第10話 獣人奴隷と犯罪奴隷
今までの話を感想欄のアドバイスに従い、徐々に改稿していきます。
全ての指摘に対応するわけではありませんので、ご了承ください。
序盤はある程度一気に投稿しないと、読者さんの注意を引けないだろうという浅ましい戦略により、ここまで連続投稿してきました。
今後は週に1度程度の更新になると思います。一応日曜更新の予定です。1週間のルーチンに入れていただければ幸いです。
お金を取りに行くということで2人が出て行き、30分くらいで戻ってきた。
「こちらが大金貨20枚で2000万ゴールドになります」
セバスチャンから大金貨を手渡されたので、こちらも短剣をセバスチャンに渡す。渡してすぐに縦ロールがセバスチャンから短剣をひったくり、表裏くまなく確認する。
「ああ、間違いありませんわ。これは我が家の家宝の短剣ですわ。持たせた使者が盗賊に襲われたと聞いたときはもう返ってこないものかと思いましたけど、無事取り返せましたわ。これであの取引をもう1度…」
多分、感極まって言っちゃいけないことを口走った気がする。こちらの視線に気づいた縦ロールはすごく気まずい顔をしている。
「忘れなさい…」
それだけを絞り出すように言うと後は黙る。
多分これ、貴族的な言っちゃいけないお話ですね。聞かなかった振りが正しいね。
後あの短剣は家宝だったんですね。そりゃあ取り戻さないって選択肢はないね。もう1回くらい倍プッシュできたかな…。
解散ということで、まずは縦ロールが外に出ていった。ギルド管轄外での無用なトラブルを避けるため、退出は別々に行うらしい。残っている俺に受付嬢さんが言う。
「ずいぶん吹っかけましたね。多分ギルド歴代1位ですよ」
「いや、背景込みで1000万はする短剣でしたからね。あの態度を考えれば妥当な値段だと思いますよ」
苦笑しながら言う俺に対し、少し真剣な顔をする受付嬢さん。
「ですが、この街の貴族であることは事実ですよ。大丈夫ですか?」
「まあ、なんとかなるでしょう。危なそうならさっさと出ていきます。その場合、買戻しはすみませんが中止ということで…あ、1回でも時間通りに来なければ、もう来ないと思ってくれてかまいません」
「そうですね。最初がアレでは意欲も失せますよね…」
受付嬢さんも納得のご様子。受付嬢さん的にも酷い部類に入るのだろう。
こんこん。
応接室の扉がノックされる。ギルド員さんが扉を開けるとギルド長が入ってきた。
「買戻しをしていたみたいだな」
「ええ。もしかして報奨金ですか?」
タイミングが良いと考えるべきだろう。最悪この街を出ていこうか考えていたのだから、貰えるものは貰っておいた方がいい。
「うむ、討伐が確認された。受け取れ、50万だ。これで金持ちだな。はっはっはっ」
正直言って今更感が強い。さっきまでなら大金だったが、ついさっき2000万ゴールドを手に入れてしまったのだ。50万では『消費税?』と言いたくなってしまう。
「あはは、今の買戻しで2000万ゴールド手に入れてるんですよね…」
「何!?まさか貴族相手に吹っかけたりしたのか!?」
わかる人にはわかるか…。一般人相手じゃ、買い戻せるものもたかが知れてるしね。
「ええ、まあ…」
「おいおい、貴族相手にケンカ売るとか大丈夫か?大金持ってることも併せて、よく気を付けるんだぞ?」
うわ、冷静に考えるとトラブルの種の塊だぞ俺…。まあ、今更ですけどね…。
「ええ、肝に銘じておきます」
50万ゴールドを受け取り、また明日一応来ることを伝えると、ギルド長は戻って行った。結構忙しいようだ。俺も2人の待っている宿に帰ることにした。
「お金がいっぱい手に入りました」
帰って最初にそんなことを言う俺。2人もキョトンとした顔をしている。可愛い。
「買戻しですか?報奨金ですか?」
少し考えて、さくらは言いたいことがわかったようだ。
「両方。報奨金50万、買戻し2000万です」
「それはいきなり大金が手に入りましたね」
やはりさくらも驚いた顔をしている。
「ああ、これで今後の行動がずいぶんと楽になるぞ」
ドーラはいまいち分かっていないようだから、わかりやすく伝える。
「おいしい物がたくさん食べられるようになったんだ」
《わーい。ごしゅじんさまだいすきー》
分かってくれたようで何よりだ。後、俺も大好きだよドーラ。
「<無限収納>があるから、生活必需品もいっぱい持って行けますね」
「ああ、旅の品質向上は優先課題の1つだからな」
考えていたことがある。このタイミングで切り出してみよう。
「後、買いたいものがあります」
「なんで急に敬語になったんです?」
いや、ほら。やましいことがあると丁寧な口調になるじゃないですか。
「はい、それは奴隷です」
「どれい?」
この世界には奴隷制度があります。借金や犯罪者、奴隷狩りにつかまった亜人などが奴隷として売られています。
特殊な術である「奴隷紋」や、魔法の道具の「奴隷の首輪」等で行動を縛ります。命令違反はそれらのアイテムによって封じられ、状況によっては殺すこともできます。奴隷に人権はなく、基本的には物扱いです。解放することもできますが、あまりされません。
ちなみに奴隷紋は<奴隷術>スキルがないと施せません。使える対象も格下だけです。だから強い戦闘奴隷は珍しいです。
ということを丁寧に説明しました。
「1番の目的は料理だ」
「奴隷に作らせるってことですか?」
ずっと考えていたことだ。俺もさくらも料理ができないなら、できる人間を旅に加えればいい。
「旅の同行者として、この国の住人は信用できない。この国に帰属意識がある以上、国の命令に逆らえるかわからないからな」
「そこで奴隷というわけですか」
「そうだ。奴隷の帰属先は購入者になる。主人には逆らえないし、料理スキル持ちも探せばいるだろうからな。この国で探せる同行者には他の選択肢はないだろうな」
さくらが手を挙げて質問してきた。
「その奴隷は戦わせるんですか?」
「ああ、そのつもりだ。<生殺与奪>と<契約の絆>を使えば、戦ったことのない奴隷でもすぐにそれなりの戦力にはなる。俺の能力は基本的に配下が多いほど有効だからな」
正直3人では大した効率にならないんだよな。せっかく無制限なんだから、拡張はしていくべきだろう。ここまでの説明でさくらも奴隷購入の忌避感はほとんどなくなっていたようだった。
「てっきり、アレなことのためかと思いました…」
つぶやき、聞こえていますよ。ソンナワケナイジャナイデスカ。
買いに行くのは明日ということにして、本日は休むことにした。今日はさくらのもとでドーラが寝ている。人間形態だ。なんでも子供の体温が気持ちいいらしい。羽毛!羽毛もお勧めだよ!
でも可愛い女の子2人(1人はパンイチ)が抱き合って寝ているのはとても目の保養になります。いや、百合百合しい意味ではなくて美少女姉妹とかそんな感じで。
次の日、さっそく奴隷商館に向かった。意外と小綺麗で大きな建物だった。特に裏通りでもなく、堂々としているところを見ると、後ろ指さされる商売ではないことが窺える。
少し考えたのだが、さくらとドーラも同行してもらうことにした。これから一緒に行動するのだから、2人にも見る権利があると思ったのだ。
しかし、この面子で奴隷商に入るって、はたから見るとどういう関係に見えるんだろう。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用でしょうか?」
うさん臭そうなおっさんがやってくる。どうやら店主らしい。大丈夫、商売は顔じゃない。うさん臭そうなおっさんでも、ちゃんとした商売だ。多分。
「料理のできる奴隷を買いたい。予算は100万だ」
目的と予算を伝えれば、細かい判断は奴隷商がしてくれるだろう。
予算に関しては、命の値段としてはどうかと思うが、100万あれば結構な上物が買えるらしい。ヘルプ先生はこんなとこでも役立つ。
Q:奴隷の相場を教えて?
A:ピンキリですが、この国では数万~数100万くらいがメジャーです。過去オークションでの最大落札額は3500万です。通常の奴隷商では100万あれば十分です。
「わかりました。今ご用意させますので、応接室でお待ちください」
応接室に入りソファに座る。右にはさくら、左にはドーラ。実はこれが最近の俺たちの定位置だ。ちなみに外を歩くときは進行方向に対して左から俺、ドーラ、さくらとなる。完全に親子連れだこれ。
しばらくすると、薄い貫頭衣を着た女性たちが入ってくる。まあ、あえて説明はしていないけど、「料理ができる奴隷」を頼んだら女性が出てくるよね。わざわざ男性は出さないよね。うん、仕方ないね。
薄い服なので体のラインがもろに出ている。それに歩いてくるとき、横からちらちらと色々見えていた。当然それを見ていたさくらは真っ赤になっているし、俺は足を組んだ。なるほど、ソファか…。よく考えている。
出てきた女性奴隷たちは年齢も若めで10代から20代前半くらいにしてくれている。もちろん、比較的容姿も整っている。わかっているね。
しかし、交代させて何グループか確認するも、お目当ての料理スキル持ちはいなかった。スキルがなくても料理はできるし、結構好みの子もいるのだが、目的は料理スキルだ。出来るならうまい料理が食べたい。
おかしいな、マップ上ではここに料理スキル持ちがいるのだが。もう1度紹介を確認してみる。うん?
「すまない。そちらの扉の先には何がある?」
部屋の隅にある扉を指示して店主に質問する。店主は不思議そうな顔をするも、質問に答えた。
「はい。犯罪奴隷や欠損の激しい者などをまとめて入れています。お客様の要望は料理ができるとのことなので、衛生面も含め除外させていただきました」
犯罪奴隷というのは罪を犯した者のうち、死刑にするほどでもなく、罰金も払えないようなものが、身分を奴隷に落とされることを言う。その多くは奴隷商で買われることもなく、鉱山などで強制労働させられるなど、過酷な命運をたどる。正直遠回りな死刑といっても過言ではない。
また、この世界には肉体の欠損を治す手段がほとんどなく、1度欠損してしまった奴隷の需要などほとんどない。
その点を考えれば、店主が俺に見せる必要がないと考えたことにも頷ける。しかし、マップを見る限り料理スキルを持っている奴隷は、この先にいるようだった。スキルの説明ができない以上、料理が上手な奴隷としか指定できなかったのが失敗だったようだ。
「なるほど。申し訳ないが少し見てもいいだろうか」
「構いませんが、時間の無駄ではないでしょうか?」
そういった奴隷は値段が安い。奴隷商としても金のある人間には高い奴隷を買ってほしいだろう。あまり乗り気でないのも当然だ。
「それでも頼む」
「わかりました。少々お待ちください」
店主が鍵を取りに行く。おそらく衛生的ではないのだろう。さくらとドーラには扉より先へは行かせないようにしよう。
こうして、俺だけが扉の中に入る。そこそこ長い通路を進むと、もう1枚扉があった。中には檻がいくつもあり、亜人や欠損の酷いもの、ギラギラした目などの奴隷がいる。当然のように臭い。うん、予想通り衛生上よくないね。
でも気になる少女が2人いる。1人は奥の方にいる左手がなく、顔中に酷い怪我をした獣人の少女。もう1人は肩くらいまでの黒髪と、黒い瞳を持つ少女だ。黒目・黒髪の少女はこちらに気付くと叫ぶ。
「お願い!私を買って!高校生くらいのお兄さん!」
高校生。この世界にはない概念だ。
目の前の少女は黒目、黒髪の俺を見て「日本人らしい言葉」で懇願してきたのだった。
名前:ミオ
性別:女
年齢:8
種族:人間(転生者)
スキル:<料理LV5><家事LV4>
称号:犯罪奴隷
転生者ですって。
しかし、犯罪奴隷か…。犯罪の内容如何によってはいくら料理スキルが高くても仲間にするわけにはいかないよな。ここはしっかりと確認をとっておくか。
「店主、その娘は何をしたんだ?見たところ欠損もないようだし、犯罪奴隷なのだろう?」
俺の質問に店主が答える。
「はい。この娘は料理に毒をもった罪で村から犯罪奴隷として引き渡されました。お客様の言う、料理ができる奴隷には該当しますが、さすがに毒で捕まったものを料理人として紹介はできませんでした」
なるほど、転生者で毒か…。流石にそれでは買うのは無理だな。仕方ない。あそこのボロボロの子と、さっき紹介された中から可愛い子を適当に選ぶか。俺が少女から目線を外すと、少女は自分が興味の対象でなくなったことを察して訴えかける。
「待って!私そんなつもりはなかったの!私…」
「ここでは売り込み禁止です。大人しくしていなさい!」
少女が話を続けようとするが、店主がそれを許さず、奴隷紋で少女のセリフを遮ろうとする。
「マヨネーズがど…くなん…て、知ら…なかった…の」
奴隷紋により激痛が走り、セリフが途切れ途切れになるが、なんとか意味のある言葉が伝わった。その言葉に俺は思わず笑みを浮かべていた。
「店主、その娘に話をさせてやれ」
「よろしいのですか?」
「ああ、構わない」
「わかりました」
店主が奴隷紋による拘束を解く。少女は息を切らしながら縋るような目でこちらを見つめてくる。
「はぁ、はぁ、…いいの?」
「ああ、もう1度詳しい話を頼む」
俺が先を促すと、少女は息を落ち着かせながら話を進めた。
「私、自分の村でマヨネーズを作って、流行らせて、お金を稼ごうとしたの。小さいころから料理とか家事をやっていたから、皆恐る恐るだけどマヨネーズを食べてくれたの」
確かに料理スキルも家事スキルも高いな。
「もちろんみんな気に入って、村で流行ったんだけど、この世界ではマヨネーズって一定量食べると毒になるみたいなの。マヨネーズを食べていた人が倒れて、私のせいだってことになって、後はそのまま犯罪奴隷になって…」
ここにいるというわけか。少女を確認していたが、どうやら嘘は言っていないようだった。正式な能力じゃないみたいだけど、<千里眼>は相手が嘘を言っているかどうかも、ある程度は分かるようだ。
再び俺の目を見て懇願する少女。
「お願いします。私を買ってください。このままだと鉱山送りなんです。どんなことでもします。なんでも言うことを聞きます。料理を作ります。お世話もします。だから、だから…」
ここまで聞いて俺の意志は決まっていた。安っぽい同情のつもりはない。この少女にはそれだけの価値がある。俺は黒目黒髪の少女と欠損の酷い少女を指さし店主に伝える。
「この娘と、後そっちの娘を買いたい。いくらだ」
驚く奴隷商。そりゃそうか。こんなところでいきなり2人も買うというのだから。
「この娘の嘘みたいな身の上話を聞いて、同情するのは止めたほうがよろしいかと思いますが…。それにそっちの奴隷は料理どころか欠損がひどくて長くは持たないでしょう」
奴隷商としてもこんなところの奴隷を下手に売って、後で文句を言われるのも嫌だろうから、俺を引き留めようとする。いや、どちらかというと本当にいいのかの確認をとっているのか。
「構わない。いくらだ?」
俺の意志が固そうなのを読み取ると、店主が答える。
「はい。2人合わせて4万ですね」
「ずいぶんと安いな?」
2人分で4万か、思っていたよりも安いな。
「死にかけと犯罪奴隷で高い金額は要求できません。死にかけでこちらとしても放置している奴隷が売れるなら儲けものですし、犯罪奴隷の方も見た目は中々ですが、愛玩用としても毒を使うとなると売れるわけもなく、鉱山行きかと思っていましたので…。それにあまり大きな声では言えないのですが、これでも高い方です。この国自体、奴隷の価格が少し高めですので…」
「わかった。これで少しマシにしてから連れてこい」
そういって俺は店主に5万ゴールドを手渡す。
「はい、しばしお待ちください」
多めに渡したことについては何も言わないらしい。
応接室に戻る。しばらく待つと先ほどの貫頭衣よりはマシな服を着た2人が入ってくる。ローブのようだが、つくりは簡素で、こちらも安物であることを窺わせる。
獣人の子は座り込みフードで顔を隠している。犯罪奴隷の少女は心底安心した顔をしている。
奴隷商の横に奴隷術師がやってきた。せっかくなのでステータスを確認する。
名前:ゲドー
性別:男
年齢:35
種族:人間
スキル:<奴隷術>
<奴隷術>。これが奴隷紋を扱うのに必要なスキルだな。ちょっと惜しいけど、敵ではないので奪わないことにする。名前は100%敵だけどね。
「では、奴隷契約をいたします。血を1滴ずつ、よろしいですかな?」
「ああ」
奴隷契約は主人となる者の血を、奴隷紋に刻み込む必要がある。奴隷商からナイフを受け取り、指先を切る。
奴隷術師が陣を広げる。奴隷少女たちに陣が当たり苦しげな声を出す。
「ううっ」
「くうっ」
その陣の上に指先から滴り落ちる血を垂らした。陣が1度大きく光り、契約が完了した。これで奴隷たちは俺の所有物となった。
俺は、2人の奴隷少女に向き合って宣言する。
「俺がお前たち2人を買った。名前は仁だ。これからお前たちを俺らが借りている宿に連れていく。細かい話はそれからだ。なのでそれまでは喋るな。これが最初の命令だ」
「はい」
犯罪奴隷の少女が答える。獣人の奴隷は喋らない。というか喋る力があるかも怪しいな。どうやら自力で立ち上がる力もなさそうなので、俺が抱えていく。
「またのご来店、お待ちしております」
奴隷商としても、不良在庫2人が相場よりも高い値段ではけたのでご機嫌なようだ。
宿に向かう途中、獣人少女の顔が見えたのか、怪訝な顔をする通行者を無視し、宿に向かう。宿で奴隷2人分の料金を追加で払う。この宿は奴隷も料金さえ払えば入れていいらしい。ところによっては奴隷を入れるのは禁止の宿もあるそうだ。
部屋に入り鍵を閉める。それなりに重要な話をするから念のためだ。
「よし、もう喋ってもいいぞ」
最初の命令を解除する。とはいえ、そのうちの1人は喋れるような状態ではない。時々呻き声が聞こえる程度だ。
「これから奴隷たちに自己紹介をしてもらおうと思う。まずは黒目黒髪の子からだ」
俺が促すと少女は丁寧なお辞儀をする。
「はい、わかりました。ごほん、では改めまして私の名前はミオって言います。日本よりお越しのご主人様!」
「え?」
さくらが驚いた顔で俺の方を見てくる。言わなかったからね。驚かせたかったんだ。
「この子はおそらく元日本人の転生者だ。元の世界で死んで、こっちで生まれ変わったんだろうな。どうやら記憶も引き継いでいるらしいな」
「あれ、なんでご主人様そこまで分かるの?こちらとしても多分日本人だろうという体で話したけど…。ご主人様詳しすぎないですか?」
そういえば、向こうがこちらを日本人と判断した理由は聞いてなかったな。
「そっちこそ俺が日本人だと思った根拠は何だ?」
「元々この世界では黒髪黒眼は珍しいんですよ。それに最近、勇者を異世界から召喚するって噂が流れてて、さらに過去の勇者は大体日本人ぽいので、このタイミングで会えた黒目黒髪で、学生服を着たご主人様は日本人だろうと推測したの」
「なるほど。説明してくれて申し訳ないが、まずは2人のことから先に聞いていくぞ。俺たちについても後で説明してやるから」
「わかったわ。楽しみにしているね」
ミオが微笑む。奴隷商で見た時は必死そうな顔と言動だったからわからなかったが、結構茶目っ気のあるタイプのようだ。
「一応確認するが、ミオは料理が得意なんだよな?」
「あ、転生者だからっていう理由だけじゃなかったんですね。ちゃんと目的も忘れてなかったんですね」
さくらが失礼なことを言う。確かに転生者のインパクトの方が強いけど、料理だって立派な目的の1つだ。
「ああ。ちゃんと料理スキルもあるぞ」
「それなら問題ありませんね」
ミオが腕まくりをする。
「ご主人様たちは料理人がお望みなのね?まっかせてよ!元1人暮らしの炊事力見せてあげる!」
「ああ、俺たちの家事力が壊滅的だったからな。その点は任せた。でも、毒は入れるなよ」
俺の軽いジャブに、ミオが泣きそうな顔をする。
「そんな事しませんよー。酷いですよー。トラウマなんですよー」
「わかっているって。ごめんよ、言いすぎた」
ミオの頭を撫でる。禁句というか地雷原らしい。このネタで弄るのは控えよう(やらないとは言ってない)。
ちなみに撫でられているミオは頬を真っ赤に染めている。ついでに撫でられているミオがうらやましいのか、ドーラが俺にすり寄ってきたので一緒に撫でる。
右手で幼女(8歳)を撫で、左手で幼女(5歳)を撫でている俺。
「毒って何ですか?すっごい気になるんですけど…」
さくらが恐る恐る聞いてくる。でもその話は後だ。
「すまん、さくら。その話は後にしておこう。とりあえず、気にするほど危ないことはないと言っておく。それよりももう1人の紹介が先だな。聞きたいことはいろいろあるだろうが、それらをまとめて後回しにさせてくれ」
「後で詳しい話をしてくださいね。仁君…」
「ああ、後でちゃんと話すよ」
さくらとしても気になることは多そうだ。とりあえず、獣人の子に注目する。座り込んだままこちらを見ようとはしない。そんなこともできない状態なのだろう。
「本人が自己紹介できなさそうだから、俺が代わりにするぞ。この獣人の少女の名前はマリア。称号は『獣人の勇者』だ」
「「はい?」」
「ぐううう」
2人の疑問符と、マリアのうめき声が室内に響いた。ドーラはまだ俺に撫でられている。
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進堂仁
LV15
スキル:<剣術LV6><槍術LV4><棒術LV6><弓術LV5><格闘術LV5><暗殺術LV2><斧術LV5><火魔法LV2><水魔法LV2><風魔法LV2><土魔法LV2><雷魔法LV2><氷魔法LV2><闇魔法LV3><回復魔法LV2><呪術LV1><憑依術LV1><統率LV2><鼓舞LV3><魔物調教LV3><鍵開けLV3><泥棒LV4><恐喝LV4><拷問LV2><調剤LV2><身体強化LV8><跳躍LV4><夜目LV3><狂戦士化LV1><索敵LV6>
異能:<生殺与奪LV3><千里眼LV><無限収納LV-><契約の絆LV-><???><???><???>
装備:ゴブリン将軍の剣
木ノ下さくら
LV9
スキル:<棒術LV5><火魔法LV3><水魔法LV2><風魔法LV2><土魔法LV2><雷魔法LV3><氷魔法LV2><闇魔法LV3><回復魔法LV1><身体強化LV6><跳躍LV3><索敵LV1>
異能:<魔法創造>
装備:ゴブリン魔術師の杖
ドーラ
LV7
スキル:<棒術LV5><盾術LV3><竜魔法LV3><火魔法LV1><水魔法LV1><風魔法LV1><土魔法LV1><雷魔法LV1><氷魔法LV1><闇魔法LV><回復魔法LV1><身体強化LV6><飛行LV5><突進LV5><咆哮LV5><噛みつきLV4><跳躍LV3><索敵LV1>
装備:僧兵のバトルスタッフ、鋼の楯
ミオ
LV1
スキル:<料理LV5 new><家事LV4 new>
装備:なし
マリア
装備:なし
スキルがなくても生産や武術などの各種作業は行えます。スキルがあるというのは才能がある、成長に補正が付く、等とイメージしていただければいいと思います。
20150912改稿:
修正(6)の内容を反映。