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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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六十四話 火山

 迷宮を進み四十五層の火山に到達した。先には攻略の最前線で頑張っている冒険者達が居るそうだ。どうしよう?

 想像してみる。攻略最前線に一人でひょっこりと現れた俺。色々と話を聞かれそうだな。うーん。ギルドに戻ったら俺の事を話すだろうし……冒険者ギルドに俺の情報が流れるのはちょっと嫌だ。

 出来れば冒険者ギルドが入手できない迷宮素材が、突然市場に流れて慌てて欲しい。簡単に俺の事が分かるより、焦って調べて結果的に俺に辿り着く。ギルマスびっくり。こっちの方が絶対にドラマチックだ。

「シルフィ。冒険者に見つからないように先に進む事は出来る?」

「ちょっと待って。……冒険者達は危険な場所を迂回うかいするルートを選んでいるみたいだから、最短ルートを進めば、見つからないと思うわ。ちなみに迂回路は山の間裏に回ってから登るルートね。結構時間が掛かりそうよ」

 今の間にルート検索も終わっちゃったの? シルフィってカーナビよりも優秀な気がする。

「危険な場所ってどんな風に危険なの?」

「毒ガスが出ている場所やマグマの川。ファイアーバードの巣の周辺って所ね」

 火山性のガスが出てるのか。マグマの川にファイアーバード、まさしくファンタジー。火の鳥とかカッコよすぎる。

「問題無く通り抜ける事が出来るんだよね?」

「ええ、大丈夫よ」

 頼もしいっす。全部お任せしますって言いたくなるな。

「じゃあ、冒険者を避けるルートでお願い」

 シルフィに案内してもらいながら先に進む。


 ***


「あっ、裕太。あそこに胡椒こしょうが生えてるわよ。採取する?」

「えっ? あれが胡椒なの? えーっと、採取する。ちょっと待ってね」

 何で火山に胡椒なんだ? 温かい場所に生えるのは知ってるけど、火山は暑すぎるだろう。ちょっと納得がいかない。火の鳥とかはファンタジーで納得出来るんだけどな。いや、ある意味この胡椒もファンタジーの産物なのか。

 火山の影響でほとんど植物が生えていないなか、青々と茂った葉っぱがとても目立つ。異世界の胡椒は根性が凄いらしい。

 しかし加工してある胡椒しか見た事が無かったけど、胡椒ってこんな風に生えてるんだ。実もしっかりついているし目立つから、普通なら採取されていそうなんだけど、確立された迂回ルートを進むからこっちに人が来ないのか?

 つるに小さな実が葡萄ぶどうのように集まってなっている。緑色の実や赤く熟した実……緑色の実も取って良いはずだよね。実の熟しかたと加工の仕方で色んな胡椒になるはずだ。迷宮でも少しは実を残しておいた方が良いのか?

 ……少しだけ残しておくか、資源は大事だからな。でも迷宮なら全部確保しても、いつの間にか新しくヒョコって生えてる気もするな。

「べるもてつだうー」「キュー」「とる」「クーー」

 ベル達もお手伝いしてくれるそうだ。そうぞれが得意のやり方で、胡椒の実を持って来てくれる。一つ一つ受け取り、頭を撫でて収納を繰り替えす。

 頭を撫でてお礼を言うたびに、みんな嬉しそうにはしゃいで、もう一回と胡椒を取りに行く姿はホッコリする。危険な迷宮である事を忘れてしまいそうだ。

 なんか畑で収穫する時も同じ事をしてたな。白々しい会話を大精霊達の前で繰り返しておいたから、畑は問題は無いと思うけど、どうなってるかな。次に帰る時は何か収穫できたらいよね。

「みんな、ありがとう。少し実を残しておくから終わりにするよ」

 ベル達にお手伝いのお礼を言って採取を終える。胡椒はいくらあっても困らないから、見つけたら採取しまくろう。問題は加工をどうするかだよな。冒険者ギルドに売れば簡単に済むんだけどそれは嫌だ。

 取り敢えず雑貨店のマリーさんに話を聞いてみるか。あの人って絶対に儲け話に目が無いタイプだから、色々協力してくれそうだ。迷宮から出たらたずねてみよう。

 ついでに良い儲け話があるんですよーって感じで、迷宮の素材の方もお願いしてみようかな。手に余る場合は商業ギルドに持って行けばいい。商業ギルドに直接持って行くとそれはそれで、面倒なのが寄って来そうだから、まずはマリーさんに聞いてからだな。

 偶に見つかる胡椒の実を採取しながら火山を登る。迷宮の火山って噴火するのだろうか? 迷宮って理不尽だよね。山を登った頂上に階段があって、その階段を降りたら下の階層でまた山登りが始まる。心が折れそうになる。

 しかし、この層に入ってから結構経つけど魔物が出て来ないな。迂回ルートを冒険者が移動するから、こっちには魔物が来ないのかな?

「裕太。マグマの川よ」

 シルフィの指さす方向に赤く輝く川が見える。マグマって始めて見るけど遠目だと綺麗に見えるな。呑気な事を考えながらマグマの川に近づく。二メートルほどの幅で思っていたより小さい川だな。

「シルフィ。この位の幅なら冒険者なら飛び越えそうだけど何で難所なの?」

「裕太は私の風をまとっているから涼しいけど、風が無いととっても暑いのよ。試してみる?」

 ……あまりにも快適でマグマが高温な物だって忘れていた。どのぐらい熱いんだろう? 話のタネに一度ぐらい体験しておいた方が良いかもしれない。

「体験してみたいから、ちょっと風を止めてくれる?」

「……私が言っておいてなんだけど、本当に試すの?」

 止めておいた方が良いわよって目だ。

「うん。なんか凄そうだし。話のタネになるよね」

 俺の中で話が面白い人はモテるってイメージがある。話題は体験から生まれる。いずれあるはずの出会いの為に準備をしておかないと。

「じゃあ外すけど、危ないからもう少し離れましょう」

 この距離は危ないんだ。ちょっとだけ怖くなって来た。更に二メートルほど距離をとる。

「じゃあ、外すわよ」

「う、うん。熱っ! って痛っ! シルフィ」

 素早くシルフィが風を纏わせてくれる。マグマ舐めてました。話のタネとか言ってすみません。なんか肌が露出した部分がちょっとヒリヒリする。

「ふー。マグマは危険だね。よく分かったよ。あれ? ベル達は?」 

「あそこよ」

「えーっと。大丈夫なんだよね? 精霊だし」

 最近やっとベル達が精霊だという事に慣れて来た。

「ええ。大丈夫よ」

 ベルがレインに乗って溶岩の川を爆走している。トゥルもタマモも楽しそうに追いかけているし……少し休憩するか。

「シルフィ。ここで少し休憩するね。飲み物はどう?」

「私は必要無いわ」

「了解」

 そのまま地面に座るのは怖いので岩を出してその上に座る。お尻が焼けたらショックだからな。紅茶を飲みながらシルフィと話をする。

「ねえ、シルフィ。他の冒険者達はマグマの川を越えられないの?」

 魔術師とか居るんだから、橋ぐらい作ってあっても良さそうなんだけどな。

「頑張れば越えられるんじゃないの? ただマグマの川にはマグマフィッシュがいるらしいわ、熱に耐えられるだけじゃ駄目みたいよ」

「マグマフィッシュ? 何それ?」

「迂回している冒険者が言ってたんだけど、マグマを纏ってマグマを吐きかけて来る魚だそうよ。最高の珍味らしいわ」

 マグマの中に魚が住んで居るのか……。

「ねえ。マグマの中に住んでる魚が食べられるの? って言うか料理する時に火が通るの?」

 ……もしかして、マグマの熱で既に調理済み? 踊り食いも可能かもしれないな、熱そうだけど。

「さあ? 冒険者もそこまで詳しく話してなかったわ」

 そうなんだ。まあ、会話を拾っているだけなんだから、こちらの知りたい事を全部話してくれる訳でも無いか。

「最高の珍味なら売れそうだし、冒険者がこっちに来ても良さそうなのにね」

「毒ガス地帯を抜けて、マグマの熱を遮断して、マグマフィッシュを捕まえる。魔術でだと結構大変ね」

 ……いま、ビックリする事を言って無かった? 

「シルフィ。毒ガスを抜けてって言ってたけど、俺も毒ガスを抜けたの?」

「ええ、抜けたわよ」

 何でそんな事を聞くのって感じで首を傾げられても……ちょっとトキメク。

「いつ頃?」 

「最初の方よ。胡椒を採取する少し前かしら。その後にも二ヵ所程あったわね。言った方が良かった?」

 あー、誰も胡椒を取りに来ていなかったのは、毒ガスがあったからか。納得です。

「うーん。今聞いて驚いたから言ってもらった方が良かったかな?」

 何も知らなかったから普通に歩いて来れた気もするが、ある意味イベント的な場面を気付かずにスルーするのは悲しい。

「分かったわ。次からは教えるわね」

「お願いね。さてそろそろ出発しようか……とも思ったけど……マグマフィッシュが気になるよね。探してみようか」

 最高の珍味とか言われたら、確認せずにはいられない。

「私も食べてみたいわ」

 シルフィも興味を持ったので、マグマフィッシュを探してみる。糸が燃えちゃうし釣りは無理だよね。どうやって探そう。マグマの中に居る魚とか今更だけど意味が分からない。

「シルフィ。見つけられる?」

「溶岩の中は専門外ね。トゥルなら分かるかもしれないけど、下級精霊だと厳しいかも。一番単純なのはマグマの川を渡る人間をマグマを吹き出して撃ち落とすらしいから、裕太がおとりになれば簡単に取れるわね」

「なるほど。俺がおとりでシルフィが捕まえるんだな。……取り敢えずやってみようか。シルフィの魔法が魚に破られる事無いよね?」

「当たり前よ。風のまゆだけでも十分だと思うけど、風壁も付けておくわ。風の繭の使い方は覚えているわよね? 魔力を込め過ぎたら駄目よ」

「しっかり学習したから大丈夫。そのまま飛んで渡ればいいんだよね。出て来たらシルフィが捕まえる感じでお願い」

 姿を見つけたらシルフィが逃がすはずないから大丈夫か。安全なら囮ぐらいなんでも無い、美味しい物を食べる為に頑張りましょう。

「分かったわ」

「じゃあ、行くよ」

 慎重に魔力を込めてフヨフヨとマグマの川を渡る。何事も起こらず向こう岸に到着する。必ず襲って来るわけじゃ無いのか?

 少しずつ場所を移動しながら何度もマグマの川を往復する。なんかチョット飽きて来た。そんな俺の下をベル達がキャハハハハっと笑いながら通り過ぎた。……あれ? なんか魚っぽい影がベル達を追いかけてない?

 シルフィも気が付いたのか、追いかけていた影を捕獲する。十匹の魚が風に玉に封じ込められてマグマごと浮き上がっている。

 あれが? マグマフィッシュ? っていうか何でベル達を追いかけてるの?

「シルフィ。マグマフィッシュがベル達を追いかけてたけど精霊が見えるの?」

「違うと思うわ。魔力を込めてマグマに干渉しながら泳いでいたから、その音に引き寄せられていただけでしょうね」

 ああ、なるほど。音に引き寄せられたのか。マグマの川を何往復もした自分がむなしい。ちょっとムカついてマグマフィッシュを見る。体長一メートル。スズキみたいな魚体で大きな口からマグマを吐き出している。 

 最高の珍味が十匹も捕れてしまった。どんな味なんだろう? とても気になるが……どう調理したら良いのか全く分からない。収納しておいて都市で情報を集めよう。

 収納するためにマグマフィッシュをシメたら、マグマが冷えて固まって、岩になってしまった。本当に食べられるのか?
読んでくださってありがとうございます。
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