第12話 転移者の事情とスキル封印
13話まではほぼ説明です。12.5話はQ&Aだけです。
「さっきは流して説明したが、俺とさくらは日本という国から学校という集団ごと勇者召喚でこの世界、この国の王宮に呼ばれた。でも、祝福がないからって王都から追い出されたんだ」
「普通、勇者召喚で呼ばれたら、祝福がもらえるって聞いてるわ。ご主人様たちはなんで祝福を貰えなかったの?」
話をするといったからか、ミオが早速質問してきた。
「細かい話は後でするが、祝福以外の力を俺たちが持っていたから祝福が入る余地がなかったらしい」
「それが仁様の起こした奇跡なのですか?」
マリアは俺を神様認定しているようだ。俺が止めなきゃ普通に神様呼ばわりだろうな。ああ、だから奇跡って表現にとどめているのか。
「奇跡じゃないが、まあそうだ。マリアを治したのも、マリアとミオを買ったのもその辺に理由がある」
異能の話は後回しにして、今までの旅の流れを説明しよう。
「王宮では『勇者』を祝福の有無でのみ判断しているようだからな。俺たちはそれに引っかからずに追い出された」
「先ほど仁様は集団で呼ばれたとおっしゃっていましたが、知り合いの方が追い出すのを止めたりはしなかったのですか」
ふむ、マリアはその点にちゃんと気付けるのか。と言うかさくらが特殊な例か…。
「ああ、誰も止めなかった。それどころか俺たちのことを敵でも見るような目で見ていた」
「それ、あまりにも不自然じゃない?」
「ああ、俺も洗脳か何かを疑っている。それも含めて、この国をさっさと出たいんだ」
「それでご主人様たちはこの国から逃げようとしていたのね」
ミオがそんなことを呟く。
「ちょっと待て。逃げるって何だ?」
「「え?」」
さくらとミオの声が重なる。
「俺は逃げているつもりなんて一切ないぞ。この国が嫌いだから出ていくだけで、逃げているわけじゃあない」
「そうなんですか。私は逃亡者の心境だったのですけど…」
さくらと俺の間で、若干の認識違いがあったようだ。
「今の俺たちなら、追手が来たところで問題はないからな。逃亡者としてこそこそするつもりはない」
逃亡生活って神経擦り減らすようで嫌だからな。
追手が来たなら倒せばいい。貴重なスキルポイントだ。
「余計なトラブルに自ら突っ込んでいくつもりはないけど、敵対した者に容赦するつもりもなければ、自分たちの意思を曲げてまでトラブルを回避するつもりもないぞ。簡単に言えば、『遠慮をするつもりはない』だな」
「結構大胆なんですね」
「そうじゃなければ、堂々と奴隷なんか買うわけないだろ?」
そうだ。一応聞いておくことがあったんだ。
「確認なんだが、2人はこの国に帰属意識はあるか?正直この国とは敵対に近い状態になると思うぞ」
俺の言葉にマリアが反応する。
「構いません。仁様のいるところが私のいるところです。この国の知り合いは故郷の村にしかいませんし、口減らしで子供を売るような村です。目の前に現れても何の感慨もわきません」
相変わらずの忠誠心ですね。とりあえずマリアは大丈夫そうだ。ミオはどうかな?
「私もそんなにないわね、帰属意識。マヨネーズの件は少しは悪いと思うけど、詳しい話も聞かずにすぐに犯罪者扱いよ、そんな酷い人たちのことなんかどうでもいいわ。それに未だに故郷は日本と思っているし…」
ミオの帰属意識は日本にあるようだ。懐かしそうに目を細めて言う。
「元々病弱だったんだけど、両親はすごく優しくしてくれたから向こうの生活にはいい思い出もいっぱいあるわ。何とか立て直して1人暮らしが出来るまでになったけど、結局交通事故で死んじゃうし…」
この国と敵対しても、悲しむようなことはなさそうだな。
「わかった。じゃあ続きを話すぞ」
「「はい」」
2人とも元気よく返事をする。
「王都を追い出されてから俺の力…、説明が面倒だから先に言っておくと『異能』っていうものだ」
「「異能?」」
「説明は後な。今は俺の持つ不思議な力でいろんなことが出来ると思っておけばいい」
「仁様がそういうのでしたらそうします」
マリアは本当迷いがないな。
「その異能によって近くの村までたどり着き、そこで旅の準備をしてからこの街に向かった」
またしてもミオが質問をしてくる。
「旅の準備ってお金はどうしたの?転移者が持ってるわけないわよね」
「異能で魔物を倒して魔石を売った」
「武器なんてないのに魔物を倒せたの?」
「異能で強くなって倒した」
「そういえば、祝福以外の力って、どうして持っているのがわかったの?」
「異能の力で確認した」
「…基本異能のおかげなのね」
「そうとも言う」
並べてみると異能凄いな。いや、わかってはいたけどね。
「で、この街にやってきたんだ。ああ、この街につく前に『黒い狼』っていう盗賊団を異能の力で壊滅させた」
「ご主人様。巷で噂の盗賊を壊滅させるのって一言で済ませていいことじゃないわよ」
ああ、そういえば人数の割に結構悪名高い盗賊団だったらしいからな。
「結構実入りは良かったぞ。アイテムボックスもあったし。そこにいるドーラが捕まってたから助けて仲間にしたし」
《ドーラだよー》
ドーラが手を挙げているが、念話の方は聞こえていないようだ。まだ設定していないからな。
「ドーラちゃんですね。よろしくお願いします」
「よろしくー」
そういえばドーラについて説明していないな。でも、異能の説明をしないでドーラの説明するの難しいから後回しにしよう。ごめんね、ドーラ。
念話で伝えてみた。
《気にしてないよー》
うん、いい子いい子。
「盗賊団を倒した報奨金と、盗賊のお宝の買戻しで結構儲けたから奴隷商で2人を買うことにしたんだ。最初の目的は料理だったけどな。俺たちの料理スキルが壊滅的だったから…」
「そんなことがあったのね。ちなみに儲けたっていくらくらい?」
「2050万ゴールド」
「多いわよ!」
「盗賊団とか多くても数100万ゴールドですから恐らく買戻しで2000万ゴールドですね…」
マリアは勘がいいというか鋭い感じだな。
「その通りだ。貴族の家宝を2倍くらいの価格で売った」
「なるほど。でもそんなことして大丈夫なの?」
「知らん。むかつく奴だったから後悔はしていない。襲われたりしたら返り討ちにする予定だ。どうせもうすぐこの街から出ていくから関係ない」
「でも冒険者ギルド経由で指名手配とか…」
この国と敵対した段階でちゃんと考えている。
「この国に来てからまだ冒険者登録はしていないし、冒険者ギルドで名乗ってもいない。この宿にも偽名で泊まっているしな」
あ、そこんとこ説明していなかったけど、俺の偽名はジーン、サクラはサティーラ、ドーラはドーナにしている。人前で呼んだときに誤魔化しやすいように若干近づけている。
「徹底していますね。本気でこの国を嫌っているのですね」
「ああ、俺とさくらはこの国が大っ嫌いだ。でも安心してくれ、2人のことは別に嫌いじゃない。元国民であることは気にしないぞ」
ちなみに奴隷になった瞬間に国民扱いではなく、物扱いになる。最もこの辺は主人の意向が優先されるけど…。宿代も普通にかかるし。
「はい、ありがとうございます。ですが、元国民であることがお気に召さないようでしたら、いつでも鞭で叩くなどして、気をお晴らし下さい」
虐待趣味はあんまりないんだけどな。痛めつけるより辱める方が趣味だ。辱めというよりも、恥ずかしがらせる、でもちょっと嬉しいし、気持ちいいと言うのが理想だな。
俺は何を語っているのだろうな。
「そんなことをするつもりはない。気に入らなかったら、気に入らない奴にやり返すだけだ。国民全員を皆殺しにしてやりたいほど恨んでいるとか、そこまでじゃあない。わざわざ自分の下につけた奴をいたぶる趣味もないしな」
「わかりました。仁様の奴隷となれて私は幸せです」
でもマリア、鞭で打っても喜びそうなんだけど。例えば『俺の気を少しでも晴らせることが出来て幸せです』とか…。
「一通り旅の流れも説明したし、そろそろ異能の話をするかな」
「待ってました!」
ミオは特にその話が聞きたそうだった。
「祝福の代わりに得た異能っていうのは、一言でいえばズル、チートだ」
俺がまず最初に簡潔にまとめる。
「でもご主人様。勇者の祝福も大概チートだって聞きますけど?」
「そんなものとは比べられないくらいにはチートだ」
一応祝福も確認したが、ここまで強力なものは全くなかった。基本的に祝福は単一の能力だし、(2つの意味で)ユニークなものもあるが、基本的には既存のスキルの強化系が多かった。
ここまで思いきりルールを無視するようなものは1つとしてなかった。
「まず、俺は異能を4つ持っている。最低でも祝福以上の力を4つだ。この時点でチートだろ?」
「そうね。それだけですごいのは確実ね」
まだ3つ出てくる可能性があるけど、話の収拾がつかなくなるので後回しにする。
「順番に説明していくぞ」
最初は何にしようか。旅の中で1番活躍したのは<千里眼>かな。他の異能の説明にも必要だし、これが最初でいいか。
「1つ目は情報に関する能力だ。俺の目には普通の人には見えないいろんなものが見えている。上から見たような地図。人の強さや技術。モノの値段や特性そういったものを全て確認できる」
「まるでゲームみたいね」
ミオはさすがにわかっている。さくらよりもゲームに詳しそうだな。
「ミオはそういうの詳しいのか?」
「当たり前じゃない。病弱な人間は常に暇を持て余しているのよ。カンストしたネトゲも1つや2つじゃないわよ。後、自慢じゃないけどネットでの検索とかしまくっているから、雑学というか、現代日本知識も自信ありよ」
「その割にはいきなりマヨネーズでコケたけどな」
「それは言わない約束よ…」
約束は、してない。
とは言え、マヨネーズの件はミオが悪いとも言い切れない。
Q:マヨネーズが毒ってどういうこと?
A:この世界ではマヨネーズは毒性を持っています。大量摂取により影響が出ます。この世界のルールは元の世界とは異なります。
Q:ルールが違うってどういうこと?
A:元の世界と同じことをして、同じ結果が得られるとは限らないということです。例えば、元の世界では火とは燃焼の事でしたが、この世界では燃焼であると同時に火属性を持っており、元の世界のルールが完全に適用されるわけではありません。
実はこれ、かなり重要な情報じゃないか?確かに魔法のある世界だ。全く同じルールなわけはないだろう。もしかしたら、重力加速度とか摩擦係数と言った根本的なルールから違いがあるのかもしれない。確認する気はないけど…。
しかし、マヨネーズに関してはそれとは少し違う気もする。まるで、現代知識チートを防ぐための罠のような印象すら受ける。なんてね…。
閑話休題。
マリアが手を挙げて質問してきた。
「あのー、げーむって何でしょうか?」
そりゃあ、マリアは分からないよな。ドーラも分からないだろうけど、ドーラは気にしていない、もしくはあんまり聞いていない。
「あー、すまない。こっちの世界にはない概念だから説明しにくい。ゲームの説明はまたにして、今は俺が知りたいことは大体知ることが出来る異能と思ってくれればいい」
「わかりました。今度ミオちゃんに聞いておきます」
「え、私なの?」
ミオも寝耳にミミズだ。間違えた。寝耳に水だ。
「ええ、そのようなことにご主人様の時間を使わせるわけにはいきません」
「私ならいいんだ…」
「奴隷仲間ですから。よろしくお願いします」
「まあいいんだけどね。そのうちね」
なんとなくマリアとミオの関係性が見えてきた気がする。
「話を戻すぞ。この異能によってミオが転生者であることを知ることが出来たし、マリアの名前や称号を確認することも出来たというわけだ」
Q:称号って何?
A:その存在の立場や生き様、偉業などにより与えられます。持っていることで、関連するスキルの習得率が若干上がりやすくなります。称号によってはスキル獲得ができることもあります。
「2つ目の異能はスキルやステータスを奪ったり与えたりできる力だ。ステータスは身体能力などの基礎的な力。スキルは特殊な技能や才能だ。祝福もこのスキルに含まれる」
「それらを奪われた存在はどうなってしまうのでしょうか」
「弱体化する。限界まで奪いつくせば石ころをぶつけただけで相手は死ぬ」
試したことはないが恐らく間違いないだろう。投石でダメージが入るのは確認済みだ。
「えげつない能力ね」
俺もそう思うが、使う分にはすごく有効だ。
「奪うだけでなく、人に与えることもできる」
「あ、さっき私たちを強くするって言っていたのはそれを使うの?」
「正解だ。魔物とかから奪ったステータスとスキルで人並み以上の力を与えられるぞ」
「大丈夫でしょうか。私、昔から物覚えが悪いと言われ続けているのですが…。ご主人様の期待を裏切ってしまったらどうしましょう…」
考え込むマリア。マリアのステータスを見てみよう。気になるものがございます。
名前:マリア
性別:女
年齢:12
種族:獣人(猫)
スキル:<封印LV10>
称号:獣人の勇者、仁の奴隷
<封印LV10>。これね。気になるでしょ。鑑定しましたとも。
<封印>
スキル習得を阻害するデメリット系スキル。<封印>以下のレベルのスキルは無効化される。習得しているものは無効になり、新たにスキルを習得することはできなくなる。
どう考えてもこいつが悪いだろう。ご丁寧にLV10だぞ。どんなスキルも習得できないじゃないか。そりゃ物覚えが悪いと言われるさ。
「少し気になることがあるんだ。マリア、お前のスキルが封印されている。そのせいで新たなスキルが習得できないようだ」
「え、もしかして私の物覚えが悪いのって…」
「このスキルのせいだろうな」
何かを考え込むマリア。
「昔から物覚えが悪いと言われてきました。大きくない集落ですので、得意なことを探してそれをやらせるのが基本なんですが、何をやっても全く才能がないと言われていました。まさかその謎がここで解けるとは…」
スキルポイントを1でも得て、LV1になれれば才能ありなのだろうな。
「とりあえずその<封印>スキルを奪ってやる。そうすればスキルを覚えられるようになるぞ」
「大丈夫なのですか?奪ったら仁様のスキルが封印されてしまうのでは?」
やはりよく気付く子だ。気遣いも出来ている。
「安心しろ、デメリットスキルが存在することも知っているし、奪ったものはすべて有効になるわけじゃない。種族的に使えないものや、俺が使いたくないと思ったものはOFFになるから平気だ」
「そんなことまでできるのね。その能力もすごいチートね」
「だから安心して奪われろ」
マリアの目を見て言う。マリアは恍惚とした表情で返す。
「よろしくお願いします。私の全ては仁様のものです。お好きに奪ってください」
うん、それ今言う言葉じゃないよね。一応実験の1種だから、好きに使うというのも正しいのか?でも、表情がなー。完全に乙女ですよ。
「じゃあ奪うぞ…」
意識を集中し、<封印>だけを奪う。俺のもとに来るときにOFFになるよう設定する。
「よし、奪えた」
「なんか、体が軽くなった気がします」
さて、念のためマリアのスキルを確認するか。まさか取っても取っても<封印>が残るとかないよね…。
名前:マリア
性別:女
年齢:12
種族:獣人(猫)
スキル:<剣術LV5><棒術LV1><盾術LV1><弓術LV1><投擲術LV1><格闘術LV2><斧術LV1><火魔法LV3><水魔法LV3><光魔法LV5><回復魔法LV3><生活魔法LV1><魔物調教LV4><調剤LV1><料理LV1><家事LV1><伐採LV1><狩猟LV2><裁縫LV2><採掘LV1><鑑定LV3><鍛冶LV2><身体強化LV5><HP自動回復LV5><MP自動回復LV5><跳躍LV1><覇気LV5><索敵LV1><心眼LV4><覚醒LV2><強靭LV2><不動LV2><勇者LV5>
称号:獣人の勇者、仁の奴隷
何…コレ…。
「なんかすごくいっぱいスキルがあるんだけど…」
前に<千里眼>で見た時にはなかったスキルが大量に増えている。<千里眼>は無効になっているスキルも確認できるから、今まで持っていなかったことは確実だ。ということは、今<封印>を除去した瞬間にスキルを獲得したということだろう。<千里眼>で見えるのは獲得したスキルだけだ。スキルポイントは1でもあればスキルLV1になるが、<封印>によってスキルが獲得できなければLV1にもならない。貯まっていたスキルポイントが<封印>が無くなったことで精算されたということだろう。
「そうなんですか?私の方には実感がないのですけど…」
「ちょっと待ってろ。今スキルを紙に書くからな」
紙に書こうと思ったんだが、スキルが一定数を超えると見難いな。お、オプションでレイアウト変更があるぞ。使ってみよう。
名前:マリア
性別:女
年齢:12
種族:獣人(猫)
スキル:
武術系
<剣術LV5><棒術LV1><盾術LV1><弓術LV1><投擲術LV1><格闘術LV2><斧術LV1>
魔法系
<火魔法LV3><水魔法LV3><光魔法LV5><回復魔法LV3><生活魔法LV1>
技能系
<魔物調教LV4><調剤LV1><料理LV1><家事LV1><伐採LV1><狩猟LV2><裁縫LV2><採掘LV1><鑑定LV3><鍛冶LV2>
身体系
<身体強化LV5><HP自動回復LV5><MP自動回復LV5><跳躍LV1><覇気LV5><索敵LV1><心眼LV4><覚醒LV2><強靭LV2><不動LV2>
その他
<勇者LV5>
称号:獣人の勇者、仁の奴隷
うん、だいぶ見やすくなったな。でも書くの大変ですねコレ。それはもうせっせと書きましたとも、<契約の絆>の説明を先にして、<千里眼>を共有すればいいって気づいたのは書き終わる頃でしたね。いやー、ひどい事件でした。
「私にこれほどのスキルがあるんですか。ご主人様を疑うつもりはありませんが、少々驚きです」
「恐らく<封印>のせいでいくらスキルポイントを稼いでも、スキルレベルが1にならなかったんだと思う」
「いろいろと気になるスキルがあるんだけど、そもそも<封印>って何?」
ミオの質問は正直俺も聞きたいことだ。改めてヘルプ先生に聞いてみる。
Q:<封印>ってスキルは何?なんで勇者が持っているの?
A:不明です。この世界で勇者が誕生すると自動で与えられます。
またか。千里眼を使っても詳細が不明になる質問は結構あった。そのほとんどが女神に関する質問だ。恐らく女神に関する情報にはアクセスできないのだろう。逆に言えば、このスキルを与えたのも女神関連ということだろう。それにしても、異世界からは勇者を呼ぶのに、この世界の勇者にはスキル習得を封じる呪いを産まれたときに与えるのか…。
「<千里眼>で確認したが、正確なことがわからなかった。<千里眼>が上手くいかなかったことから、女神かそれに類する存在のせいらしい」
「仁君の<千里眼>が効かなかったのですか?」
「ああ、<千里眼>は便利だが、何でも知っているわけではないみたいだ。特に女神に関することは大体が不明になる」
本当に聞きたいことは女神関連に多いから、痒いところに手が届いてないとも言える。
「封印は勇者称号の子供が産まれてきたときに、自動で付くらしい。スキルを一切覚えさせないなんて、不幸な目に遭わせる気満々だよな…」
「うん、悪意しか感じられないわよね」
空気が重くなる。そういえばこの<封印LV10>どうしようか…。無効状態で持ってても無駄だし、可能なら未変換ポイントに換えちゃおうかな。LV10(450ポイント)の5分の1だから、90ポイントになるのか。LV1を一気にLV4まで上げられるな。もしくは敵対者にわざと与えて、弱体化させるとかいう使い方もありだな。うん、そっちを試してみよう。マリアを苦しめていたスキルではあるが、使い道は意外とありそうだから取っておいていいだろう。
「さて、気を取り直してスキルを見ていこうか」
「あ、あの…」
マリアがおずおずと手を上げる。
「私、ほとんど文字がわかりません。さっきは何とか読めたスキルの項目にいっぱい書いてあったことに驚いただけで、実際どんなものがあるのかはわからないのです」
申し訳なさそうに言うマリア。あー、この様子だと漢字が読めないのか。“スキル”はカタカナだから何とかなったのか。
Q:この世界の識字率は何%くらい?
A:15~20%です。村と呼ばれる単位では10%を下回ることも少なくありません。奴隷であればひらがな、カタカナが読めれば上出来です。
これでも上出来なんだ。
「今は気になるのだけピックアップするからな。細かいやつはミオにでも聞いてくれ」
「はい、ミオちゃん。『ゲームについて』と合わせてお願いね?」
「また私なの…。分かってますよ。やりますよ」
ミオがちょっと膨れるが無視だな。
「じゃあ、まずは1番気になる<勇者LV5>だな」
「明らかに別枠ですよね。コレ…」
あまりゲームに詳しくはないさくらでもわかる程度には異彩を放っているスキルだ。詳細を確認してみる。
<勇者>
勇者にふさわしいスキルを複数取得できる。このスキルへのポイント加算はそれらのスキルへのポイント加算にもなる。
LV1
<剣術><光魔法><覇気>
LV2
<身体強化><HP自動回復><MP自動回復>
LV3
<心眼><鑑定><魔物調教>
LV4
<火魔法><水魔法><回復魔法>
LV5
<覚醒><強靭><不動>
これだけでも十分とんでもないね。詳細見なくても強力なのが伝わってくるラインナップです。何この壊れスキル。チートじゃん(お前が言うな?知りませんね)。
しかも何となく入手スキルに合理性を感じる。最初に勇者っぽいスキルを与えて形を整える。そこから段階的に身体能力、陣営の強化、基本的な魔法という風に、ストーリーに沿っている感じだ。その後急に強力そうなスキルをとることから、ここまでが第1部って感じか?
さっきの紙の中から、勇者によって得たスキルの下に赤線を引く。
「これが勇者スキルを持っていると得られるスキルだ。勇者スキルが強くなるほど、これらのスキルも強くなる」
「普通にチートね…」
「<封印>を取り除くだけで即戦力の出来上がりですね」
ミオとさくらも普通に驚いている。さくらの言い分は少し面白かった。即戦力だな。間違いなく。
「では仁様、どうぞお納めください」
そういうと手を広げ、前に出してこちらを受け入れるようなポーズをとる。マリアが何を言いたいのかわからない。
「何のことだ?」
そういうとマリアは微笑んで続ける。
「私のスキルを仁様に全てお渡しいたします。このスキルも仁様がいなければ無かったも同然です。仁様が得ることに何の不思議もありません」
もしかしてこれ、忠誠心のつもりなのだろうか。ちょっと怖い。これだけの力を持っていると言われて、何の躊躇もなくそれを差し出そうとしている。もちろん奴隷という立場上、俺がよこせと言えば断れないだろうが、自分から言うとは…。
「構わないのか?体が軽くなったのだろう?」
念のため聞いてみる。例の『1ポイント貰って増やす』とかはするかもしれないけど、根こぞぎ奪うようなつもりは全くない。
「構いません。私は以前の状態に戻るだけですし…。それよりも仁様のお役に立てることの方が何倍もうれしいです」
純粋に忠誠心だけらしい。本気で全てを差し出すつもりがあるようだ。まだこの子と会ってからそんなに時間たってないんだけどな…。
この子、猫獣人だよな。犬よりも忠誠心高いんじゃね?
「いや、そのスキルはマリアが持っていろ。すでに言っただろう。お前たちには戦ってもらうと…。その時に役立つスキルを奪ってどうする。借りることはあるだろうが、奪いつくすようなことはしないぞ」
その言葉にシュンとするマリア。
「そ、そうでした。申し訳ございません。私の仕事は、この力を使って仁様をお守りすることと、仁様のお役に立つことなのでした」
「わかればいい。それにこれからまだステータスを与えるのだから、それも忘れるなよ」
「は、はい。よろしくお願いします。ですが、有用なスキルがあれば、仁様がぜひお持ちください」
そこまで言われれば俺としてもそうしたい気持ちはある。自動回復系や高レベルで手に入るスキルは実は俺も欲しいからな。
「ああ、後でスキルの分配はよく相談しよう」
「はい」
気になるスキルは多いけど、全部見ていたら俺の方の話が進まない。この話はまた今度にして、今は俺の異能の話をしよう。
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進堂仁
LV15
スキル:
武術系
<剣術LV6><槍術LV4><棒術LV6><弓術LV5><格闘術LV5><暗殺術LV2><斧術LV5>
魔法系
<火魔法LV2><水魔法LV2><風魔法LV2><土魔法LV2><雷魔法LV2><氷魔法LV2><闇魔法LV3><回復魔法LV2><呪術LV1><憑依術LV1><固有魔法>「リバイブ」
技能系
<統率LV2><鼓舞LV3><魔物調教LV3><鍵開けLV3><泥棒LV4><恐喝LV4><拷問LV2><調剤LV2>
身体系
<身体強化LV8><跳躍LV4><夜目LV3><狂戦士化LV1><索敵LV6>
異能:<生殺与奪LV3><千里眼LV><無限収納LV-><契約の絆LV-><???><???><???>
装備:ゴブリン将軍の剣
木ノ下さくら
LV9
スキル:
武術系
<棒術LV5>
魔法系
<火魔法LV3><水魔法LV2><風魔法LV2><土魔法LV2><雷魔法LV3><氷魔法LV2><闇魔法LV3><回復魔法LV1>
身体系
<身体強化LV6><跳躍LV3><索敵LV1>
異能:<魔法創造>
装備:ゴブリン魔術師の杖
ドーラ
LV7
スキル:
武術系
<棒術LV5><盾術LV3>
魔法系
<竜魔法LV3><火魔法LV1><水魔法LV1><風魔法LV1><土魔法LV1><雷魔法LV1><氷魔法LV1><闇魔法LV><回復魔法LV1>
身体系
<身体強化LV6><飛行LV5><突進LV5><咆哮LV5><噛みつきLV4><跳躍LV3><索敵LV1>
装備:僧兵のバトルスタッフ、鋼の楯
ミオ
LV1
スキル:
技能系
<料理LV5><家事LV4>
装備:なし
マリア
LV1
スキル:
武術系
<剣術LV5 new><棒術LV1 new><盾術LV1 new><弓術LV1 new><投擲術LV1 new><格闘術LV2 new><斧術LV1 new>
魔法系
<火魔法LV3 new><水魔法LV3 new><光魔法LV5 new><回復魔法LV3 new><生活魔法LV1 new>
技能系
<魔物調教LV4 new><調剤LV1 new><料理LV1 new><家事LV1 new><伐採LV1 new><狩猟LV2 new><裁縫LV2 new><採掘LV1 new><鑑定LV3 new><鍛冶LV2 new>
身体系
<身体強化LV5 new><HP自動回復LV5 new><MP自動回復LV5 new><跳躍LV1 new><覇気LV5 new><索敵LV1 new><心眼LV4 new><覚醒LV2 new><強靭LV2 new><不動LV2 new>
その他
<勇者LV5 new>
装備:なし
20150819改稿:
仁が逃亡者のつもりではないと明言。
20150912改稿:
修正(6)の内容を反映。