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もう一度、私に恋させて!

作者:かわた

私には好きな人がいる。
それはお隣の留香くんで、彼とは生まれた病院も同じで小・中・高校とずっと一緒。
生まれた場所がド田舎だったからちょうどいい遊び相手が他にいなくてよく遊んでた。
留香くんはとても強くて優しい男の子で、私がドジでよく転びそうになるのを手を取って助けてくれていた。
そんな優しくて王子様のような彼が、私は好きなのだ。

まぁ、初恋は実らないというように小学校までは仲がよかったけれど
中学校から急に留香くんがモテ始めてしまった所為で徐々に疎遠気味になってしまった。

たしかに、留香くんの容姿は麗しい。
濡れ羽色の黒髪に繊細に作られた顔のパーツ、スラリと長くだけれどほどよく筋肉質な手足
文武に優れたスーパーボーイなのだ。女子が群がるにも納得のスペックだろう。

彼を誰にもとられたくないと、密かな恋心を、自覚したのだ。
そして嫉妬で心が痛くて、辛くて、どうしようもできなくなって
積極的とは無縁の恥ずかしがり屋な私は最終手段を取ることにした。


「留香くん!おはよ!いつも素敵だね!好きです!」

「・・・」

毎日の日課になっている挨拶件告白をする。
だけれど最近無視されるのがデフォでスタスタと女の子を引き連れて(そう、取り巻きがいるのだ)
歩いて行ってしまった。

そう、こうやっていつも好き好きアピールをすることにした。
留香くんを好きな想いなら誰にも負けない!
地味でぱっとしない私のアピールポイントはそこしかないのだから。

だけれど毎回不発で周りの取り巻きの女の子達からもくすくすと笑われる始末。
みんなの前では平然としているけれど、実はとてつもなく、とっても恥ずかしい。

今日も影に隠れて蹲る。
ほっぺが熱くて本当は手も足も震えている。
そんな自分を叱咤しようとほっぺをたたこうとした瞬間



知らない人が私を取り囲んでいた。
私の足元にはキラキラした宝石のような光の球が浮かびフワフワと上昇して淡く消えている。
周りをぼんやりと見渡すと、深海の中のような蒼色の円状のステンドグラスが特徴的で
海の中の教会といわれても信じそうな暗く、蒼色の光が差し込む場所だった。

「召喚の儀が、成った」

美しい銀髪の男性が一粒涙を流し、吐息をつくように言った。


私は驚くべきことに異世界に召喚されたらしい。
召喚した世界は魔が充満して、私は異世界の勇者としてそれの浄化を頼まれた。
待遇は勿論良く、すべてが終わったら帰してくれるという。
その頃の私は留香くんが好きで好きでしょうがなくて、早く帰りたい一心でそれを承諾した。

だが、なんの取り柄もない平凡な私が世界を救うのだから
それ相応の苦悩や我慢や痛みが待ち受けていた。

魔の浄化は聖剣で行われる。
勿論汚染された地域、魔獣、そして人を斬るのだ。
といっても聖剣で斬られて死ぬわけではない、魔だけが切り裂かれ肉体の損傷は浄化後治る。

だけれど肉を斬る感触は中々手から消えてくれないし
激しい剣術の練習で手はぼろぼろになり、魔からの精神攻撃には何度も泣かされた。

でも両親や友達、それに留香くんが待っていると思うと辛くても耐えたのだ。

それに辛いことばかりでもなかった。
気の許せる仲間が出来て、異世界ならではの景色食べ物・・・楽しい思い出もたくさんできた。
仲間は私より年上だったので、時に諭されたり物の考え方などいろいろなことも教えてくれた。
家族以外に、いやもしかしたら家族以上に、あんなにも気が許せる仲間ができたのは
生まれて初めてで、多分生まれて最後だと思う。

そしてそんな掛け替えのない仲間とも惜しみながら別れて
懐かしの日本へと帰還したのだ。


「いつもとなにか違う」

「そうかな?」

久しぶりの元の世界はとても空気が濁っていて、少し息がしづらい。
朝起きて懐かしいリビングに降りると両親と兄はしきりに私がいつもと違うと言う。
たしかにあちらの世界に10年もいたが、外見の年齢は魔法で戻してもらっていた。
なのになんで?と私は首を傾げながら朝食をもぐもぐと食べる。

「髪型じゃない?今日の樹里まるでお姉さんみたいね」

「いや、髪の毛はいつもと同じだろ~」

うだうだといいながら朝食は終わり、それぞれ会社や学校へ向かう。
言葉には出さなかったが、家族にあえてやっと召喚からの肩の荷がおりた気がした。

あの世界では8割がた肩を張って生きていた
だってこんな平凡な私が国の『英雄』なのだから、国だって見栄えよくしようと
マナーに言葉遣いそれに外見もどこに行くにもかなり厳しくチェックされていた。
おしゃれは楽しいけれど、近くに行くだけであんなにもごてごてされ、
道行く人に話しかけられ囲まれるのも、私としては勘弁して欲しいという感じだった。
ちなみに2割は1割が自室で1割が仲間と野営している時である。


朝の薄ぼんやりした天気に雀が鳴いている音が聞こえる。
久しぶりに来た軽い衣服、制服に口笛を口ずさみながら歩く。
学校への道のりは曖昧だがちゃんと記憶している
懐かしい気持ちが溢れ出して、ようやく平穏が帰ってきたのだと実感した。

この世界は空気は汚いが、とても平和で命の危機や崇高な使命もない。
あの世界はあの世界でとても良いところではあったけれど
やはり生まれ故郷となにも束縛のない身分は人一倍私に開放感を与えてくれた。

学校へ付き、薄ぼんやりと覚えているクラスメイトに挨拶して不思議がられつつ
友達にはテイションが上がるのを抑えつつ挨拶をした。
彼女たちはいつもどおり、多分いつもどおり私を迎えてくれて席が分からない
私に 冗談でしょ、と笑いつつ教えてくれた。



10年ぶりに留香くんに会った。
学校の廊下でばったりと。

多分会ったら泣いてしまうと思っていた。
彼が恋しくて恋しくて一時期はそれを心の支えにしていた部分もあったからだ。
だから中々学校のクラスにも会えにいけなかった(勿論どのクラスかも忘れてたのもあるけれど)

でも今私はとっても不思議な感覚でいる。
前みたいに溢れ出す恥ずかしいような熱いような嬉しい気持ちになれないのだ。
いや、好きだよ?懐かしい気持ちや会えて嬉しい感じもある。
けど、心からこの人を守って、慈しもうとか抱きしめたい!とか思わない。
まるでぬるい水の中に洋服のまま浸かっているみたいだ。

それがとっても不思議でなんだか、うーん、、
あっちの世界で素敵な場所があるととても盛り上げられた場所がだたの沼地でがっかりしたくらい
テイションが上がらない。
え、ええ~私どうしたの??久しぶりだから緊張してるのか!?もっと気合いれろ!!
前まではあんなにも会えるだけで嬉しくて楽しくてほっぺも熱くなってたのに!!

「お、おはよ~留香くん」

微妙な表情を下手な笑顔で(あんなに作り笑顔が得意になったのに)対応すると
不機嫌そうに留香くんは私を無視し、近くにいた美人の女の子の手を引っ張りドカドカと大股で歩いて行った。

一瞬の間、私の下手くそな笑顔が綺麗な作り笑顔に変化した。

う、うわああああああああああああああああああな、なな、ないわ~!!!!!
今のなんなの!?仮にも久しぶりに会った幼馴染・・・いや、あっちは違うのか!
いや、それにしても幼馴染にする態度じゃないよね!!?

「ふ、ふぅ~落ち着いて、落ち着こう、私」

私はぶつぶつ呟きしたあと、深呼吸した。
空気をいっぱい吸い込むとあまりの空気の汚さに、むせる。

「げほ、ごほ!う、うう~」

そして噎せたせいか、それとも違う原因かはわからないけれど
大粒の涙が一つ床を濡らした。

「わ、私の恋心、消えちゃった…」

ようやく異世界に行く前と後で決定的に違うことに気づいた。
10年の年月で自分の恋心が過去形になってしまっているということに。
多分続きます。ちなみに主人公はめちゃめちゃ精神的にも肉体的にも強くなってしまってます。

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