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連載になるかもしれない、ネタ集

連載になるかもしれない、ネタ。15

作者: 海野 真珠

 巷で流行りの、転生を題材にした小説。

 舞台は、物語やゲーム。

 主人公は、その舞台になった元ネタを知っていて、というのが人気らしい。

 恋愛なら、お気に入りの相手を簡単に籠絡できる、とか。

 ファンタジーなら、チート街道一直線、とか。

 まぁ、作品によって様々だが、元ネタを知っている、というアドバンテージがあるわけだ。


 が。


 そもそも、その後は一体どうするのだろうか、という疑問が沸きあがる。

 例えば、恋愛シュミレーション系のゲームが舞台の世界に転生したとしよう。

 攻略対象者とのエンドを迎えたところで、ゲームは終了する。

 さて、その後の生活はどうなるのか。

 まれにハーレムエンドというものがあるが、現実となった世界でソレを迎えた場合、社会的、もしくは道徳的観点からの問題は発生しないのか。

 仮に身分ある相手とのハーレムエンドだった場合、子供が出来た場合の親権やら相続権やらの問題は一体どう処理をするのだろうか。

 例えば、RPG系の世界に転生したとしよう。

 解り易く、人類の敵を滅する事を目的としていた場合、滅した時点でゲームはクリアである。

 さて、その後、主人公は英雄となった、で大円満。

 現実的に考えて。

 そんな、一人オーバーキルな人間、平和な世界に置いておくような統治者は居ない。

 何らかの理由を付けて消されるのが関の山である。

 自身が国を作って統治者となったとして。

 統治能力などそもそも持ってはいない現代人が大半であるし、信頼できる者たちに統治を助けてもらっても、明らかに人材不足になる。

 そもそも、人類の敵が存在するような世界に、国家が維持できている時点で矛盾であろう。


 と、少し考えただけでいくらでも問題点が出てくるわけだが。

 まぁ、所詮は娯楽小説である。

 面白ければ何でもいいのだ。

 かくいう、私もソレ系は大好物である。


 では、長々と不愉快極まりないこんなことをナゼつらつらと語っていたかと言うと。



「あぁベーチェ。愛しているよ」


「私もです、王子っ!!」


 目の前で繰り広げられている、三文芝居のせいである。

 三文芝居と言うか喜劇と言うか何というか。

 居並ぶ有力者たちを観客に、自分たちの世界を作り上げる男女。

 ひしっと抱き合い、周りにピンクのお花畑を展開している。

 お祝いムードが一瞬にして白けたのだが、当人たちは一向に気にしていない様子。

 ココまで来ると、いっそ清々しい。


 さて、既にお気づきだとは思うが、ココはゲームの世界、である。

 そして、私はテンプレ的な転生者、そして喜劇を演じている少女も転生者である。

 元ネタのゲームは、恋愛とRPGをぶっこんだ内容のシュミレーションものだった。

 剣と魔法のファンタジーな世界観で、人を餌とする魔物を消滅させつつ、世界の中心にできてしまった魔物を生み出している巨大な魔力溜りを浄化して世界を救う、ことを目的としていた。

 んで、その浄化の力を持っているのがゲーム主人公の女の子。

 平民の身でありながら、浄化の力を神様から与えられた、聖女認定された存在。

 勿論、戦闘能力皆無で、出来るのは浄化だけ、というテンプレ設定。

 世界の中心まで行くのに戦闘能力は必須のため、優れた若者たちがパーティーメンバーとして選ばれる。

 んで、そのメンバーが攻略対象者なわけで。

 旅を通じて好感度を上げつつ、無事浄化を済ませた暁には結ばれる、と。

 まさに王道テンプレである。


 で、攻略対象者と言う名のパーティーメンバーは4人プラス1人。

 騎士王子と、天才魔術師と、慈愛の僧侶と、熱血闘士と、大商人。

 オレ様と、ショタと、癒しと、爽やかと、フェロモン、でも可。

 みなさん若くてイケメンで地位も財産もある、というこれまたテンプレ。

 で、ハーレムエンドも用意されていた。

 浄化に失敗すれば漏れなく全員死亡エンドも用意されていたので、浄化の力を上げつつ好感度も上げなければいけなかった。

 好感度がいくら高くても浄化の力が低いと死亡エンド一直線。

 浄化の力が高くても好感度が八割切っていたら、浄化は成功するもメンバー全員死亡の主人公廃人エンド。

 王道のわりには結構難易度は高かった。



 んで、ご覧の通り、主人公は騎士王子とのエンドになりました、と思うだろう?

 だがしかし、現実世界は早々甘くできてはいないのだよ。



「殿下、止めなくても良いの?」


 世界の脅威は去った!

 これで私たちは結ばれる!!

 とか何とか逝っちゃってる発言かましているアレの中に入れとか、なかなかに鬼畜である私の右腕。


「いえ、そろそろ場が白けきっておりますし」


 脳なしには早々にご退場を、と慈愛溢れる顔できっつい毒を吐く私の参謀。


「酒が不味くなんだけど」


「余興としても使えんしな」


 早くどうにかしろ、と訴える私の腹心と懐刀。

 ぐっさぐさ刺さる側近たちの視線に、溜息を一つ。

 こうなりゃ最高権力者に丸投げ、とばかりに玉座の父王を見上げれば。


「イヴィディオ、沙汰を」


 書面を差し出され、反対に丸投げされた。

 くっそう。


 陛下のヒトコトで静まった場に、私の靴音だけが響く。

 数多の目に見つめられる中、恭しく父王から書面を受け取って。

 父王の隣に立って、ソレを読み上げる。


「世界を救いし聖女ベーチェ、その功績により、アーベックとの婚姻を許可する」


「あぁ、王子!!」


「ベーチェ!!」


 互いに手を取り合って待っていた結果に、やはり大げさに喜んでみせる男女。

 ぎゅうぎゅうと抱き合い、果てには口づけを交わす。


「・・・カンガ、サボック、両名は隠居を許可、タキフーオ商会には王家公認の称号を与えるものとする」


 既に非公式には発表していたため、誰も聞いてはいないが形式は大切である。


「そして・・・」


 コレが、本命。


「窃盗、公金横領、傷害、公務妨害他の罪により、アーベックを極刑に処す」


 一層声を張り、告げる。


「な?!」


「イヴィディオ?!」


 茶番を演じていた二人も、さすがにコレには反応した。

 婚姻の許可のくだりで、会場に居る者たちが誰一人祝福していない、と気づいていれば何かが変わったかもしれないが。

 少なくとも、これ以上の醜態は晒さなくて済んだはずだ。


「しかし、浄化成功の功績を加味し、身分を剥奪し自由民の位を与えることを恩赦とする」


 要するに、殺すのは止めて今の身分から何の位も無い一般人にするよってこと。

 聖女とはいえ身分は自由民の女とはお似合いだろう。

 やれやれ、コレで静かになる、と思ったのだが。


「ナゼだ?! 俺が何をした?!」


「そうよっ どうして王子が犯罪者なのっ」


 理解できていないバカが二人。

 当事者であるはずなのに、どうして理解していないのか。

 で、コレの説明も・・・あ、やっぱり私がするのか。

 心底ウザイと思いながら、そしてソレを隠しもせずに、ひたりと馬鹿二人を見据える。

 さて、どうしてバカというのは周囲を確認しないのか。

 確認すれば、誰一人として疑問を持っていないことに気付けただろうに。


「まずは、国宝である聖剣を陛下の許可なく宝物庫から持ちだした事により窃盗罪が適用されます」


 噛んで言い含めるように、懇切丁寧に一つづつ説明していく。

 あぁ、メンドクサイ。


「次に、勝手に金銭ならびに宝石等の金銭的価値のあるモノを持ちだした事により、公金横領罪が適用されます」


 コレが、労働による対価として本人が稼いだ金銭ならば問題なかったが、そうでは無かったので。


「そして、城から出奔する際、護衛の者たちに向かって剣を向け、怪我を負わせたことで傷害罪が」


 どこの世界に自分の護衛に切りかかる馬鹿が居るんだ、と聞いた時に唖然としたが。


「同じく、出奔の際に執務中であった陛下方の邪魔をしたことで公務妨害罪が」


 聖剣片手に聖女の旅への同行を直談判したらしい、と報告が上がってきたときは、さすがに耳を疑った。

 その後で、男の正気を疑ったが。


「そして、突然の出奔により貴方が行うべき執務が放棄され、職務放棄罪が適用されました」


 引き継ぎも何もないままで仕事を放り出すとか、少し考えれば大問題になると解りそうなものだが。

 いや、解らなかったから、今の現状が出来上がっているのだが。


「その他細かいモノもありますが、以上の事から、本来であれば極刑となるところ、恩赦を適用し、自由民への降格となったのです」


 もちろん、貴方は既に王太子でもなければ王家の人間でもありません、と。

 にっこりと笑って締めくくり、隣の父王に一礼して終わりを告げる。

 お願いだから、さっさと出て行ってくれ、と願うも、やはり馬鹿には通じず。

 ぎゃぁぎゃぁと喚く馬鹿二人に、仕方がないので強制退場の指示を出す。


「二人の婚姻は此方で許可証を出しますので、ソレを持って出て行ってください」


 婚姻は、神殿に婚姻許可証を提出して初めて成立する。

 神々に祝福される婚姻のため、離婚は認められていない。

 ソレは王侯貴族一般人全てに当てはまるため、サクッと婚姻の事実をつくって放逐したいのだ。


「どうして?! どうしてこうなるのよっ!!」


 侍従に馬鹿二人の退出を促しつつ騎士に付き添うように指示を出していれば、辺りに響く金きり声。

 聖女などという御大層な肩書を持つ少女のソレに思わず眉を顰める。


「何が不満ですか。お望み通り、アーベックとの婚姻は許可したではないですか」


 面倒だ、と隠しもしない表情で全てを投げてよこした陛下に内心で文句を言いつつ、少女の相手をする。

 私も出来れば誰かに丸投げしたい。

 宰相辺りが助けてくれても良いと思うのだが。


「そもそもどうして騎士王子がアーベックなの?! 本当ならイヴィディオのハズでしょう?!」


 他のメンバーも違うし、どうしてよ?! と理解不能なことを喚き散らす聖女。

 ココは私がヒロインの世界でしょう、とか何とか。

 私も転生者でなければ、少女の正気を疑う。

 いや、実際、私以外は既に少女を奇妙なモノを見る目で見ているが。

 どうやって収拾つけようかな、と呑気に考えつつ、アーベックを見れば。


「イヴィディオが王太子か?」


 こちらは、意外と落ち着いていて驚いた。


「はい。私が正式に王太子となります」


 まぁ、この兄が出奔しなくとも近々私が王太子になっていたが。

 誰も、こんな馬鹿に統治を任せたくは無いので。


「ならば、オマエが居なければいいのか」


 言うが早いか、騎士たちを突き飛ばして此方へと駆けてくる。

 馬鹿だ馬鹿だとは常々思っていたが、ココまで愚かだったらしい。

 いや、追い詰められて切れたのか。

 どちらにせよ、救いようがない(救う気があるかどうかは別として)馬鹿で愚かな行動である。


「これで罪人ですね」


「ばっかだねぇ」


「切り捨てるのか?」


「汚さないでくださいよ」


 好き勝手言う側近は無視して、取り敢えず鞘ごと剣を抜いて、突っ込んでくる兄の腹に喰らわす。

 自身の勢いそのままに腹に喰らった兄は、当然の如く転倒。

 意識を刈り取ることはしなかったので、相当な痛みにのた打ち回っている。


 うーん、喜劇だ。



「王族に危害を加えたのですから、極刑です」


 ついでに、その縁者も処罰の対象になるので、聖女であった少女も極刑となる。

 ほら、すでに婚姻は成されているからね。

 連れて行きなさい、と騎士たちに指示を出して。

 やっとこれで静かになった。





「本来ならば、私たちがメンバーだったそうですよ」


 すっぱり首を刎ねられた罪人二人の処刑後、私の部屋で酒を酌み交わす側近たち。

 こっちは処刑まで確認していたというのに、既に出来上がっている。

 そんな側近たちを横目に、ソファにどかりと腰を下ろす。


「殿下の言っていた通りだったな」


 アレは救えない、と言いながら度数の高い酒を水のように煽りながら笑う闘士である腹心。

 私の私兵、近衛隊隊長を任せている。


「さいしょっから頭おかしかったしな」


 気持ちの悪い女だった、と言いながらワインを空けるのは商人である懐刀。

 私の御用達を与えた商会の会頭である。


「魔力の質も異質だったしね」


 浄化できればどうでも良いから放置したけど、と言いながら摘みのチーズを頬張る天才魔術師の右腕。

 私の専属魔術師として、一師団の団長に任じている。


「聖女というのも本人の自己申告でしたしね」


 神があんな馬鹿女を聖女にするはずがない、と言いながらブランデーを持ってくる僧侶の参謀。

 私の建てた神殿で上位の治療術師をさせている。


「ま、アレたちが愚か者で助かりました」


 憂いであった魔力溜りを無事に浄化したばかりか、こちらが処刑する口実まで作ってくれた。

 これで、世界も国も安泰である。

 なにより。


「私が聖人だとバレずに済みましたし」


 神より浄化の力を賜り聖人認定されたのは私だったが、発表する前に自称聖女が名乗り出たのだ。

 幸い浄化の力は本物だったので、本来ならば私が側近たちと行くはずだった役目を押し付けた。

 本人もソレが当たり前だとばかりに乗り気だったため、すぐさま城に招いた。

 何故かパーティーメンバーを把握している、と側近たちの報告を受けた時、転生者だと気付いた。

 それからはもとから薄かった罪悪感など欠片も無くなり、ついでに無能者を駆除するべく色々と手を回し、本日めでたくソレが叶ったわけだ。

 失敗したとしても私たちが向かえば良かったので、最悪の事態を想定しなくても良かったのが大きい。


「これで殿下の憂いは無くなりましたね」


 穏やかに笑う私の侍従の言葉に、側近たちは笑みをこぼす。


 攻略対象者たちは、聖女が知る設定どおりの役どころではなくなっていて。

 天才魔術師のショタは、可愛い顔した鬼畜である私の右腕へ。

 癒しであった僧侶は、慈愛溢れる顔できっつい毒を吐く私の参謀へ。

 熱血闘士の爽やかは、脳筋に見せかけた腹黒な私の腹心へ。

 フェロモン垂れ流しの大商人は、二枚舌の詐欺師で私の懐刀へと姿を変えている。

 ソレをバグだと認識していた聖女は、最後まで真実を知ることは無かったが。


 ここは、私が作った二次創作同人BLゲームであるという事を。




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