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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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七十五話 お勉強

 ベル達とサラ達の対面を済ませて、簡単な練習を始める事にした。単純な事が意外な盲点になっていたみたいで、情報の制限が面倒だ。

 意を決したのか、マルコが両手を軽く前に出し質問する。

「えーっと、精霊は飛べるのか?」

 ヒュンっとベル達全員がマルコの右側に集まる。うん。あれだね皆で移動しているから、ワチャワチャになってお団子みたいだ。楽しそうだけど一人ずつ名前を呼んでから質問するように変更しよう。

「マルコ。名前を呼んでから質問するようにして」

「わ、わかった。えーっと。ベルさん。風の精霊はどんな事が出来るの?」

 さんを付けるのか。精霊はあんまり気にしないけど……精霊に敬意を払うと考えたら、このままの方が良いのかも。もう少しこのまま様子をみるか。

「マルコ。ハイかイイエで応えられる質問じゃないと、ベルがこまっちゃうよ」

「そ、そうだった」

 マルコ、緊張してるのか? 携帯とか無いし、姿が見えない相手との会話はやっぱり難しいんだろうな。ちなみにベルはワクワクしながら次の質問を待っている。

「えーっと。ベルさんは大きな竜巻を作る事が出来る?」

 ベルがフヨンっと右手の上に移動する。右手だからイエスだな。でも何で竜巻なんだろう?

「竜巻が作れるんだ」

 会話が成立した事が嬉しいらしく、ベルが喜んでクルクル回っている。

「ベルさん風の精霊は強い?」

 再び右手にフヨンっと移動する。ベル。自信家なんだね。そしてレイン。トゥル。タマモが待ちきれない様子だ。ベルの後ろで、まだかな? まだかな? と揺れている。特にタマモの尻尾がブンブンなのが可愛い。

「マルコ。ベルだけじゃ無くて、他の子達にも質問して良いんだよ。サラもキッカも怖くないから、聞きたい事があったら聞いてみるといい」

 俺の言葉にサラがおずおずと両手を前に出し、質問に挑戦する。

「レインさん。雨を降らせる事は出来ますか?」

 レインはサラの左手に嬉しそうに移動する。左手だからイイエだな。流石に雨は無理なのか。水球を打ち上げて雨みたいには出来るけど、厳密げんみつに言えば雨では無いよね。

 ハイとイイエの質問形式だと細かい所までは伝わらない。でもやらないよりは数倍マシだろう。キッカはまだ落ち着かないのか、マルコの背後にピタッっと引っ付いている。もう少し時間が掛かりそうだな。

 マルコとサラは何となくやる事が分かったのか、色々な質問をベル達に投げかけ、ベル達も嬉しそうに答えている。お遊戯会を見ているようで、微笑ましくもある。

「意外と意思疎通が可能なのね」

 シルフィが感心したように言う。

「そうだね。ベル達は俺が頼んだから協力してくれている面もあるけど、契約していない精霊でも話しかけたら、コミュニケーションに協力してくれたりするかな?」

「興味を持てば協力するわよ。私もベルも裕太と契約していなくても一緒に居たでしょ」

 そう言えばそうだな。精霊の気配が分かればドンドン話しかけて、契約してくれる相手を探す事も不可能じゃ無いんだ。

 しばらくシルフィと話しながらベル達とサラ達の様子を見る。そろそろ良いかな。次のステップに進もう。

「ベル。レイン。トゥル。タマモありがとう。今からサラ達に色々説明するから、今日はもう終わりにするよ」

 楽しかったーっとベル達が部屋の中を飛び回る。この方法は精霊達にも良い刺激になるのかもしれない。

「サラ。マルコ。キッカ。精霊の事が少しは分かった? 明日は浮遊精霊と契約してもらおうと思っているから、その為に精霊の事をもう少しくわしく説明するよ。よく聞いててね」

「師匠。明日けいやくするのか? 浮遊精霊?」

「うん。今から詳しく説明するよ。あとキッカはレベルを上げてからの契約だから、もう少し後だね」

 キョトンとしているけど、大丈夫かな? まあ、とりあえず一回説明して、分からない事を質問してもらった方が、話が早い。

 精霊の階級。属性ごとの特性。迷宮での行動など、シルフィの捕捉ほそくを受けながら詳しく説明する。気配が分かるとはいえ、何も見えない所に話しかける俺を見て、サラ達が変な顔をしていた。はやく慣れて欲しい。  

「師匠。とりあえず明日はいっしょに迷宮にいく浮遊精霊とけいやくするから、迷宮でたんさくしやすい浮遊精霊とけいやく出来るようにがんばるんだよな?」

「そうだよ。まずはサラとマルコに風の浮遊精霊と、土の浮遊精霊と契約してもらうから、どちらが良いか二人で話し合ってね」

 なんで風と土なのか聞かれたので、索敵と防御、攻撃が分かりやすいからと伝えておいた。シルフィに聞いたところ、水と森の浮遊精霊だと迷宮では制限が多そうなので、今回は見送る。

 自分の属性を自由自在に生み出せるようになれば関係ないらしいが、浮遊精霊だとまだ厳しいらしい。最初だからサラ達に自分で探して、フィーリングが合う精霊と契約してもらおうかとも思ったが、死の大地にも連れていく事になるんだし、シルフィに連れて来て貰った方が良いだろう。

「さて、今日はもう終わりだ。明日も結構忙しいから頑張ってね」

 まあ、死の大地に戻るのは、飛んで行くだけだから大丈夫なはずだ。サラ達を部屋に戻し、俺も休む事にする。


 ***

「へー。迷宮の森と違って、此処の森は凄く賑やかなんだね」

 森の中は精霊が飛びまわり、野生の獣と魔物がいるからか、賑やかな印象を受ける。

「ふふ。自然の中には精霊が沢山居るから、裕太には騒がしく感じるかもね」

 結構色んな音がしているんだけど、大部分は精霊が出している音らしい。至る所から音が聞こえて来るけど、野生の獣がそんなに不用心なはずも無いか。

 サラ達はどう感じているんだろう? と見てみると、ぐったりしている。そう言えば初飛行で最初は怖がり、途中からは大はしゃぎしていたからな。疲れるのも当然か。

 今朝はボリュームたっぷりの朝食を取った後、迷宮都市でベル達お勧めの屋台で大量に食料を買い込んだ。ベルもレインもトゥルもタマモも、自分のお勧めを早く紹介したいらしく、ハイテンションで案内されて地味に大変だった。

 屋台が集まっている場所だけでなく、迷宮都市に散らばっている屋台もしっかりチェックしていたらしく、次はこっち、次はあっちと歩き回り、迷宮都市にかなり詳しくなった気がする。屋台限定だけど。

 マリーさんの所で各ドラゴンのお肉を受け取る。ドラゴンステーキ……楽しみ過ぎる、いきなりファイアードラゴンのお肉、いっちゃうか?

 肉の味を想像しながら宿に戻り、トルクさんからケチャップ。ピザソース。ミートソース。パンを大量に分けて貰う。こんなに食べきれるのかと聞かれたが、人数が増えるので大丈夫だと答えておく。

 大精霊達が増えるから嘘では無いよね。次に迷宮都市に来た時も、必ずこの宿に泊まるように誘ってくれたのが地味に嬉しい。そこから迷宮都市を出て、トマトの苗木を手に入れる為に村に向かった。

「師匠。村に行くのに何で道をれるんだ?」

 歩いて行くのがタルいから飛んで行くって正直に言うのは、教育に良く無い。

「飛んで行った方が早いからね。見られないように道から逸れるんだよ」

「飛ぶのか!」

 マルコの顔が喜色に染まる。そうだよね。空を飛ぶのは憧れるよね。でもサラとキッカは不安そうだ。女の子はロマンより現実的なのかもしれない。

「そうだよ。楽しみにしていると良い」

 俺がそう告げると、マルコがソワソワしだした。よっぽど楽しみらしい。

「裕太。そろそろ大丈夫よ」

 シルフィの言葉に、サラ達を集める。

「じゃあ、今から飛ぶよ。絶対に大丈夫だから、あわてないで落ち着く事」

 シルフィが俺たち全員を風のまゆで包み、ふわりと体が浮き上がる。マルコは興奮の声をあげ、サラとキッカは恐怖の声をあげる。高度が上がるにつれて、楽しんでいたマルコの顔も次第に青ざめて行く。

「し、師匠! 本当に大丈夫なのか?」

 あわあわと焦るマルコ。喜びより不安がまさったらしい。ベル達が悲鳴をあげているサラとキッカに寄りっている。はげましの声は聞こえていないだろうけど、精霊が寄り添ってくれたくれた事に気が付いたのか、二人が少しずつ落ち着きを取り戻していく。

「ああ、大丈夫だよ。どんな事があろうと、落ちる事は無い。安心して景色を楽しむといい。落ち着いて周りを見てごらん。良い景色だよ」

 恐る恐る周りを見渡す三人。眼下に雲の絨毯じゅうたんが広がり、隙間から小さくなった迷宮都市が見える、なかなか幻想的な光景だ。

 シルフィの風の繭に守られているので、快適な状態で景色を楽しむ事が出来る。非現実的な光景に考える事をやめたのか、サラ達はただ景色を見ている。

 近くの村までの短い飛行を楽しみ。村ではトマトの苗木と、大量の新鮮野菜をゲット出来た。村は頑丈な岩の壁で囲まれていて、その外側に畑があり丈夫な木の柵で囲われている。

 魔物や戦争の脅威に対する備えなんだろうけど、牧歌的な農村は異世界には無いのかもしれない。野菜を譲って欲しいと頼んだ時も、お金を見せるまでは疑いがハンパなかった。

 田舎に泊まる系統のテレビ番組は、この世界だと難しそうだ。テレビ自体ないけど……。その後は再び飛行して、シルフィのお勧めの森に来たんだったな。結構ハードだったから疲れるのも無理は無いか。

「少し休憩しようか」

 サラ達にリンゴを絞ったジュースを渡すと、ベル達も寄って来てフンフンと匂いを嗅いでいる。飲んでみる? っと聞くとうなずいたので、ジュースを渡す。ん? サラ達が呆然としている。

「どうしたの?」

「お師匠様。気配でベルさん達が居るのは分かるんですが、その、精霊はジュースを飲むんですか?」

 ……そういえば、そこらへんは説明していなかったな。

「ジュースも飲むし、ご飯も食べるよ。サラ達も精霊と契約したら色々食べさせてあげて、何が好物かとか知る事が出来れば、更に仲良くなれるかもね」

 今のところベル達は苦い物以外は全部喜んで食べる。シルフィは珍しい食べ物とお酒だな。サラは何かを考えた後、顔をあげてこちらを見た。

「あの、お師匠様。精霊術師のお勉強も頑張りますので、お料理も教えてくださいませんか?」

 会った時から思ってたんだけど、サラって上品なんだよね。何かがあってスラムに流れて来たんだろうけど聞いていいものか。トラウマをえぐっちゃいそうだし、話したくなるまで待つか。

 料理は、どうなんだろう? 一人暮らしだし、気が向いたら料理をぐらいの素人が、人に教えて平気なんだろうか? でも手伝ってくれたら料理が楽になる。俺がナポリタンのレシピを渡した事を知った時も、キラキラした目で見ていたし、料理に興味があるんだろうな。

「素人料理でも問題無いのなら。ご飯を作る時に一緒に作ろうか。でも暫くは忙しいと思うから、料理は先になると思うよ」 

「はい。分かりました。その時になったらお願いします」

 満面の笑みだ。師匠と弟子のコミュニケーションにも役に立ちそうだし、頑張ってみるか。さて休憩も終わりにして、目的を果たそうか。ベル達も退屈そうだしね。
読んでくださってありがとうございます。
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