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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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八十三話 実践

 精霊術師の訓練をして、夕食をたっぷりと取る。サラ達も精霊達との食事に慣れて来たのか笑顔でご飯を食べながら、フクちゃんやウリに食事を分けたりしている。

 その微笑ましい光景に思わず笑顔になるが、冷静に考えると俺以外の人間は精霊達の姿が見えていないから、結構とんでもない光景なんだろうな。料理が勝手に浮き上がりパクパクと食べられている光景……精霊が食べていると分かってはいても、サラ達は順応が早すぎるんじゃなかろうか?

 夕食が終わり、食後の休憩を取った後、日が落ちたのでいよいよ初の実戦に向かう………………はずだったんだけど。



「いぃやぁぁぁぁぁぁ! ぜったいにいくぅぅぅぅぅぅぅ!」

 キッカが驚くほどギャン泣きした。俺としては流石に戦わないのにゾンビやスケルトンを見せるのはどうかと思い、お留守番を提案してサラとマルコも賛成したんだが、キッカは嫌だったようだ。

 確かにこんな所で一人でお留守番も怖いだろう。守ってくれる精霊が(ディーネ)居るから大丈夫だよっと説得してみたが通じない。

 ベル、レイン、トゥル、タマモ、フクちゃん、ウリもどうしたら良いのか分からず、周囲を飛び回って混乱している。子供の泣き声ってどうしたら良いのか分からなくなる。

 ちなみにシルフィとディーネ、ドリーは苦笑いしながら遠目で見ている。ノモスは泣きだした瞬間に姿が見えなくなった。

 サラとマルコも説得をこころみるも、ますます大きくなる泣き声にかき消され説得を失敗する。でも、これ程大きな声が出せた事にちょっと安心した。大人しい子だから体が弱い可能性も考えていたけど、地力はありそうだ。

「分かった。キッカが約束を守れるのなら連れて行くよ」

 このままだと延々泣き続けそうだ。喉とか張り裂けたらどうしようって心配になるぐらい泣いている。俺の声が届いたのか、次第に泣き声が小さくなり、真っ赤に充血した目でこちらを見た。そんな目で見られると心が痛みます。

「………………やくそく?」

「そう。約束。サラとマルコは、今からゾンビとスケルトンと戦う。流石に何時もみたいに後ろにキッカを連れている事は出来ないのは分かるね?」

 俺の言葉にキッカは少し考えた後、グスグスと鼻を鳴らしながらうなずいた。ふいー、一歩間違えるとキッカが再びギャン泣きする事になる。緊張するぜ。

「何かあった時にサラとマルコが自由に動けないのは危険だ。だから外にいる間はサラとマルコと離れて、俺と一緒に居ないといけない。我慢できる?」

 自分で言っていてへこむが、現状ではキッカは俺に慣れてないし辛いだろう。緊張して答えを待つ。じゃあお留守番してるって言われたら、俺の心が張り裂けるかもしれん。そこまで嫌がられたら流石に泣いてもいいよね?

「………………………………がまんできる」

 長い沈黙のあとキッカは我慢できるとポツリと言った。お留守番よりは俺と居る事を選んだか……沈黙が長かったのが気になるが、大丈夫。俺の心は張り裂けていない。

 出発前にかなり疲れたけど気を取り直して頑張ろう。外に出ると大きな月と満点の星空が出迎えてくれる。他に明かりがまったく無いから凄い星空だ。

 サラ達もボーっと空を見上げている。しばらく星空を堪能たんのうした後、サラ達をうながして外に向かう。

 テクテクと暗い道を歩く。光球を浮かべても良かったんだが、夜目は役に立つから獲得の為にこのままで行こう。今日は月が明るいから何とかなるだろう。

 ディーネも契約したんだからと一緒に付いて来ている。ドンドン人数が増えているな。ドリーやノモスも契約したらついて来るのか? 間違いなくかなりの過剰戦力だよな。大精霊には必要な時に来て貰うのが良いかもしれない。今度話し合う事にしよう。

「裕太、この先にいるわ。ゾンビが五ね」

 ようやくか。泉の家の近くはかなり巣を潰したから、だいぶ数が少なくなってるな。次からはシルフィにアンデッドが多い所に連れて行ってもらうか。

「サラ、マルコ、このまま進むとゾンビが五体いる。落ち着いて教えた通りに頭を潰すようにね。キッカはこっちに来て」

 おずおずと近づいて来たキッカに手を差し出すと、怖かったのか素直に手を握ってくれた。

「お師匠様。倒す順番はどうすれば良いですか?」

 サラが質問してくる。若干じゃっかん声が震えているが、頭は冷静みたいだな。

「そうだね。狙う相手が被らないように、一番左を狙うとか宣言して攻撃した方が良いね。ゾンビは動きが遅いから十分に余裕がある。落ち着いて練習通りにね」

「はい。分かりました」

「おれもやる! サラ姉ちゃん。おれは右からこうげきするね」

「じゃあ、私は左側から攻撃するわね。でも攻撃する前には一応、どのゾンビに攻撃するか宣言しましょう。最初は同時に攻撃ね」

「わかった。じゃあ行こう」

 サラとマルコは早々に覚悟を決めたのか、テキパキと作戦を決めて慎重にゾンビに近づいて行く。厳しい環境で暮らしていたからなのか、度胸と行動力がハンパない。

 俺だったら数分は気合を入れるのに時間が掛かると思う。いや、俺が子供の頃ならキッカと同じくギャン泣きしているな。

 どうなるか見守っていると、キッカが俺の手を強く握った。不安なんだろう。ケモミミもへにゃってしていて、ちょっと不謹慎ふきんしんだが可愛い。

「キッカ、大丈夫だよ。サラとマルコが魔法を使う所を見ていただろ。二人なら楽勝だから心配しなくて良い」

「……うん」

 おっ。始まった。最初はタイミングを合わせてサラとマルコが同時に攻撃して、左端と右端のゾンビを一撃で仕留めた。

 攻撃に気がついて向かってくるゾンビに対しても落ち着いて、声を出しながらターゲットを明確にして攻撃する。フクちゃんとウリに分かりやすいように、ちゃんと相手を指差して一体ずつ確実に仕留めて行った。

 完璧だな。飲み込みが良すぎるぐらいだ。この方法なら誤爆は起こらないだろう。今後は声と仕草しぐさを小さくする練習もさせよう。今のままだと知能が高い魔物相手にはかわされそうだからな。

「師匠、魔石を取りたい」

 マルコが魔石の回収を訴えて来た。……俺としては拒否したい気もするんだけど、そう言う訳にもいかないよな。

「分かった。怪我しないように注意して扱うんだよ」

 マルコにナイフを渡すと、躊躇ためらいもせずゾンビに近づき心臓部分にナイフを突き立て魔石を回収する。精神構造が日本人と違うのかあっさりとナイフを突き立てたな。かるくビビる。

 その後も順調にゾンビ、スケルトンを討伐するサラとマルコ。途中からスケルトンの魔石を壊すのが勿体もったいないと言い出して、魔石以外を破壊するようになった。順応力があり過ぎだよね。

 ちなみにサラ達が回収した魔石は俺に預けられた。授業料と食費だそうだ。義理堅いな。サラ達が回収した魔石は、換金して独り立ちする時が来たら渡してやろう。

「沢山戦ったし、今日はそろそろお終いにしようか。二人とも初戦闘はどうだった?」

「緊張しましたが、フクちゃんが凄いので問題ありませんでした」

「うん。ウリがしっかり倒してくれたからこわくなかった。ゾンビとスケルトンなら大丈夫だ。でもゾンビは臭いからつらい」

 マルコは狼の獣人だったな。鼻の性能も人間よりも高いのかもな。臭いを思い出したのか嫌そうに顔をしかめている。

においはフクちゃんに風を起こして貰えば防げたと思うぞ。攻撃だけじゃなく、よく考えて他の事も色々試すといい。じゃあ戻るぞ」

 シルフィに頼んで一気に拠点に戻り、軽く反省会をして就寝しゅうしんする。サラとマルコは、しっかりと強くなれる事が理解出来たのか気合十分のようだ。そんなに興奮してたら眠れないよ?

 次に迷宮都市に行く頃には、サラとマルコは結構なレベルになってるかもな。あとマルコが戻って来たら直ぐにキッカは離れてしまった。少し寂しい。

 ディーネとの契約のお祝いとして、大精霊達にエールの樽を差し入れして眠りについた。ワインもくれと強請ねだられたが、明日のドリーとの契約が終わったら、まとめて三樽渡すからと勘弁してもらった。

 流石に二日で六樽も飲まれたら敵わない。あとノモス。小声だけど聞こえてるからね。大精霊と契約したら酒が出て来るのかってつぶやかないで。なんか物騒な事を考えてない? ちょっと怖いからさっさと寝てしまおう。 


 ***


「では裕太さん。お願いしますね」

「分かった。土を入れるだけで良いんだよね?」

 頷いたので、ドリーと契約する為に北のブロックに土を入れる。魔法の鞄から直接土を流し込むので、意外と簡単だ。

 流し込んだ土はトゥルとウリが手伝ってくれて綺麗にならしてくれる。トゥルがウリを優しく指導している光景が微笑ましい。お兄ちゃん気分なのかもしれないな。

 ただトゥル……ウリをモフる回数がかなり多いのが俺は気になるよ。ウリもトゥルにモフられて、プヒッっと楽しそうに鳴いているから良いんだけど、重度のモフラーになると、ちょっと精神的にヤバめな性格になる人もいるからな。

 世界一のモフリストになるとか、モフりの為ならどんな困難も乗り越えるとか、そんな子にはなって欲しくない。そんな事になったら責任を感じてしまう。密かにトゥルの将来を心配しながら土を入れ終わる。

「ドリー。こんな感じで良い?」

 俺が聞くと、ドリーは入れた土を確認している。

「少し水が欲しいですね。お願い出来ますか?」

「分かった。レイン。水をいてくれるか?」

 ベルを乗せて飛び回っていたレインに声を掛けると、目の前に飛んで来て「キュキュー」っと鳴いた。俺の予想では任せてって言ってるな。

「じゃあ、よろ「裕太ちゃん。ちょっと待って。お姉ちゃんの事を忘れるでしょ。お姉ちゃんも裕太ちゃんと契約した水の精霊なのよ?」し」

 ディーネが猜疑心さいぎしんいっぱいの表情で俺を見て来る。

「………………忘れてはいないけど、レインでも十分だから、わざわざ水の大精霊のディーネに頼まなくてもって思ったんだよ」

「ほんとー?」

 疑いの眼差しが止まらない。軽く頬っぺたもふくらんでるし、どうやらご機嫌を損ねたようだ。

「本当だよ。ディーネなら簡単に水撒きが終わるのは分かっているんだけど、どうせならレインに頑張って貰った方が成長のかてになるだろ。シルフィが力を使う機会が増えるほど成長しやすいって言ってたし」

 チロッとシルフィをみる。

「ええ、確かに言ったわね」

 シルフィも肯定してくれた。

「うーん。そう言う事ならしょうがないのかしら? 確かに浮遊精霊や下級精霊なら、成長にプラスになるわね。分かったわ裕太ちゃん。いざという時にはお姉ちゃんが助けてあげるから、しっかり頼ってね」

「あ、ああ。頼りにしてるね」

 どうやら機嫌が直ったようだ。改めてレインにお願いして水を撒いてもらう。これで契約準備完了だな。
読んでくださってありがとうございます。
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