18話:VS専属ボディーガード(そして、家族と)
ワーバードの国、ウィデンに向かっている。フォスティクスをつけて。
俺とシュヴァは危なげなく、普通に飛んでいる。
ティリは苦手らしく、俺につかまっている。
ナーエは初めてとは思えない程操っている。
ベルとシーフィスはゆっくりと落ちていく…………って、おい。
「助けてー」
「これはこれで面白いがな」
駄目だろ……。ドラゴン呼べばいいだろう、ベルは。
「いらっしゃいませ、ワーバードの国へ」
ここは観光地という事で、沢山の人がいた。
中には人じゃないのもいる。
ワーバードは勿論、ワーキャット、ワーウルフ、ワードッグ、ワータイガー……こうして見ると凄いな。
「仲間がいっぱいにゃ〜」
はしゃいでいるナーエ。
「興味深いですね」
何に興味を持っていて何がしたいのか聞きたくないシュヴァ。
「あれが欲しいな」
ガキみたいなシーフィス。他人の物を欲しがるな。
「あれ買ったら旅楽にならねぇ?」
真面目なティリ。
そして、あれ美味そうだなとか考えてる俺。
最後に……
「…………」
俯く少女。
そして笑いを堪えているメンバー。
「…………何もこんな所でっ…………」
俯く少女あらため女装したベル……。
「似合うにゃ〜」
「女の子なんだから当然だろっ?」
ティリとナーエが言う。勿論魔法がかけてあるためだ。
「う〜……」
顔を顰めまくるベル。
とりあえず皆で笑ってから、歩き出した。
「…………!!!」
ベルが立ち止まった。必然的にメンバーも立ち止まる。
ベルは俺の後ろに隠れた。
「どうしたのですか?」
シュヴァがベルに聞いた。
ベルは青い顔だ。
「……あ……あれは……」
ベルの見つめる先には、夫婦が居た。
青い髪の旦那と、緑の目の嫁。そして、小さな金髪の少女。
話し声が聞こえてきた。
「お母さん、私、お父さんの髪の毛が良かったなあ。だって、金髪の人って多いんだもん」
「あら、でも目は綺麗よ。澄んだ青」
「これもお母さんでしょ? 金髪に青い目の人って凄く多い。……お兄ちゃんみたいな色が良かった」
少女が言うと、夫婦の顔色が悪くなった。
…………まさか、な?
「……リュミエラ……。かあ、さん、父さん……」
……ビンゴ、か……。痛いなあ。
そこにあるのは、まさしく家族だった。
「にゃ……あ、あっち行ってみたいにゃ!」
ナーエがその場を離れようとした。しかし、ベルは動かない。
カタカタとベルの肩が震えている。泣いているのか?
俺は、ベルの表情を見た。
「……一つだけ、やりたい事がある」
おっそろしい顔だった。とにかく怖かった。普通の人間なら裸足で逃げ出すな。
ベルは、夫婦に近づく。
夫婦がベルの方を見た。
ベルは……
「歯ぁ食い縛れぇっ!!」
夫婦の後ろにいた、ガードマンの様な男の顔面をブン殴った。よく届いたな、ってそんな事言ってる場合じゃない。
シーフィス、出番だ。
シーフィスは、愚問だとばかりに男に近づいた。
「なっ、このガキ……」
「すいませんね。貴方の顔に毒持ちサリロ(サソリみたいな小さなモンスター。毒をとれば美味しい)がいたものですから。どこかから逃げ出したんでしょう」
「はっ?」
男は、顔を青褪めさせた。
「優しい子でしょう?」
「んな、」
「だろ?」
「……う、は、はい……」
恐怖で黙らせた……。
シュヴァが夫婦に近づいた。
「申し訳ありません。しかし、主人方をサリロなぞの毒で殺害しようとする専属ボディーガードは即座に解雇する事をおすすめします」
「え?」
嫁が目を丸くして、男を見た。
シーフィスが引っ張っている男のポケットからサリロが出てくる出てくる。
「きゃああああ!?」
少女が悲鳴をあげた。
「大いなる風の精霊よ、何事も通さぬ檻、ウィンドケージ」
ティリが魔導を唱え、サリロが全て包み込まれた。
「ち、畜生……」
男が逃げ出そうとした。所を、
カチ
『動くな』
「へ……」
俺がラックで足止めする。
さっき眼帯外したから逃げ出そうとなんてしないと思うが。
「あ……」
夫婦、いや家族が向き合う。
ベルを見る。
「もしかして、べ、ベル……?」
嫁が言った。
俺達は、ベルの反応を見て行動を変えよう。
「人違いです」
ベルは、凛とした声で言い放った。
「そんな、嘘でしょ……貴方は、あいつに船の上から落とされたんでしょ? あの男に……。あの男は貴方の、力が怖くて……」
「僕は」
「僕は賞金稼ぎ。僕の力を最大限に発揮出来る仲間と旅してる。ドラゴン使いのベル。……ベル=…………『フェリアーク』っ!」
沈黙が下りた。
「どうしてっ、ベルお兄ちゃん!」
少女が言った。
「闇よ眠りを誘え、ダークスリープ」
ナーエが魔法を唱えた。
夫婦と、その娘が倒れた。
「ねえ、クロ」
ベルが呟いた。
『何だ』
「ははっ……『兄さん』って……呼んでもいい? ずっと、兄が欲しかったんだ……」
俺はベルの頭に手を置いた。
『いいだろう、弟よ。妹か? ……辛い決意は乗り越えろ。俺はそのための踏み台になってやる。安心しろ、手助けしてくれる仲間も居る。お前の力は強いが、子供は家族に甘えるもんだ。泣け』
「…………うっ、ううっ…………うぁぁーんっ!」
ぼふ、と音を立てて、ベルが俺の胸元にとびついた。
シーフィスとシュヴァとナーエとティリは、俺とベルを微笑ましそうに見ていた。 |