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story2。殺すということ
 二人は森を出て、森より少し先にあったクレストの車に乗り、クレストの家へ向かった。
 二人は特に何も話すことなく、クレストの家へ淡々と進む。

 だが、五時間ほど時間が過ぎた頃。ある異変に気づいたアリーナは、すかさずクレストに質問した。

「ねぇクレスト? どんどん町から離れてない!? ここ……森よ……? この森を越えた先に町があるのかしら……それなら話は分かるけど、随分遠くから来たのね……」

 その言葉に、運転していたクレストは、前を向いたまま静かに口を開いた。

「それは違うよ。この森の中に家があるんだ」

「えっ!? じゃあ、私が住んでたとことあまり変化ないじゃない。電気とかどうするのよ? 町の大きい家に住めるくらいお金もあるんでしょ?」

「電力はちゃんと届いてるよ。父がバックアップしてくれてるからね。僕は殺し屋だから、目立つところに家を建てちゃいけないんだ。常に隠密行動さ。でも大丈夫。生活の支障はないから安心しなよ」

 アリーナは、「へぇ……そうなんだ」といい、それ以上の追求をしなかった。
 クレストの目が、家の話題になってからなんだかとても恐ろしく感じたからだ。特に、父という単語が出たときに……

 そして、15分程度車を走らせた所に一軒の家があった。
 見た目は思ったより平凡で何の仕掛けもありそうもない家だった。

「着いたよ。ここが僕の家だ。結構、住めそうな家だろ?」

「そうね。ちょっと安心したわ。中へ入ってもいいかしら?」

 クレストは静かに頷くと、家の鍵を開けた。鍵はパスワード式になっており、暗号を入力しなければ入れないタイプの鍵だ。家の割りに高価そうな物なので、明らかに浮いている。

 二人は家の中へ入った。
 家の中も普通なのだが、なぜかとても広く感じる。いや……当たり前か……
 TVも無ければタンスも無い。ある物といえば、冷蔵庫・キッチン・机・明らかに浮いてみえる金庫くらいだ。

「あっ……あんたねぇ……TVも本も音楽も無しでよく暇にならないわね……思えば、服とかどうしてんのよ……」

「父が送ってきてくれるから洗濯もいらないんだよ。父に、世間の情報が見れるTVがあると、いらない情が発生し、殺すときに判断が鈍るから見るなと言われてるしね」

 少し沈黙が続いた。沈黙の後、アリーナは、急に覚悟を決めたような表情になり口を開いた。

「さっきから思ってたんだけど、話すことのほとんどに父が関わってるわね? そんなに父の命令は絶対なの?」

  その言葉を聞いたクレストは、なぜか座り込んで笑い始めた。

「な……何笑ってんのよ! 笑い事じゃないのよ!」

 アリーナは当然、怒り口調になる。

「ごめんごめん。確かにそうだなぁって思ってさ。確かに僕は父の操り人形だね。自分でもそう思うよ。でも、最近は、殺し屋という職業に疲れてきたんだ……」

 クレストは、なんだか哀しい目をしていた。

「なら、辞めりゃいいんじゃない? そりゃ、私もそんな強いこと言えないけどさぁ……あんたの父も、今の仕事を嫌がってる息子に強制して仕事続けさせたりしないんじゃないかなぁ。親って、いつもはどんだけ自分達の子どもにガミガミ言ってても、自分達の子どものことを第一に考えるもんなんでしょ? 親子ってそういうんもんじゃないのかなぁって私思うよ。親に狙われてる私が言う台詞じゃないと思うけど……」

 アリーナが、珍しく優しげな口調になった。

その言葉を聞いたクレストは、静かに立ち上がってアリーナの方へ振り向いた。

「僕ね。この世に生まれて……自力で立てるようになってすぐに殺し屋としての技術を叩き込まれたよ。初めは嫌だったさ。拳銃を持つのも怖かった。でも、父にずっと、犯罪者・凶悪犯……人に害を与えたものを殺して悪いことなんて一つも無い。そう教えられてきたよ。ついには感覚も麻痺したのか、犯罪者を何人も何人も完璧に殺していく父に憧れるようにまでなってた。僕も、何回も何回も犯罪者を殺す中で、拳銃を持つことに……人の命を奪うことに何の抵抗もなくなってた。でもね、最近になってそんな自分が怖くなってきたんだ。殺すことに抵抗の無い自分にね……殺すって事は、命を奪うってこと。当然。犯罪者からの被害を受けた家族は悲しんでる。僕が、その犯罪者の命を奪うことで、犯罪者の一生を奪い、犯罪者の家族だって、やっぱり、自分の子どもが死ぬことで悲しむ。僕には耐えられなくなってきた。殺し屋って職業で救われる人なんていないんだ……依頼人だって、本気で喜ぶ人なんていないしね………ハハッ………何言ってんだろね僕。こんな重い空気になってる場合じゃないや。気分直しにお茶でも入れてくるよ」

 クレストはそう言うと、お茶を入れに冷蔵庫に向かい足を進め始めた。

「その気持ち、そっくりそのままぶつけてきなよ」

「えっ?」

 アリーナの突然の言葉に、クレストは足を止めた。

「それがあんたのほんとの気持ちなんでしょ? じゃあ、それを父に言えばいいじゃん。話し合いなよ。親が絶対じゃないんだからさ。話し合うことで見えてくる事だってあるよ。それも家族として大事なことだと思う。それにさぁ。私から見ても殺し屋に向いてないよあんた。優しすぎるわ。言ってきなよ父のとこ。ドーンと胸張ってさ!」

 アリーナはなんだか嬉しそうだった。自分に本音を話してくれたからなのだろうか……
 クレストは、冷蔵庫に向かうのをやめ、また同じ道を戻ってきた。そして、静かに口を開いた。

「君の言うとおりだね。ここで逃げちゃ、一生辛いまま生きることになるのは目にみえてるよ。分かった行ってくるよ。でも、君も一緒にね。僕の留守中に刺客に狙われたら大変だ」

「いや、ここに残るよ。邪魔になるしね。大丈夫。いざとなったら変身しちゃうから!」

「そう。じゃあ、安心して行ってくるよ。留守番よろしくね」

「うん。じっくり話し合ってきな」

 そして、クレストは家から出て行った。
 
 だがこの後、アリーナの身が危険にさらされることをまだ誰も知らない……
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