8話:VSパルゲーゼ(タコタコ嫌がらせ♪)
「運転は問題ありません。私操舵術特級ですから」
の一言で出発した俺達。
今操舵室にいる彼女、シュヴァレイン……愛称シュヴァ。
美しい金髪に、整った顔、抜群のプロポーション。道を歩けば振り返らずにはいられないだろう美女だ。
しかし船旅って優雅だな。潮風が気持ち良い。まだ動いていないが。
「はうっ………ダーリン格好良いにゃ〜ん……」
悶えているナーエは置いといて。
「ところでどこへ向かうのです?」
シュヴァが聞いた。そう、それだ。
俺はシーフィスを指差す。寝ていた。
「……クロ、何でシーフィスなんだ?」
ティリが聞く。
『一応リーダーだからだ。シーフィスに従わなければ』
「マジか!? クロの方がリーダーっぽ……いや、クロもリーダーには見えねえけど……」
ティリはうーんうーんと唸り始めた。
シュヴァは俺を見て、不思議そうな表情をする。
「……何故、喋らないのです? 私も読唇術は使えますが……何か、呪いか病気にでもかかっていらっしゃるのですか?」
…………それはちょっと言えない。その純真な疑問が痛い。
「おれも知らない。教えたくねえってさ」
考えるのを放棄したティリが言った。
『病気や呪いの類ではないから安心してくれ』
やはり口パクで伝える。
「……? 別に良いのですが……」
喋りたくないだけだしな……。
「ああ、そういえばシーフィスさんを起こして頂けますか? 行き先が分からないとどうしようもありません」
…………俺は嫌だ。シーフィスを起こすのは昔から嫌いだ。
『ティリ、頼む』
「? 別にいいけど……。おーい、シーフィス、起きろ」
ティリがシーフィスの体を揺さぶった。
「………んぅ……………ゃぁぁ………」
…暫しの沈黙。これだからシーフィスは……。起こしにくいったらありゃしない。
「……あー、シーフィス?」
ティリが改めて起こそうとする。
「ふ……ぇ?」
シーフィスが目をこしこし擦る。上目遣いでティリを見つめた。
「…………っこれ以上は無理だぁぁぁーっ!!」
青褪めた顔のティリがシーフィスから離れて、俺に助けを求めた。……やれやれ、往生してても……なあ。
『起こすから、下がってくれ』
「あ、ああ」
ティリが答えた。
『後、縛り系の魔法を詠唱しておいてくれ。全員。出来れば魔力も封じるやつも』
「わかった」
「わかりました」
「わかったにゃん」
俺は詠唱を始めた3人を確認してから、シーフィスの顔に自分の顔を近づける。骨は拾ってくれよ。
シーフィスの頭を思い切り殴り、目を開かせる。
シーフィスが何か言う前に俺は口を開いた。
『し』『ら』『が』
ゆっくりと確実に。
そしてダッシュで逃げた。
シーフィスの瞳が金の輝きを宿す……。
「……誰が白髪だとおーっ!?」
シーフィスが怒った。怖っ!
「ウィンドマジックチェーン!」
「ブラッディマジックリボン!」
「ダークマジックチェーン!」
魔法名に『マジック』などという呪文を付けると補足効果が生まれる。ちなみにこの場合は、対象の魔力を抑える。
切れたシーフィスでも、流石に3重なら。
「があああああ!!!」
『すまん』
シーフィスが暴れる。さして被害はない。凄い腕だな、この三人。
「次はどこの大陸に行くのですか?」
シュヴァが聞いた。
「………はっ? ゆ、夢か? ……ああ、『レムネ大陸』」
「わかりました。後は船に指定しておけばほぼオートです」
この船、魔力船だったのか。レムネ大陸といえば……
確かクレープが美味いらしっ………俺は何も言っていないぞ? 考えていないぞ?
こんな感じにのどかに、船は進む。
……筈だったが、まあそういう事は無く。
大きなタコ形モンスター、『パルゲーゼ』が現れた!
コマンド?
→ぶっ殺せ♪
→ぶっ殺せ♪
→たーこ焼き♪
→美味しいぞ♪
そして食神と化した俺は、問答無用で2本のナイフを投げる。
俺のナイフ投げの腕前はなかなかに素晴らしく、両方の目に当たる。
『キョゲェェェェェ!!』
たこ焼き(もうそれにしか見えない♪)が悲鳴をあげる。うんうん、活きが良い方が美味いよな。
俺はタコが大好物……というわけではなく。
いやまあ俺は、この世界の人としては『珍しく』、タコが結構好きなのだが。
「……た、タコか……」
シーフィスの顔が引きつる。タコは人気がほとんど無い。まず皆無に近い。好きなのはマニアのみ。
「……おれ、パス……タコって不味いし……」
ティリは顔を青褪めさせる。タコは見た目もだが、味と触感の方が人気が無いのだ。戦おうとする冒険者は物好きだけである。
「にゃっ……た、食べごたえがありそうにゃ……♪」
ナーエはかーなーり、無理してるな。俺の眼が輝いているのを敏感に感じ取ったのだろうか。
「私……あれとは戦ったり食べちゃいけないっていう病気なんです……」
シュヴァは無理矢理な言い訳をする。色んな所をまわったが……未だかつてそんな病気、見た事無いぞ。
俺が目を輝かせた理由? そんな事、決まっている。
……ふっ、『嫌がらせ』だ。
俺はちゃんと直した愛銃、ラックを構えた。
目の上が弱点だったな。
しっかりラックを抑え、撃った。
ドゴン。
俺はラックに改造を施した。ちゃんと使えるように。
右眼の魔力がそれを可能にさせた。
ラックは『運試し銃』ではなく、『魔法銃』になった。
ランダムで属性の違う攻撃魔法が出せるようになったのだ!
さっきのは風だったらしく、タコの目の上に風穴が空く。
タコが流れていくのを防ぐため、鎖は伸ばせたらしいナイトクロスの短剣の方を、タコの体に突き刺して……捻った。これで外れない。
それから俺は4人の方を向き、にやりと口角を吊り上げる。
俺の口は、こう動いていた……
『今日の飯はタコ三昧』
4人は頭を抑え、青い顔で俯いていた。 |