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35 VSシャドウウルフ

 飛行の魔法を使い最前線へと降り立った俺は現在、魔物の群れの主たるシャドウウルフと対峙していた。


「キ、キミ! さっきのは一体なんだ! それにどうやってここまで……」


 そう取り乱しながら言うのは、ルークランク冒険者チーム"黎明の剣"のリーダーのアレクという男だ。

 確か討伐隊のリーダーを務めていたはずだ。


「今はそんなことどうでもいいだろ? 俺があのデカブツの相手をするから、あんたらは他の雑魚どもを頼む」


「な、なにを……」


 アレクはまだ何かを言い募ろうとしていたが、俺はそれを聞き流し、シャドウウルフへと向かう。


「さあ始めようか、シャドウウルフ!」


「グルゥゥゥ!!」


 先程の俺の一撃に警戒感を抱いたのか、じりじりと後退しながら雄叫びを上げる。

 すると、奴の影から魔物が次々と生まれてきた。

 動物型の魔物ばかりだが、その種類は狼型に限らず多種多彩だ。


「こいつらの相手は任せたぞ!」


 俺はアレクたちへとそう言い捨てると、すぐさま右手を頭上に掲げる。


「南宮流古武術、一の型! 太陽剣(ガラティーン)


 何が古武術なのだろうか、型なのだろうか、俺には全く理解不能な技だが、戦闘において有用なのは間違いない。

 ここは恥を忍んで使わせて貰うことにする。


 輝く魔力の収束と共に、俺の右手の中に太陽の如く光輝くの剣が生み出された。

 流石に慣れ親しんだ技だけあって、魔力制御の方も今の所は上手くいっているらしく、剣の形状は安定を保っている。


 その剣に秘められた膨大な魔力に気付いたのか、シャドウウルフが警戒も露わに影から触手攻撃を飛ばしてくる。


「はっ!」


 だが光の剣の一振りで、触手は跡形も無く消滅した。


「おお、凄い!」


 後ろの方から、何やら歓声が上がっている。


「それがお前の限界か? なら早いが止めといくぞ!」


 小手調べは、最初の一撃で済んでいる。

 その感触から本気を出せば倒せない相手ではないと、俺は既に悟っている。


 そもそも南宮流古武術に切った張ったの立ち回りは、あまり重要視されていない。

 その本質は、連撃必殺!


「いくぞ! 南宮流奥義!」


 そう叫んだ俺は、シャドウウルフに対し一直線に距離を詰める。


「やぁぁ!」


 シャドウウルフの腹部へと潜り込んだ俺は、上下の2段斬りを連続で浴びせる。


「ガゥゥゥ!!」


 怯んだ隙を尽き、連撃の勢いそのままに全力で斬り上げる。

 その衝撃でシャドウウルフの巨体が跳ね上がり、宙へと浮かび上がる。


「今だ!」


 シャドウウルフの周囲に3本の槍を魔力で生み出し、それらがシャドウウルフの巨体を宙に縫いとめるように次々と刺さっていく。


 シャドウウルフの拘束を確認した俺は、バックステップで大きく距離を取ってから浮遊の魔法を発動し宙に浮かび上がる。

 拘束から脱しようともがくシャドウウルフを尻目に、俺は右手に持っていた太陽剣(ガラティーン)の形状を大槍へと変化させる。


「これで止めだ! 戦乙女の重撃ヴァルキュリア・ストライク!」


 ああ。なんて恥ずかしい技の名前だ!

 しかもなんだよ戦乙女って! 俺は男だぞ!

 そもそも「南宮流古武術は千年以上の伝統がある武術だ」とかあのくそ爺は言っていた癖に、なんで技名が英語混じりなんだよ!


 などというツッコミは、もはや5年以上も前に通り過ぎていた俺は、感情の籠らぬ声で無表情でそう叫びつつも、大槍をシャドウウルフへと向かって投げ放つ。


 拘束から逃れようと足掻いていたシャドウウルフを、大槍が打ち貫く。

 それと同時に、シャドウウルフを宙に縫いとめていた3本の槍も消えて、その巨体が地面へと落下していく。

 ドオォォンと、地面を震わす大きな衝撃が走ると共に、シャドウウルフの肉体が薄い光を纏いながらゆっくりと空気に溶けていく。

 後には、ドロップアイテムらしき黒い牙と毛皮と、それから大量の硬貨類が残された。

 

 シャドウウルフが倒されたことで、奴が生み出した魔物たちも同時に消滅したらしく、周囲の魔物の数が一気に減少した。


「おお……。やったのか……?」


 そんな呟きが後方の冒険者達から聞こえてくる。


「キミは一体何者なんだ……?」


 そんな中、近くにいたアレクが動揺を隠せない声で、俺へとそう声を掛けてくる。

 正直に答えたら面倒なことになりそうだ。

 それを避ける為に、マスクにサングラスなんて格好をワザワザしている訳だしな。


「ワタシは通りすがりの旅の者だ。ではなっ!」


 必死で声色を変えてそれだけ答えると、すぐさま飛行の魔法を発動し、その場から飛び去る。


「ま、待ってくれ!」


 何やらアレクの追い縋るような声が耳に届くが、それを無視して俺は街の方へと戻ることにする。

 途中で防衛線で戦う冒険者達を見つけたが、そちらも魔物の姿がほとんど消えており、どうやら危機は脱したようだった。


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