19話:VSモンスターとか(ヨクアールの迷いの森前編っ♪)
久しぶりの野宿。
「森……ですね」
「だな」
「にゃ〜……怪しいにゃ……」
「看板があるぜ」
しかし、何の文字かわからん。そもそも文字か?
「『ヨクアールの迷いの森』って書いてあるよ」
ベルが言った。……ほとんど爪跡じゃないか……?
《それにしてもヨクアールって……》
メンバーの心が一つになった。
「でも道はありませんよ」
「行くしかないな」
マジか。
こうして、俺達はヨクアールの迷いの森に入る事になった……
いきなりはぐれたし。
やれやれ。俺は溜息をついた。
モンスターはうざいし……さっきからナイフ投げてくる奴居るし……ってナイフ?
うわっ!
危ね……避けてたら当たってた…………下手糞だな…………
それから……
飛び出してどうする。
「はぁっ!」
掛け声出してどうする。
俺は後ろ手にソイツの肩をつかみ、引き倒した。
「へっ!? わ、わ、わわああぁっ」
どてっ。
どうやら青年のようだが……いや、少年か? 何にしてもうつ伏せじゃ分からんな。
くるり、と足でひっくり返す。
「うぅ……」
うーん……同い年かそこらか?
「…………年下に足蹴にされたっ…………」
あ? ……年上には見えないんだが……。
黒髪赤目の、一見何の変哲もない青年だ。だが、気は抜けないな。モンスターの可能性もある。
青年は俺を見て呟く。
「……人間?」
カチ
ラックの銃口を青年の額に当てる。
「ひぃっ!? …………や、別にいいよ? 撃ってみたら?」
じゃあ遠慮なく。
ガキッ!
「いったぁぁ!?」
どうやら属性は樹氷だったようだ。しかし、普通なら頭に風穴開くぞ。今の。
ビキビキビキ……
「ちょ、凍ってきてる!? 俺樹氷苦手なんですけど!?」
モンスターか? 撃ちこんでみるか……。俺は連射しようとした。
「ストップ、俺は……いや、人間ではないか……とにかく、悪いモンスターじゃあない!」
危険な事に変わりはないがな。
ガッ!
「わっ」
青年は、腕で顔を守った。しかし……その腕は、漆黒だった。わあ、吃驚。
青年は俯きながら言う。
「……俺はドラゴン。ドラゴンだけど、落ちこぼれだったからと人間の腹の中から生まれて、そして育った。ちなみにこの目は魔王の目だ」
凄っ。……それにしては弱くないか?
「君は何だ? モンスター……ではないよ、な? んん?」
じーっと俺を見つめる。……。
ドガッ!
「ぎゃっ! ごめんって! 気に触った?」
バキュッ!
「どうしろと!?」
どうしようか。
まず、森を抜けないと話にならないな。
「……この人怖い……ミト、チェリア、キルーム……」
仲間の名前か、それ。
どこに居るんだろうな。ティリ、シュヴァ、ナーエ、シーフィス、ベル……。
俺は青年を放置し、歩き出した。
「えっ、ちょっと待って……」
ついて来るのかよ……。
まずはシュヴァを探すかな。モンスターをあっさり倒してくれそうだ。
……俺は自慢じゃないが、いつでも楽したいんだ。
その時鳴き声がした。
『キェリッリリリリッリイィィィー!!』
あっはっは。危険度B+(11話参照)の鳥型モンスター。
どうしろと。
「たあぁぁぁっ!」
青年はモンスターに向かっていく。阿呆か?
モンスターは翼をばたつかせ、竜巻を生み出した。
青年は竜巻に巻き込まれる。
「うわわわわっ? 助けてー!」
俺は背を向けた。
「はあ!?」
餌にならずにすんで良かった。
ガサ、と女性が二人飛び出してきた。
シュヴァと……誰だ?
「はっ!」
シュヴァはレイピアで、モンスターに斬りかかった。
羽根が取れて、血が噴き出す。
「燃え上がりし炎の精霊よ、その手に携えし聖なる炎で敵を討て、ファイアーアロー」
炎の矢が、モンスターの胸に突き刺さった。モンスターはおぞましい悲鳴をあげ、倒れた。
「ビレッタね。強敵」
……あ、あれか。赤い髪の女性が言った。
シュヴァが白い目で俺を見た。
「……敵を前に逃げるなど、男として言語道断ですね」
む…………嫌な物は嫌だ。
『タコはいいのか』
「わっ……私は女です」
調子のいい…………。
青年の方では、
「ミトー!」
「平気? 本当にダメダメよねヨルは」
「うっ……」
青年……ヨルがショックを受けていた。
「早く抜けましょう」
「そうね」
女性陣は意気投合してるらしい。確かに合いそうだが。
「うん、行こう」
「ヨルは役に立たないから下がっててね」
「……ハイ」
ヘタレだな。うん。
「クロと似たりよったりじゃないですか?」
むっ。
じゃあ…………ちょっとだけだぞ。ちょっとだけだ。
……ん? 何か横を駆けぬけた様な……。
同時に、虎のようなモンスターが出てきた。ふん、丁度良い。
「クロ?」
俺は前へ進み出る。
モンスターが飛びかかってきた。
『…………』
『ガッ……?』
そして止まった。
『いい子だ』
『ガッ……ガガァ……』
モンスターはじりじりと後ずさる。俺が一歩踏み出すと、面白い様にビクッとした。
俺はずんずん近づき、モンスターの前足を踏む。
『ガガッ!』
そしてニヤリと笑う。
『死にたくなければ乗せていけ』
快適だ。
このモンスターは強いらしく、ほとんどのモンスターが逃げる。
「クロ、貴方何者なんですか?」
『秘密だ』
「…………」
見られてもな。
「にゃ〜」
いつのまに……ってさっきのアレ、ナーエだったのか。速。
「ダーリンカッコよかったにゃ〜」
ひょっとして追いかけられてたのか? ナーエ。
「助かりましたです〜」
桃色の髪の毛の少女が言った。誰?
「よかったな、チェリア」
少女はチェリアという名前らしい。
「ヨル、敬語を使えです〜」
「…………ハイ」
本当に弱いな……。
「惚れそうです〜」
チェリアが俺を見て言った。
「にゃ!? 駄目にゃっ!」
「何でです〜? 恋人ってワケでもないんじゃないかです〜?」
「うにゃっ……」
「ネコはネコらしくネコと交尾してろです〜」
「コイツ口悪いにゃ!」
まあ、確かに……。
大体好みでもないしな。
「チェリアは惚れっぽすぎるわ」
言いながら、ミトが溜息を吐く。
「言ってろです貧乳〜」
「なぁっ!?」
…………ああ、まあ、確かに…………
「変わらないでしょ!?」
「言い変えれば12歳と一緒です21歳年増〜」
「コロス!」
危ないなあ。
シュヴァが止めに入る。
「ま、まあまあ」
「シュヴァが止めても逆効果だと思うにゃ」
それは同感だ。
「兄さーん」
この声はベルか。
同時に、ズシン、ズシンと重い足音。
「あ、居た」
そしてドラゴンが現れた。
緑色のベジーアドラゴン。比較的大人しい。
「ドラゴンがっ」
「ドラゴンですー」
「喋ってる……」
ミト、チェリア、ヨルが驚く。
そうも見えるが。
ひらりとベルが飛び降りてきた。
ぽふ、とそのまま俺に抱きつく。俺の顔を見上げる。俺はなんとなくベルの頭を撫でてみる。
『平気だったか?』
「うん。ドラゴンが居たしね」
ベルはにこっと笑った。つられて俺も笑う。
《……強敵が居た……》
「おう。チェリアにミトにヨル」
「「「キルーム!」」」
「ドラゴンの背中に乗るなんて面白い体験だったな」
キルーム、と呼ばれた金髪の男性も、ドラゴンの背中から降りた。
「ティリとシーフィスはどこに居るのでしょうか」
「にゃ、ティリが心配にゃ」
「大丈夫かな」
その話になって突然、轟音がした。
続いて煙。
「シーフィスかティリですかね」
「多分ティリにゃ。魔のニオイ」
「シーフィスも居るかもよ」
とりあえず俺達は駆けだした。
何でコイツらついてきてるんだ。
「どうしてついてくるのですか?」
シュヴァが聞いた。
「青い髪の少年には借りがあるしな」
「抜けられる可能性高くなるですー」
後者、チェリアの言葉が本心だろうな。
そして、そこで俺達が見たものは。 |