「一太が幸せになってくれたらそれで私も、幸せ。」
だから私は、一太と舞衣が付き合うことになったときこう言った。
「でも、それで凛の気持ちはおさまるの?それで凛は平気なの?」
でも友達の有華は、私にこう言ったのだ。
私だってこれで良いなんて思ってはいなかった。
私だって一太が好きだった。
きっと、舞衣なんかよりももっともっと前からずっと一太が好きだった。
だけどいま、一太のとなりに居るのは私じゃない。
一太のとなりに居られるのは舞衣だから、それを壊そうなんて考えは私にはなかった。
全くなかったって言えば嘘になるかもしれないから、きっと心のどこかで願ってた。
少しずつ、二人も気付かぬうちに何かがちょっとずつ、壊れればいいって願っていたかもしれない。
私は、最低な友達だ。
一太はサッカー部に入っていて、私はマネージャーだ。
部活の時だけは、一太を独り占め出来ていたはずなのに、やっぱり"彼女"という存在には勝てっこない。
「凛〜あたしも何か手伝うよ♪今日一太が終わるの待ってるから暇だし、何か手伝うことあったら言ってね!!」
「うん。ありがと、舞衣…」
心のどこかで壊れればいいなんて、思ってる私が嫌だった。
隠そうと必死だった。
「舞衣!先帰ってていいって言ったのに…いいの??」
「だってー…一太部活ばっかでなかなか一緒に居られないんだもん!!待ってても良いでしょ?ダメ?」
いま、この空間に、私はいない。
同じ空気、同なじ風、同じ場所に居たって、二人の世界に私は入れないのだ。
「凛〜ごめんね!!こいつ仕事の邪魔かもしれないけど…終わるまで居させてあげてね。じゃあ俺練習戻るわ!」
「行ってらっしゃ〜い!!」
そう笑う舞衣の横顔が何よりも嬉しそうで、振り向きざまに手を振る君は誰よりも幸せそうで、私は切ないという想いの意味をこの瞬間に始めて知った。
練習が終わって戻ってきた君はこう言った。
「ただいま!」
「おかえり一太!!」
一太にとって、"ただいま"を言える場所は私じゃない。
私には、"おかえり"は言えても一太に"ただいま"と言ってもらうことは出来ない。
だから一太がいくら好きだって、きっと叶わない。きっと適わないのだ。
君にとっての"たった一人"になりたかった。
君だけの特別な一人になって、君に"ただいま"を言ってもらえる存在になってみたかった。
君にとってのただ一人に。
部活が終わって着替えを済ませ、門に居た私の横を現実が過ぎ去って行った。
「じゃあね〜凛〜!ほらぁ一太も凛にバイバイはぁ?」
「お疲れ!じゃあまた明日ね!」
私は願っている。
君の幸せを。
だけど、私はきっと今でも思ってる。
少しずつ、二人も気付かぬうちに何かがちょっとずつ、壊れればいいと。
心のどこかで願っている。
「…ごめんね。一太、舞衣。」
好き(こんなきもち)なんて、知らなければ良かった。 |