表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/92

31 調査

 電気が導入されたことで夜の自由時間が増えた俺は、これまで気になっていたある事柄についてをインターネットで調査を始めた。


 それはネット通販サイト"Mitsurin"におけるミスリル会員についてだ。

 ミスリル会員専用サービスである"即時配達"。このサービスは異世界だからという理由を差し引いても、どう考えても変な現象だ。

 時間的に余裕が無かったこともあり、これまで敢えて深く考えない様にしていたが、こうしていざ若干のゆとりが出来ると気になってしまう。


「なにか、触れてはいけないものに触れようとしている気もするが……」


 スマホを取り出すと、若干緊張した手つきで検索サイトを開き、『Mitsurin』『ミスリル会員』とワードを入力する。

 だが、Mitsurin内で販売している『ミスリル』のワードを含んだ商品が引っ掛かって来るばかりで、ロクな情報はない。

 検索ワードを弄りつつ何度も検索を試すが、結果は変わらない。

 これは明らかに変だ。


 一旦、ミスリル会員については脇に置いておき、同じく怪しい貴金属買取専門サイト"ミスリルプラザ"について調べることにする。

 あのサイトも突然、謎の買取箱を送ってきたりなど、どう考えても変だった。

 俺は検索サイトに『ミスリルプラザ』と入力し、検索を行う。

 検索結果の一番上には、そのままミスリルプラザのTOPページが出て来た。

 だが、それ以外は『ミスリル』もしくは『プラザ』のワードで引っ掛かったサイトが出てくるだけで、ミスリルプラザについての情報や評判などが書かれたサイトは一切見当たらなかった。


 これは検索結果が歪められているのか? いやどちらかというと、Mitsurinのミスリル会員や、ミスリルプラザといったサイトが実際はインターネット上に存在していないとでも言うような……。

 念のためPCからもインターネットに接続して試てみたが、やはり結果は変わらない。


 思えば女神様から貰った〈電脳網(インターネット)接続〉なんていう、如何にも怪しげな能力でネット接続をしているのだ。

 そこにどんな仕掛けが隠れているのか、分かりはしない。

 だが現状では、この力を使う以外にインターネットに接続する術などなく、検証のしようがない。


 妙案が思い浮かばなかった俺は、良く覗いていた巨大匿名掲示板サイトを開く。

 そして、そこの住人たちにモノは試しと尋ねてみることにした。


 ◆


【Mitsurin】世界最大通販125【ミツリン】


 623 : 買い物する名無し

 >>613

 俺は送料タダで千円以下の買い物できたぜ

 セガワで送られてくるわ

 

 624 : 買い物する名無し

 プラチナ会員じゃなくて?


 625 : 買い物する名無し

 なくてもだよ

 まあ、本ばっかだけどなww


 626 : 買い物する名無し

 普通に無料の奴じゃねぇか……


 627 : 自分

 流れをぶった切ってすまない。

 Mitsurinにミスリル会員ってある?


 628 : 買い物する名無し

 ミスリル? プラチナじゃなくて?


 629 : 自分

 >>628

 そうです。


 630 : 買い物する名無し

 プラチナの上はミスリルってか? 

 ラノベの読みすぎじゃねぇ?


 631 : 自分

 ネタのようだけど、ガチなんです。


 〈画像添付〉


 632 : 買い物する名無し

 >>631

 プラチナのとこをミスリルに変えただけじゃねぇか!

 いくら何でも雑すぎじゃね?


 633 : 買い物する名無し

 プラチナ会員は地方だとメリット薄いよなー

 配達日時指定できるくらい?


 634 : 買い物する名無し

 地方だがプラチナだと着日指定あるから

 結構重宝してるよ


 ◆


 閲覧用の専用ブラウザを使っているので、"自分"と名前欄に表示された書き込みが俺が書き込んだものだ。

 見ての通り、あっさりとスルーされてしまっている。

 流れが速いスレッドに書き込んだのが間違いだったか?


 ただ、この書き込みから推測できるのは、やはり"Mitsurin"にミスリル会員などというモノは一般には存在しないという事だ。

 それが分かっただけでも収穫だろう。


 加えて、新たに着目すべき点も見つかった。

 それは配送業者だ。


 Mitsurinそのものはただの通販サイトであり、配送業者は別に存在するはずだ。

 異世界に荷物を送っているなんて、どう考えても普通の業者ではない。


 そこに謎を解き明かす手掛かりはないか、俺は最新の注文履歴が記されたページを開く。

 そのページにはこう書かれていた。


 『配送業者:シロイヌナハト』


 初めて聞く名の運送会社だ。

 某有名運送会社のパチモノのような名前にも見えるのは多分気のせいだろう。

 念のため、表示間違いがないか他の注文履歴もチェックしていくが、どれも配送業者は同じだ。


 この配送業者が怪しいことを確信した俺は、『シロイヌナハト』というワードを、ネットで検索する。

 その結果は、なかば予想通り何も引っ掛かっては来なかった。そんな配送業者は存在しないとでも言うように……。


 ここまであからさまだと、そろそろ俺も現実を認めざるを得ない。


 明らかにこの謎の配送業者『シロイヌナハト』が、俺の祖父、南宮白夜と関わりがあることを。


 そもそも即時配達なんて現象。明らかに魔法が関わっているのは、疑い様もない事実。

 そして、あちらの世界で魔法を扱えたのは、知る限り俺以外ではあの爺しかいない。

 正直に言えば、俺は当初から爺の関連を心の内では分かっていたように思う。

 ただきっと、それを認めたくなくて、否定する答えが欲しかっただけなのだ。


 ただ疑問点もある。それは爺が既に亡くなっているという事実だ。

 遺体も確認したし、魔法でそれが本物だという事もじっくり確認した。

 当時の俺の探知魔法をごまかすなど、いくら規格外の爺でも出来るとは到底思えない。


 結局、それ以上のことは今回の調査では分からなかった。


 爺が絡んでいることが明確になった以上、本来ならネット通販の利用を辞めるべきなのだろう。

 だが既にアレは、俺の異世界生活における必需品となっている。

 いやハッキリ言って依存しきっていると言っても過言ではない。

 これまでも問題は無かった以上、より明確な問題が起きるまで、俺はきっと辞めることが出来ないだろう。

 まったく、ホントに情けない話だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ