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2139

作者:小田中 慎
「ロー。 終わった?」

『まだ。 最後をどうするか悩んでる。』

「帝国軍はディラックの海に沈んだ。 勇者率いる共和国の罠は完全に機能して、それで彼らは最後の決戦に勝利し、長い戦いは終わりを告げ・・・なんだかエンドロールが想像出来そうだね。」

『でしょ? 何か一捻り加えたいのよ。 みんながあっと驚く様な。』

「あっと驚く様なものは、みんなじいさんばあさん達が考えてしまったよ。」

『そうかなあ。』

「誰かの手垢に塗れたアイデアを、手を変え品を替えて、パーツをバラバラにしてさ、あっちこっちくっつけてる、現代の創作活動なんてそんなものさ。」

『ひどいなぁ、まるで盗作の様じゃない、ボクの、総てオリジナルだよ。』

「気分害したら、ごめん。 でもいくら頑張っても誰かさんが昔作ってます、って感じだから、仕方がないのさ。」

『そう言うガイはどうなのさ?』

「終わったよ、ついさっき転送登録した。」

『二人は手に手を取って毒ガスが晴れることのない黒い森に入る、呼吸器官をオフにして生命維持キットを違法改造した二人が頑張れるのはせいぜい二日、森は深くどこまでも広がって、後ろからはサイボーグで固めた思想警察の機動部隊が迫って、でも二人は国境の森の果てにあるアンクレート公国へ、兄がいる平和な国への強い想いを抱き団結し――』

「もういいよ! ローに言われると何だかとんでもない駄作に思えるから。」

『で、どうなったの? 二人。』

「見てのお楽しみさ。」

『何時から何チャンネル?』

「あと30分もすれば番組表も更新されるから。」

『いや、直ぐに予約しないと。 もうすぐ出ないとなんないのよ、先週親と木曜は休講だから帰るって約束しちゃって。』

「へえ、何時の降下便?」

『ん、九時半。』

「そうか、道理でちゃんとした格好している。」

『ふんだ! いつもひどい格好、て言いたいんでしょ。』

「言葉のアヤだって。 なら仕方ないな、いい? 16時15分、B6938チャンネル。」

『・・・・・・はい、と。 予約した。 念のため、オリジナルをコピーしといてよ。 最近、磁気嵐で電波障害多いから。』

「著作保護法うるさいから、タイムデレート付きでいい?」

『いいよ、“塩漬け”は高いから、一番安いので。』

「じゃ、48H保存で。」

『分かった。 ファイルアクセスコードは後で通信するよ。』

「了解。 そっちの続きも早く見せてよ。」

『頑張る。』

「あ、そうだ。 下に下りるなら、アキバでプロビューの新バージョン見て来てよ。 学習機能強化で変換が楽になるって聞いたし、ルーチンワークのトレイが単純化されてビジュアル的にも優れているって。」

『昨日発売のあれね。 こっちは来週発売だよね。 確かに動きをコピぺする時のワークタイムが半分らしいから。』

「こっちは単独アクション多いから、大変なんだよ、描くのが。 ローはいいよね、群集のアクションばっかりだからコピペばかりでさ。」

『ひどいなぁ、そんなことないよ、あれでも結構描き込んでいるんだから。』

「最近の作品はみんな凝るからね、負けてられないよ。」

『そうね・・・ねえ、ガイ。』

「なに?」

『紙に書く、ってどんな感じがすると思う?』

「どうしたの、薮からに。」

『近代史の授業でレポート提出があって、パソコン革命時代とエコロジー運動についてでさ。』

「それで?」

『ホンとカツジの終焉、てテーマでね、エコロジー運動の精鋭化で滅んだ紙媒体についての考察、だったんだけど、これがね、紙媒体で肉筆で提出、ってやつでね。』

「大変だったね、それ。」

『あんなゼミ取るんじゃなかった、と思ったけれど、結構面白いんだ、字を書くのって。』

「そうかなぁ。 辛いだけじゃない。 今時芸術作品だけだし、手書きって。」

『ボクもね、本とか字を読むのは疲れるし、画像がないと頭痛くなりそう、って思ったけれど、何だか創造意欲が湧くのよね、却って絵が無いと。』

「へえ、静止二次元画像すら最近はあまり見ないのに、字だけで、かい?」

『そうよ。 ガイもやって見るといい。』

「遠慮しておくよ、僕はパソコン時代人じゃない。」

『いつかボクはやりたい、かな? 紙媒体で作品を出すの。』

「昔は重罪だよ、それ。 今だって基本法は残ってる、まさか逮捕はされないだろうけど。」

『温暖化がまだ止められると考えられていた時代の法律でしょ?』

「そうだけどね、結局“大植民グレートジャーニー”まで40年しかもたなかった。」

『紙媒体って、歴史は長いのに捨てられたら忘れ去られるのが早かったのよね。 活字なんて500年以上も歴史あったのに。 結局あの頃の人たち自体に紙媒体から離れる因子が他にもあったと言う話になって・・・』

「簡単に三次元動画で表現出来るのに、わざわざ二次元画像も無い文字列で表現するなんて、そんなの退嬰的だよ。」

『そうかな、アストロイドベルトの三次元動画の上に古今和歌集を飛ばした人もいたじゃない?』

「あれは単なる朗読パフォーマンスじゃないか。 あんな類のモノは図書館サイトの古典サーバーにうんざりするほど浮かんでいるよ。」

『あれはハイじゃないわ。 古今和歌集の人はセンスがあったから。 本物の筆に墨で星屑に書き込むんだよ? 凄いじゃない。』

「分かった分かった、さ、そろそろ時間でしょ? 行かないと。」

『うん、あと5分で家出る。 あ、そうそう、土曜、ルーシャスのコンサート行くよね?』

「うん、エス席だけどね。 アリーナ高いから。」

『・・・そうだね、ごめんボクはエスエス。 従姉と一緒なの。』

「いいなぁ金持ちの親戚は。 ノルト空間競技場スペースアリーナはアリーナじゃないと遠いから。」

『どうせ観客船シートシップの窓越しじゃない、ほとんど船内3次元スクリーン見てる訳だし。』

「それ言ったらおしまいだよ。 彼らと同じ空間を共有しているだけで満足さ。」

『ひょっとするとエス席までスペースバイクで来てくれるかも、去年みたいに。』

「そうだといいね。 じゃ、終わったら飲もうよ、従姉も連れて。 紹介してよ。」

『いいよ、終わったら北ゲート乗船場でいい?』

「いいよ。」

『じゃ、もう行かないと。 “帝国の野望”も下で仕上げておくから。』

「楽しみにしているよ。」

『じゃ。 またね。』

「気を付けて。」

『バイバイ。』




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