1話:VS精霊魔導師(7年目の仲間♪)
この世界の名は『STRANGE WOLRD』通称SW。
この大陸の名は『サーノフレル大陸』。
この町の名は『タル』。
そしてこの青年(主人公)の名は『シーフィス=マイル』。
今、青年は逃げている。
『テメェー!』
『悪党が!』
「悪党はどこだ?」
訂正。
彼に『逃げている』という意識はなかった。いや、逃げているように見えるし、実際追いかけている人達の目的は彼だ。
しかし、彼は非常に都合の良い頭を持っていた。
「む? よく見れば、被害にあった人達は、俺に様々な物をただでくれた善良市民の方々ではないか。そのような人達に手を煩わせるとは不届き千万! 正義の名の元に、大人しく縄につくがいい!」
ちなみに彼が先程まで行っていたのは、主に『泥棒』『窃盗』『食逃げ』という名の犯罪行為である。
『逃げるんじゃねぇ!』
「まったくだ」
そう言ってシーフィスは、腰から剣を抜いた。
刀身の鋭く磨き上げられたカトラス。
『武器だしたぞ!』
『やべぇ!』
「俺に任せるがいい。必ず引き渡してみせよう」
そしてシーフィスは走り去った。
国を丁度出る、森の入り口に着き、逃げ切ったシーフィス。あれだけ(数時間)全力疾走したにもかかわらず、息一つ切らしていない。
しかし無酸素運動をあれだけ続けておいて息切れないっておかしいだろう。
「むぅ……一体どこに? しかし体力も限界だ」
全然まったくさっぱりそうは見えないシーフィス。汗一つかいていない。
「明日、次の国で必ず捕まえてみせる。今日は森の中で野宿だな」
シーフィスはがさがさと草をかきわけ、森の中へと入って行った。
「………んー………」
朝日の眩しい光で、シーフィスは目をあけた。
どうでもいいが、寝顔は天使のようにあけどない。行動は比例しない。
「……うゅー……」
低血圧なシーフィス。
これまたどうでもいいが、モンスター……いや、危ない趣味を持った人間に襲われたらどうするのだろう。
そしてまたまたどうでもいいが、その言葉の発音の仕方が分からない。
「……はぁ……ぅ……ぅん……朝…か。早速……次の町に……むー……」
目を擦ったりその長い白髪をがしがし掻いたりしているものの、まだ起ききれていないシーフィス。
数分の間そうしていたが、ようやく目を覚ましたのか、すっくと立ち上がった。
「行くか、黒」
……ああ、黒は俺の事だ。
俺は絶対に喋らない上全身黒尽くめ、気配も普段消しているためナレーターという役に留まっている。
趣味は観察だ。
俺の事はどうでもいい。今はシーフィスだ。
隣の『ペトペト』町。……俺が言う事ではないが、もっと他になかったのか?
「素敵な名だな」
シーフィスの頭の中を見てみたいものだ。
「宿をとらなければな。それと……」
とりあえず昨日の悪党の事は忘れてくれた様で、一安心。
俺の魔術と発明品も役に立つ。
その時。
「テメー等誰だ!」
白いローブを羽織った子供だった。今まさに国に入ろうという所で、子供がいきなり杖を構え、目の前に飛び出してきた。
みならいまどうしがあらわれた
コマンド?
→こうげき
まほう
どうぐ
にげる
遊んでてもしょうがないな。
「今まさに国の中に入ろうとしている勇士とナレーターだが」
……まぁ、自分でもナレーターだと言ったけども。
「嘘をつくな。勇士の証である金の瞳もない。そっちの奴にいたっては黒尽くめだ!」
黒尽くめで悪かったな。
ちなみに金の瞳は、聖職である勇士の証……というか綺麗な心と強さを持っていれば、興奮した時だけ現れるという、実際誰でもなってしまう現象だ。
俺も一度だけなった事がある。しかし特に何があるという事はない。
せいぜい魔力が強くなったり、人それぞれ。俺の場合は……攻撃の命中精度が上がった。気がした。
誰にも言って無いしな。なんか恥ずかしいじゃないか。
ちなみに勇士の場合、常に瞳は金色。それから勇士という職業はまぁ……言うなれば魔法を魔術師なみに使い、かなりレベルの高い剣技を扱う。らしい。
……実際は勇士にしか覚えられない魔法があるだけだそうだ。後は魔力が無限大に増えるとかなんとか。
「怪しい背の高い二人組が隣の町で食逃げや窃盗をしたんだ。特徴がお前らにぴったり……」
「何!」
あ。……ちっ……面倒臭い事になりそうだな。
「大いなる風の精霊よ……かの者を縛りつける鎖……」
詠唱有りの魔導か。風の鎖……中級魔導。詠唱を使えると言う事は、子供にしてはそこそこのレベルみたいだな。
……シーフィス、鞘であの子供殴れ。意外と威力強いんだぞ、あの魔導。
子供がにやっと笑った。
「……大いなる風の精霊よ……薙ぎ払う突風……」
!!!!!!
シーフィスを待ってる場合じゃない!
二種同時詠唱魔導……同属性の別の魔導を同時に使用する。
かなりレベルの高い魔導……何故こんな子供が?
俺は子供の元まで走った。
「……ウィンドチェーンブレイク!!」
が、間に合わなかった。
鎖のようなものが俺の体に巻きつき、その後突風が俺を襲う。痛い。
対象は一人だけだったようだ。シーフィスは……
ゴン。
「いってー!」
それは俺の台詞だ。いや、俺は喋らないが……
シーフィスが剣の鞘で、子供を殴った。
フードが取れてのぞいたのは、赤い髪の少年だ。
生意気そうなつり目だった。
「俺達は悪人を追ってここまできた」
シーフィスは思い出してしまったようだ。
「何か知らないか?」
流石はキング・オブ・マイペース。人の話聞いてなかったな。
「悪人ってお前らだろーが!」
「何!?」
今更だな。
「黒、俺達なのか!?」
首を傾けた。バックレといた方が懸命だ。
「黒がわからないらしいから、俺達ではないな」
「何だその根拠!」
シーフィスは馬鹿だから。
「お前、正直に言えよ!」
少年が俺に矛先を向けた。
俺は頷いておく。
「意味がわからねぇ! 喋れよ!」
無言で首を振った。これだけは譲れない。
何度も何度も、少年はあの手この手で俺の口を開こうとする。
しかし開いたところで声を出すわけもない。
やがて少年は諦めた。
「はぁ………もういいよ。100パーお前らだけど、今回は見逃してやるよ」
「じゃあ仲間にしてやろう」
「はあ!?」
しかしシーフィスは見逃さなかった。一瞬、少年の瞳が輝いた事を。
「俺達は特に目的もなく放浪している賞金稼ぎだ。お前、今から旅に出るんだろ。いきなり賞金首を見つけたと喜んで俺達を捕まえようとしただろ」
「……う」
「しかし魔導師が一人で冒険なんて無理があるだろ。詠唱待ってくれる奴なんて少ないに決まっていると、お前も分かっている筈だろ」
「……うぅ」
「勇士と銃士がいるんだぞ。大きな魔導の詠唱時間を気にする事もなく、遠慮なくぶっ放せる」
銃士は俺の事だ。一応な、一応。
後シーフィス、お前は『自称』勇士の剣士だろう。
「嫌ならいいのだが」
「パーティ入れてください」
新しい仲間ゲット。二人で旅を始めてから七年たった日だった。
…………それはまあいいんだが、いい加減魔法を解いてくれないか。 |