:未亡人→重い

3人目:貴族→高慢、デブ


 ほら、1人目と3人目を見て!


「そうですか…。うん、決めた。買戻し、もうお断りします。この街を今日中に出ます」


 もう何のメリットもないものね。出ていきましょう。そうしましょう。


「また、急に決められるのですね」

「いえ、1人目がアレな時点で、次に嫌な目にあったら出ていこうと思っていましたから」


 受付嬢さんもため息をつく。いや、貴方がぎりぎりまで隠しているのもマイナスポイントの1つですよ。


「仕方ありませんね。強制力はないですし、善意でやっていただいただけですので」

「知っています?善意って有限なんですよ」


 この街の分はもう尽きている。この国の分は最初からない。武器屋のおっちゃんだけが心のオアシスだ。


「…わかりました。ギルド長には私から伝えておきます。短い間でしたが、ありがとうございました」

「はい、これで失礼します」


 そういって俺もギルドを後にする。皆にも連絡しておこう。


《買戻しで嫌な目にあったので、この街を後にします。出ていく準備を整えてください》


 業務連絡っぽい。


《わかったわ。戦闘準備から旅支度に変更ね。いよいよ私の料理の腕を見せる時が来たようね!》

《でもお昼ご飯はお金払っているし、宿で食べていきましょう》

《ドーラおにくたべたいー》

《仁様、私たちは今全員そろって道具屋にいます。こちらに来ていただけますか?》

《ああ、今行くよ》


 道具屋ではみんなが旅に必要なものを見繕っていた。最初の村では2人旅だったし、お金がぎりぎりで、あまりいいものを買えなかったが、今回は人数もいるしお金もある。しっかり準備していこう。

 そこそこお金をかけて、満足するものを見繕った。<無限収納インベントリ>のおかげで手荷物は少なくて済むから、買えるだけ買っておいたというのもある。

 この街最後の食事を味わって食べてから、門へと向かう。


「さて、この街ともおさらばしますか」

「ご主人様、それなんか悪役っぽいです」


 まあ、この国では若干やらかしているわけですけどね…。俺からは手を出してないよ。盗賊以外。

 門を抜けて外に出る。門番の1人がこっちを向いた後、街の方に走って行った。職場放棄はいけないことだと思います。


「あっ、あのバカどこ行きやがった」


 同僚さんも怒っています。まあ、俺たちには関係ありませんね。先を急ぎましょう。


*************************************************************


*変更点のみ表示


進堂仁

技能系

<魔物調教LV5 up>


マリア

技能系

<魔物調教LV1 down>


全員LV1で所持しているスキル。


その他

<幸運 new>

20150912改稿:

修正(6)の内容を反映。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
忠誠心が上限突破して信仰の域に行ってるマリアが「こちらに来ていただけますか」って言うのはちょっと違和感あるなぁ。
[一言] コメント欄であるが自殺したくなったって別に直接的な理由ではなくギャグを言って恥ずかしくて死にたいの意味なのに理解出来ないのか…末恐ろしいな。
[気になる点] 前話のゴブリンキングが持っていた奴隷術Lv2は収得していないようで使えるスキルだと思うのですが
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