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54 玉座の間

 エイミーの隠形魔法の力によって無事王城内へと侵入を果たした俺達は、探知魔法で得た情報を頼りに勇者たちの元へと向かう。


「……本当に凄い魔法だなこれ。警戒バリバリなのに、誰一人こっちに気付かないぞ」


 道中、警備の騎士達と何度もすれ違ったが、こちらに気付くことは一度も無かった。


「ふふん、でしょう? このレベルでこの魔法を使いこなせるのなんて、魔王国にもほとんど居ないんだから」


 ふむ、実に便利な魔法だ。魔力の制御に慣れたら、教えて貰えるよう頼んでみるか。


「……そろそろ目的地よ。3人ともこの先の玉座の間にいるわ」

 

 俺達が辿り着いた先には、派手派手しい装飾で飾られた、だだっ広い空間が存在した。

 入り口から奥へと向かって赤い絨毯が敷かれており、その先には玉座がある。

 

 そしてそこには、俺と変わらない年齢に見える若い青年らしき人物が座っていた。

 色白い肌に薄い金髪で、その顔立ちは女性とも男性ともつかないモノだ。

 ただ服装から男性じゃないかと、当たりを付けたに過ぎない。

 そのすぐ隣には、深い蒼髪をなびかせた儚い印象を持つ少女が寄り添う。


 そんな2人から、僅かずつ離れた位置に日本人らしき黒髪の男女が立っている。

 どうやら彼らは何かを話して合っている様子だ。


「あれが帝国の勇者よ、コウヤ。一体何を話しているのかしら……。とりあえず近づいてみましょうか」


 エイミーの先導の元、部屋の両端に林立する柱の影に身を隠しつつ、彼らとの距離を詰めていく。

 勿論、護衛の兵は幾人もいたが、彼らはエイミーの隠形魔法の効果によって、俺達の存在に気付くことはない。


「やれやれ、話が分からない方ですね。邪教に洗脳された民衆を救う為にも、この国は一度徹底的に掃除した方がいいんですよ」


「いいえ! 仮に一度は邪教に身をやつしたと言えども、彼らもまた私達勇者が守るべきか弱き人々よ! そんな彼らを見捨てるなんて私には出来ないわ!」


 会話が聞こえる距離まで近づくと、何やら剣呑な雰囲気である事が分かった。

 金髪の青年と、黒髪の少女が激しい言い合いを繰り広げている。

 その様子を、蒼髪の少女が心配そうに見ている。

 対して、黒髪の眼鏡をかけた青年は、どうやら傍観に徹しているようだ。


「じゃあ、具体的にどうするんです? 邪教徒と、か弱い民衆の区別が、あなたにはつくんですか?」


「っ! この子の力を使えば、邪教徒かどうかなんてすぐに分かるわ!」


 黒髪の少女が、その手に持った大剣を愛おしそうに撫でながら、そう叫ぶ。


「……そうやって、一人一人をあなたが判別するんですか? それに一体どれだけ時間が掛かるとお思いですか?」


 その後も、2人の言い合いは続く。

 それをずっと聞いているうちに何となくだが、大体の話が俺にも読めてきた。


 どうやら、金髪の青年――勇者ナギサは、神聖教国ステラシオン全土の一斉侵略を主張しているらしい。

 王都から北一帯を既に占領した今、残った土地の貴族達が反抗の準備を整える前に、さっさと潰すべきだと言っているようだ。

 そして、その過程で生じる民衆への被害には目を瞑れと言っている。

 ……戦略的な面で見れば、その主張はまあ間違いではないのかもしれない。


 対する黒髪の少女――勇者ツバキは、占領した地域の安定を最優先すべきだと主張している。

 占領地域の拡大よりも先に、既に占領した地域の邪教徒――女神ステラシオンを奉じている人間の事らしい――の洗脳から、民衆を救うのがまず先だと彼女は言いたいらしい。

 そして、彼女が持つギフト――恐らく彼女の手にある大剣のことだろう――には、それを可能とする能力があるようだ。

 ……まあ、人道的な面から考えれば、その主張もある意味正しいのかもしれない。


 そんな彼らの意見のぶつかり合いを、蒼髪の少女――皇女リーゼが仲裁しているといった具合だ。

 眼鏡の青年――勇者サトルは、それらに対し、ほとんど口を挟んではいない。


 俺は普段の自分の事を棚に上げ「極端な奴らだなぁ」と思いつつも彼らの会話を見守っていたのだが、エイミーから待ったの声がかかる。


「ゴメン、コウヤ。そろそろ魔力が限界だわ。一旦、引きましょう」


 どうやら隠形魔法の限界時間が近いらしい。

 仕方なく玉座の間から一度出て、近くの身を隠せそうな部屋へと逃げ込む。


「悪いわね、コウヤ。何度も魔力を分けてもらっちゃって……。ていうか、ホントに凄い魔力量よねぇ……」


 俺から魔力を吸い取りながら、エイミーがそんな事を言う。


「ああ。実は、お前に吸い取られた魔力、既にほとんど回復しているんだ……」


 女神様から分捕った〈魔力超回復〉というギフトの効果で、多少魔力を使った所で俺の魔力はすぐに全快してしまう。

 

「……なんていうか、もう滅茶苦茶ね、あなた」


 呆れた表情でエイミーがそう呟くのに、俺はただ黙って苦笑を返すしかなかった。


「ごほんっ。それよりも、だ。あの会話の中で何か有用な情報はあったか?」


 正直、あまり大した情報は無かった気がする。

 精々勇者ツバキの持つ能力くらいか?


「……勇者たちが一枚岩じゃ無いのが分かっただけでも、収穫と言えば収穫だけど、それだけじゃちょっと物足りないわね」


 ワザワザこんな場所までやって来たのだ。

 もうちょい何か、大きな成果が欲しい所だ。

 だがあの様子では、これ以上大した話は聞けそうもない。


「良し。埒が明かないし、奴らと俺が直接話してくるわ。エイミーはここで隠れててくれ。後で拾いに来るから」


「ちょ、ちょっと待って、コウヤ。流石に一人じゃ危ないわよ?」


 あの部屋だけでも勇者3人に加え、護衛の騎士が少なくとも20人は居た。

 単純な数だけで考えれば、無謀にも見えるだろう。


「まあ、大丈夫だって。保険もいくつかあるし、俺一人ならどうとでもなるさ」


「保険って何よ?」


 尚も心配そうに、エイミーがこちらを見つめるので、仕方なくその内容を軽く教えてやる事にした。


「……あなたねぇ。一体どれだけ女神様から能力を貰ったのよ……。でも確かにそれなら大丈夫そうね」


 どうやら納得してくれたようだ。


「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」


 そして俺はエイミーの隠形魔法が切れる前にと、急いで玉座の間へと向かったのだった。


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