19 一蹴
デポトワール商会に襲撃を掛けた俺は、そこの用心棒である魔導師ソンブルと対峙していた。
「ソンブル先生、やっちまってくだせぇ!」
援軍が来たことで、俺にいいようにやられていたこともすっかり忘れたのか、男たちがそう叫ぶ。
まったく、鳥頭は嫌いだぜ。
「面倒ではありますが、私も雇われの身。……給金分の仕事は果たさせて貰いましょうかね」
ソンブルが気だるげな表情を浮かべつつ、杖を構える。
ビショップランクと言ったか? それに果たしてどういう意味があるのかは知らないが、その実力見せて貰おうか。
「風刃」
ソンブルの杖の先から、緑色に染まった魔力の刃がこちらへと飛んでくる。
「この世界にもやっぱりあるんだな……」
俺は目前に迫った風の刃を左手で払う。
「なっ、何をしたっ!」
気だるげだった表情が一転、驚愕の色に染まる。
「さあな」
「くそっ、これならどうだ!」
そう言ってソンブルが杖を高く掲げる。
その様は見るからに隙だらけで、やろうと思えばいつでもぶん殴れたのだが、この世界の魔法を見る折角の機会なので、あえて好きにやらせることにする。
暫く待った後、ようやく魔法構築が完了したのか、ソンブルの杖の先から火炎の渦が迸る。
「受けよ我が最強の魔法、火炎奔流!」
「こんなものか……」
俺が左手を翳すとまるでそこに巨大な壁でも存在するかのように、炎が堰き止められていく。
「ば、馬鹿な……」
自身の最強の魔法をあっさりと防がれたせいか、ソンブルの表情が絶望の色へと変化する。
「……さて、そろそろ俺のターンだな」
俺はそう口にすると同時に、地面を蹴って駆け出す。
「消え――」
何か言葉をソンブルが口にしようとしていたようだが、気にせず俺は奴を蹴り飛ばす。
「ぐへぇっ!!」
そんな呻き声と共に、ソンブルの身体が大きく吹き飛ぶ。
建物の壁をいくつもぶち抜いた後、グテンと力なく崩れ落ちる。
「そんな、まさかソンブル先生が……」
デポトワール商会の連中は、皆一様に口を半開きにして呆然としている。
「次はお前らの番だな……」
俺の宣言に奴らの表情は恐怖に染まった。
その後、俺はその場にいたデポトワール商会の連中全員に、時間をかけて恐怖をたっぷり刻み込んでやった。
「はぁ。頼むから、もう俺をイラつかせるような真似は慎んでくれよ」
別にこんな荒事、俺は望んじゃいないのだ。
ただ平穏な異世界ライフを送りたい、そう願っているだけなのだが……。
まあどの世界にもムカつく奴らはいるだろうから、仕方ないんだろうな。
そんな事を考えながら、俺は孤児院へと帰って行った。
後には、瓦礫の山とボロボロになった男たちが残されていた。