21話:VS勇者(呪われし者)
俺達はチェリア、ミト、キルーム、ヨルと分かれ、一晩を森の近くで過ごし、次の町に向かっている。
…………ん?
「像にゃ?」
「像?」
「像ですか?」
「像なの?」
「像か?」
大きめの石像が見つかった。
青年をかたどったらしいその石像の足元には、『勇者像』と書いてある。
「壊したくなるな!」
「なるにゃ!」
「意気投合!? 駄目ですよそんな事をしては!」
「わりと楽しそうだね?」
「っておい、ベル!?」
面白そうだけどな。
「壊されるのは困るな。これ、俺だし」
……今の、誰だ?
全員振り向く。
そこには、黒髪黒目の青年が立っていた。二十歳を過ぎたぐらいだろうか。
青年はうっすらと笑いながら俺達に話しかけた。
顔立ちは、俺達とは少し違う。そういえばこの像は、青年と似ている気もする。
「久しぶりに『来て』みたら、面白そうな奴らだ」
青年は猫の様に、喉の奥を鳴らしてクックっと笑った。
「誰にゃ?」
ナーエが素直に聞く。
「俺は、数十年前にこの世界を救った『勇者』さ。……言い変えると、呪われてるんだけどな」
青年はどこか遠くを見つめながら、何の感情も込めずに言った。
「数十年? ……私には、貴方は20代前半程にしか見えません」
シュヴァが疑わしそうに聞く。
「見た目は、な。俺は、色んな世界をいくつも救ったんだぞ。……今日は、何か怪しかったからこの世界の様子を見に来ただけだ。お前らが解決してくれそうだし、俺は帰るかな」
その瞳は、嘘を語っている様には見えない。何故か。
「何を言っている?」
シーフィスは青年を少し睨む。
「…………」
青年は、舌なめずりをした。
「お前ら全員、格上と戦って世界を見ておいた方がいいな。見せ付けてやるよ」
これには皆、カチンときた。
「一人でどうする気だ?」
ティリが多少挑発的に言う。
「俺一人で十分さ。ホラ、かかってこいよ」
もっと挑発で返す青年。ムカ。
「はっ!」
シュヴァがレイピアで斬りかかった。青年の腕に当たる。
バキン!
「な!?」
レイピアが、折れた。
シュヴァが目を見開く。
「こんな物に頼らない方がいいぞ、お前。その方が強い」
青年は手をシュヴァの腹に持っていき、その手が光る。
「っが!」
シュヴァが吹っ飛ばされた。
シーフィスが向かっていく。
青年は自分に向けられたカトラスの刃を、軽く掴んだ。シーフィスは青年を睨む。
「これも。もっとお前向けの剣があるんじゃないか? それから、隠してばかりじゃどうにもならない」
そのまま、折る。
「ぁあああっ!」
青年が吼えると、シーフィスも吹っ飛ばされた。
「ぐぅっ……」
「大いなる風の精霊よ、かの者を縛りつける鎖、ウィンドチェーン!」
ティリが魔導を唱えた。
青年は腕を一線に引き、飛んできた風の鎖をかき消した。
「甘いな。まずは過去と決別しろ。失ったものを取り戻せ」
青年がティリの頭に手を向ける。ティリまで空を飛んだ。そして地面に叩きつけられる。
「っぐあ!」
ベルが言葉を発した。
「来て、ドラゴン!」
ベルがベジーアドラゴンを呼んだ。
「ドラゴンか。お前はまあ、ドラゴンを強くする魔法か何か覚えればいいだろう。後は少し冷徹になれ」
青年は、ドラゴンに一瞬で近づくと、ドラゴンの腕を掴んで倒れさせた。
ベルはいきなり意識を失って、倒れた。
「全てを切り裂く闇の刃、」
「お前には、大切に思う心。信じる心。それが必要だ」
いつのまにかかなり近づいて来ていた青年は、ナーエの首に手刀を叩きこむ。ナーエは崩れ落ちた。
「後は、チームワークかな。一人づつかかってこられてもな」
俺はラックを構え、銃口を青年に向けた。
「…………信じるだけじゃどうにもならないぞ。というかいい加減にしとけ。あいつは」
青年が俺に向かって話しかけた。
俺の口も動く。
『黙れ』
「……。知らないぜ。信じる心が強すぎるんだよ、お前は。いや、むしろ崇拝、だな」
『黙れ』
何発も撃ちこむが、効かない。チッ。
「そんな物でどうするつもりだ? 玩具じゃないか。それならもっと腕を磨けよ」
俺の発明品貶しやがったよコイツ。畜生。
青年は俺の頭に触れた。
「あいつを信用しすぎるなよ」
何を言う? 『あの人』の事か? あの人は―――
「どうしても無駄、か。まあとにかく、眠れ」
青年は溜息を吐いた。
俺の意識は、ここで途切れた。 |