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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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八話 穴掘り

「うぅ。体が痛い。岩の上で寝ると寝覚めが悪いな。寝床を何とかしないと体を壊しそうだ」

 昨晩はシルフィの案内で二時間程ゾンビとスケルトンを討伐した。拠点に戻って来て疲れてそのまま爆睡しちゃったんだな。二レベル上昇したが、魔力のランクは上がらなかった。

 せめて幼女精霊と契約出来るぐらいには早めに上げたい。シルフィもゴーストやレイスを避けての討伐は効率が悪いって言ってたし頑張ろう。

「でもその前に水と食料が必要だな」

 光球を浮かべ部屋を明るくする。目が覚めたばかりの回らない頭で考える。必要な物が多過ぎてどう行動したら良いのか困る。少し整理してみるか。

 第一目標 水と食料の入手。特に水分が残り少なくアルコール生活まで秒読み段階だ。

 第二目標 魔力Dまでのレベルアップ。幼女精霊と契約しないとゴーストやレイスが出たら詰みかねない。

 第三目標 寝床の改善。起きたら体が痛すぎます。

 第四目標 食器・料理道具の作成。枝でご飯を食べるととても虚しい。

 早急に対処したいのはこんな所だな。第一目標は直ぐに行動しないと危険だ。第二目標は昼間でも魔物がいたら積極的に討伐しよう。

 第三目標は……植物が無いのが辛い。今のところ寝室に眠れるぐらいの穴を掘って、砂浜の砂を敷き詰めるぐらいしか解決方法を思いつかないな。岩より砂の方がマシだよね。服が砂まみれになるけど。

 第四目標は美味しくご飯を食べる為にも大事な事なんだけど、命の危機と比べると優先順位を下げるしかない。余裕が出来たら合間に作成しよう。

 こんな所か。第三目標は砂のベッドなら直ぐに出来そうだから、あとで海岸に行って砂を大量に確保しておこう。

 後は口の中が気持ち悪い。歯磨きがしたいがブラシも無いし、口をゆすぐ水すらない。紅茶で口をゆすぐか? もったいない上に気持ちが悪い。

 ……そうだ! 口の中に洗浄の魔法を掛けてみよう。……上手くいきました。便利過ぎるな洗浄の魔法。お口スッキリでとても爽やかだ。

 体を解しながらキッチンに向かい、普通の食パンと紅茶で朝食を済ませる。残りの食パンはカルボナーラソースつきが一枚と普通のが二枚か。町に行った時に役に立つかもしれないから一枚は残しておきたいな。

 侘しい朝食も終わったし、グズグズしている暇は無い。さっそく動くか。出入口の岩をどけてシルフィに声を掛ける。

「おはよう裕太」

 シルフィは朝でもクールビューティーだな。内面が子供っぽいとか、信じられない雰囲気だ。

「おはよー」

 幼女精霊は元気いっぱいだ。満面の笑みで幸せそうにはしゃいでいる。羨ましい若さだ。

「シルフィ、幼女精霊、おはよう」

「裕太。今日はどうするの?」

「うん。水と食料を集めたいんだけど、特に水が残り少なくて問題なんだ。水を手に入れるにはどうしたら良いと思う?」

 海水を蒸発させて真水を手に入れる事を考えた。でも蒸留道具が作れたとしても、水を沸かす燃料がキツイ。ある程度の流木をゲットしたが燃やしていたらすぐに無くなってしまう。どうにか大量に水を手に入れたい。 

「水ね。死の大地には水が湧いている場所は無いわ。地下水はあると思うけど、かなり深く掘らないと水は出ないと思うわよ。水の精霊たちもこの地を諦めたんだもの」

 あー、井戸を掘らないと駄目って事か。開拓ツールがあるから穴掘りは問題無いけど、何処を掘れば水が出るんだろう?

「穴を掘るのは問題無いけど、そこら辺に穴を掘れば水が出るのかな?」

「どうかしら? 水の精霊に聞きに行っても分からないだろうし、難しいわね」

「水の精霊に来て貰って調べる訳にはいかないの?」

「死の大地は水の精霊。土の精霊。森の精霊にとってはじわじわと力を奪われる不快な地なの。海までなら来てくれるでしょうけど。陸地に上がっての調査は嫌がるでしょうね」

 どんだけ酷い場所なんだよ。そんな場所でレベルが上がるまでは生活しないと駄目なのか。心が折れそうだ。

「うーん、じゃあ水がありそうな場所を探して、勘で掘るしか無いのか。シルフィ。ここが死の大地になる前にこの近くで水源が豊富だった場所を知ってる?」

 ダウジングはやり方が分からないし、まさしく勘任せ。

「そうね。この近くだと三時間程歩けば湿地帯だった所があるわ。でも水が出るかどうかは分からないわよ?」

 湿地帯。何もない場所を勘で掘るより、三時間離れた場所でも湿地帯で穴を掘る方が出る可能性は高そうだ。

「元湿地帯で穴を掘ってみるから、案内してくれる?」

「もう一度言うけど湿地帯だっただけで水が出るとは限らないわ。それでも良いの?」

「うん、他に指針がある訳でも無いし、出なかったら別の方法を考えるよ」

 取り合えず行動しないと。人間には生きているだけで水分が必要なんだ。いざとなったらこの星の裏側まででも掘り進んでやる。……この星ってそもそも丸いのだろうか?

「分かったわ。じゃあ出発しましょうか」

 拠点を出てシルフィの案内で元湿地帯に向かう。せっかく海に来たのに海水に入らずに離れるなんて、ちょっとショックだ。最初からよく考えて水の確保を第一に動くべきだったな。何の根拠も無く海に行けば大丈夫だと思ってたよ。

 暑さを堪えながらテクテクと歩いていると、突然幼女精霊が飛んで行ってしまった。よく分からないけどシルフィも気にしてないから大丈夫か。再びテクテクと歩き出すと直ぐに幼女精霊が戻って来た。

「ゆーた、みてー」

 幼女精霊が持って来たものは……エメラルドグリーンのマリモみたいな物だ。幼女精霊が手を離してもフヨフヨと浮かんでいる。なんだこれ?

「えーっと、これは何なの?」

「せいれー。かわいいのー」

 幼女精霊が物凄く自慢げだ。ふよふよと浮かぶマリモ……可愛いのか?

「裕太。この子は風の浮遊精霊よ」

 このマリモも精霊なのか。幼女精霊と落差が激しいな。

「ねえシルフィ。この子と契約すれば精霊魔法が使えるようになるか?」

「それはちょっと無理ね。自我がある動物型や昆虫型ならギリギリ意思の疎通も出来るけど、この子は漂っているだけだから契約しても意味が無いわ」

「そうなんだ。ちょっと残念」

 ゴーストとレイスに無防備な状態から脱出できると思ったのに、そう上手くはいかないか。でも撫でてみるとさらふわで癖になる手触りだ。

「浮遊精霊も触れるのね。精霊として生まれたばかりでとても希薄な存在なのに……裕太が本当に人間なのか疑わしくなるわ。異世界人だと精霊と親和性が高いのかしら?」

「普通に目の前にいるから触っているだけで、親和性とか言われても分からないよ」

 精霊は他の人には殆ど見えないって事は、一人芝居をしている状況なのか。人が居る場所に行けたら注意しないとな。せっかくたどり着いた場所で頭のおかしな人だと思われたら切なすぎる。

 さらふわの浮遊精霊をモフモフしながら湿地帯に向かって歩く。出来るだけ水分を節制しているが汗を掻くので脱水症状が怖い。少しずつ水分を取るしかないが、紅茶を一口含む度に不安になる。


 ***


「ついたわ。昔はここら辺が大きな湿地帯だったのよ」

 シルフィの言葉に周りを見渡すと……他と変わらずカラカラに乾いた赤茶けた大地だ。時間の流れって怖いな。

「元湿地帯って言われても、シルフィの言う事じゃ無かったら信じられない場所だね」

「そうよね。人間って怖いわ。裕太は自然を大切にしてね」

「今は厳しい大自然に殺されそうなんだけど……」

「あら……頑張って生き抜いてね」

 目を逸らさないで欲しい。ジーっと見つめているとシルフィが話を変えた。

「それで裕太。どうやって穴を掘るの?」

「ああ、これを使うんだよ」

 開拓ツールから魔法のハンドオーガーを取り出す。

 魔法のハンドオーガー
 穴掘りならこれにお任せ。くるっと回すとスルっと掘削! これであなたも石油王! 2メートルまで自由自在にサイズ変更。持ち手に重さを感じさせません。

 石油は掘らないよ。まあ石油が掘れるのなら井戸も掘れるよね。

「変わった道具ね。どうやって使うの?」

 まあ確かに変わった形だよね。T字の持ち手の下に薄い鉄板が螺旋状に取り付けられている。

「ん? これは地面に差し込んでT字の持ち手をクルクル回すと、穴が掘れるんだ」 

「へー。不思議な道具ね。面白そうだわ」

「まあ見ててよ」

 地面にハンドオーガーを差し込みクルクルと回して根元まで差し込む。ここでサイズを一番大きくする。二メートルサイズになると上に乗らないと持ち手が回せない。

 回す時に体を浮かせるのが面倒だけど、力は要らないから上に乗っていても取っ手を回すだけなら問題無い。螺旋から上がって来た土は収納すればサクサク穴が掘れるな。

「じゃあ掘り始めるから、申し訳ないけど魔物が来ないかだけ見張って貰える?」

「了解。頑張ってね」

「てー」

 シルフィと幼女精霊の応援を受けて気合を入れて穴掘りを始める。幼女精霊のは応援なのか疑問だが……応援だと思っていれば幸せだろう。

 T字の持ち手をクルクル回し、上がって来た土をドンドン収納していくと、かなりのスピードで地中に掘り進んで行く。

 これって崩落したらかなり危険だ。うーん、穴を掘るのに全然振動は出て無いから、崩落の危険性は少ないと思うけど用心はしておくべきだよな。

 土止めをする資材は無いし、ハンマーで土を叩き固めたら他の場所が崩れそうだ。シャベルを準備しておくか。崩れて来たら最大にしたシャベルの下に潜り込めば何とかなるだろう。

 そんなに上手く行くのか分からないが、重さも感じないんだし上に乗った土もドンドン収納すれば生還できる……たぶん。

 大きくすり鉢状に穴を掘れば、崩落に巻き込まれないで深く掘れるけど時間が掛かる。時間が掛かって飲み物が無くなっても水が出なかったら渇き死にだ。ここは水場の確保の為に危険を冒すべきだよね。

 シャベルを背負って恐怖を押し殺しながらハンドオーガーの取っ手を回す。偶にパラパラと土が落ちて来ると背筋がゾッとする。お水様。早く出て来て下さい。
読んで下さってありがとうございます。
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