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第13話 転移者の異能とスキル構成

外伝の織原君へのコメントが多くて笑いました。ああいう、何考えてるのかわからない狂人(暫定)キャラは結構好きです。


織原:「幼馴染はモブにはなりえませんからね」

水原:「モブー」


「異能の話に戻そう。マリアのスキルの話は後、もしくは今度にしよう」

「わかりました。スキル配分の際にでも細かいことをお話ししましょう」


 マリアはあまり自分のスキルにこだわりはないようだ。あれだけ凄いのに本人は無関心なのか。…冷静に考えたら俺への関心や忠誠心が高すぎて、そっちに目が行ってないだけとか…、まさかね。


「3つ目の異能は無限に物が入れられる倉庫のようなものだ。生き物は入れられないがな」

「4じげ…」

「シャラップ!」


 ミオが正確にこちらの言われたくないことを言おうとしていたので止めた。でもアレ、確か生き物入るよ。異能より上位だよ。慌てるとまともなものが取り出せなくなるだけで…。


「この異能は、こちらの世界に来た時じゃなくて、旅の途中で手に入れたんだが、それ以来物の持ち運びが楽になっている」

「そりゃ、そうよね。ほとんど手ぶらで旅ができるんだもの」

「一応、怪しまれない程度の荷物は持って誤魔化しているがな」


 出来ればほんとに手ぶらにしたい。


「お任せください。擬装用の荷物は今後は私がお持ちします」

「まあ、奴隷が持たないで誰が持つんだという話ではあるわよね」

「ですが、本来よりはずっと軽いはずですよ」

「そうね。その分マシね」


 2人ともその辺は覚悟していたようだ。女の子にそれほど重いもの持たせる気はないんだけど。


「思っているよりはさらに少なくなると思うぞ。盗賊のところにアイテムボックスがあったからな。それを偽装に使う」


 俺の言葉にミオが呆れた顔をする。なんか変なこと言ったか。


「アイテムボックスみたいな貴重品を擬装用に使うっていうのが、ご主人様のとんでもなさを端的に表していると思うの…」

「いや、レンタルボックス分くらいしか入らないし…」

「十分貴重品よ…」


 なるほど、本来であればアイテムボックスで十分なのか。本当に俺は欲張りだな。


「一応旅に必要なものはアイテムボックスの方にも入れているから、さくらに預けている」

「これですよー」


 さくらがポーチを掲げる。


「結構可愛いやつですね。…ああ、それでさくら様が持っているんですね」

「うん、そう」


 ポーチは恥ずかしいです。


「だから持つにしてもほとんど中身のない袋くらいだな」

「ご主人様、旅してるのに生活水準高すぎない?」


 俺も自覚あるからなー。でもその理由ていうのが…。


「多分基準が日本なんだよなー」

「そりゃあ、水準上がるわね…」


 日本でいう技術の代わりに、魔法があり、それに加えて異能があるから何とか耐えられている状態だからな。上を見ればきりがない。


「便利だし、凄い能力であることは間違いないけど、劣化とはいえ似たようなことが出来るアイテムがあるせいで、他の3つよりは地味に見えちゃうんだよな…」

「そういえばそうですね。でも、無限というのはアイテムボックスでは絶対に無理でしょうし、もしかしたら私たちが把握していない良いところがあるかもしれませんよ」


 でも<無限収納インベントリ>は『LV-』だからこれ以上成長しないんだよな。とりあえず、ヘルプしてみるか。


Q:<無限収納インベントリ>のアイテムボックスに対する利点は何?

A:容量に制限がないこと、収納先で分解・合成ができること、死体を入れることが出来ること、物体の時間を止める・止めないが選べること、内部でアイテム使用ができること、石化、凍結状態なら生物も格納できること、魔法のストックができることなどがあります。


 意外とあった。結構聞き捨てならないこともあるし…。もうちょっとちゃんと確認しておいた方がよかったな。


「今確認したら結構できること多いみたいだ」


 皆に今わかったことを伝えることにした。


「条件次第では人間も入れることが出来るのね。死体を入れられる。内部でアイテムを使えるということは、死んだ直後に入れれば蘇生できたりするのかしら…」


 ミオの言う通り、そのあたりの機能は悪用、というか活用・応用が利きそうな感じはある。いきなり死体の話を扱うとは思わなかったけど…。


「時間に関してもいろいろ面白いことが出来そうね。料理で時間のかかるものを入れっぱなしにしておくとか」


 ミオのアイデアが止まらない。あ、一応料理人としての観点になっている。


「<無限収納インベントリ>内の合成ってことは、その中で料理とかできるのかしら」

「…可能みたいだな。結構複雑なことが出来るみたいだ。魔物の死体を入れれば、中で解体もできるみたいだな」

「あ、そっちが本来想定された用途っぽいわね」


 そんな気がする。基本的には冒険や戦闘で役立つのが異能の目的っぽいし。


「魔法のストックって何でしょうか」


 マリアが聞いてくる。でも多分そのままの意味だな。


「ああ、詠唱終了した魔法を<無限収納インベントリ>に入れておけば、いつでもそれが発動できるみたいだ」

「事実上の無詠唱よね」


 スキルで入手するのではなく、異能により事実上の無詠唱(事前にセットする必要があるとはいえ)が習得できるとは思わなかったな。


「今後は余力があれば、可能な限り魔法を入れておこうと思う」

「それも容量無限でしょう?いっぱい入れた後に暴発とかしたら怖いわね」


 …入れておくものは選ぼうと思う。


「当初思っていたよりはずっと良い異能だったようだ。少し下に見てゴメンな<無限収納インベントリ>…」


 異能に謝る俺。少しシュールだ。


「さて、最後の4つ目は<契約の絆エンゲージリンク>という異能だ。これは俺の配下との間に特殊なパスを結ぶことが出来る」

「パスって何ですか?」


 マリアの質問に答える。


「パスというのは目に見えない線のようなものだ。ちなみに距離に制限はないが、部下、従魔、奴隷としか結べない。これを結んだ相手とは声を出さずに会話が出来たり、互いの能力を共有できたりする」

「ということは私も異能を借りられるの?」


 ミオが目を輝かせて質問してくる。横で聞いてて実は使いたかったんだろうな。


「全能力というわけじゃないけどな。設定とかの権限は全て俺が持っている、というか俺しか持てないようになっているし。<生殺与奪ギブアンドテイク>は倒した相手から奪う機能だけがONにできるみたいで、選んで奪うことは無理そうだな」

「倒した人が強くなるの?」

「いや、全部俺の方に来るみたいだ。能力の共有というよりは端末が1つ増える感じだな。<契約の絆エンゲージリンク>により遠隔で能力を奪ったり与えたりできるから、必要なら倒した本人に俺から与えることになるな」


 面倒くさいな。倒した相手の能力を『半分は俺に、残りは倒した本人に』とか設定できないだろうか。…あ、できました。


「<無限収納インベントリ>は収納領域の一部貸出ができるみたいで、プライベートエリアや共有領域が作れるみたいだ」

「それぞれにアイテムボックスが与えられたと考えればいいのでしょうか?」

「その認識で間違いないだろう。一部貸出とは言っているが、設定によってはほぼ無限だからな。<無限収納インベントリ>持ちが単純に増えたといってもいいだろう。あ、さっきの便利機能は一部がOFFみたいだ」


 正確には時間経過の設定とアイテムの使用ができないようだ。基本的に管理権限がいるような機能は共有できないみたいだな。


「<千里眼システムウィンドウ>の能力のうちヘルプは使えないが鑑定…ステータスのチェックとマップの使用はできる」

「それだけでも十分ね。…ねえ、ご主人様。<契約の絆エンゲージリンク>自体は共有できるの?簡単に言えば私たちがさらに部下を作った場合はどうなるの?」


 それは考えてなかったな。会社で言えば俺が社長となって、直属の部下がさらに部下を持つということだろう。


「出来るみたいだな。正確に言えば、俺よりかなり小さい権限を持つだけのようだが…」

「つまり、ご主人様は部下が増えれば増えるだけ強くなるのよね」

「そうなのですか。私、頑張ります」


 変なところでマリアのスイッチが入った。俺の能力によるネットワークが完成したら、俺は部下の稼ぎだけで最強になれるかもしれない。

 『寝るだけ簡単、最強への道』とか?いや、やっぱり地力って大事だと思います。


「ちなみに<契約の絆エンゲージリンク>のおかげで、ドーラと話すことが出来る」

「「?」」


 2人してハテナが浮かんでいる。可愛い。


「ドーラ、変身してくれ」

《はーい》


 返事とともにドーラの体が光り輝き、光が収まると竜形態のドーラが現れる。


「これは…、一体…」


 マリアがなんとか声を絞り出す。


「可愛いー!ふわふわの羽毛。クリクリした眼。この子欲しいー」


 ドーラに抱き付くミオ。ドーラはあげません。絶対に。


「ドーラはドラゴニュートという魔物なんだ。人型になれるドラゴンなんだけど、まだ幼くて人の言葉が喋れない。<契約の絆エンゲージリンク>なら、声が出なくても喋れるからな。ちなみにこの機能は『念話』という」

「ご主人様!早く私たちにもドーラちゃんと話をさせてください!」


 ミオが目を輝かせてお願いしてくる。説明しないうちから有効にしても混乱するだけだったのでOFFにしていたが、そろそろいいだろう。


「わかった。…ほら、これで喋れるぞ。ドーラ、もう1度挨拶だ」


 <契約の絆エンゲージリンク>を有効にしたので、ドーラに挨拶を促す。


《やっほードーラだよ。きこえてるかなー?》

「わ、頭の中に声が響いてきた」

「不思議な感覚です」


 最初はびっくりするだろうが、慣れれば平気だ。距離が関係ないから、急に来るとびっくりするけど。電話やメールみたいに、着信がわかってから、通話するかどうか決められるようにするか。いきなり話を始められても困る状況もあるだろうし。俺の話は着拒できないようにするけど。


《2人も頭の中で会話をイメージしてみろ》

「わっ、これは仁様ですね」

「マリアちゃん。私たちもやってみよう!」

「はい!」


 最初は感覚に慣れなかったようだが、数分すれば十分に会話できるようになっていた。


《これでいつでも仁様とお話ができます。幸せです》

《ドーラちゃん。フェザードラゴンって言うんだー。白くて羽がふわふわで可愛い-》

《えへへー、ごしゅじんさまもよくほめてくれるのー。じまんのはねだよー》

《そっかー、ドーラちゃんもご主人様が大好きなんだね》

《うん!だいすき!》


 少女と幼女の心の声を聴いて和んでいると、体力が戻ってきたのか、さくらが少し近づいてきた。


「俺の異能はこれで全部だ(今のところ)。そろそろさくらの異能について説明するか…」


 少女たちの視線がさくらに集まる。


「えっと、期待させて悪いですけど、私の異能は1個だけですし、仁君のほど凄くはないですよ…」


 自信なさそうに言うさくらだが、絶対にそんなことはない。出るとこ出れば、神様呼ばわりも十分にあり得る能力だぞ。


「私の異能、<魔法創造マジッククリエイト>はですね、この世界にない魔法を新たに作り出し、習得できるという魔法です。マリアちゃんの傷を治したのも、この魔法で新たに作り出した『リバイブ』という魔法なんですよ」


 当たり前ではあるが、ミオもマリアもぽかんとしている。俺の異能と比べても見劣りしない魔法だからな。そして誰の目から見ても強力で、便利だ。


「ご主人様だけではなく、さくら様も強力な異能を持っているのね」

「私の欠損を治すほどの魔法を新たに作り出す。ご主人様ともども神と呼ばれてもおかしくない力だと思います」


 やっぱり、マリアの中で俺の扱いは神様のようだ。あ、そこにさくらも加わったかも。


「強力ではあるけど、欠点もあるんですよ。まず、魔法を作るのにとんでもない量の魔力とMPが必要です。あ、この2つは仁君の言っているステータスですよ」


 細かいステータスの説明はしていなかったな。前にさくらに説明した時の紙をミオに渡す。


「ステータスの一覧はこれだ。マリアは後でミオに聞け」

「またか…」

「はい!」


 ミオはもう諦めろ。


「続けるね。作った魔法も使うのに消費するMPが割高ですし、全体的に仁君がいないと使いにくい異能ですね」

「いや、十分だと思うわよ。それにさくら様がご主人様と一緒にいる以上、その欠点なんてあってないようなものよ」

「その通りだ。いずれ余裕が出来たら、魔力の共有なしでも異能が使えるだけのステータスを与えるからな。それまで我慢してくれ」


 安心させるように言うと、さくらも微笑みを返してくれた。


「わかりました。異能の欠点に関しては気にしないようにします。仁君、今の話よろしくお願いしますね。約束ですよ?」

「ああ、任せろ」

「あのー…」


 力強く頷き返す。マリアが手を挙げて何かを言いたそうにしている。


「お話の途中すいません」

「いや、区切りはついているから構わないぞ」

「ありがとうございます。それでですね…、仁様にだけお礼を言って、さくら様にはお礼を言わなかったことを思い出しました。申し訳ありません。さくら様、私を助けるために魔法を作っていただき、ありがとうございました」


 さくらに向かって深々とお辞儀をするマリア。耳の位置が若干遠い気がする。これは撫でるのは勘弁してくれという意味だろうか。


A:そうです。


 あれ、今のQ&A扱いになったんだ。今までこんなことなかったぞ?もっと質問であることを明確にしないと回答はなかったんだけど…。ヘルプ先生も進化しているのかな。


A:そうです。


 そうみたいですね。まあ、便利だからいいか。

 そんなマリアの感謝を受けて、さくらが答える。


「いいですよ、気にしないで。マリアちゃん自身が言っていましたけど、基本的には仁君の指示ですからね。この異能に気付いたのも仁君のおかげですし…。それに仁君ならこの異能がなくても何とかしちゃうような気がするんですよね」


 いや、そんなことはない、と思う。でも、困った時に開眼しているからな。残りの異能が開眼して、マリアを治せた可能性も低くはない。そもそも、<封印>を取るだけで自動回復かかるかも知れないし。


「いや、別に何でもできるわけじゃないぞ」


 一応できないアピールをしておく。うん、手持ちの力ではできた保証はない。嘘ではない。


「さて、異能に関してはこんなところかな。うん、ちょうどいい時間だ。そろそろ昼食にしようか」

「私たちはどうすればいいでしょうか?」


 マリアが質問してくるが、その意図がわからない。


「どういうことだ?」

「?」


 マリアに返すもマリアの方も理解が出来ていないようだ。


「あー、ご主人様。奴隷の食事をどうするかっていうことよ。そうよね、マリアちゃん」

「あ、はい。そうです」


 ミオの補足にマリアも頷く。もしかして、奴隷は主人とは別のものを食べるっていうことか。ああ、ドラマとか漫画とかでも、貴族と使用人が同じものを食べるなんてこともないよな。


「そうだな。別にお金に困っているわけでもないから、お前たちも同じものを食べればいいんじゃないか?」

「い、いけません。奴隷の食事は最低でも数段階は落とすのが普通です」


 俺の宣言にマリアが大慌てで修正してくる。


「私としてはご主人様の言い分の方が嬉しいから、このままでいいんだけどね」

「そういうわけにもいきません。立場の違いははっきりさせなければいけません」


 力強く宣言するマリア。まさか俺の発言に対する最初の否定が、『自分たちの立場が下宣言』だとは思わなかった。

 俺としては食べるものに差をつけるのは趣味ではない。美味いものはみんなで食べたほうがいいに決まっている。


「マリア、命令だ。俺たちと同等の食事をとることを拒否するな」

「仁様のお心のままに」


 俺が命令すると迷わずに跪き、このように返してきた。確かに俺はさっき『同じものを食べればいいんじゃないか?』と提案した。これに関してマリアは難色を示したが、命令であれば対応は全く違うようだ。さっきも『食べろ』と言っていたらこの問答はなかったということか。


「マリアちゃん。それでいいんだ…」


 ミオも少し呆れたような声を出す。


「判断を委ねられたので、奴隷としては当然の選択肢を選びました。ですが、ご命令であればそちらが優先されるのは当然のことです」

「まあ、そうかもね?」


 あまりにはっきりとしたマリアの言い分に、ミオもそれだけ返すのが精いっぱいだった。

 宿の従業員に5人分の料理を頼む。ついでに4人部屋に移ることにした。ドーラの分のベッドはない。俺かさくらと一緒に寝るからだ。


 料理が運ばれてきた。ご飯が美味くて、ミオとマリアが泣いた。ミオは久しぶり(8年ぶり)の、マリアは初めての高級料理(1食1000ゴールド)だ。

 マリアはそれでも少し遠慮気味だったので、無理やり1口目を食べさせたら、簡単に堕ちた。というか泣いて2口目を食べ始めた。ミオは全く気にせずに食べていた。


「こんなにおいしいものを食べたのは生まれて初めてです。仁様の奴隷となることが出来て私は幸せです。今日は最高の1日です。いえ、私は本当の意味で今日生まれたのです。今日が私の新たな誕生日なのです!」


 マリアのテンションがおかしい。


「ばくばく。むしゃむしゃ(無言の食事:ミオ)」


 こちらは全力で食べている。周りなんか見えていない。


「食い終わったらスキル構成決めて、衣類とか武器とかを買いに行く」


 一応宣言しておこう。耳に入っているといいけれど…。

 全員が食べ終わり、少々食休みをしている。2人は名残惜しそうに食器を見ている。


「久しぶりにお腹いっぱいになったわー。8年ぶり?まあ、生前の私は小食だったから、こんなに食べたのは24年で初めてかも知れないわね」


 ちゃっかり24歳発言しているミオ。


「私も12年で初めてです。物を食べるというのはただ命を繋ぐだけじゃなく、ここまで幸せになれるものだったのですね…」


 マリアも幸せそうな表情を見せる。しかし、少し表情を曇らせてつづけた。


「今更ですけど、まだ何もしていない今から、本当にこんな待遇でいいのでしょうか…」


 本当に今更だ。だが1度おいしいものを食べてしまえば、それがなくなることには簡単には耐えられない(ミオがわかりやすい例)。マリアは今後もなんだかんだでおいしい食べ物を享受してしまうのだろう。もちろん、俺が命令すれば食わないだろうが…。


「これから働いてもらうからな。先行投資だ。それに旅が始まれば食生活レベルは落ちざるを得ないからな。そのためにミオを買ったのだし。…とはいえ、衣食住に関しては奴隷だからと言って、俺たちより酷く下にするつもりはないから安心してくれ」


「「はい!」」


 元気よく返事をする2人。武器を買いに行く前にスキルの構成を決めておこう。おそらくマリアの方はこのまま戦闘に出しても問題ないだろうが、ミオの方はそうもいかないだろうな。ミオは転生者であることを除けば普通の人間でノーチートの上、ドーラを除けば最年少だ。本来は戦わせるべきではないのかもな。戦わせるけど…。


「じゃあ、そろそろスキル構成を決めておこう」

「マリアちゃんはスキル見れば戦えそうなのは分かったけど、私が問題よねー」


 ミオも自覚があるようだ。


「現時点での編成を教えておくぞ。俺が片手剣と魔法。さくらは杖を棒術で使って魔法。ドーラが楯とバトルスタッフで竜魔法だ」

「魔法、多くない?」

「1ポイントでもあればLV1魔法は使えるからな。全員に持たせて問題はない」

「じゃあとりあえず魔法下さい」


 ミオも魔法は使いたいようだ。それは構わないのだけど、魔法職専任は1人でいい。


「メインウエポンは別にしろよ。魔法専任はさくらだからな」

「はーい。…でも何がいいかしら。接近戦はできそうにないしなー。ステータスがあっても体格がなー」

「中距離、遠距離戦を意識して鞭か弓がおすすめだ」


 鞭スキルは持っていないが、しばらく使わせれば入手出来るだろうしな。


「鞭はなんか嫌!弓でお願いします」


 幼い女王様も需要はあると思うのだが…。とりあえず、魔法一式と<身体強化>、<弓術>を多めに与えておいた。


「マリア、申し訳ないんだがお前の持っているスキルポイントを俺たちに1ずつくれないか?」


 本当は未変換ポイントを使って、マリアのポイントを減らさないようにするべきなんだが、少々量が多くて大変だからできれば貰っておきたい。


「構いません。ご自由にお使いください」

「ありがとう。1ポイントでもあればスキルレベル1にはなる。メリットスキルは可能な限り全員で分け合いたい。マリアには面倒をかけるが、よろしく頼むな」

「はい!お役に立ててうれしいです!」


 マリアから許可をもらった俺は、可能な限り全員に1ポイント以上のスキルを割り振った。レベルが1になると、その作業の素人レベルを超えたのと同等の力が手に入る。

 やはり俺の力は配下が多いほど効果が大きいみたいだ。


「これで全員にスキルを与えられたな。後、<勇者>みたいな称号に付随したスキルは弄るとどうなるかわからないからそのままにしているぞ」


 女神側(暫定)も直接は弄っていないスキルだ。余計なことはしない方がいいだろう。


「マリアはメインウエポンどうする?俺としては前衛が不足気味だから、そちらを任せたいのだが」

「わかりました。剣でも使えばよいでしょうか?」

「そうだな。<勇者>のスキルで<剣術>が強化されるみたいだからそれがいいだろうな。まずは片手剣で様子見をしていこう」

「はい」


 マリアの武器も決定だな。器用そうだし、空いた手に短剣持たせて二刀流にしてもいいかもな。なんでもできそうな子だから、色々やらせてみたい。

 話が一段落ついたので、次の作業に移ることにする。


「じゃあ武器とスキルの話は終わりだ。買い物に行こう。まずは衣類、その後旅に必要なもの、最後に武器防具だな」

「「「はい」」」

《はーい》


 街に出て、衣類を売っている店に向かう。マリアもミオもちゃんと街を見るのは初めてのようで、キョロキョロと辺りを見回している。


「あんまりよそ見ばっかするなよ」

「大丈夫よ!子供じゃないわ!」


 見た目8歳の子供が言う。1番キョロキョロしているミオが言っても説得力がない。ミオ自身は前世の記憶があるから、自分のことを分別のつく大人だと思っているようだ。しかし、実際には子供の体に精神が引っ張られているせいか、かなり子供っぽい行動が多い。

 ドーラは俺と手を繋いでいるから心配ないので、今1番心配なのは自称精神年齢24歳の最年長の幼女だ。


 とは言え、そうそうトラブルに巻き込まれるようなこともなく、衣料品店に到着した。俺は自分の必要な分をさっさと買って、店の前で女子を待っているところだ。女子には予算を多めに渡して、好きなように衣類を買うよう伝えてある。

 予算を多めに渡したのは、着飾ることが嫌いな少女もいないだろうという理由だ。美少女が着飾って悪いことなどない(ガラの悪い連中に絡まれやすくなることは除く)。

 しばらく待っていると、女子たちが出てきた。マリアとミオも奴隷商で着ていた服でなく、お店で買った服を着ていた。マリアは動きやすいように短パンとTシャツを着ている。飾り気もなく、実益優先ということだろうか。ミオは何とゴスロリだ。これから戦闘するということを理解しているのだろうか。


「いっぱい買いました」


 大きな袋いっぱいの服を見せる少女たち。


「それはいいんだが、ミオは何故ゴスロリ?」

「可愛いでしょ?」

「いや、戦闘するし…」

「後衛でしょ?着飾ってもそれほど邪魔にはならないでしょ?」

「まあ…」


 8歳の子供が可愛さ重視の服を着ることには何の問題もないので、強くは言えない。

 ひとまず俺の<無限収納インベントリ>の中に入れる。<契約の絆エンゲージリンク>による、個人収納エリアに入れさせた。当然俺には全エリアのアクセス権があるから、いつでも彼女たちの下着を取り出せる。別に深い意味はない。ないったら、ない


「ミオちゃんが他の子もコーディネートしたから、今度見せてあげる。楽しみにしててよね」

「ああ、楽しみに待っているよ」


 ミオが自信満々に言うので、本心を返す。可愛い服を可愛い子が着るのは正義だ。


「…仁様の期待を裏切らないようにしないと…。…女子の正しい着飾り方ってどこで学べばいいのでしょう…」


 マリアは変な方向にまじめだ。確かに今のマリアは着飾っているとは言えない。マリアには俺の要望を伝えてあげた方がいいのかもしれないな。俺の要望なら俺が嫌がることはないってわかっているから、変に気負うこともないだろう。

 次に旅の必需品を購入しに行った。食器や寝袋などの個人単位で必要なものを人数分揃えただけだが…。『誰のかわかるように色分けしましょ!』というミオの言葉に従って、可能なものは色分けすることにした。ちなみに俺は『黒』、さくらは『桃』、ドーラは『赤』、ミオは『黄』、マリアは『青』だ。ミオは『カレーはやだー』とか言っていた。俺は緑にするべきだったろうか。

 後、料理をミオ(とマリア)に任せるということで調理道具を一式そろえることにした。流石料理スキル0、調理道具のこと完全に忘れてたぜ。ミオに言われなきゃスルーしてたところだ。


20150803改稿:

アイテムボックスを重量基準から、体積基準に変更しました。

20150811改稿:

ドーラの大盾を盾に変更しました。


20150912改稿:

修正(6)の内容を反映。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
魔法専任って言ってもバフ回復専任と攻撃魔法専任で分ければよくね?さくらはあまり戦闘に向かなそうだしサポートメインにすればいいでしょ。 弓使うのにゴスロリは普通に邪魔じゃね?
ミオは『カレーはやだー』 ミオさんや、ゴレンジャーは1975年の作品だよ。元16歳の少女は何年生まれだったのかな?(;^ω^)
[一言] ミオの料理スキルのポイントも1ポイントずつ分ければよかったのでは?
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