2話:VSグーセスプリンセス(大きな兎さん♪)
仲間が増えてから三日。
少年の名前は『ティリ=ラレノ』といった。
十七歳。俺達と同い年。
話を聞くと、彼はホビットだそうだ。だからこんなに小さいのかと納得。
「……黒」
ティリが俺に話しかけた。呼び捨てか……いや、同い年だが。
俺は首を傾げ、『何だ?』という意思表示をした。
「何で喋らないんだ?」
単刀直入に来た。
「俺が説明しよう。知らん」
「駄目じゃん」
……俺の喋らない理由……口が裂けてもいえん。
「そのおかげで本名教えて貰えな痛っ」
俺は無言でシーフィスの頭を殴る。
何度教えても覚えなかったのが悪い。
……口パクで伝えた。
「あー、そっちの方がいい。おれ読唇術使えるから」
ほお。
「名前教えてくれよ」
『クロストーム=シュタノン=セイミリナア=トラムスレーズ=フェリアーク』
と口パクで伝える。
「………。長っ」
正直だな。
「えっと、略して………クロでいい?」
変わってないし。
「いや、漢字じゃなくなったって!」
そんな事言うな。区別つくか。
早く『盗賊山』についてほしい。
盗賊山とは、盗賊や山賊がアジトにしやすそうな洞窟が大量にある山だ。
勿論モンスターも出る。俺達はそのモンスターの退治任務を受けた。
報酬は七十万トト。なかなか良い仕事である。
「モンスターが弱ければ楽なんだが」
「まったくだっての」
しかしこの報酬量だと、強いモンスターなのだろう。
というか、お前達。魔力波と鞘に収めっぱなしの剣だけでよくそんなに倒せるな(ああ、魔力波っていうのは、魔力の波動の事で、魔力がある奴が集中すればまあ出せる)。
しかも手元見てないし。俺の仕事はモンスターの物色だ。
お、これはマンデノウサギ。兎っぽいが、ツノが生えており、紫色。めったに出てこない。
肉が美味。毛皮は高級品。取らないでか。
……いっぱい……まてまて、報酬に目が眩んでよく内容も見ずに(勝手に)申し込んだが……
もしかしてこの先にいるのは、グーセスプリンセスではないのか。
グーセスプリンセス。マンデノウサギのボスのような存在。
手下を大事にし、凶暴だが、めったに外には出てこない。
ぬめりけの多い洞窟に生息。戦闘は洞窟になる……つまり足場最悪。
………。まあいいか。俺戦わないし、コイツら強いし。
「ここのようだな」
「ああ」
二人は堂々と洞窟に入る。俺も一応付いてゆく。
大きい不気味な紫色の、グーセスプリンセスが現れた。
コマンド?
こんな事やっても面白くない。なぜならツッコミがいないからだ。
『フェェェェェェ!!』
「グー……なんだっけか?」
「グーセスプリンセスだ! こんな大物だなんて聞いてねぇよ!」
教えてないし。知らなかったし。
『頑張れ』と伝えた。
「お前も戦え、クロ!」
嫌だ。俺は洞窟の入り口で気配を消し、観察モード突入。
グーセスプリンセスはその大きな巨体を活かして、体当たりをした。
二人はギリギリで避ける……が、ティリは滑って転んだ。
「いってー! シーフィス、詠唱時間稼いでくれ!」
「どうやってだ!」
「気でも引いとけ!」
ティリは詠唱の体勢に入った。
「大いなる風の精霊よ、我の肉体と友の肉体に力をかせ、全てを弾く鎧……ウィンドメタル!」
ティリは補助魔導をかけた。俺にはしてくれなかったけど。
「体が軽い」
シーフィスはグーセスプリンセスに接近した。あ。
俺はティリに視線を送った。ティリが振り向く。
『毛は刈るなってシーフィスに言ってくれ。高く売れるから』
ティリに呆れた目線を送られたが、一応言っておいてくれた。よし。
シーフィスはカトラスを抜き、グーセスプリンセスの前足と後ろ足の間に突き立てた。
グーセスプリンセスは動きが鈍い。しかし大きい。シーフィスの背丈より大分高い。
『フィィィィィ!!』
グーセスプリンセスは叫び声を上げ、前足でシーフィスの頭を殴ろうとする。
間一髪避けたようだ。
「大いなる風の精霊よ、かの者を縛りつける鎖」
ティリはウィンドチェーンの詠唱を始めた。
その時、グーセスプリンセスがティリに向かっていった。
そして前足を振り上げる。シーフィスはどうやら、さっきの攻撃を食らっていたらしく、膝をついていた。
あのままじゃティリ死ぬな。
ちっ。
俺は『ラック』をぶっ放した。
ラックは俺の発明品、魔術がかかった銃だ。
魔力球を打ち出し、後は運任せ。何故かって……
ゴイーン。
『フェッ!?』
タライだった。あーよかった、動きは止まった。
「ウィンドチェーン!」
風の鎖がグーセスプリンセスを捕まえる。
その頭に、シーフィスのカトラスが突き刺さった。
グーセスプリンセスを倒した。ちゃららちゃっちゃらー。
「……なんでタライ?」
ティリが白い目で俺を見る。
「ティリはクロの銃を知らないんだったな。ラックは魔法銃で、魔力球を打ち出す。打ち出した魔力球はランダムに姿を変えるんだ」
そう、全部運任せだ。この前などティッシュペーパーが出てきて焦った。
銃の弱点である玉切れを無くせないかと試行錯誤したところ、こんなのが出来た。
魔力球のままでは威力が弱すぎて話にならない。しかし俺の魔術ではランダムが限界。
仕様がなかった。
あまり使わないからこれでもいいか、と。
大体ナイフの方が多いし。
「なるほどな……。魔術か」
その通り。サ〇ンナイ〇のサ〇ンマテリ〇ルを想像してくれ。
「しかしこのグーなんとやらは、どうやって持ち帰るのだ」
『そこはティリに期待だ』
「おれ? ああ、魔法か。大いなる風の精霊よ、空間を越えぐっ」
俺はティリの頭を殴る。
「何で……」
『転送じゃなくて、軽くするだけでいい。俺達が町に着く前に盗まれたらどうする』
「ああ、なるほど……でも、運ぶ奴に血が付くかもしれないぜ」
『そこは運だ』
勿論じゃんけんなどではない。
「俺からいくぞ」
「ラックを使うのか?」
『地面に撃って、一番威力が低かった奴が持っていく』
まず、シーフィス。
ぱさ。
「……タオル?」
消えたりはしないから……使えるといえば使えるが。
「おれだな」
ティリも撃った。
べちゃ。
「海草?」
むくむくと大きくなる。
おお、これはアントレルじゃないか。食べるととてつもなく苦いが倒しがいがある。
『キョエー!』
「「モンスターかよ!」」
初心者はまずアントレルで躓く。
まあ俺達ぐらいの強さがあれば、楽勝だ。
それからアントレルの根っこ(足)には医療効果があるので高く売れる。
俺の番。
ふわっ。
『リールー♪(上がり調子で)』
フェアリーだった。
『リールルー♪(上がり調子で)』
すぐに飛び去って行った。達者でな。
「……結局?」
……じゃんけんで決めよう。 |